英国の国際戦略研究所(IISS)が毎年主催する、アジア太平洋地域の防衛問題や地域間防衛協力に関し、各国の防衛防担当閣僚や専門家などが議論を行う多国間会議の、アジア安全保障会議(シャングリラ会合)が終了しました。
パラセル諸島でのベトナムとの衝突の最中に開催されたこともあり、日米をはじめとし、各国が中国非難を集中した報道が主力でした。中国包囲網が、自然発生(?)した感があります。
アジア安保会議閉幕 強硬中国へ批判集中 (6/2 読売 朝刊)
【シンガポール=竹内誠一郎、池田慶太】南シナ海での中国の石油掘削を巡る中国とベトナムの対立が先鋭化するなか、シンガポールで開かれていたアジア安全保障会議(英国際戦略研究所主催)は1日、閉幕した。南シナ海で一方的な現状変更を図ろうとする中国に対し、出席者から厳しい批判が集中的に浴びせられ、緊迫した異例の展開となった。ただ、中国は強硬姿勢を崩しておらず、中国の膨張路線に対する周辺国の警戒感が一段と強まっている。
周辺国 警戒感一層
中国軍の王冠中・副総参謀長は同日の演説で、南シナ海問題で中国を批判した安倍首相とへーゲル米国防長官の演説に言及し、「中国に対する一種の挑発だ。決して容認できない」と激しく反発した。その上で、中国を名指ししなかった安倍首相と、名指しで批判したヘーゲル氏を比べ、「へーゲル氏は率直だ。こちらのやり方には賛同できる」と、わざわざ対日批判を突出させた。沖縄県・尖閣諸島を巡って対立する日本が南シナ海問題でベトナムやフィリピンとの連携を強化していることへのいら立ちがあるとみられる。
ロシアのアナトリー・アントノブ国防次官も1日の演説で、オバマ米政権の「リバランス(再均衡)政策」について、「自分にとって都合の良い地域の秩序を作ろうとしている」と批判。リバランス政策を否定する中国に同調し、孤立する中国を支援した形だ。
だが、質疑では、出席した各国の安全保障の専門家などから、中国に批判が殺到した。
マレーシアの出席者は、中国軍の活動を念頭に、「友好関係にあると言うが、(南シナ海で)我が軍の艦艇が頻繁に緊急出動しているのはなぜなのか」と問いただした。
インドの出席者からは、中国が南シナ海の領有権を主張する根拠として示す「九段線」について、「海の上に線をひいて自国領とするのは国際法とは相いれない」との声が出た。また、別の出席者も、「中国は大国関係ばかり強調するが、小国との関係はどう考えているのか」と述べ、中国が南シナ海周辺国に圧力を強めていることを非難した。
しかし、中国にとって南シナ海は、絶対に譲歩できない「核心的利益」と位置づけられる。中国側は、会議開催中、領有権を争っているスプラトリー(南沙)、パラセル(西沙)両諸島について、「2000年前に中国人が発見し、管轄してきたものだ」との独自の主張を展開。強硬派として知られる中国国防大学の朱成虎教授は本紙の取材に対し、「ベトナムやフィリピンが挑発してくれば、対応するのは当然だ」と語った。
【シンガポール=竹内誠一郎、池田慶太】南シナ海での中国の石油掘削を巡る中国とベトナムの対立が先鋭化するなか、シンガポールで開かれていたアジア安全保障会議(英国際戦略研究所主催)は1日、閉幕した。南シナ海で一方的な現状変更を図ろうとする中国に対し、出席者から厳しい批判が集中的に浴びせられ、緊迫した異例の展開となった。ただ、中国は強硬姿勢を崩しておらず、中国の膨張路線に対する周辺国の警戒感が一段と強まっている。
周辺国 警戒感一層
中国軍の王冠中・副総参謀長は同日の演説で、南シナ海問題で中国を批判した安倍首相とへーゲル米国防長官の演説に言及し、「中国に対する一種の挑発だ。決して容認できない」と激しく反発した。その上で、中国を名指ししなかった安倍首相と、名指しで批判したヘーゲル氏を比べ、「へーゲル氏は率直だ。こちらのやり方には賛同できる」と、わざわざ対日批判を突出させた。沖縄県・尖閣諸島を巡って対立する日本が南シナ海問題でベトナムやフィリピンとの連携を強化していることへのいら立ちがあるとみられる。
