今年、中国の安いハイテク製品が世界中にあふれかえり米政府や欧州連合(EU)は警戒を強めている。西側企業は不当競争の新たな幕開けだと不満をこぼしている。
中国の習近平国家主席は「中国の過剰生産能力問題というものは存在しない」と述べ、こうした批判をはねつけている。それどころか中国の電気自動車(EV)やソーラーパネルなどが単に西側の製品より性能が良く、競争力が高いだけだと中国当局者は話している。
だが中国の工業セクター、特にソーラーパネルや自動車、鉄鋼といった分野は明らかに過剰生産の兆候を示している。
内需が弱いままにもかかわらず、中国は生産能力を拡大し続けており、状況はさらに悪化しそうに見えると、WSJ・ナサニエル・タプリン。
「過剰生産能力」を定義するのは容易ではない。何と比べて「過剰」なのかが曖昧だからだと、ナサニエル・タプリン。
明確な点は、2021年以降、内需も輸出も弱いことが多いのに中国企業はいつも以上に製造への投資を増やしていることだ。この傾向は、政府に優遇され、補助金の恩恵を受けやすい特定の分野(例えばEV)でとりわけ顕著になっている。
自動車分野への投資の伸びは、2023年初めに前年比25%近くに達した。ソーラーパネルや半導体、電池への投資の急増にはさらに目を見張らされる。
利益率が低下している――これも過剰生産の手がかり
投資が急増する中で中国メーカーの利益率は落ち込み、特に自動車と鉄鋼で顕著になっている。
中国製造業全体の純利益率は2024年初めには4%を切り、2010年代終盤の平均水準である6%前後から大きく低下している。
欧米の政治家たちは中国製自動車の脅威に注目するが、価格下落は今のところ鉄鋼とソーラーパネルでより深刻だ。リチウムイオン電池の価格は2020年以降大幅に上昇していたが、最近は急落している。
過剰生産能力問題が急浮上したのと時を同じくして不動産市場はすさまじい不況に見舞われた。これは偶然の一致ではないと、ナサニエル・タプリン。
不動産市況悪化で、鉄鋼やその他の建材への需要が抑え込まれた。
政府が積極的に後押しする自動車・半導体・太陽電池などの工場への投資に回る余剰資金が増えた。政府は不動産や消費主導よりも、製造主導の経済成長モデルを好む傾向がある。
中国不動産市場が低迷から抜け出せず、中国の家計が貯蓄し続け、政府が製造業をてこにして経済の難局を乗り切る覚悟でいる限り、中国の過剰生産能力問題が大きく改善することはなさそうだとも。
中国の過剰生産能力は、太陽電池の製造が中でも最悪に見える。政府が将来の成長戦略の中心に据える「新たな質の生産力」の一つだ。
公式データによると、2023年の中国の太陽電池生産量は450ギガワットを超える。だが国内設置容量は220ギガワットに満たない。生産量の半分足らずだ。
キャピタル・エコノミクスの予想では、今年の中国の生産量は750ギガワット前後となる見通し。
中国は2024年に太陽電池を約500ギガワット分「過剰に」生産することになる。
これは2023年に世界の他地域に設置されたソーラーパネルの容量全体の4倍近くに相当すると、ナサニエル・タプリン。
中国は世界最大の鉄鋼生産国かつ消費国である。しかし、不動産市場が苦境に陥ると、鉄鋼の輸出が急増する傾向が見られる。
鉄鋼の利益率は、鉄鉱石価格が高いせいもあるが2015年よりも大幅に低下しているようだ。つまり鉄鋼メーカーには、外国に行けばより高価格で売れるという強い動機が働くだろうと、ナサニエル・タプリン。
リチウムイオン電池の輸出価格は2023年終盤から急激に下がった。世界中の自動車メーカーがEV革命にブレーキをかけたことが背景にある。一方、中国メーカーは供給量の歴史的増加に向けて準備をしている。政府が発表したガイドラインには逆行している。
