北方領土の不法占拠の実効支配強化にとどまらず、米中との軍事バランスを保つ、日本を越えた視野も持った軍事力の示威行為であると考えています。
産経で、北方進出ももくろむ中国を牽制しつつ、日本に中露との「二正面作戦」を強い、北方領土問題で譲歩を引き出す「外交カード」として利用する思惑も指摘されているとし、日露双方の動きを検証したと言う記事があり、米には触れていませんが、中国の北極海での利権への進出を牽制との踏み込んだ見方の記事がありましたので、備忘録がてら転載させていただきます。
今月に入りロシア軍が日本周辺で挑発を繰り返し、カムチャツカ半島では21日までの予定で大規模演習を続けている。異例の事態に緊張を強める海上自衛隊は17日も電子偵察機EP3、画像データ収集機OP3を飛ばし情報収集にあたった。防衛省は一連の行動について「強いロシア」を誇示する狙いがあると分析。海軍力を増強し北方進出ももくろむ中国を牽制(けんせい)しつつ、日本に中露との「二正面作戦」を強い、北方領土問題で譲歩を引き出す「外交カード」として利用する思惑も指摘されている。日露双方の動きを検証した。(半沢尚久)
竹島沖も旋回
「日本領空に接している」
6日夜、航空自衛隊幹部はロシアからの航空情報に驚いた。同日午後8時36分、成田空港にある「航空情報センター」に届いた通知は、8日午前10時から午後3時まで北海道沖を訓練空域として設定するとしていた。8日は空軍爆撃機が日本周辺を1周半近く飛行した。東日本大震災の被災地である仙台沖を旋回した後、設定した空域で空中給油をし、さらには竹島沖をぐるりと回った。
翌9日には海軍艦艇24隻が太平洋への出口にあたる宗谷海峡を通過した。海自幹部は「海峡を通過するときから対潜水艦戦訓練を始めていた」と明かす。艦隊はカムチャツカ半島東部に向かい、兵員1万人、艦艇50隻、航空機・ヘリ50機を投入した演習を行った。
自衛隊は警戒監視を行うとともに緊急発進(スクランブル)もした。爆撃機への空中給油の瞬間も撮影した。
中国の動き牽制
空自幹部は「日本の庭先に訓練空域を設け、空中給油というメーンイベントを仕掛けた」と話す。航空戦力をより遠方に展開できるようになったことを誇示するデモンストレーションだったとの見方だ。
空自OBは「中国を牽制する狙いもあった」と指摘する。中国は宗谷海峡の通過も視野に入れているとされる。北極圏開発への積極的な関与も目指している。北極圏に利害を持つロシアは中国の動向に神経をとがらせている。
資源輸出をてこにした国力回復に伴い、予算が潤沢になったロシア軍は、2007年から戦略爆撃機の長距離飛行を再開させ、原子力潜水艦の展開も活発化させた。10年6~7月には択捉島にも1500人の兵員を動員した大規模演習を極東地域で行った。
今回の演習は海・空戦力を投入した極東での大規模演習の「常態化」をうかがわせる。来年3月の大統領選での再選に意欲を示すメドベージェフ大統領が強い指導者像を国民にアピールするため、再び示威行動を指示する可能性があるという。
対処と抗議不可欠
「ロシアは伝統的に『力の信奉者』で、弱体化した国に矛先を向ける」
防衛省幹部が語るように米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題で日米同盟はきしみ、民主党政権は不安定な状況が続く。
「南」で中国が航空機や艦艇による威嚇を繰り返す中、「北」でロシアの挑発も続けば、自衛隊は「二正面作戦」を強いられる。
「ロシアは日本の苦境をつくりだした上で、挑発を緩めるかわりに北方領土の返還要求などを控えさせる外交カードに使うのでは」と空自幹部も予測する。
ロシアの挑発に日本政府は明確な抗議はしていない。防衛省OBは「安全保障上、最大の失策」と断じる。反応がなければロシアが挑発をエスカレートさせかねない。このOBは「揺るぎない対処と断固たる抗議が不可欠だ」と強調する。
弱点や隙を見つけたらそこを徹底的に攻める。これは戦術の基本ですね。西でも東でも南下を目指しているのは、ロシア帝国時代から一貫したロシアの狙いです。江戸時代から、日露戦争、第二次大戦を経て今日に至っていますが、何度か大攻勢をかけてきて来るのを凌いでいた日本でしたが、第二次大戦の終了時に一方的に進軍し、多くの日本人を捕えシベリア開発の労役に酷使したり、今日の不法占拠を実現した後は、米ソの冷戦からソ連の国力低下があり暫く矛を収めていました。
それが、資源の高騰という棚ボタで財力を復活させてもらったことで野心も取戻し、日本の民主党政権の大失政をみてチャンス到来と判断し、野心を露わにし攻勢をかけてきているのですね。
資源高騰で財力を復活してきたロシアとプーチンは、帝国シンドロームを夢見て、かつての世界の覇者の一方の雄の地位復権を目指しているのですね。
そこには、米国のほかに、伸長著しい中国が対抗相手として存在感が高まっていて、長い国境線を接するロシアとしては、心穏やかではないところへ、温暖化で氷解する北極海の利権争いに野心を見せる中国への牽制も必要となっているという流れの中での軍事力の示威、米中との軍事バランス復活・維持を目指しているのですね。
記事が指摘する通りで、通り一遍の口先での抗議に終始する日本政府と値踏みされた昨今では、その攻勢をエスカレートさせても、ロシアの国益を増すことこそあれ、何の障害も生じないことがわかり、どんどんエスカレートさせているのですね。
日本は、口先の抗議だけではなく、広く世界に喧伝すると共に、行動を起こすことが必要なのです。
資源高騰で復活したロシアも、現有資源の枯渇と共に、北極圏や極東での開発とその販路の確保、更には脱資源依存での産業の活性化が迫られていて、他国の協力を求めている台所事情があるのです。
きちんと主張し、毅然とした行動(大使召還、資源購入減等)を示し、腰を据えてかかる必要があります。
野田政権の外交力と安全保障・国家の主権認識が成否を握る重要な局面にありますが、どうなるのでしょう。
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みくるま池の夏のもみじ
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