遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

8回目の「太平洋・島サミット」開催

2018-05-21 23:58:58 | EEZ 全般
 1997年から日本で3年ごとに開催され、今回が8回目となる「太平洋・島サミット」が、19日、福島県いわき市で首脳会議を開き、首脳宣言を採択して閉幕しました。
 今回は、北朝鮮への対応と海洋進出を進める中国を念頭にした協力関係の推進が2大テーマ。
 最大のテーマの北朝鮮問題での協力取り付けでは、北朝鮮の船が海上で石油精製品などを密輸する「瀬取り」への対策を共同で進めることや、日本人拉致問題の即時解決も首脳宣言に盛り込まれ成果があったとの外務省の評価。
 もうひとつの太平洋地域で航行の自由や法の支配を堅持し、中国の進出に歯止めをかける狙いについての、米・トランプ大統領も賛同し、アジア歴訪で唱え、インドやオーストラリアも賛同している「自由で開かれたインド太平洋戦略」の売り込み。
 こちらについては、最終的には首脳宣言へ明記されたものの、一部の国(何処?)が懸念を示すなど、中国の諸国に対する札束外交が浸透してきている様子もうかがえました。
 
島サミット 北の瀬取り対策強化 首脳宣言 船舶登録 解除へ (5/13 読売 朝刊一面)

 日本と太平洋の島嶼国・地域の首脳らによる「太平洋・島サミット」は19日、福島県いわき市で首脳会議を開き、首脳宣言を採択して閉幕した。首脳宣言では初めて北朝鮮問題に言及し、北朝鮮の船舶が洋上で物資を積み替えて密輸する「瀬取り」への対策として、島嶼国が北朝鮮船舶の登録解除などの取り組みを加速することを盛り込んだ

 安倍首相は首脳会議終了後、サモアのツイラエパ首相と共同記者発表に臨み、「国連安全保障理事会決議の完全な履行という共通の立場に基づき、瀬取りなどの北朝鮮による制裁回避への対応を含め、北朝鮮に対する圧力を維持していくことを確認した」と述べた。
 外務省によると、
瀬取りを巡っては、サミットに参加したサモアやマーシャル諸島に設立されたペーパーカンパニーが関与した事例が指摘されている。北朝鮮籍の船舶との瀬取りに関わった疑いがある第三国の船舶が、約2か月後にパラオ船籍に変わっていた事例も国連の報告書で明らかになっている。
 制裁の「抜け穴」とも言える事例が見られる背景には、島嶼国の排他的経済水域(EEZ)の広大さに比べて海上保安能力が低いこともありそうだ。
安倍首相はサミットで、瀬取りや違法漁業への対策を視野に、今後3年間で5000人以上の人材育成・交流に取り組む考えを表明した。日本政府は、海上保安庁職員らを派遣して技術指導するほか、必要機材を供与することも検討している。
 また、首脳宣言には大量破壊兵器や弾道ミサイルの完全、検証可能、不可逆的な廃棄に向けた平和的、外交的解決を追求することを明記。朝鮮半島の非核化をうたった南北首脳会談(板門店宣言を「歓迎」し、6月12日に行われる米朝首脳会談での核・ミサイル問題の進展に期待感を示した。日本人拉致問題の即時解決の重要性も指摘した。
 さらに、
首相が提案する「自由で開かれたインド太平洋戦略」の重要性も確認。首相は首脳会議冒頭の演説で、「太平洋とインド洋を区別する習わしは人為的、便宜的なもので、二つはもとより一体」とした上で、「海が劣化し、法の支配が踏みにじられるのを阻むため、行動へと一歩を踏み出そう」と呼び掛けた
 サミットは1997年から日本で3年ごとに開催され、今回が8回目。14の島嶼国と日本、豪州、ニュージーランドの計17か国に加え、今回は初めてフランス領のニューカレドニアとポリネシアの2地域が参加した。

 
島サミット 中国海洋進出に歯止め 「インド太平洋戦略」 一部の国は難色 (5/13 読売 朝刊)

 日本と太平洋島嶼国による「太平洋・島サミット」は、北朝鮮への対応海洋進出を進める中国を念頭にした協力関係の推進2大テーマとなった。日本政府は、両テーマで大きな成果を上げたと受け止めているが、島嶼国への中国の影響力の高まりも浮かび上がった
 安倍首相は19日の共同記者発表で、「北朝鮮との国交正常化が実現すれば、経済協力を行うことも可能だ。北朝鮮はアジア太平洋の成長圏に隣接し、勤勉な労働力と天然資源を有しており、正しい道を歩めば明るい未来が待っている。そのためにも拉致問題の早期解決が不可欠だ」と強調した。
 
今回、北朝鮮問題での協力取り付けが最大のテーマだった。瀬取り対策の加速や圧力維持に加え、首脳宣言に初めて日本人拉致問題の即時解決も明記されたことで、「ほぼ満点」(外務省幹部)の結果となった
 
もう一つの課題が、安倍首相が掲げる「自由で開かれたインド太平洋戦略」の売り込みだった。中国は南シナ海で強引な海洋進出を進めている。首相としては、太平洋地域で航行の自由や法の支配を堅持し、中国の進出に歯止めをかける狙いがあった。
 外務省関係者によると、
首脳宣言への「インド太平洋戦略」の明記には一部の国が懸念を示した。最終的には明記されたものの、「島喚国と中国の距離が縮まっている」(首相周辺)ことを印象づけた。
 中国は島嶼国に対し、港湾などインフラ施設整備への多額の援助や、積極的な企業投資を行っている。台湾が外交関係を持つ世界19か国のうち島嶼国は6か国を占めており、台湾へのけん制の狙いもある。これに対し、日本は「質を重視」(西村官房副長官)した人材育成・交流を促進し、島嶼国側への影響力を維持したい考えだ。