ロシアのアナトリー・アントノブ国防次官も1日の演説で、オバマ米政権の「リバランス(再均衡)政策」について、「自分にとって都合の良い地域の秩序を作ろうとしている」と批判。リバランス政策を否定する中国に同調し、孤立する中国を支援した形だ。
だが、質疑では、出席した各国の安全保障の専門家などから、中国に批判が殺到した。
マレーシアの出席者は、中国軍の活動を念頭に、「友好関係にあると言うが、(南シナ海で)我が軍の艦艇が頻繁に緊急出動しているのはなぜなのか」と問いただした。
インドの出席者からは、中国が南シナ海の領有権を主張する根拠として示す「九段線」について、「海の上に線をひいて自国領とするのは国際法とは相いれない」との声が出た。また、別の出席者も、「中国は大国関係ばかり強調するが、小国との関係はどう考えているのか」と述べ、中国が南シナ海周辺国に圧力を強めていることを非難した。
しかし、中国にとって南シナ海は、絶対に譲歩できない「核心的利益」と位置づけられる。中国側は、会議開催中、領有権を争っているスプラトリー(南沙)、パラセル(西沙)両諸島について、「2000年前に中国人が発見し、管轄してきたものだ」との独自の主張を展開。強硬派として知られる中国国防大学の朱成虎教授は本紙の取材に対し、「ベトナムやフィリピンが挑発してくれば、対応するのは当然だ」と語った。
とりでの中国軍の王冠中・副総参謀長の演説が注目逸れましたが、日米への反論を展開し、原稿を読み終わった時点で、個人の見解としてヘーゲル長官と安倍首相の演説を比較し、安倍首相を非難したところが話題を呼んでいます。
それだけ、安倍首相の演説の効果があったことの証といえます。
また、日米の離反を狙ういつもの手ですが、最近の米国の中国警戒感の高まりの流れや、集団的自衛権行使の流れなどのなかでは、狙いは的外れとも言えます。
3月のオランダ・ハーグのG7では、安倍首相は明言しましたし、次回のG7では声明に盛り込まれる予定なのだそうです。
「中国、力背景に現状変更試みている」 首相、G7で批判 - MSN産経ニュース
G7、中国名指し非難へ 首脳宣言 海洋進出、自制促す (6/2 産経)
ベルギー・ブリュッセルで4、5両日に開かれる先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)で採択される首脳宣言に、東シナ海や南シナ海で強引な進出を繰り返す中国を名指しして非難し、自制を迫る文言が盛り込まれる方向で調整されていることが1日、分かった。自由と価値観を共有するG7が結束し、対中包囲網を敷くことになる。日本政府関係者が明らかにした。
◇
G7にロシアを加えた1998年以降の主要国(G8)時代を含めて首脳宣言で中国の国名を明示し、海洋進出の動きを批判するのは初めて。17年ぶりにG7で開催する今回のサミットは、対ウクライナ支援とロシアへの対応が焦点となるが、日米が主導する対中圧力が「もう一つの重要なテーマ」(政府関係者)に浮上した。
政府関係者によると、安倍晋三首相はサミットの政治討議の場で、「海における法の支配」の順守を訴える。その上で、中国が東シナ海上空で自衛隊機に異常接近するなど尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺で挑発行為を繰り返したり、南シナ海のパラセル(中国名・西沙)諸島周辺で一方的に石油掘削を始めたりしていることを指摘し、批判する意向だという。
これに5月28日の外交政策演説で「経済的な台頭と軍事的な進出が近隣諸国の懸念になっている」と中国を指弾したオバマ米大統領も賛同し、最終的にG7の総意として首脳宣言に対中非難の姿勢を強く打ち出す方向となった。宣言に盛り込む具体的な文言はサミットで協議する。
G7は首脳宣言で、ウクライナ問題に関して3月にウクライナ南部クリミア半島を併合したロシアを「国際法違反」として改めて批判し、ロシアに返還を求める方針で一致している。このため、同様に「力による現状変更の試み」を海洋で繰り広げる中国に対する非難を宣言に明記することが不可欠との判断に傾いたとみられる。