ゴールドマン・サックスは昨年、中国の車載電池生産能力は、歩留まりを考慮すると2025年には約1000ギガワット時に達すると試算した。これは同行が予想する中国での需要のおよそ2倍。
中国が攻勢をかける自動車輸出と過剰生産能力の問題に政治的な関心が集まっていると、ナサニエル・タプリン。
だが一部の西側の自動車メーカーが悲惨なことは否めないものの、2022年と23年に中国の自動車セクターで急増した投資は、現在は落ち着きつつある。23年に前年比20%近く増加した投資額は5.7%増に低下。
過剰生産能力は依然として深刻だが、中国国内の自動車価格競争と外国でEV普及が遅れていることにより、国内の投資熱がようやく収まってきたようだと、ナサニエル・タプリン。
電気製品の利益率は再び低下に向かっている。それは太陽光や電池などの分野における新たな警告サインだとも。
人口減と、経済成長鈍化(含、若者の失業率高留まり)に病む中国経済。
人民の反応と、習近平の対策(人民の関心を国外に向けるのが為政者の常)には眼が離せませんね。
# 冒頭の画像は、中国・広州を訪問したイエレン米財務長官
チャイナ・ショック2.0 世界中で反発強まる - WSJ
この花の名前は、フランスギク
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遊爺さんの写真素材 - PIXTA
中国の習近平国家主席は「中国の過剰生産能力問題というものは存在しない」と述べ、こうした批判をはねつけている。それどころか中国の電気自動車(EV)やソーラーパネルなどが単に西側の製品より性能が良く、競争力が高いだけだと中国当局者は話している。
だが中国の工業セクター、特にソーラーパネルや自動車、鉄鋼といった分野は明らかに過剰生産の兆候を示している。
内需が弱いままにもかかわらず、中国は生産能力を拡大し続けており、状況はさらに悪化しそうに見えると、WSJ・ナサニエル・タプリン。
中国の過剰生産、悪化しそうな訳 - WSJ
ハイテク製品への投資は拡大するばかりで、貿易を巡る欧米との緊張は高まるだろう
ナサニエル・タプリン 2024年6月10日
今年、中国の安いハイテク製品がチャイナ・ショック2.0 世界中にあふれかえり 、米政府や欧州連合(EU)は警戒を強めている。西側企業は不当競争の新たな幕開けだと不満をこぼしている。
中国の習近平国家主席は「中国の過剰生産能力問題というものは存在しない」と述べ、こうした批判をはねつけている。それどころか中国の電気自動車(EV)やソーラーパネルなどが単に西側の製品より性能が良く、競争力が高いだけだと中国当局者は話している。
だが中国の工業セクター、特にソーラーパネルや自動車、鉄鋼といった分野は明らかに過剰生産の兆候を示している。一部の業種では、内需が弱いままにもかかわらず、中国は生産能力を拡大し続けており、状況はさらに悪化しそうに見える。
「過剰生産能力」を定義するのは容易ではない。何と比べて「過剰」なのかが曖昧だからだ。
中国の産業規模(および新規投資)の比較基準になるのは現在の同国の経済状況なのか、世界の経済状況なのか、それとも中国の将来の経済状況なのか。
低価格製品の流入に注目する西側の政治家らは最初の定義を好む。中国政府は2番目か3番目の定義を好む。
明確な点は、2021年以降、内需も輸出も弱いことが多いのに中国企業はいつも以上に製造への投資を増やしていることだ。この傾向は、政府に優遇され、補助金の恩恵を受けやすい特定の分野(例えばEV)でとりわけ顕著になっている。
自動車分野への投資の伸びは、2023年初めに前年比25%近くに達した。ソーラーパネルや半導体、電池への投資の急増にはさらに目を見張らされる。
利益率が低下している――これも過剰生産の手がかり
