遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

米国抜きのTPPでもよいのでは

2016-08-22 23:58:58 | 米国 全般
 米国の次期大統領候補の二人が揃ってTPP反対を唱えています。TPPの発効は、「国内総生産(GDP)で全体の85%以上を占める6か国以上の批准」が最低限の要件となっているのだそうで、全体のGDPの62%を占める米国の動向が発効を左右するのですね。
 しかし、この米国が批准しないとなれば、米国抜きで、批准した国同士で別の自由貿易組織としてそのまま移行、発足すれば良いのではないでしょうか。去る者は追わず。規模は半分以下になるが、それでも大きな自由貿易集団となりうる。
 

米TPP消極論 憂うべき保護貿易主義の台頭 (8/22 読売 社説)

 
自由貿易を旗印にしてきた米国での保護主義の急速な高まりに、歯止めをかけねばならない。
 
11月の大統領選挙の共和、民主両党候補が、ともに環太平洋経済連携協定(TPP)に反対している

 共和党のドナルド・トランプ氏は、TPPからの撤退を公約した。「自動車産業にとって大惨事になる」と述べ、米自動車産業の雇用確保などを理由に挙げる。
 
深刻なのは、国務長官時代に協定を推進した民主党のヒラリー・クリントン氏も今月中旬、「選挙後も、大統領としても反対する」と明言したことだ
。TPPの批准が危ぶまれる事態である。
 
米国では、製造業の空洞化に伴い、中間所得層が退潮し、白人の低所得層などにグローバル経済に対する反感が強まっている

 両候補が
「大衆迎合」の選挙戦術として、保護主義的な主張をエスカレートさせているとすれば、将来に禍根を残しかねない


 日米など12か国が2月に署名したTPPの発効は、「国内総生産(GDP)で全体の85%以上を占める6か国以上の批准」が最低限の要件となっている。
 米国は参加国全体のGDPの62%、日本が16%を占めており、
日米両国の批准は欠かせない

 両候補が反対する中、オバマ大統領は現政権中に批准手続きを完了させたい考えだ。大統領選後、新政権の発足前の年末にかけて開かれる「レームダック(死に体)議会」での承認が必要で、審議日程は極めて窮屈となる。
 しかも、政治力の大きい製薬業界が医薬品の独占販売期間を巡って協定内容に反発していることなどから、連邦議会でのTPP賛成派は広がりを欠いている。
 上下両院で多数を占める
共和党のポール・ライアン下院議長は最近、「賛成票が集まらない。再交渉が必要だ」と発言
した。
 米国は、2007年に韓国と調印した自由貿易協定(FTA)で、議会の反対を理由に再交渉し、5年後に発効させた前例がある。
 しかし、
12か国の複雑な交渉を経たTPPは、ガラス細工の合意にも例えられる。いったん崩れれば空中分解しかねない安倍首相が「再交渉には絶対応じない」と強調するのは当然
である。
 米国には、
域内全体の発展を自国経済の成長につなげるという大局的な視点が求められよう

 日本は、TPPの早期発効に向けた強いメッセージを米国に送るため、秋の臨時国会で確実に承認を果たさねばなるまい。

 両候補が「大衆迎合」の選挙戦術として流されているのは、自由貿易がもたらす製造業の空洞化に伴い、中間所得層が退潮し、白人の低所得層などの職が奪われるというもの。
 自分たちは自由貿易の被害者。 「NAFTA(北米自由貿易協定)が仕事を奪い、貧困をもたらした。TPP(環太平洋経済連携協定)もそうなる。だからトランプ氏を支持することにした」と語る、ペンシルベニア州ミラーズバーグ市の工具メーカーで労働組合長だったロバート・ハーシュさん。
 

[米大統領選2016]現場から<4>通商政策…自由貿易へ「怒り」拡大 : 読売プレミアム

<前略>
 「NAFTA(北米自由貿易協定)が仕事を奪い、貧困をもたらした。TPP(環太平洋経済連携協定)もそうなる。だからトランプ氏を支持することにした」

 ペンシルベニア州ミラーズバーグ市の工具メーカーで労働組合長だったロバート・ハーシュさん(54)は語る。395人いた従業員はこの十数年で、ハーシュさんを含め約4分の3が一時解雇された。
 「ここではろくな仕事は見つからず、現実から逃避するため、酒や薬物におぼれる者が出た。その結果、犯罪も増えた」。ハーシュさんは
自由貿易が地域を荒廃させたと怒りを隠さない

 自由貿易について、オバマ大統領は「米国の21世紀の繁栄を支える雇用や経済成長を生み出すため、米国製の商品を輸出する新しい市場を世界で創出することが不可欠だ」として推進する立場を取ってきた。だが、
生産拠点の移転などで00年以降、米国の貿易赤字は高止まりし、安価な中国製品などの輸入増加、工場の海外移転で恩恵を実感できない国民が増えている

