31日午後11時(日本時間2月1日午前8時)に英国がEUから離脱しましたね。
年越しの時の様な光景が報道されていましたが、英国内の離脱派と残留派との分断の溝は埋まっていない様子。
EU内で独に続く経済大国の英国の離脱で、独のためのEUと言われつつあるEUは、ますますその傾向が強まるのか。米国とは一線を画す独仏との間で絆を保った英国の離脱は、中露が覇権拡大を進めるなか、戦後秩序の変動にどのような影響を及ぼすのか。
歴史的な時代の流れの転換を迎える様相ですね。
国境を超えたヒト、カネ、モノ、サービスの自由な行き来を通じて域内の経済的な繁栄の実現を目指すとの理念を掲げ、ECからEUへと拡大を続けてきた試みが、初めて英国という大国の離脱という、逆回転を生じました。
EUは残る加盟国での結束を探り、英国は単独での生き残りにかけるが方向性は定まらず、暗中模索の開始。
世界経済や、安全保障秩序にどのような影響が及ぶのかも未明。
欧州の歴史の転換点ではありますね。
EUでドイツに次ぐ2位の経済大国の英国の離脱は、2つの点で欧州には挫折となると、日経・欧州総局編集委員の赤川省吾氏。
まずEU拡大戦略が頓挫した。10年間で債務・難民危機、英離脱という遠心力に見舞われ、新規加盟のハードルは格段にあがったと。
次に多様性と国際協調を重んじる「西洋の価値観」が傷ついたと。
身内の英国が反旗を翻し、自国優先に転じた。
戦勝国の英国が欧州での発言力を失う。それは欧州の戦後秩序が名実ともに終わることを意味すると。
ドイツの存在感がますます強まる。
敗戦国ドイツや共産圏だった東欧、中立国の北欧が重みを増す英なきEU。軸は西から東に移るが、運命共同体になる覚悟は十分とは言えないと。
安全保障で「欧州軍」を創設しようとすれば中立国が渋り、財政政策の一元化では節約家のドイツなど北部と、規律の緩いイタリアなど南部が反目する。
意識は共有するが思惑はすれ違うのが現状だと。
英国が離脱を決意した元は、国内の階級・地域・所得という3つの根深い格差が残り、社会の分断は深く、移民の流入でその格差が深刻化すること。
EUとの決別で活路がみいだせるのかは未明。
戦後秩序が崩れ、世界情勢も流動化するなかで「EU」や「英国」の再定義が迫られていくのですね。
世界のあちこちでポピュリズムが台頭し、協調と寛容に基づくグローバリズムの理念が揺らいでいる。
米トランプ大統領が推進する自国第一主義や米中貿易戦争が世界経済に影を落とし、中東情勢も緊迫する。中国やロシアの覇権志向に西側諸国が連携して対峙しなければならない難局にある。そんななかで英国は欧州統合の潮流に背を向けた。
2月から今年末までの移行期間に、自由貿易協定(FTA)の締結が出来るのか。
「(離脱する)英国にいいとこ取りを許さない」というEU側。両者の歩み寄りが必要ですが。。
他方、英国は今後、独自に米国や日本とのFTAを結ぶことが可能になります。日本を中心とする環太平洋経済連携協定(TPP=英連邦のオーストラリアやカナダが加盟)への参加には、メイ前首相時代から意欲を示していました。
「自由で開かれたインド太平洋戦略」では、英連邦のインドとオーストラリアが参画しています。
海洋国家で連邦の盟主イギリスの参加に違和感はありませんね。
かつては同盟国でもあった日英。成長力が注目される東南アジア市場での連携が深められる期待が膨らみます。
# 冒頭の画像は、離脱の瞬間に鐘が鳴ると、ユニオン・ジャックを振り、EU離脱を祝う人たち(イングランド北西部ワリントン)
この花の名前は、バイカオウレン
2月 7日は、北方領土の日
政府広報(北方領土問題) - YouTube
↓よろしかったら、お願いします。
年越しの時の様な光景が報道されていましたが、英国内の離脱派と残留派との分断の溝は埋まっていない様子。
