毎日がしあわせ日和

ほんとうの自分に戻れば戻るほど 毎日がしあわせ日和

本の世界がくれたもの

2010年02月09日 12時53分05秒 | ふと思うこと
ものごころついてからずっと、それがなにかもわからぬままに いつも目に触れていたひと揃いの本がありました。

岩波少年少女世界文学全集。

まだ生まれぬわが子への 両親からの愛のこもったプレゼント。


まじめに誠実に働いていても決して楽ではなかった暮らしの中で、父は母に言ったそうです。

「ミルク代だと思って」


こうして 両親の愛情と希望、そして月掛けでこつこつとそろえてくれた文学全集に迎えられて私はこの人生のスタートを切りました。


この“ミルク”を私が実際に飲み始めたのは、小学校に上がる少し前だったようです。

テレビでやっていた人形劇「長靴下のピッピ」を夢中で見ていた私に、父が全集の中のピッピちゃんを途中まで読んでくれ、いよいよ面白くなってきたところでやめてしまったんですって。

古典的な手だ(笑)

先が知りたくてたまらない私は 当然本に食いついたというわけ☆


なんと滋養豊かなミルクだったことか


ピッピちゃんを皮切りに、次々と世界の名作を読み始めた幼い私。
心の中の世界がどんどんふくらんでゆきました。

ひとつお話を読むたびに、心の中にひとつの世界が生まれる。
見たこともない国の 聞いたこともないような名前の人々とともに、そこの空氣を吸い、景色を愛で、あちこち歩き回り、ときには冒険をして。

イメージの中にしか存在し得ない世界が、現実の世界では与えることのできない歓びや豊かさを惜しみなく与えてくれました

どこへでも持ち運び自由の、他の誰も決して入れない私だけの世界。
つらいことがあったらいつでも逃げ込んで羽を休め、再び立ち上がるエネルギーをもらえる幸せな世界。

この世界がこれほどまでに豊穣だったのは、心豊かな両親の愛あるセレクトと、岩波出版の方々のセンスとこだわりのおかげと今でも感謝しています
何世代にもわたって世界中の人々に愛され読み継がれてきた名作を、子供だからと手加減しない本格的な訳と編集で見事に作り上げてくれた上質の全集だったからこそなし得たことでしょう。
大人になったいま読んでも 少しも色あせることなく満足させてもらえるすばらしさです。


そして。。。。物語の世界がそこまでリアルでなくなったいまも、そこで過ごした時間は現在の私に確実に影響を与えてくれている。


“豊かさ”とはなにかを言葉で説明することはできないけど、身をもって知ることはできるんですね。

私の場合、まだ感性がやわらかいうちに、心豊かな人たちによって届けられた数々の名作に浸りきり 味わいぬいたことによって。


大人になって 辛かったとき苦しかったとき、いつも無意識のうちに豊かさを感じさせてくれるものや場所を選び出し、それに触れることで心の中をあたたかく保ち続けることができました。
外側の暗い味氣ない世界とのバランスをとり、引きずり込まれることなくここまでやってこられました。

それもこれも元をたどれば、父と母と岩波出版さんが注ぎ込んでくれた 心の滋養のおかげだったと思うのです。


こうして、内なる世界は 外側の条件に左右されることなくいまも限りなく豊かです(*^ー^*)
その豊かさが、目に見える世界にも温もりと幸せをもたらしてくれます。
なんてありがたいことでしょう。。。。



そしていま、こんどは私が媒体になって 豊かな世界をお届けする番、しきりにそんな氣がしているきょうこのごろなのです。


私と弟の宝物だった岩波少年少女世界文学全集、いまでも実家にあります。
小学生の姪が遊びに来たとき、ときどき読んでいるらしいです(^^)


私も何冊か借りてきて、小学校の読み聞かせのとき読んであげよっかな~