石破政権だが、最新の読売新聞の支持率(11月11~12日調査)をみると43%で、前回(衆院選直後)の34%から9ポイントも上昇した。取り立てて何もしていないのに不思議な現象だ。不支持率は42%。支持率が上がった理由についての分析はなかったと、ジャーナリストの山田稔氏。
第2次石破政権の先行き見通しはどうなのか。ついこの間までは「平成以降で最短だった羽田孜政権(64日)よりも短命に終わる」とささやかれていたのだが、ここへきて随分と風向きが変わってきたと、ジャーナリストの山田氏。
「ひところは来年度予算成立が大きなポイントとなると見られていました。国民民主党などの要求を受け入れなければ予算成立の目途が立たなくなり、予算成立と引き換えに退陣というシナリオがもっともらしく語られていました。
参院選まで石破氏にやらせて、敗北の責任を取らせればいい、といったムードが支配的になりつつあります。それだけ自民党内に元気がないんです。56も議席を減らしたことで、ふぬけのようになっています」
と、永田町を連日取材しているベテラン記者。
「ひところは来年度予算成立が大きなポイントとなると見られていました。予算成立と引き換えに退陣というシナリオがもっともらしく語られていました。
それが、参院選まで石破氏にやらせて、敗北の責任を取らせればいい、といったムードが支配的になりつつあります。それだけ自民党内に元気がないんです。56も議席を減らしたことで、ふぬけのようになっています」とも。
「石破おろし」といった雰囲気さえないというのだ。春に新しい総裁を選出したところで、7月の参院選までは数カ月しかない。その間に党勢を立て直すのは至難の業ということか。そのため、消極的選択肢として、石破氏に7月の参院選まで首相をやらせるというシナリオが出てきているのだと、山田氏。
自民党総裁選中と総裁就任後の言行不一致ですっかり国民の信用を失ってしまった石破氏。この先、国民民主との部分連合や、自民党内の基盤強化も必要だろうが、大きなポイントになるのがアメリカ大統領に返り咲くトランプ氏との関係だと。
基地問題、東アジア防衛問題、防衛費増額問題、自動車関税問題など日米関係は難題が山積している。トランプ氏との良好な関係は必須だと、山田氏。
トランプ氏との電話会談は、わずか5分間。通訳を交えて5分間では実質的な中身はゼロ。
今後の日程を見ると、11月15日にペルーで開かれるAPECに合わせて中国の習近平国家主席やバイデン米大統領らと初めて会談する予定だ。そしてブラジルでのG20首脳会議に出席した帰りに米国に立ち寄り、トランプ氏との短時間の面会を打診していると報じられている。
しかし、今の石破氏がトランプ氏と会って何を話すのか。日米地位協定の見直しやアジア版NATO創設といった自説は、首相就任後すっかり封印。
気楽な“党内評論家”だから口にできただけで、首相となった今ではおいそれとは公言できないということか。そんな体たらくだから、トランプ氏との面会では防衛費増額や自動車関税問題などで難題を突き付けられるのが関の山だろうと、山田氏。
仮に今回の面会が短時間に終わったとしても、次の手を考えるべきだろうと、山田氏。
党内基盤が脆弱で、田中角栄氏の影響下で政権運営せざるを得なかった中曽根康弘元首相は、首相就任の翌年(1983年)、首脳会談で来日したレーガン大統領夫妻を奥多摩の日の出山荘に招待し、そこでチャンチャンコ姿でほら貝を吹き、お茶をたててもてなし、レーガン氏のハートをしっかりとつかんだ。
この日の出山荘会談を機に「ロン・ヤス」関係は強化され、中曽根氏はレーガン氏のバックアップもあり、5年の長期政権を実現した。
長期政権を築いた歴代の首相と大統領との個人関係でいえば、小泉純一郎元首相と、ブッシュ大統領。安部首相とトランプ大統領の関係が顕著なことは、諸兄がご承知のとおり。
トランプ氏との面会と言えば、今年4月に麻生太郎元首相・党最高顧問が、トランプ陣営からの要請で、いち早くニューヨークを訪れ、トランプタワーで1時間にわたり2人だけで差しの会談を行っている。次期大統領選出をにらんでの関係構築が狙いだったと、山田氏。
その狙いは見事に当たったが、国内のトップ選びでミソをつけた麻生氏はキングメーカーの座から転落。派閥の人数も40人から31人に減ってしまい、一部では本人の引退説まで流れた。
麻生氏は、トランプ氏との関係を武器に、今後の「ポスト石破」政局の中で再びキングメーカー的な動きをしてくる可能性があるかもしれない。そんな麻生氏に対して石破氏はどう振る舞うのか。総裁選最終盤のときのように、天敵と言われてきた麻生氏に日米関係を口実に協力を求めるような場面があるのだろうか。
早ければ3月の来年度予算成立まで、遅くとも夏の参院選まで──。これが石破政権の先行きに対する大方の見方である。そんな永田町の常識を打ち破るには、石破氏自身の政治力、行動力でトランプ氏との関係強化を図るなど、想定外の動きをするしかない。
石破氏は、もはや“評論家”ではいられない。行動の時であると、山田氏。
予算委員長の座を立憲民主党に明け渡した石破政権。
どんな政権運営になるのでしょう?世界が激動している昨今、日本が落ちこぼれる事無く、むしろアジア・太平洋地域でのリーダー国として役割を果たしていけるのでしょうか?