EU内で独に続く経済大国の英国の離脱で、独のためのEUと言われつつあるEUは、ますますその傾向が強まるのか。米国とは一線を画す独仏との間で絆を保った英国の離脱は、中露が覇権拡大を進めるなか、戦後秩序の変動にどのような影響を及ぼすのか。
歴史的な時代の流れの転換を迎える様相ですね。
英離脱 戦後秩序に幕 EU、結束へ正念場 拡大・価値観、2つの挫折(写真=AP) :日本経済新聞 2020/2/1付日本経済新聞
英国が31日午後11時(日本時間2月1日午前8時)に欧州連合(EU)から離脱する。拡大を続けてきた欧州統合が初めて逆回転する歴史的な節目を迎える。EUは残る加盟国での結束を探り、英国は単独での生き残りにかけるが方向性は定まらない。世界の政治秩序にも影が忍び寄る。
お別れは「蛍の光」の大合唱だった。29日、欧州議会が離脱協定案を可決すると、議員は総立ちになってスコットランド民謡を口ずさんだ。涙ぐむ残留派の英議員を、そっと抱きしめたバーレイ副議長はつぶやいた。「とても悲しい日」
英国はEUでドイツに次ぐ2位の経済大国だ。2月から激変緩和の「移行期間」に入るため、すぐにしわ寄せが企業や消費者に及ぶわけではないが、2つの点で欧州には挫折となる。
まずEU拡大戦略が頓挫した。10年間で債務・難民危機、英離脱という遠心力に見舞われ、新規加盟のハードルは格段にあがった。
次に多様性と国際協調を重んじる「西洋の価値観」が傷ついた。身内の英国が反旗を翻し、自国優先に転じた。「貿易交渉には冷たく臨む」(マクロン仏大統領)、「英国は強力な競争相手」(メルケル独首相)。発言には失望がにじむ。
戦勝国の英国が欧州での発言力を失う――。それは欧州の戦後秩序が名実ともに終わることを意味する。
「欧州の司令塔はフランスか英国だ。ドイツがやりたいと言ってはいけない」。1962年8月、アデナウアー西独首相は閣議で戒めた。閣議の議事録をひもとけばナチスへの反省から国際的な秩序作りは英仏に任せるという当時の基本思想が浮き彫りになる。
時代は変わった。ドイツはもはや沈黙の巨人ではなく、英離脱で存在感は際立つ。EUを仕切るだけではない。1月、ロシアやトルコの首脳を集めたリビア和平会議を切り盛りしたのは独政府だった。敗戦国ドイツや共産圏だった東欧、中立国の北欧が重みを増す英なきEU。軸は西から東に移るが、運命共同体になる覚悟は十分とは言えない。
安全保障で「欧州軍」を創設しようとすれば中立国が渋り、財政政策の一元化では節約家のドイツなど北部と、規律の緩いイタリアなど南部が反目する。「EUは結束してこそ米ロに対抗できる」。意識は共有するが思惑はすれ違う。
英国はEU内で自由貿易や規制緩和の旗振り役で、「大きな政府」に傾きがちな南欧の歯止め役だった。一方で通貨ユーロを導入しないなどの半身の姿勢は「統合の邪魔者」とされた。
「(英国を除いて)ユーロ圏だけで議会を作りたい」。赤ワインでほろ酔い加減のショイブレ前独財務相が思わず記者団にこぼしたことがある。今後は「英国が邪魔するから統合が進まない」という言い訳は通じない。残る27カ国は統合への決意が問われる。
英国も惑う。国内には階級・地域・所得という3つの根深い格差が残り、社会の分断は深い。「偉業を盛大に祝いたい」。29日、ジョンソン英首相はEUとの決別を喜んでみせたが、活路があるのか疑わしい。数十年後にはEUに舞い戻る、ともささやかれる。
戦後秩序が崩れ、世界情勢も流動化するなかで「EU」や「英国」の再定義が迫られている。
国家は誰のもので何が目標か。保守的な白人キリスト教社会か、それとも多文化のリベラル社会か。2020年代はアイデンティティー(帰属意識)で悩んだ時代だと後世の歴史書に刻まれるかもしれない。
