遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

釜石の奇跡 想定外を克服

2011-05-14 23:18:02 | 東日本大震災
 「釜石の軌跡」は、新聞やテレビで報道され、諸兄も取り上げておられることですが、片田教授が座談形式で語られているサイトに出会いましたので、内容の濃さの備忘録を兼ねてアップさせていただきました。遊爺が、海のすぐそばにある釜石東中学校と鵜住居小学校の生徒が、全員津波から逃れられた話を知ったのは、「みのもんたの朝ズバ!」で片田教授がお話されていたのを見てからでした。出会ったサイトはその時のお話と、更にプラスされた情報も含まれています。
 

Yahoo!みんなの政治 - ビデオニュース・ドットコム - 片田敏孝:東日本大震災「想定外」にいかに備えるか

<前略>
 
自然は常に「想定」を超えるものであるにもかかわらず、こうしたハード面での対策が、「防波堤があるから安心だ」という気持ちを住民に与えてしまったのではないかと悔やむ。
  
 岩手県釜石市の防災教育に携わってきた片田氏が子ども達に教えてきたのは、「『想定』にとらわれない」こと、「その場でできる最善をつくす」こと、「とにかく高いところへ逃げ、自分の命を守る率先避難者たれ」ということだった。三陸沿岸の地域には、「津波てんでんこ」という言葉がある。津波がきたときは、自分以外の人が心配でも、とにかくまず自分の命を守ることを考え、てんでばらばらに高いところへ逃げなさいという教えだ。長く津波に苦しんできたこの地域で、家族全滅を防ぐ知恵として伝わってきた言葉だという。同市は、死者・行方不明者が1300人を超えており、湾に面した地域は建造物がほとんどなくなる被害を受けた。しかし、登校していた約3000人の小中学生は、ほぼ全員が無事だった。津波はここまではこないから大丈夫だと言う自分の祖母に、「学校で習った、危ない」と声を掛け、逃げることができたケースもあったという。

<以下は、三つの原則に集約編集の為順不同で抜粋>

「想定にとらわれるな」
片田: まずは「想定にとらわれるな」ということ。実は、鵜住居小学校と釜石東中学校はハザードマップの外にあります。子どもたちに初めてマップを見せると、彼らは「よかった!」と言う。僕はすかさず、「これは一つの状況想定にすぎず、この次の津波はマップの通りに来ない。喜んではいけない」と、徹底的に話しました。
 日本の学校教育では、先生の言うことは正しいし、与えられる印刷物は必ず正しい、という教育をされます。疑ったり、自分で考えたりするための訓練は、あまりされていない。だから、僕は最初にハザードマップを見せて、それを否定しました。僕らが考えていたのは、「知識を与える防災教育はダメで、姿勢を与える防災教育をやらなければいけない」ということ。そうして、「君たちにできるのはただ逃げることだけ。それでも、本当に助かるか保障はない」と教えているわけですから、彼らも賢明に逃げます。それが、今回の子どもたちの行動につながったのだと思います。

宮台: 子どもたちはハザードマップを目の前にして「こんなものを信用するな」と言われたのが衝撃的だったのでしょう。その言葉がなければハザードマップや、先生の避難指示を頼っていたかもしれない。いずれにせよ、与えられたものを信じるのではなく、自分の力でできることをすべてやらなければダメなのだ、と教わっていたことが大きいと思います。

「その状況の中でベストを尽くせ」
片田: 次に教えたのは、「その状況の中でベストを尽くせ」ということ。ベストを尽くしても自然の猛威の前では人間は無力で、命を落としてしまうこともある。しかし、人間にできることはベストを尽くすことだけなんです。
 学校から逃げ出した人たちは、津波災害時の第一次避難場所であるデイサービスの施設「ございしょの里」に集まりました。
  
神保: しかし、ここもすぐに水に浸かってしまった。
  
片田: そうです。ある中学生が「ございしょの里」の隣にある崖が崩れかけている様子と、防波堤にあたる水しぶきを見て、「先生、ここじゃダメだ」と言って、みんなをさらに高台にある「山崎デイサービス」まで導きました。そこで点呼を取っている最中に、その建物のすぐ下まで波が押し寄せたそうです。
  