# 冒頭の画像は、石破首相
この花の名前は、大文字草 宮城野
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先が思いやられる「石破・トランプ」関係、いち早く米国で会談した麻生氏が再びキングメーカーとして暗躍か | JBpress (ジェイビープレス) 2024.11.14(木) 山田 稔:ジャーナリスト
自民党内に「石破おろし」の雰囲気さえない理由
11月11日、第2次石破政権が発足した。同じ日、石破氏がパーシャル連合の相手として秋波を送る国民民主党の党首・玉木雄一郎氏の不倫騒動が発覚し、臨時会見、街頭演説と玉木氏は釈明に追われた。メディアやネットでは第2次石破政権発足よりも不倫党首の騒動に注目が集まり、103代首相の石破氏の存在はすっかりかすんでしまった。
そんな石破政権だが、最新の読売新聞の支持率(11月11~12日調査)をみると43%で、前回(衆院選直後)の34%から9ポイントも上昇した。取り立てて何もしていないのに不思議な現象だ。不支持率は42%。支持率が上がった理由についての分析はなかった。
11日午前には国民民主党の玉木氏と党首会談を行い、「年収103万円の壁」引き上げがテーマになった。石破氏は「与党として真摯に検討」として両党の政調会長、税調会長同士での協議を進めていくとの考えを示している。
ドタバタ騒動のなかでスタートした第2次石破政権の先行き見通しはどうなのか。ついこの間までは「平成以降で最短だった羽田孜政権(64日)よりも短命に終わる」とささやかれていたのだが、ここへきて随分と風向きが変わってきた。
永田町を連日取材しているベテラン記者はこう言う。
「ひところは来年度予算成立が大きなポイントとなると見られていました。国民民主党などの要求を受け入れなければ予算成立の目途が立たなくなり、予算成立と引き換えに退陣というシナリオがもっともらしく語られていました。
それが、2月、3月の段階で誰かにトップを変えたところで、7月の参院選を乗り切れる保証はない。だったら参院選まで石破氏にやらせて、敗北の責任を取らせればいい、といったムードが支配的になりつつあります。それだけ自民党内に元気がないんです。56も議席を減らしたことで、ふぬけのようになっています」
「石破おろし」といった雰囲気さえないというのだ。春に新しい総裁を選出したところで、7月の参院選までは数カ月しかない。その間に党勢を立て直すのは至難の業ということか。そのため、消極的選択肢として、石破氏に7月の参院選まで首相をやらせるというシナリオが出てきているのだという。
もはや“党内評論家”の自説も封印した体たらく
自民党総裁選中と総裁就任後の言行不一致ですっかり国民の信用を失ってしまった石破氏だが、この先どうやって少数与党政権のかじ取りを行っていくのか。13日に明らかになった副大臣・政務官人事では今井絵理子氏を2度目の内閣府政務官に起用した。これが適材適所の人事なのか。またしても失点確実の雰囲気だ。
この先、国民民主との部分連合や、自民党内の基盤強化も必要だろうが、大きなポイントになるのがアメリカ大統領に返り咲くトランプ氏との関係だ。
基地問題、東アジア防衛問題、防衛費増額問題、自動車関税問題など日米関係は難題が山積している。これらの解決を含め、両国関係のさらなる強化、深化を考えれば、再び大統領に就任するトランプ氏との良好な関係は必須だ。
11月9日にはトランプ氏から石破氏に電話がかかってきたが、会話時間はわずか5分間。石破氏は「非常にフレンドリーな感じがした」との感想を漏らしていたが、通訳を交えて5分間では実質的な中身はゼロである。
ちなみに韓国のユン大統領とは12分、フランスのマクロン大統領とは25分、ウクライナのゼレンスキー大統領とは25分だったという。日本の評価が低いのか、石破氏の評価が低いのか。
今後の日程を見ると、11月15日にペルーで開かれるAPECに合わせて中国の習近平国家主席やバイデン米大統領らと初めて会談する予定だ。そしてブラジルでのG20首脳会議に出席した帰りに米国に立ち寄り、トランプ氏との短時間の面会を打診していると報じられている。