 トランプ氏は、こうした有権者に狙いを定め、過去の選挙で民主党の勝利が続いてきたラストベルトの接戦州をひっくり返し、勝利する戦略を描く。
共和党は自由貿易を擁護してきたが、トランプ氏はNAFTAやTPPを「雇用をなくす協定」と批判し、「クリントン氏は支持してきた」としつこく攻撃
している。
 
クリントン氏は批判をかわすため、TPP反対を明確にした
。両候補は今後も保護主義的な姿勢を強調するとみられ、世界最大の経済大国・米国の通商政策のあり方が大きく転換する恐れが現実味を帯びている。(ローム 有光裕)
 
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  ◆米国の貿易赤字= 2000年代前半から増え始め、世界的な金融危機の影響があった2009年に減少したが、再び増加傾向にある。
最大の原因は中国だ。昨年の対中貿易赤字は約3362億ドル(約34兆3000億円)で、全体の貿易赤字の7割近くを占めた
。ピエトラ・リボリ・米ジョージタウン大教授は「01年に中国が世界貿易機関(WTO)に加盟し、中国から割安な製品の輸入が増加する一方、中国の低賃金の労働力を求めて工場の海外移転が進んだ」と分析する。
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 海外からの安価な製品が輸入されることで、海外からの輸入製品との競争力で敗ける産業が敗退、空洞化する。それは自由貿易の定めというか、アメリカが標榜してきた自由主義の定め。その弊害を少なくするために、貿易交渉を重ねたのがTPP。
 国内製品が駆逐されるほどに品質と価格を消費者が支持する物を拒みつづけることが出来るのでしょうか。重い関税をかけ、消費者には不利益な国内生産品を保護する。食糧等の国家の安全保障に係るものには、一定の制限をすべきという各国に、関税ゼロを限りなく迫ったのは米国。他国にはゼロを求め、自国は障壁を造る。メキシコとの国境にメキシコの費用負担で壁を造るというトランプの発言が支持される所以です。自分勝手な理論の強要ですが、それを乗り越えて協定合意したのがTPP。
 TPPではなく、2国間貿易協定をしても、答えは大同小異のはず。

 しかし、米国には米国の主権があるので、他国がとやかく言っても始まらない。去る者は追わず、合意を批准した国同志で共同体経済圏を推進すれば良いだけです。
 シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4か国の経済連携協定(EPA)として始まった、TPSEPに、アメリカ、オーストラリア、マレーシア、ベトナム、ペルーが加わり、更に遅れて、メキシコ、カナダ、その後日本が加わったのでした。そこから米国が脱落する。それでいいのでは。

 EUは、ECの成果を踏まえて発展しましたが、英国が離脱することとなりました。それは、国境を無くした自由往来の長所と弊害があるその弊害が大きくなってきたことと、財政事情がことなる国同士が通貨統合をして、メリットの出る国とデメリットの出る国への差別化が進んだ弊害が原因ですね。TPPにそれはありません。
 他方中国は、「一帯一路」政策を打ち出し、独自のグローバル金融システム「AIIB」を設立し、中華経済圏を打ち出し、成長が減速した国内経済打破のための世界戦略を始動させています。アジアや中東の新興成長市場の活力を取り込もうという戦略ですね。それは、米国にとっても、日本や他の国々も目指しているところで、その手始めがTPPであるといえます。TPPを軸に、環太平洋にとどまらず、アジア、インド洋沿岸国、中東へと拡大していけばよいのです。
 世界一の米国のGDP=市場が含まれないスタートは残念ですが、中国と競合する市場を取り込まねばなりませんし、共産主義の障壁を越えることが出来れば、ベトナムの様に、TPPに中国も参加すればよい話なのです。

 TPPの輪が広がれば、米国も好むと好まざるとにかかわらず、TPPに参加せざるをえなくなります。それまでは、対米2国間自由貿易で、必要に応じ別途進めればよいだけの話です。

 繰り返しますが、TPPを実行していない現在でも、産業の空洞化が進んでいるのは、対中貿易が主因です。TPPとの因果関係は薄い。日本より貿易額の多い、メキシコ(トランプが指摘する壁は人の往来が主)やカナダとの交渉も成立したはずです。
 それでも、米国の尊敬すべき長所の「自由」を捨てて、票が欲しくて大衆迎合する国に成り果てた米国。二国間貿易交渉でも似た答えになるのですから、貿易の相手国がいなくなります。米国なしのTPP合意批准国だけの新TPPの推進で、広く成長市場との連携を進めるべきと考えますが、いかがでしょう。





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