太平洋・島サミットに参加した19か国・地域
 ・日本(共同議長)
 ・サモア(共同議長)
 ・クック諸島
 ・フィジー
 ・キリバス
 ・マーシャル諸島
 ・ミクロネシア連邦
 ・ナウル
 ・ニウエ
 ・パラオ
 ・パプアニューギニア
 ・ソロモン諸島
 ・トンガ
 ・ツバル
 ・バヌアツ
 ・豪州
 ・ニュージーランド
 ・ニューカレドニア
 ・仏領ポリネシア

 
島サミット 自立的な発展を後押ししたい (5/13 読売 社説)

 太平洋を自由で開かれた海にする。その実現に向け、政府は島嶼国の自立的な発展を後押しし、より強固な信頼関係を築くことが重要である。
 日本やサモアなど19か国・地域の首脳らが参加し、太平洋・島サミットが福島県いわき市で開かれた。1997年以来3年ごとに開催され、今回が8回目となる。
 
島嶼国の多くは親日的で、国連などの場で日本の立場に理解を示す大切なパートナーである。首脳が集う機会を生かし、信頼醸成を図ることが必要だ。サミットに参加した豪州やニュージーランドとの協調も欠かせない。
 安倍首相は共同記者発表で「ソフトとハード両面でのきめ細かな支援を推し進める」と語った。
島嶼国の人材育成に積極的に取り組む考えを強調した。
 台風や津波などの自然災害や地球温暖化への対処は、島嶼国共通の課題である。政府は、港湾の整備や再生可能エネルギーの推進など、多面的な協力を進めるべきだ。企業や非政府組織(NGO)との連携が求められる。
 サミットでは、海洋分野での協力を強化することで合意した。
 
北朝鮮の船が海上で石油精製品などを密輸する「瀬取り」への対策を共同で進めることを決めた。島嶼国は北朝鮮船の「船舶登録」の解除などに取り組む。実効性を高めなければならない。
 島嶼国は広大な排他的経済水域(EEZ)を持ち、海上交通路としての重要性が増している。
 日米が掲げる
「自由で開かれたインド太平洋戦略」は、法の支配や市場経済を重視し、地域の安定と繁栄を図る考え方である。南太平洋でも促進したい。

 
島嶼国に対しては、中国と台湾が熾烈な援助外交を繰り広げてきた近年は中国が存在感を急速に増大させている。
 
問題なのは、中国による支援は、実施条件や支援額などが不透明なことだ。需要を無視した過剰なインフラ整備により、島喚国の財政運営に悪影響を与えているのではないかとの指摘がある。
 トンガは、中国の援助を受けて道路などを整備してきたが、多額の対中債務を抱える結果となった。
中国人観光客の急増で、環境破壊が懸念される国もある。
 各国の実情を踏まえずに強引な開発を進めても、持続的な発展は望めない。地域を不安定化させる要因にもなりかねない。
 政府は、中国の動向に関心を払いつつ、島嶼国の成長に資する効果的な支援策を講じるべきだ。

 首脳宣言で北朝鮮問題に言及されるのは初めてのことですが、瀬取りについてはサミットに参加したサモアやマーシャル諸島に設立されたペーパーカンパニーが関与した事例があり、島嶼国が北朝鮮船舶の登録解除などの取り組みを加速することが宣言に盛り込まれ、更に日本人拉致問題の即時解決も明記される等成果がありました。

 他方、首相が提案する「自由で開かれたインド太平洋戦略」の重要性は、一部の国が宣言への書き込みに懸念を示すといった、中国の札束外交の浸透が進んでいることが顕在化しました。

 中国の進出については、台湾の認証国潰しを含め以前から顕著でしたが、前回は、それまで2回連続欠席していたフィジーの復帰もありました。
 太平洋・島サミット 中国以外にもプレーヤー増加 - 遊爺雑記帳

 ただ、問題なのは、読売の社説が指摘している通り、中国による支援は、実施条件や支援額などが不透明なことです。
 トンガは、中国の援助を受けて道路などを整備してきたが、多額の対中債務を抱える結果となったそうですし、中国人観光客の急増で、環境破壊が懸念される国(パラオ)もあることも知られてきています。
 中国の支援は、自国の経済成長の鈍化対策として、外需の発掘を求める自国の利益追求や、支援で支配下に飲み込もうとする覇権拡大が目的であることは、アフリカ諸国への支援実績でも知られている事ですね。

 島嶼国の財産のひとつは、広大なEEZの海洋です。瀬取りの監視・摘発もさることながら、違法漁業の取り締まり能力強化が求められています。
 日本は、今後3年間で5,000人以上の人材育成・交流に取り組む考えを表明し、海上保安庁職員らを派遣して技術指導するほか、必要機材を供与することも検討しているのだそうです。
 読売社説が提唱する、中国流の、自国の利益優先で、各国の実情を踏まえず、逆に破綻を招きかねない強引な開発ではなく、島嶼国の成長に資する効果的な支援策を日本は推進しようとしている様子です。
 今回は初めてフランス領のニューカレドニアとポリネシアの2地域が新規参加したのだそうです。
 「自由で開かれたインド太平洋戦略」との連携に併せて、「CPTPP(TPP11)」との連携も進み、台湾の参加への道も開かれるといいですね。



 # 冒頭の画像は、第8回太平洋・島サミット(PALM8)の首脳




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