しかし、今の石破氏がトランプ氏と会って何を話すのか。日米地位協定の見直しやアジア版NATO創設といった自説は、首相就任後すっかり封印してしまった。気楽な“党内評論家”だから口にできただけで、首相となった今ではおいそれとは公言できないということか。そんな体たらくだから、トランプ氏との面会では防衛費増額や自動車関税問題などで難題を突き付けられるのが関の山だろう。
この時点で「短時間の面会」などと報じられていることからして先が思いやられる。フロリダの邸宅なのかニューヨークになるのか知らないが、多忙とはいえ、まだ大統領就任前なのだから公務はないはず。相手にその気があるのであれば応じてくれるはずだ。
「短命政権」との永田町予想を覆す“想定外の動き”とは?
仮に今回の面会が短時間に終わったとしても、次の手を考えるべきだろう。
石破氏と同じく党内基盤が脆弱で、田中角栄氏の影響下で政権運営せざるを得なかった中曽根康弘元首相は、首相就任の翌年(1983年)、首脳会談で来日したレーガン大統領夫妻を奥多摩の日の出山荘に招待し、そこでチャンチャンコ姿でほら貝を吹き、お茶をたててもてなし、レーガン氏のハートをしっかりとつかんだ。
この日の出山荘会談を機に「ロン・ヤス」関係は強化され、中曽根氏はレーガン氏のバックアップもあり、5年の長期政権を実現した。
長期政権を築いた歴代の首相と大統領との個人関係でいえば、小泉純一郎元首相は訪米時、首脳会談後にブッシュ元大統領に大ファンだったプレスリーの旧邸宅に案内された。
安倍晋三元首相はトランプ氏と何度もゴルフを共にした。石破氏はどうやってトランプ氏との個人的関係を構築するつもりなのだろうか。党内基盤がぜい弱な石破氏にとって、トランプ氏を後ろ盾にできればこれに勝るものはないが、そんな力量があるかどうか。
トランプ氏との面会と言えば、今年4月に麻生太郎元首相・党最高顧問が、いち早くニューヨークを訪れ、トランプタワーで1時間にわたり2人だけで差しの会談を行っている。次期大統領選出をにらんでの関係構築が狙いだった。
その狙いは見事に当たったが、国内のトップ選びでミソをつけた麻生氏はキングメーカーの座から転落。派閥の人数も40人から31人に減ってしまい、一部では本人の引退説まで流れたが、したたかなベテラン政治家がそう簡単に退くとは思えない。
トランプ氏との関係を武器に、今後の「ポスト石破」政局の中で再びキングメーカー的な動きをしてくる可能性があるかもしれない。そんな麻生氏に対して石破氏はどう振る舞うのか。総裁選最終盤のときのように、天敵と言われてきた麻生氏に日米関係を口実に協力を求めるような場面があるのだろうか。
早ければ3月の来年度予算成立まで、遅くとも夏の参院選まで──。これが石破政権の先行きに対する大方の見方である。そんな永田町の常識を打ち破るには、石破氏自身の政治力、行動力でトランプ氏との関係強化を図るなど、想定外の動きをするしかない。
もはや“評論家”ではいられない。行動の時である。
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【山田 稔(やまだ・みのる)】
ジャーナリスト。1960年長野県生まれ。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。主に経済、社会、地方関連記事を執筆している。著書は『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』『分煙社会のススメ。』など。最新刊に『60歳からの山と温泉』がある。東洋経済オンラインアワード2021ソーシャルインパクト賞受賞。
自民党内に「石破おろし」の雰囲気さえない理由
11月11日、第2次石破政権が発足した。同じ日、石破氏がパーシャル連合の相手として秋波を送る国民民主党の党首・玉木雄一郎氏の不倫騒動が発覚し、臨時会見、街頭演説と玉木氏は釈明に追われた。メディアやネットでは第2次石破政権発足よりも不倫党首の騒動に注目が集まり、103代首相の石破氏の存在はすっかりかすんでしまった。