神保: 子どもたちの現場判断によって、避難場所として決まっていた「ございしょの里」ではなく、さらに安全な場所まで避難することができたと。
  
片田: 中学生たちは小学生だけでなく、近くの保育園の子どもまで引き連れて逃げてくれました。

災害時は「率先避難者」たるべし
片田: もう一つ、僕が話したのは「率先避難者たれ」ということ。他人の命ではなく、自分の命をとにかく最優先で守れ、という意味です。そして、それがそのまま他の人を誘導することにつながる。災害が起こったときには、いわゆる集団同調性バイアスと呼ばれる現象が起こります。つまり、誰もが「逃げなきゃいけない」という意識を持ちながら、「今がそのときだ」とは思えない。人々は不安な気持ちの中で「どうしよう、どうしよう」と戸惑います。そんな矢先に、誰かが飛び出していくと、みんな一斉に逃げることができる。だから「君が自分の命を守ることは、みんなの命を守ることにつながる」と、僕は常々伝えてきました。
  
片田: 今回も、釜石東中学校の子どもたちは、まだ地震で揺れている最中に校舎を飛び出しました。日頃、小学校と中学校は合同で避難訓練をしているので、小学生たちも「中学生が全速力で走っていくような状況は異常だ」と、引っ張られるようにして走っていった。
 
片田: 「遠慮をせず、自分の命を最優先に守れ」という言葉は、彼らが育てられた倫理観とは矛盾します。だから僕らは「防災の世界においては、君が自分の命を守ることは、みんなの命を守ることにつながる」と教えたんです。
  
神保: 「防災の世界」ということは、津波固有の合言葉ではないわけですね。
片田: 危険に接したときの人間全般に当てはまる言葉です。例えば、オフィスビルで会議などをやっていると、ときどき非常ベルが鳴ることがありますね。けれど、逃げ出す人を見たことがありません。実際、大抵が誤報で、もしそれで逃げたとしたら「このおっちょこちょいめ」と悪口を言われかねない。僕らは「率先避難者」という言葉を作ることで、「なぜ逃げたんだ」と問われたときに「僕は率先避難者という役割を演じたのだ」と答えられるようにしてあげたのです。
  
神保: 一目散に逃げて、波が来なくても「お前、おれを置いて先に逃げやがって」と言われないような仕組みを作ったということですね。確かに、そうでなければ逃げにくいと思います。

真の防災都市を造るために
片田: 復興をどうするかの話ですが、釜石市唐丹に本郷集落という地域があります。ここは明治三陸津波のときよりも昭和三陸津波のとき被害が激しかったところで、それ以降に高所移転が行われました。海沿いに住んでいた人たちが標高20メートル以上の地点に引っ越したのです。今回、そこでは一軒も津波の被害に遭いませんでした。このように高所移転が抜本的な解決策であることは確かです。
  
 ただし、リアス式の海岸線は山が海のぎりぎりまで迫る地形なので、わずかな土地に都市を展開するほかなく、高台移転も土地が限られています。また、人々は昔から漁業で生活を立てているので、すぐに海沿いに番屋を作ってしまう。そして、そのうちに「お茶が飲める場所くらいつくろう」とか、「眠れる場所をつくろう」と、二拠点居住が始まります。そうこうしているうちに、いつしか町がすべて海沿いに下りてきてしまうのです。
  
 そして町がすべて出来上がった途端に大きな災害が起こる。三陸地方の人々は、そういうサイクルを繰り返してきました。海溝型の津波はだいたい100年周期で来るので、人間の忘却のメカニズムに見事に合致しています。

 僕は釜石で防災対策をする上で、この忘却のメカニズムに注目しています。人間は忘れる生き物なので、それを否定するのは得策ではない。むしろ、忘れることを前提に動かなければならないと考えます。そこで重要になるのは、災害をやり過ごす知恵を地域の常識、あるいは文化──つまり、語るに及ばないほどの状態にすることです。
  