弱い欧州では世界の民主主義陣営が危うい。米は頼りにならず、力の空白を中ロなど強権国家が埋める。戦後、欧州は長い時間をかけて「鉄のカーテン」を溶かした。いまは分断を修復する欧州流の強い意志に期待するしかない。
(欧州総局編集委員 赤川省吾)
英国が31日午後11時(日本時間2月1日午前8時)に欧州連合(EU)から離脱する。拡大を続けてきた欧州統合が初めて逆回転する歴史的な節目を迎える。EUは残る加盟国での結束を探り、英国は単独での生き残りにかけるが方向性は定まらない。世界の政治秩序にも影が忍び寄る。
お別れは「蛍の光」の大合唱だった。29日、欧州議会が離脱協定案を可決すると、議員は総立ちになってスコットランド民謡を口ずさんだ。涙ぐむ残留派の英議員を、そっと抱きしめたバーレイ副議長はつぶやいた。「とても悲しい日」
英国はEUでドイツに次ぐ2位の経済大国だ。2月から激変緩和の「移行期間」に入るため、すぐにしわ寄せが企業や消費者に及ぶわけではないが、2つの点で欧州には挫折となる。
まずEU拡大戦略が頓挫した。10年間で債務・難民危機、英離脱という遠心力に見舞われ、新規加盟のハードルは格段にあがった。
次に多様性と国際協調を重んじる「西洋の価値観」が傷ついた。身内の英国が反旗を翻し、自国優先に転じた。「貿易交渉には冷たく臨む」(マクロン仏大統領)、「英国は強力な競争相手」(メルケル独首相)。発言には失望がにじむ。
戦勝国の英国が欧州での発言力を失う――。それは欧州の戦後秩序が名実ともに終わることを意味する。
「欧州の司令塔はフランスか英国だ。ドイツがやりたいと言ってはいけない」。1962年8月、アデナウアー西独首相は閣議で戒めた。閣議の議事録をひもとけばナチスへの反省から国際的な秩序作りは英仏に任せるという当時の基本思想が浮き彫りになる。
時代は変わった。ドイツはもはや沈黙の巨人ではなく、英離脱で存在感は際立つ。EUを仕切るだけではない。1月、ロシアやトルコの首脳を集めたリビア和平会議を切り盛りしたのは独政府だった。敗戦国ドイツや共産圏だった東欧、中立国の北欧が重みを増す英なきEU。軸は西から東に移るが、運命共同体になる覚悟は十分とは言えない。
安全保障で「欧州軍」を創設しようとすれば中立国が渋り、財政政策の一元化では節約家のドイツなど北部と、規律の緩いイタリアなど南部が反目する。「EUは結束してこそ米ロに対抗できる」。意識は共有するが思惑はすれ違う。
英国はEU内で自由貿易や規制緩和の旗振り役で、「大きな政府」に傾きがちな南欧の歯止め役だった。一方で通貨ユーロを導入しないなどの半身の姿勢は「統合の邪魔者」とされた。
「(英国を除いて)ユーロ圏だけで議会を作りたい」。赤ワインでほろ酔い加減のショイブレ前独財務相が思わず記者団にこぼしたことがある。今後は「英国が邪魔するから統合が進まない」という言い訳は通じない。残る27カ国は統合への決意が問われる。
英国も惑う。国内には階級・地域・所得という3つの根深い格差が残り、社会の分断は深い。「偉業を盛大に祝いたい」。29日、ジョンソン英首相はEUとの決別を喜んでみせたが、活路があるのか疑わしい。数十年後にはEUに舞い戻る、ともささやかれる。
戦後秩序が崩れ、世界情勢も流動化するなかで「EU」や「英国」の再定義が迫られている。
国家は誰のもので何が目標か。保守的な白人キリスト教社会か、それとも多文化のリベラル社会か。2020年代はアイデンティティー(帰属意識)で悩んだ時代だと後世の歴史書に刻まれるかもしれない。
弱い欧州では世界の民主主義陣営が危うい。米は頼りにならず、力の空白を中ロなど強権国家が埋める。戦後、欧州は長い時間をかけて「鉄のカーテン」を溶かした。いまは分断を修復する欧州流の強い意志に期待するしかない。
(欧州総局編集委員 赤川省吾)