そんな石破政権だが、最新の読売新聞の支持率(11月11~12日調査)をみると43%で、前回(衆院選直後)の34%から9ポイントも上昇した。取り立てて何もしていないのに不思議な現象だ。不支持率は42%。支持率が上がった理由についての分析はなかった。
11日午前には国民民主党の玉木氏と党首会談を行い、「年収103万円の壁」引き上げがテーマになった。石破氏は「与党として真摯に検討」として両党の政調会長、税調会長同士での協議を進めていくとの考えを示している。
ドタバタ騒動のなかでスタートした第2次石破政権の先行き見通しはどうなのか。ついこの間までは「平成以降で最短だった羽田孜政権(64日)よりも短命に終わる」とささやかれていたのだが、ここへきて随分と風向きが変わってきた。
永田町を連日取材しているベテラン記者はこう言う。
「ひところは来年度予算成立が大きなポイントとなると見られていました。国民民主党などの要求を受け入れなければ予算成立の目途が立たなくなり、予算成立と引き換えに退陣というシナリオがもっともらしく語られていました。
それが、2月、3月の段階で誰かにトップを変えたところで、7月の参院選を乗り切れる保証はない。だったら参院選まで石破氏にやらせて、敗北の責任を取らせればいい、といったムードが支配的になりつつあります。それだけ自民党内に元気がないんです。56も議席を減らしたことで、ふぬけのようになっています」
「石破おろし」といった雰囲気さえないというのだ。春に新しい総裁を選出したところで、7月の参院選までは数カ月しかない。その間に党勢を立て直すのは至難の業ということか。そのため、消極的選択肢として、石破氏に7月の参院選まで首相をやらせるというシナリオが出てきているのだという。
もはや“党内評論家”の自説も封印した体たらく
自民党総裁選中と総裁就任後の言行不一致ですっかり国民の信用を失ってしまった石破氏だが、この先どうやって少数与党政権のかじ取りを行っていくのか。13日に明らかになった副大臣・政務官人事では今井絵理子氏を2度目の内閣府政務官に起用した。これが適材適所の人事なのか。またしても失点確実の雰囲気だ。
この先、国民民主との部分連合や、自民党内の基盤強化も必要だろうが、大きなポイントになるのがアメリカ大統領に返り咲くトランプ氏との関係だ。
基地問題、東アジア防衛問題、防衛費増額問題、自動車関税問題など日米関係は難題が山積している。これらの解決を含め、両国関係のさらなる強化、深化を考えれば、再び大統領に就任するトランプ氏との良好な関係は必須だ。
11月9日にはトランプ氏から石破氏に電話がかかってきたが、会話時間はわずか5分間。石破氏は「非常にフレンドリーな感じがした」との感想を漏らしていたが、通訳を交えて5分間では実質的な中身はゼロである。
ちなみに韓国のユン大統領とは12分、フランスのマクロン大統領とは25分、ウクライナのゼレンスキー大統領とは25分だったという。日本の評価が低いのか、石破氏の評価が低いのか。
今後の日程を見ると、11月15日にペルーで開かれるAPECに合わせて中国の習近平国家主席やバイデン米大統領らと初めて会談する予定だ。そしてブラジルでのG20首脳会議に出席した帰りに米国に立ち寄り、トランプ氏との短時間の面会を打診していると報じられている。
しかし、今の石破氏がトランプ氏と会って何を話すのか。日米地位協定の見直しやアジア版NATO創設といった自説は、首相就任後すっかり封印してしまった。気楽な“党内評論家”だから口にできただけで、首相となった今ではおいそれとは公言できないということか。そんな体たらくだから、トランプ氏との面会では防衛費増額や自動車関税問題などで難題を突き付けられるのが関の山だろう。
この時点で「短時間の面会」などと報じられていることからして先が思いやられる。フロリダの邸宅なのかニューヨークになるのか知らないが、多忙とはいえ、まだ大統領就任前なのだから公務はないはず。相手にその気があるのであれば応じてくれるはずだ。
「短命政権」との永田町予想を覆す“想定外の動き”とは?