投資が急増する中で中国メーカーの利益率は落ち込み、特に自動車と鉄鋼で顕著になっている。
中国製造業全体の純利益率は2024年初めには4%を切り、2010年代終盤の平均水準である6%前後から大きく低下している。
中国製品の一部で輸出価格が下落
膨大な生産能力と国内需要の低迷、利益率低下の組み合わせで、世界市場に向かう中国製品は増えている。この過剰供給が一部の中国製品の価格を押し下げ、外国の競合製品よりも安く提供されている。
だが、その影響は製品の種類によって異なる。
欧米の政治家たちは中国製自動車の脅威に注目するが、価格下落は今のところ鉄鋼とソーラーパネルでより深刻だ。リチウムイオン電池の価格は2020年以降大幅に上昇していたが、最近は急落している。
中国の不動産不況にも一因
中国の新たな過剰生産能力問題が急浮上したのと時を同じくして不動産市場はすさまじい不況に見舞われた。これは偶然の一致ではない。
不動産市況悪化で、鉄鋼やその他の建材への需要が抑え込まれた。また住宅ローンの申し込みが途絶える中で、政府が積極的に後押しする自動車・半導体・太陽電池などの工場への投資に回る余剰資金が増えた。政府は不動産や消費主導よりも、製造主導の経済成長モデルを好む傾向がある。
中国不動産市場が低迷から抜け出せず、中国の家計が貯蓄し続け、政府が製造業をてこにして経済の難局を乗り切る覚悟でいる限り、中国の過剰生産能力問題が大きく改善することはなさそうだ。
ソーラー分野の過剰生産が最悪なわけ
中国の過剰生産能力は、太陽電池の製造が中でも最悪に見える。太陽光発電は他のクリーンエネルギー源とともに政府が将来の成長戦略の中心に据える「新たな質の生産力」の一つだ。
公式データによると、2023年の中国の太陽電池生産量は450ギガワットを超える。だが国内設置容量は220ギガワットに満たない。十分大きな数字だが、それでも生産量の半分足らずだ。
キャピタル・エコノミクスの予想では、今年の中国の生産量は750ギガワット前後となる見通しだ。仮に設置容量が横ばいだとすれば、中国は2024年に太陽電池を約500ギガワット分「過剰に」生産することになる。
これは2023年に世界の他地域に設置されたソーラーパネルの容量全体の4倍近くに相当する。
鉄鋼と電池で状況が悪化する可能性
中国は世界最大の鉄鋼生産国かつ消費国である。不動産市場が苦境に陥ると、鉄鋼の輸出が急増する傾向が見られる。
だが2015年の不動産不況の最悪期や2009年の世界金融危機時に比べると、鉄鋼生産量のうち中国国内で消費される割合はまだ高い。
鉄鋼の利益率は、鉄鉱石価格が高いせいもあるが2015年よりも大幅に低下しているようだ。つまり鉄鋼メーカーには、外国に行けばより高価格で売れるという強い動機が働くだろう。
電池に関しては、最近まで世界の需給バランスが良好に見えた。だが現在は行く手に明らかに警告サインが見える。
中国製リチウムイオン電池の輸出価格は2023年終盤から急激に下がった。世界中の自動車メーカーがEV革命にブレーキをかけたことが背景にある。一方、中国メーカーは供給量の歴史的増加に向けて準備をしている。ローエンド電池生産への投資を抑制する目的で政府が発表したガイドラインには逆行している。
ゴールドマン・サックスは昨年、中国の車載電池生産能力は、歩留まりを考慮すると2025年には約1000ギガワット時に達すると試算した。これは同行が予想する中国での需要のおよそ2倍だ。ゴールドマンは中国以外の電池工場の稼働率が22年のほぼ100%から26年には80%程度に低下すると見込んでいる。
自動車セクターに希望の兆し
中国が攻勢をかける自動車輸出と過剰生産能力の問題に政治的な関心が集まっている。自動車セクターが欧米経済にとっていかに重要かを考えれば、もっともなことだ。
