【わんちゃんの独り言】

毎日の生活の中で見たこと、聞いたこと、感じたこと、思いついたこと等々書き留めています
(コメント大歓迎デス・・・・・)

星空のシロ

2014-12-21 | 絵本


Shiro the Shining Star
文・井上 夕香  絵・葉 祥明

しずかな しずかな ほしのよる。
ほしがひとつ ながれました。(クリックで拡大します)



シロは、ひとりぼっちで おりのなかにいました。
きずぐちがいたむのに、だれも てあてをしてくれません
「かわいそうなシロ・・・」
そらからおりてきた ほしのこは、
ひかりのこなで、シロをやさしく つつんであげました。


しせつのかかりの おじさんは、
ときどき、いぬたちを、そとにだしてやります。
とびはねたり ねころんだり、みんなうれしそう。
でも、どのいぬも、どこかに きずのあとがあります。
おじさんは、シロが しんぱいでたまりません。


シロは、ひごとに よわっていきます。
きずぐちには、しゅじゅつしたいとが ぶらさがったままです。
せなかは うみでどろどろです。
あしは ひきつって、ふるえています。
ひふびょうのために、からだじゅうのけが ぬけおちていました。


「このいぬ どうしたんですか?」さやかさんが ききました。
「せなかのしんけいを きられたんだよ」
「ひどい!なぜ てあてをしないの?」
「いくらたのんでも、だれも きてくれないんだ。
 わたしは、ただのせわがかりだ。どうしよもないよ」
さやかさんは シロをひきとろうと、しせつのひとにたのみました。
でも、じっけんようのいぬなので、ゆるしてもらえません。


さやかさんは、 まいにちのように シロのようすを みにきました。
そのたびにシロは、おきあがって しっぽをふります。
すりよって、なみだをながすのです。
「よほど、うれしいんだなぁ・・・」おじさんは、むねが あつくなりました。


あるひ、まよったすえに おじさんは、シロのおりを、あけたままにしておきました。
しせつのひとに わかったら、しかられるかもしれません。
でも、このまま ほうっておいたら、シロは しんでしまいます。
さやかさんは、シロを そっとつれだしました。(クリックで拡大します)



シロは、うまれてはじめて、じゅういさんに いきました。
はをしらべると、シロはまだ、いっさいになったばかりの いぬでした。
「これなら たすかるかもしれないぞ」
シロのちりょうが、はじまりました。
きずがふさがると、ひふびょうをなおすために、くすりのおふろにも はいりました。


すこしずつ、さんぽにもいきました。
「あっ、シロちゃんだ」
「あるけるようになったんだね」
「がんばれよ」
こどもたちが あつまってきます。(クリックで拡大します)



あるひ。シロがはじめて なきました。
くぐもったこえだったけど、「ワン!」と、ひとこえなきました。
さやかさんは うれしくてたまりません。
あまりつらいことが つづいたために、シロは なけないいぬに なっていたのです。
いたずらも するようになりました。
えさのおさらを ひっくりかえしたり、エプロンをかんだり。


みちがえるほど、シロは げんきになりました。
ボールをなげると、よろこんで はしっていきます。
でも、みつけることが できません。あぶないことも わかりません。
くるまがきても とびだしていきます。
こいぬのときに、あたまに きずをうけたためでした。(クリックで拡大します)



クリスマスのよる。
シロは、ふらりと そとにでました。
あたりはいちめんの ぎんせかい。
「わーい、ゆきだ、うれしいな」
はしゃいで、みちをかけていきます。
そのとき・・・
あぶない!
まぶしいライトが、シロにせまりました。


きがつくと、シロは、やさしく あたたかいひかりに つつまれていました。
ひかりのなかでシロは、くるしみや かなしみがきえて。さやかさんたちの やさしさだけが、
からだいっぱいにひろがるのを かんじていました。


シロは まぶしく かがやきながら、なかまたちがまっている ほしのせかいへ、
元気いっぱいかけのぼっていきました。(クリックで拡大します)



シロは ほしになりました。
やさしいこころが せかいじゅうにひろがって、
すべてのいきものが しあわせになれるように、きらきら きらきら またたいています。


シロは みんなのこころのなかに 、いまもいきています。(クリックで拡大します) 





飼い主から捨てられたシロは、動物管理事務所から病院の実験施設につれてこられました.
脊椎の中枢神経を切る、つらい実験にたえたシロは、優しい人びとにであい、ようやく幸せをつかみました。みじかいシロの一生は、わたしたちにたくさんのことをつたえてくれます。

生き物が、くるしんでいるのを見るのはつらいものです。それが人間としての自然な感情です。それは人間の弱さや、子どもっぽい感性ではなく、むしろ人間が秘めている崇高な精神のあらわれです。そんな生命(いのち)を慈しむ心をはぐくむことが、人間と文明のただしい進化成長の道ではないでしょうか。動物実験はその太極にある、魂の中まである生き物をくるしめる悪しき行為です。そのことをおおくの人に知ってほしいのです。そして生き物に、やさしい思いやりの心をもって接することが人間自身にとってもたいせつなことを、このシロの物語から学びたいものです。
葉 祥明さんのコメントから


実在した犬シロの話をもとに、『星空のシロ』を書きました。あまりにも悲惨なシロを、心ある人びとがすくいだしたのは1990年の12月1日です。そして翌年のクリスマスの夜、シロは交通事故にあい、わずか2年の命をおえました。しかし、シロの事件をきっかけに、東京都は94年、ペットだった生き物を動物実験にはらいさげることをやめ、いま、その動きは全国にひろがりつつあります。毎年、何万頭もの犬や猫たちが、実験の痛みからすくわれることになりました。
井上 夕香さんのコメントから