国境を超えたヒト、カネ、モノ、サービスの自由な行き来を通じて域内の経済的な繁栄の実現を目指すとの理念を掲げ、ECからEUへと拡大を続けてきた試みが、初めて英国という大国の離脱という、逆回転を生じました。
EUは残る加盟国での結束を探り、英国は単独での生き残りにかけるが方向性は定まらず、暗中模索の開始。
世界経済や、安全保障秩序にどのような影響が及ぶのかも未明。
欧州の歴史の転換点ではありますね。
EUでドイツに次ぐ2位の経済大国の英国の離脱は、2つの点で欧州には挫折となると、日経・欧州総局編集委員の赤川省吾氏。
まずEU拡大戦略が頓挫した。10年間で債務・難民危機、英離脱という遠心力に見舞われ、新規加盟のハードルは格段にあがったと。
次に多様性と国際協調を重んじる「西洋の価値観」が傷ついたと。
身内の英国が反旗を翻し、自国優先に転じた。
戦勝国の英国が欧州での発言力を失う。それは欧州の戦後秩序が名実ともに終わることを意味すると。
ドイツの存在感がますます強まる。
敗戦国ドイツや共産圏だった東欧、中立国の北欧が重みを増す英なきEU。軸は西から東に移るが、運命共同体になる覚悟は十分とは言えないと。
安全保障で「欧州軍」を創設しようとすれば中立国が渋り、財政政策の一元化では節約家のドイツなど北部と、規律の緩いイタリアなど南部が反目する。
意識は共有するが思惑はすれ違うのが現状だと。
英国が離脱を決意した元は、国内の階級・地域・所得という3つの根深い格差が残り、社会の分断は深く、移民の流入でその格差が深刻化すること。
EUとの決別で活路がみいだせるのかは未明。
戦後秩序が崩れ、世界情勢も流動化するなかで「EU」や「英国」の再定義が迫られていくのですね。
[社説]英離脱をバネにEUは改革加速を :日本経済新聞 2020/1/30
英国が31日、欧州連合(EU)を離脱する。激変緩和の移行期間を経て年内にも、人口5億人を擁する欧州単一市場と域内税率ゼロの関税同盟からも脱退する。
4年前の国民投票で離脱賛成票が過半を占め、昨年12月の総選挙で保守党のジョンソン政権の離脱方針が追認された結果である。
だが首相の唱える「EUのくびきから解放された明るい未来」が英国に約束されているわけではない。初めて離脱する国を出すEUが受ける傷も深い。国際社会にとっても憂慮すべき事態である。
国際的に広がる衝撃
まずは、経済や社会の混乱を最小限にとどめるよう離脱手続きを円滑に進めるのが、英政府の責務である。残るEU27カ国は危機感をもって結束し、欧州統合の果実を深める改革を加速すべきだ。
国家主権を制限する一方で、国境を超えたヒト、カネ、モノ、サービスの自由な行き来を通じて域内の経済的な繁栄の実現を目指す――。EUは世界史的な意味を持つプロジェクトである。
欧の州平和と安定の柱でもある。前身は、1952年に仏独を中心とした6カ国で結成した欧州石炭鉄鋼共同体。仏独の資源争いが2度の大戦を引き起こした反省と教訓に立脚する。73年に英国が、2000年代には中東欧の旧共産圏諸国が加わるなど、一貫して拡大を続けてきた。
それだけに、英離脱の衝撃は欧州にとどまらない。
目下、世界のあちこちでポピュリズム(大衆迎合主義)が台頭し、協調と寛容に基づくグローバリズムの理念が揺らいでいる。
米トランプ大統領が推進する自国第一主義や米中貿易戦争が世界経済に影を落とし、中東情勢も緊迫する。中国やロシアの覇権志向に西側諸国が連携して対峙しなければならない難局にある。そんななかで英国は欧州統合の潮流に背を向けたわけである。
そもそも離脱が英国の国益につながるのかも、疑問である。英国が戦後の長い経済停滞を脱して「欧州の病人」の汚名を返上したのは、EUの一員として統合の恩恵を享受してきたからだ。