だが一部の西側の自動車メーカーが悲惨なことは否めないものの、2022年と23年に中国の自動車セクターで急増した投資は、現在は落ち着きつつある。23年に前年比20%近く増加した投資額は5.7%増に低下し、過去平均とほぼ並んでいる。利益率も過去より低水準ながら安定しているようだ。
言い換えると、過剰生産能力は依然として深刻だが、もう急速に悪化することはないかもしれない。中国国内の自動車価格競争と外国でEV普及が遅れていることにより、国内の投資熱がようやく収まってきたようだ。
一方で電気製品の利益率は再び低下に向かっている。それは太陽光や電池などの分野における新たな警告サインだ。
ハイテク製品への投資は拡大するばかりで、貿易を巡る欧米との緊張は高まるだろう
ナサニエル・タプリン 2024年6月10日
今年、中国の安いハイテク製品がチャイナ・ショック2.0 世界中にあふれかえり 、米政府や欧州連合(EU)は警戒を強めている。西側企業は不当競争の新たな幕開けだと不満をこぼしている。
中国の習近平国家主席は「中国の過剰生産能力問題というものは存在しない」と述べ、こうした批判をはねつけている。それどころか中国の電気自動車(EV)やソーラーパネルなどが単に西側の製品より性能が良く、競争力が高いだけだと中国当局者は話している。
だが中国の工業セクター、特にソーラーパネルや自動車、鉄鋼といった分野は明らかに過剰生産の兆候を示している。一部の業種では、内需が弱いままにもかかわらず、中国は生産能力を拡大し続けており、状況はさらに悪化しそうに見える。
「過剰生産能力」を定義するのは容易ではない。何と比べて「過剰」なのかが曖昧だからだ。
中国の産業規模(および新規投資)の比較基準になるのは現在の同国の経済状況なのか、世界の経済状況なのか、それとも中国の将来の経済状況なのか。
低価格製品の流入に注目する西側の政治家らは最初の定義を好む。中国政府は2番目か3番目の定義を好む。
明確な点は、2021年以降、内需も輸出も弱いことが多いのに中国企業はいつも以上に製造への投資を増やしていることだ。この傾向は、政府に優遇され、補助金の恩恵を受けやすい特定の分野(例えばEV)でとりわけ顕著になっている。
自動車分野への投資の伸びは、2023年初めに前年比25%近くに達した。ソーラーパネルや半導体、電池への投資の急増にはさらに目を見張らされる。
利益率が低下している――これも過剰生産の手がかり
投資が急増する中で中国メーカーの利益率は落ち込み、特に自動車と鉄鋼で顕著になっている。
中国製造業全体の純利益率は2024年初めには4%を切り、2010年代終盤の平均水準である6%前後から大きく低下している。
中国製品の一部で輸出価格が下落
膨大な生産能力と国内需要の低迷、利益率低下の組み合わせで、世界市場に向かう中国製品は増えている。この過剰供給が一部の中国製品の価格を押し下げ、外国の競合製品よりも安く提供されている。
だが、その影響は製品の種類によって異なる。
欧米の政治家たちは中国製自動車の脅威に注目するが、価格下落は今のところ鉄鋼とソーラーパネルでより深刻だ。リチウムイオン電池の価格は2020年以降大幅に上昇していたが、最近は急落している。
中国の不動産不況にも一因
中国の新たな過剰生産能力問題が急浮上したのと時を同じくして不動産市場はすさまじい不況に見舞われた。これは偶然の一致ではない。
不動産市況悪化で、鉄鋼やその他の建材への需要が抑え込まれた。また住宅ローンの申し込みが途絶える中で、政府が積極的に後押しする自動車・半導体・太陽電池などの工場への投資に回る余剰資金が増えた。政府は不動産や消費主導よりも、製造主導の経済成長モデルを好む傾向がある。