安倍首相は、ロシアのクリミア併合を受け、3月下旬にオランダ・ハーグで開かれたG7緊急首脳会議でも、中国を名指しして「東シナ海でも南シナ海でも力を背景にした現状変更の試み、挑発が行われている」と批判したが、成果文書のハーグ宣言には盛り込まれなかった。
ベルギー・ブリュッセルで4、5両日に開かれる先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)で採択される首脳宣言に、東シナ海や南シナ海で強引な進出を繰り返す中国を名指しして非難し、自制を迫る文言が盛り込まれる方向で調整されていることが1日、分かった。自由と価値観を共有するG7が結束し、対中包囲網を敷くことになる。日本政府関係者が明らかにした。
◇
G7にロシアを加えた1998年以降の主要国(G8)時代を含めて首脳宣言で中国の国名を明示し、海洋進出の動きを批判するのは初めて。17年ぶりにG7で開催する今回のサミットは、対ウクライナ支援とロシアへの対応が焦点となるが、日米が主導する対中圧力が「もう一つの重要なテーマ」(政府関係者)に浮上した。
政府関係者によると、安倍晋三首相はサミットの政治討議の場で、「海における法の支配」の順守を訴える。その上で、中国が東シナ海上空で自衛隊機に異常接近するなど尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺で挑発行為を繰り返したり、南シナ海のパラセル(中国名・西沙)諸島周辺で一方的に石油掘削を始めたりしていることを指摘し、批判する意向だという。
これに5月28日の外交政策演説で「経済的な台頭と軍事的な進出が近隣諸国の懸念になっている」と中国を指弾したオバマ米大統領も賛同し、最終的にG7の総意として首脳宣言に対中非難の姿勢を強く打ち出す方向となった。宣言に盛り込む具体的な文言はサミットで協議する。
G7は首脳宣言で、ウクライナ問題に関して3月にウクライナ南部クリミア半島を併合したロシアを「国際法違反」として改めて批判し、ロシアに返還を求める方針で一致している。このため、同様に「力による現状変更の試み」を海洋で繰り広げる中国に対する非難を宣言に明記することが不可欠との判断に傾いたとみられる。
安倍首相は、ロシアのクリミア併合を受け、3月下旬にオランダ・ハーグで開かれたG7緊急首脳会議でも、中国を名指しして「東シナ海でも南シナ海でも力を背景にした現状変更の試み、挑発が行われている」と批判したが、成果文書のハーグ宣言には盛り込まれなかった。
IISSアジア安全保障会議(シャングリラ会合)のレベルから、G7という檜舞台でも、中国の力を用いての現状変更が非難される=国際認知されることとなりそうです。
習近平の失政について取り上げていましたが、拍車がかかり国際孤立化が進むこととなります。
習近平はオバマ大統領を「言うだけ番長」と見くびっている - 遊爺雑記帳
とは、耳触りのよい話ですが、世の中そんなに甘くはないと、産経は警告を発してします。
ASEAN アジア安保会議が閉幕 日本の関与、期待と不安 (6/2 産経)
【シンガポール=吉村英輝】アジア安全保障会議が1日、閉幕した。東シナ海や南シナ海で緊張が高まる中、安倍晋三首相は基調講演で「積極的平和主義」を訴え、地域の海洋安全保障に貢献していくと約束した。ただ、日本が具体的にどう関与していくかは不透明で、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国の間では、日本の実行力をめぐって期待や不安が入り交じっているようだ。
シンガポールの英字紙サンデー・タイムズは1日、安倍首相が講演でASEANとの安全保障関係の強化を訴えたことについて、「中国は懸念しない」と分析する記事を掲載した。中国とASEANの関係は強固で、インドネシアなど一部の加盟国以外は安倍氏の講演を表だって歓迎していない-という指摘だ。