仮に今回の面会が短時間に終わったとしても、次の手を考えるべきだろう。
石破氏と同じく党内基盤が脆弱で、田中角栄氏の影響下で政権運営せざるを得なかった中曽根康弘元首相は、首相就任の翌年(1983年)、首脳会談で来日したレーガン大統領夫妻を奥多摩の日の出山荘に招待し、そこでチャンチャンコ姿でほら貝を吹き、お茶をたててもてなし、レーガン氏のハートをしっかりとつかんだ。
この日の出山荘会談を機に「ロン・ヤス」関係は強化され、中曽根氏はレーガン氏のバックアップもあり、5年の長期政権を実現した。
長期政権を築いた歴代の首相と大統領との個人関係でいえば、小泉純一郎元首相は訪米時、首脳会談後にブッシュ元大統領に大ファンだったプレスリーの旧邸宅に案内された。
安倍晋三元首相はトランプ氏と何度もゴルフを共にした。石破氏はどうやってトランプ氏との個人的関係を構築するつもりなのだろうか。党内基盤がぜい弱な石破氏にとって、トランプ氏を後ろ盾にできればこれに勝るものはないが、そんな力量があるかどうか。
トランプ氏との面会と言えば、今年4月に麻生太郎元首相・党最高顧問が、いち早くニューヨークを訪れ、トランプタワーで1時間にわたり2人だけで差しの会談を行っている。次期大統領選出をにらんでの関係構築が狙いだった。
その狙いは見事に当たったが、国内のトップ選びでミソをつけた麻生氏はキングメーカーの座から転落。派閥の人数も40人から31人に減ってしまい、一部では本人の引退説まで流れたが、したたかなベテラン政治家がそう簡単に退くとは思えない。
トランプ氏との関係を武器に、今後の「ポスト石破」政局の中で再びキングメーカー的な動きをしてくる可能性があるかもしれない。そんな麻生氏に対して石破氏はどう振る舞うのか。総裁選最終盤のときのように、天敵と言われてきた麻生氏に日米関係を口実に協力を求めるような場面があるのだろうか。
早ければ3月の来年度予算成立まで、遅くとも夏の参院選まで──。これが石破政権の先行きに対する大方の見方である。そんな永田町の常識を打ち破るには、石破氏自身の政治力、行動力でトランプ氏との関係強化を図るなど、想定外の動きをするしかない。
もはや“評論家”ではいられない。行動の時である。
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【山田 稔(やまだ・みのる)】
ジャーナリスト。1960年長野県生まれ。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。主に経済、社会、地方関連記事を執筆している。著書は『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』『分煙社会のススメ。』など。最新刊に『60歳からの山と温泉』がある。東洋経済オンラインアワード2021ソーシャルインパクト賞受賞。
第2次石破政権の先行き見通しはどうなのか。ついこの間までは「平成以降で最短だった羽田孜政権(64日)よりも短命に終わる」とささやかれていたのだが、ここへきて随分と風向きが変わってきたと、ジャーナリストの山田氏。
「ひところは来年度予算成立が大きなポイントとなると見られていました。国民民主党などの要求を受け入れなければ予算成立の目途が立たなくなり、予算成立と引き換えに退陣というシナリオがもっともらしく語られていました。
参院選まで石破氏にやらせて、敗北の責任を取らせればいい、といったムードが支配的になりつつあります。それだけ自民党内に元気がないんです。56も議席を減らしたことで、ふぬけのようになっています」
と、永田町を連日取材しているベテラン記者。
「ひところは来年度予算成立が大きなポイントとなると見られていました。予算成立と引き換えに退陣というシナリオがもっともらしく語られていました。
それが、参院選まで石破氏にやらせて、敗北の責任を取らせればいい、といったムードが支配的になりつつあります。それだけ自民党内に元気がないんです。56も議席を減らしたことで、ふぬけのようになっています」とも。