中国不動産市場が低迷から抜け出せず、中国の家計が貯蓄し続け、政府が製造業をてこにして経済の難局を乗り切る覚悟でいる限り、中国の過剰生産能力問題が大きく改善することはなさそうだ。
ソーラー分野の過剰生産が最悪なわけ
中国の過剰生産能力は、太陽電池の製造が中でも最悪に見える。太陽光発電は他のクリーンエネルギー源とともに政府が将来の成長戦略の中心に据える「新たな質の生産力」の一つだ。
公式データによると、2023年の中国の太陽電池生産量は450ギガワットを超える。だが国内設置容量は220ギガワットに満たない。十分大きな数字だが、それでも生産量の半分足らずだ。
キャピタル・エコノミクスの予想では、今年の中国の生産量は750ギガワット前後となる見通しだ。仮に設置容量が横ばいだとすれば、中国は2024年に太陽電池を約500ギガワット分「過剰に」生産することになる。
これは2023年に世界の他地域に設置されたソーラーパネルの容量全体の4倍近くに相当する。
鉄鋼と電池で状況が悪化する可能性
中国は世界最大の鉄鋼生産国かつ消費国である。不動産市場が苦境に陥ると、鉄鋼の輸出が急増する傾向が見られる。
だが2015年の不動産不況の最悪期や2009年の世界金融危機時に比べると、鉄鋼生産量のうち中国国内で消費される割合はまだ高い。
鉄鋼の利益率は、鉄鉱石価格が高いせいもあるが2015年よりも大幅に低下しているようだ。つまり鉄鋼メーカーには、外国に行けばより高価格で売れるという強い動機が働くだろう。
電池に関しては、最近まで世界の需給バランスが良好に見えた。だが現在は行く手に明らかに警告サインが見える。
中国製リチウムイオン電池の輸出価格は2023年終盤から急激に下がった。世界中の自動車メーカーがEV革命にブレーキをかけたことが背景にある。一方、中国メーカーは供給量の歴史的増加に向けて準備をしている。ローエンド電池生産への投資を抑制する目的で政府が発表したガイドラインには逆行している。
ゴールドマン・サックスは昨年、中国の車載電池生産能力は、歩留まりを考慮すると2025年には約1000ギガワット時に達すると試算した。これは同行が予想する中国での需要のおよそ2倍だ。ゴールドマンは中国以外の電池工場の稼働率が22年のほぼ100%から26年には80%程度に低下すると見込んでいる。
自動車セクターに希望の兆し
中国が攻勢をかける自動車輸出と過剰生産能力の問題に政治的な関心が集まっている。自動車セクターが欧米経済にとっていかに重要かを考えれば、もっともなことだ。
だが一部の西側の自動車メーカーが悲惨なことは否めないものの、2022年と23年に中国の自動車セクターで急増した投資は、現在は落ち着きつつある。23年に前年比20%近く増加した投資額は5.7%増に低下し、過去平均とほぼ並んでいる。利益率も過去より低水準ながら安定しているようだ。
言い換えると、過剰生産能力は依然として深刻だが、もう急速に悪化することはないかもしれない。中国国内の自動車価格競争と外国でEV普及が遅れていることにより、国内の投資熱がようやく収まってきたようだ。
一方で電気製品の利益率は再び低下に向かっている。それは太陽光や電池などの分野における新たな警告サインだ。
「過剰生産能力」を定義するのは容易ではない。何と比べて「過剰」なのかが曖昧だからだと、ナサニエル・タプリン。
明確な点は、2021年以降、内需も輸出も弱いことが多いのに中国企業はいつも以上に製造への投資を増やしていることだ。この傾向は、政府に優遇され、補助金の恩恵を受けやすい特定の分野(例えばEV)でとりわけ顕著になっている。
自動車分野への投資の伸びは、2023年初めに前年比25%近くに達した。ソーラーパネルや半導体、電池への投資の急増にはさらに目を見張らされる。