南シナ海の石油掘削で中国と対立が続くベトナムの国営メディアは、首相の講演について「日本がベトナム支持」と大きく報じた。
しかし、ASEAN加盟国で南シナ海の領有権を表だって中国と争っているのはベトナムとフィリピンだけ。加盟国の多くは、「経済的な結びつきが強く、軍事的覇権を拡大する中国とは波風を立てたくない」(外交筋)のが本音だ。
米国のヘーゲル国防長官は、中国の力による一方的な現状変更を「見て見ぬふりはしない」と述べた。しかし、会議では「オバマ大統領が言う軍事費削減方針と整合性が取れていない」と不信の声も上がった。
東南アジア研究所(シンガポール)のマルコム・クック上級研究員は、安倍首相の講演に説得力があったとし「集団的自衛権の行使容認を含めた防衛政策の見直しに沿って貢献拡大を明示した」と評価している。
しかし、安倍首相は講演で、すでに表明しているインドネシア、フィリピン、ベトナムの海上保安当局への巡視船提供などに触れるにとどまり、新たな具体的支援には言及していない。
中国人民解放軍の王冠中・副総参謀長は、会議での日本や米国の発言を、「将来は、言葉でなく行動で決まる」と皮肉った。日米には、いまや「有言実行」が求められている。
【シンガポール=吉村英輝】アジア安全保障会議が1日、閉幕した。東シナ海や南シナ海で緊張が高まる中、安倍晋三首相は基調講演で「積極的平和主義」を訴え、地域の海洋安全保障に貢献していくと約束した。ただ、日本が具体的にどう関与していくかは不透明で、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国の間では、日本の実行力をめぐって期待や不安が入り交じっているようだ。
シンガポールの英字紙サンデー・タイムズは1日、安倍首相が講演でASEANとの安全保障関係の強化を訴えたことについて、「中国は懸念しない」と分析する記事を掲載した。中国とASEANの関係は強固で、インドネシアなど一部の加盟国以外は安倍氏の講演を表だって歓迎していない-という指摘だ。
南シナ海の石油掘削で中国と対立が続くベトナムの国営メディアは、首相の講演について「日本がベトナム支持」と大きく報じた。
しかし、ASEAN加盟国で南シナ海の領有権を表だって中国と争っているのはベトナムとフィリピンだけ。加盟国の多くは、「経済的な結びつきが強く、軍事的覇権を拡大する中国とは波風を立てたくない」(外交筋)のが本音だ。
米国のヘーゲル国防長官は、中国の力による一方的な現状変更を「見て見ぬふりはしない」と述べた。しかし、会議では「オバマ大統領が言う軍事費削減方針と整合性が取れていない」と不信の声も上がった。
東南アジア研究所(シンガポール)のマルコム・クック上級研究員は、安倍首相の講演に説得力があったとし「集団的自衛権の行使容認を含めた防衛政策の見直しに沿って貢献拡大を明示した」と評価している。
しかし、安倍首相は講演で、すでに表明しているインドネシア、フィリピン、ベトナムの海上保安当局への巡視船提供などに触れるにとどまり、新たな具体的支援には言及していない。
中国人民解放軍の王冠中・副総参謀長は、会議での日本や米国の発言を、「将来は、言葉でなく行動で決まる」と皮肉った。日米には、いまや「有言実行」が求められている。
産経にしては珍しく冷静に現実を見据えた記事です。
多くの日本のメディアが、浮かれた調子の報道をするなか、思いを巡らせておかねばならない点を、しっかり押さえてありますね。
勿論、政府も承知していることと考えます。
中国の一方的な、国際的歴史認識プロパガンダへの反抗が待望されていましたが、ようやく始まった事は歓迎すべきで、産経の指摘するところを踏まえ、脇を締めて、過大な安心をせず、世論戦を引き続き戦って、勝ち抜いていただくことを願います。
# 冒頭の画像は、アジア安全保障会議(シャングリラ会合)で演説する、中国人民解放軍の王冠中副総参謀長
この花の名前は、コスモス
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