「石破おろし」といった雰囲気さえないというのだ。春に新しい総裁を選出したところで、7月の参院選までは数カ月しかない。その間に党勢を立て直すのは至難の業ということか。そのため、消極的選択肢として、石破氏に7月の参院選まで首相をやらせるというシナリオが出てきているのだと、山田氏。
自民党総裁選中と総裁就任後の言行不一致ですっかり国民の信用を失ってしまった石破氏。この先、国民民主との部分連合や、自民党内の基盤強化も必要だろうが、大きなポイントになるのがアメリカ大統領に返り咲くトランプ氏との関係だと。
基地問題、東アジア防衛問題、防衛費増額問題、自動車関税問題など日米関係は難題が山積している。トランプ氏との良好な関係は必須だと、山田氏。
トランプ氏との電話会談は、わずか5分間。通訳を交えて5分間では実質的な中身はゼロ。
今後の日程を見ると、11月15日にペルーで開かれるAPECに合わせて中国の習近平国家主席やバイデン米大統領らと初めて会談する予定だ。そしてブラジルでのG20首脳会議に出席した帰りに米国に立ち寄り、トランプ氏との短時間の面会を打診していると報じられている。
しかし、今の石破氏がトランプ氏と会って何を話すのか。日米地位協定の見直しやアジア版NATO創設といった自説は、首相就任後すっかり封印。
気楽な“党内評論家”だから口にできただけで、首相となった今ではおいそれとは公言できないということか。そんな体たらくだから、トランプ氏との面会では防衛費増額や自動車関税問題などで難題を突き付けられるのが関の山だろうと、山田氏。
仮に今回の面会が短時間に終わったとしても、次の手を考えるべきだろうと、山田氏。
党内基盤が脆弱で、田中角栄氏の影響下で政権運営せざるを得なかった中曽根康弘元首相は、首相就任の翌年(1983年)、首脳会談で来日したレーガン大統領夫妻を奥多摩の日の出山荘に招待し、そこでチャンチャンコ姿でほら貝を吹き、お茶をたててもてなし、レーガン氏のハートをしっかりとつかんだ。
この日の出山荘会談を機に「ロン・ヤス」関係は強化され、中曽根氏はレーガン氏のバックアップもあり、5年の長期政権を実現した。
長期政権を築いた歴代の首相と大統領との個人関係でいえば、小泉純一郎元首相と、ブッシュ大統領。安部首相とトランプ大統領の関係が顕著なことは、諸兄がご承知のとおり。
トランプ氏との面会と言えば、今年4月に麻生太郎元首相・党最高顧問が、トランプ陣営からの要請で、いち早くニューヨークを訪れ、トランプタワーで1時間にわたり2人だけで差しの会談を行っている。次期大統領選出をにらんでの関係構築が狙いだったと、山田氏。
その狙いは見事に当たったが、国内のトップ選びでミソをつけた麻生氏はキングメーカーの座から転落。派閥の人数も40人から31人に減ってしまい、一部では本人の引退説まで流れた。
麻生氏は、トランプ氏との関係を武器に、今後の「ポスト石破」政局の中で再びキングメーカー的な動きをしてくる可能性があるかもしれない。そんな麻生氏に対して石破氏はどう振る舞うのか。総裁選最終盤のときのように、天敵と言われてきた麻生氏に日米関係を口実に協力を求めるような場面があるのだろうか。
早ければ3月の来年度予算成立まで、遅くとも夏の参院選まで──。これが石破政権の先行きに対する大方の見方である。そんな永田町の常識を打ち破るには、石破氏自身の政治力、行動力でトランプ氏との関係強化を図るなど、想定外の動きをするしかない。
石破氏は、もはや“評論家”ではいられない。行動の時であると、山田氏。
予算委員長の座を立憲民主党に明け渡した石破政権。
どんな政権運営になるのでしょう?世界が激動している昨今、日本が落ちこぼれる事無く、むしろアジア・太平洋地域でのリーダー国として役割を果たしていけるのでしょうか?
# 冒頭の画像は、石破首相
この花の名前は、大文字草 宮城野
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