利益率が低下している――これも過剰生産の手がかり
投資が急増する中で中国メーカーの利益率は落ち込み、特に自動車と鉄鋼で顕著になっている。
中国製造業全体の純利益率は2024年初めには4%を切り、2010年代終盤の平均水準である6%前後から大きく低下している。
欧米の政治家たちは中国製自動車の脅威に注目するが、価格下落は今のところ鉄鋼とソーラーパネルでより深刻だ。リチウムイオン電池の価格は2020年以降大幅に上昇していたが、最近は急落している。
過剰生産能力問題が急浮上したのと時を同じくして不動産市場はすさまじい不況に見舞われた。これは偶然の一致ではないと、ナサニエル・タプリン。
不動産市況悪化で、鉄鋼やその他の建材への需要が抑え込まれた。
政府が積極的に後押しする自動車・半導体・太陽電池などの工場への投資に回る余剰資金が増えた。政府は不動産や消費主導よりも、製造主導の経済成長モデルを好む傾向がある。
中国不動産市場が低迷から抜け出せず、中国の家計が貯蓄し続け、政府が製造業をてこにして経済の難局を乗り切る覚悟でいる限り、中国の過剰生産能力問題が大きく改善することはなさそうだとも。
中国の過剰生産能力は、太陽電池の製造が中でも最悪に見える。政府が将来の成長戦略の中心に据える「新たな質の生産力」の一つだ。
公式データによると、2023年の中国の太陽電池生産量は450ギガワットを超える。だが国内設置容量は220ギガワットに満たない。生産量の半分足らずだ。
キャピタル・エコノミクスの予想では、今年の中国の生産量は750ギガワット前後となる見通し。
中国は2024年に太陽電池を約500ギガワット分「過剰に」生産することになる。
これは2023年に世界の他地域に設置されたソーラーパネルの容量全体の4倍近くに相当すると、ナサニエル・タプリン。
中国は世界最大の鉄鋼生産国かつ消費国である。しかし、不動産市場が苦境に陥ると、鉄鋼の輸出が急増する傾向が見られる。
鉄鋼の利益率は、鉄鉱石価格が高いせいもあるが2015年よりも大幅に低下しているようだ。つまり鉄鋼メーカーには、外国に行けばより高価格で売れるという強い動機が働くだろうと、ナサニエル・タプリン。
リチウムイオン電池の輸出価格は2023年終盤から急激に下がった。世界中の自動車メーカーがEV革命にブレーキをかけたことが背景にある。一方、中国メーカーは供給量の歴史的増加に向けて準備をしている。政府が発表したガイドラインには逆行している。
ゴールドマン・サックスは昨年、中国の車載電池生産能力は、歩留まりを考慮すると2025年には約1000ギガワット時に達すると試算した。これは同行が予想する中国での需要のおよそ2倍。
中国が攻勢をかける自動車輸出と過剰生産能力の問題に政治的な関心が集まっていると、ナサニエル・タプリン。
だが一部の西側の自動車メーカーが悲惨なことは否めないものの、2022年と23年に中国の自動車セクターで急増した投資は、現在は落ち着きつつある。23年に前年比20%近く増加した投資額は5.7%増に低下。
過剰生産能力は依然として深刻だが、中国国内の自動車価格競争と外国でEV普及が遅れていることにより、国内の投資熱がようやく収まってきたようだと、ナサニエル・タプリン。
電気製品の利益率は再び低下に向かっている。それは太陽光や電池などの分野における新たな警告サインだとも。
人口減と、経済成長鈍化(含、若者の失業率高留まり)に病む中国経済。
人民の反応と、習近平の対策(人民の関心を国外に向けるのが為政者の常)には眼が離せませんね。
# 冒頭の画像は、中国・広州を訪問したイエレン米財務長官
チャイナ・ショック2.0 世界中で反発強まる - WSJ
この花の名前は、フランスギク
↓よろしかったら、お願いします。
遊爺さんの写真素材 - PIXTA