首都ロンドンは欧州の金融センターの地位を確立し、欧州単一市場の玄関口として日本をはじめ域外から最大の投資を呼び込んだ。その一方で欧州通貨統合には加わらず自国通貨を堅持したのは、柔軟な金融・通貨政策を担保するうえで正しい判断だった。
今回のEU離脱には、そうした利害得失を織り込んだ長期戦略の視点が欠けている。2016年6月、当時のキャメロン首相が自らの政権基盤を強める思惑で国民投票に踏み切った「結果責任」は、あまりに重い。
EU残留を訴えたものの、ジョンソン氏ら身内の離反にあい、48%対52%の僅差で敗れた。即刻辞任に追い込まれたが、国民の分断と根深い地域対立が残された。
2月から今年末まで英国は離脱に伴う社会や経済の激変を緩和する移行期間に入る。関税同盟に代わるEUとの間の自由貿易協定(FTA)の締結が必須だが、漁業やビジネス規制、法人税制、環境対策など擦り合わせが必要な課題が膨大にある。
離脱により英国はEUで発言権を失う。そのためジョンソン氏は移行期間延長を拒否しているが、英国の貿易の半分は対EUだ。
欠かせぬ新貿易協定
英国に拠点を置く内外の企業が不利益を被るのを避けるためにも、交渉の流れ次第で移行期間を柔軟に考える必要があろう。
「英国にいいとこ取りを許さない」というEU側にも、歩み寄りの姿勢を求めたい。欧州2位の規模がある英国経済を孤立させ混乱させるのは愚策だ。国際金融市場が警戒する「協定なき離脱」は、なんとしても回避すべきだ。
英国は今後、独自に米国や日本とのFTAを結ぶことが可能になる。日本を中心とする環太平洋経済連携協定(TPP)への参加にも意欲を示している。日本の通商政策の巧拙も試されよう。
英国の離脱が端的に示したのは、格差拡大などグローバル化の恩恵に取り残された層の反移民感情の高まりが、経済合理性を上回るという厳しい現実である。
そして移民排斥の動きは英国よりむしろEU各国で深刻だ。欧州の経済成長は米国やアジアに著しく見劣りする。経済の底上げと格差の縮小には、困難だが地道な構造改革を進めて生産性を高めていくのが唯一の道だ。
「英国なきEU」は危機をバネに結束を再確認し、改革を再始動しなければならない。
英国が31日、欧州連合(EU)を離脱する。激変緩和の移行期間を経て年内にも、人口5億人を擁する欧州単一市場と域内税率ゼロの関税同盟からも脱退する。
4年前の国民投票で離脱賛成票が過半を占め、昨年12月の総選挙で保守党のジョンソン政権の離脱方針が追認された結果である。
だが首相の唱える「EUのくびきから解放された明るい未来」が英国に約束されているわけではない。初めて離脱する国を出すEUが受ける傷も深い。国際社会にとっても憂慮すべき事態である。
国際的に広がる衝撃
まずは、経済や社会の混乱を最小限にとどめるよう離脱手続きを円滑に進めるのが、英政府の責務である。残るEU27カ国は危機感をもって結束し、欧州統合の果実を深める改革を加速すべきだ。
国家主権を制限する一方で、国境を超えたヒト、カネ、モノ、サービスの自由な行き来を通じて域内の経済的な繁栄の実現を目指す――。EUは世界史的な意味を持つプロジェクトである。
欧の州平和と安定の柱でもある。前身は、1952年に仏独を中心とした6カ国で結成した欧州石炭鉄鋼共同体。仏独の資源争いが2度の大戦を引き起こした反省と教訓に立脚する。73年に英国が、2000年代には中東欧の旧共産圏諸国が加わるなど、一貫して拡大を続けてきた。
それだけに、英離脱の衝撃は欧州にとどまらない。
目下、世界のあちこちでポピュリズム(大衆迎合主義)が台頭し、協調と寛容に基づくグローバリズムの理念が揺らいでいる。
米トランプ大統領が推進する自国第一主義や米中貿易戦争が世界経済に影を落とし、中東情勢も緊迫する。中国やロシアの覇権志向に西側諸国が連携して対峙しなければならない難局にある。そんななかで英国は欧州統合の潮流に背を向けたわけである。