 そのためには、これまでのように大人を対象にした防災講演をメインにしていたのでは、まったくダメ。理由は、何回やっても関心のある人しか聞きに来ないからです。子どもの教育が重要で、10年頑張れば、その子どもは大人になり、もう10年頑張れば、その子どもは親になる。そうなって初めて、地域の常識、文化を醸成する基盤ができるんです。
  
 意外だったのですが、「風化」という言葉を広辞苑で調べると、「徳を持って教化となすこと」と書かれています。岩石が崩れるように忘れさられることだと思いがちですが、そうではなくて、誰も疑問に思わないほど、当たり前になってしまうことなんです。この大災害で得た教訓を、しっかり「風化」させなければなりません。
  
宮台: 昔と今の違いは、体感的なメディアがたくさんあることです。今回の津波においては、生々しい映像が多数残っている。大事なのは、各地域でこれを子どもたちに見せることによって、子どもを「そうか、こんなことが起こるんだ」と思い続けさせられるかどうかです。そうして、片田先生のいう意味で、震災を風化させていく。
  
片田: ところが最近、放送局はできる限り津波の映像を流さないようにしているそうです。理由は子どもが怖がるから。そういう話を聞くと、残念ながら、これからも災害で人が亡くなり続けるだろうと思ってしまいます。
  
神保: 放送局側としては、その映像を見てトラウマになってしまう子どもがいるからという配慮なのでしょう。それもわからなくはないが、経験を語り継いでいくことの重要性を考えれば放送するべきです。
  
片田: 相手は自然ですから、そんなに甘くない。地震や津波は物理現象で、必ずまた起こります。それを「トラウマになるから」という理由で包み隠してしまうことは、自然の中で生きていく人間として、おかしなことだと思います。 

 ハザードマップを観た子供たちが、自分たちの学校がマップの外にあることで喜んだ。が、津波はマップ通りにはこない、ひとつの想定にすぎないのだから喜んではいけないと教えた。それを子供たちは信じて、素早く駆け出して非難した。躊躇する大人をも促した。3階に避難しようとしていた小学生も、中学生が走るのを見て駆け出した。
 一時避難所でも、がけ崩れの危険をみて、現場での状況に臨機応変に反応・判断して、より安全な高い場所へもう一度移動した。こんどは、中学生は焦らず、小学生の手をひいた。2,3人をかかえて非難する保母さんを見て、保育園児を抱いて助けた。

 大人たちが働きに出かけている日中は、中学生が頼りにされる町の構成。彼らが日ごろの教育・訓練を、親を待つことなく素直に実行に移したことで、多くの人々が救われたのでした。

 「想定外」として、責任回避をはかったり、話を片付けてしまうえら~いとされる学者さんや専門技術者さん、経営者や幹部の大人たち。そして国の命運を担うはずの政治家の先生たち。
 復興は、若い柔軟な頭脳を持つ人々(実年齢には関係なく)に託すべきでしょう。片田教授の様な方が復興委員にも居ることを願います。




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2 コメント

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頑張ってください (140929)
2012-04-23 19:12:48
私はあまり地震のことは知らなかったです。けどこの震災があって地震の怖さが分かりました。なぜこのサイトを見たかというと学校の先生にすすめられたからですけれど他にもニュースなどでも見かけていたからです。こんなに大きな地震が来てしまったけれど町の人全員が無事に逃げ切ったことは日ごろから注意して皆さんを指導してくださった人がいたからだと思います。私たちの県では少し揺れたところもありましたが問題はなかったけれど母とニュースなどを見て泣きましたこんなことはできればあってほしくないことです。今もまだ震災の後は残っていると思います一刻も皆さんの気持ちが軽くなるといいです。私は募金などなるべく協力しています。頑張ってください。
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Unknown (遊爺)
2012-04-24 00:38:55
140929さん、はじめまして。
拙い文書のブログにも関わらず読んでいただいてありがとうございました。

自分で想定の枠をはめてしまう大人に対し、言い伝えの「津波てんでんこ」を、片田教授の教えとともにきちんと実行された、中学生の皆さんには、若さの無限大の力を見せていただき感動しました。
140929さんの将来の無限大の可能性に、幸多きことをお祈りしています。

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