そもそも離脱が英国の国益につながるのかも、疑問である。英国が戦後の長い経済停滞を脱して「欧州の病人」の汚名を返上したのは、EUの一員として統合の恩恵を享受してきたからだ。
首都ロンドンは欧州の金融センターの地位を確立し、欧州単一市場の玄関口として日本をはじめ域外から最大の投資を呼び込んだ。その一方で欧州通貨統合には加わらず自国通貨を堅持したのは、柔軟な金融・通貨政策を担保するうえで正しい判断だった。
今回のEU離脱には、そうした利害得失を織り込んだ長期戦略の視点が欠けている。2016年6月、当時のキャメロン首相が自らの政権基盤を強める思惑で国民投票に踏み切った「結果責任」は、あまりに重い。
EU残留を訴えたものの、ジョンソン氏ら身内の離反にあい、48%対52%の僅差で敗れた。即刻辞任に追い込まれたが、国民の分断と根深い地域対立が残された。
2月から今年末まで英国は離脱に伴う社会や経済の激変を緩和する移行期間に入る。関税同盟に代わるEUとの間の自由貿易協定(FTA)の締結が必須だが、漁業やビジネス規制、法人税制、環境対策など擦り合わせが必要な課題が膨大にある。
離脱により英国はEUで発言権を失う。そのためジョンソン氏は移行期間延長を拒否しているが、英国の貿易の半分は対EUだ。
欠かせぬ新貿易協定
英国に拠点を置く内外の企業が不利益を被るのを避けるためにも、交渉の流れ次第で移行期間を柔軟に考える必要があろう。
「英国にいいとこ取りを許さない」というEU側にも、歩み寄りの姿勢を求めたい。欧州2位の規模がある英国経済を孤立させ混乱させるのは愚策だ。国際金融市場が警戒する「協定なき離脱」は、なんとしても回避すべきだ。
英国は今後、独自に米国や日本とのFTAを結ぶことが可能になる。日本を中心とする環太平洋経済連携協定(TPP)への参加にも意欲を示している。日本の通商政策の巧拙も試されよう。
英国の離脱が端的に示したのは、格差拡大などグローバル化の恩恵に取り残された層の反移民感情の高まりが、経済合理性を上回るという厳しい現実である。
そして移民排斥の動きは英国よりむしろEU各国で深刻だ。欧州の経済成長は米国やアジアに著しく見劣りする。経済の底上げと格差の縮小には、困難だが地道な構造改革を進めて生産性を高めていくのが唯一の道だ。
「英国なきEU」は危機をバネに結束を再確認し、改革を再始動しなければならない。
世界のあちこちでポピュリズムが台頭し、協調と寛容に基づくグローバリズムの理念が揺らいでいる。
米トランプ大統領が推進する自国第一主義や米中貿易戦争が世界経済に影を落とし、中東情勢も緊迫する。中国やロシアの覇権志向に西側諸国が連携して対峙しなければならない難局にある。そんななかで英国は欧州統合の潮流に背を向けた。
2月から今年末までの移行期間に、自由貿易協定(FTA)の締結が出来るのか。
「(離脱する)英国にいいとこ取りを許さない」というEU側。両者の歩み寄りが必要ですが。。
他方、英国は今後、独自に米国や日本とのFTAを結ぶことが可能になります。日本を中心とする環太平洋経済連携協定(TPP=英連邦のオーストラリアやカナダが加盟)への参加には、メイ前首相時代から意欲を示していました。
「自由で開かれたインド太平洋戦略」では、英連邦のインドとオーストラリアが参画しています。
海洋国家で連邦の盟主イギリスの参加に違和感はありませんね。
かつては同盟国でもあった日英。成長力が注目される東南アジア市場での連携が深められる期待が膨らみます。
# 冒頭の画像は、離脱の瞬間に鐘が鳴ると、ユニオン・ジャックを振り、EU離脱を祝う人たち(イングランド北西部ワリントン)
この花の名前は、バイカオウレン
2月 7日は、北方領土の日
政府広報(北方領土問題) - YouTube
↓よろしかったら、お願いします。