落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

恋愛バカ一代

2007年10月13日 | movie
『イノセント』
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ダブル不倫でコスチュームプレイ。モチーフとしては何度も映画化されてる『危険な関係』と似てますね。特権階級が舞台の恋愛愛憎劇。
オトコってオトコってほんっっっっっとにバカで身勝手でどーしよーもない生き物なんだよねえ。よく男は「女は子宮で考えてる」とかアホなことぬかしてるけど、女にいわせりゃ男こそ「チンコで考えてんじゃん」な動物だよ。
もーこの映画にでてくる男は全員が全員、「チンコ頭」です。バーカバーカバーカ。主演のジャンカルロ・ジャンニーニのじとっとした色ボケ面がバカバカしくて滑稽で、彼がカメラ目線でこっちみるたび、ひたすらおっかしくってしょーがない。彼が演じるトゥリオとゆー貴族は、自分がどんだけバカなのか最後までぜーんぜん気づかない。というか自分では頭良くて、うまく周りをだまくらかして、表面取り繕えてると思いこんでるけど、ま、んなワケないんだよね。バカじゃん。

この映画もまた美術やら衣裳やらヴィジュアルがめちゃくちゃ美しい。『ルートヴィヒ』にも出てた小説家ダルボリオ役のマルク・ポレルがどーみてもジゴロにしか見えなかったけど、かっこええからまあ許そう(爆)。「誰も抵抗できない」美貌の未亡人役のジェニファー・オニールは確かにおそろしーくらい美しかったけど、右手の甲に2ヶ所、超特大の吐きダコが見事にできていてビビり。色や形からして当時進行形で過食症だったんでしょう。ちょっとドーラン塗っとくくらいやればよかったのに、彼女が手袋脱いでるシーンでは毎度そこに目が釘づけになってしまうのを、意識して見ないようにしなくてはならなかった。

なんだかんだいって、愛なんて結局は身勝手なものかもしれない。恋をしている人間なんかみんな愚かになるものかもしれない。
けどなんにつけても、なにもかも思い通りにできるものと決めつけることほど愚かしく傲慢なことはない。そんなに世の中都合良くできてない。たかが人間ひとりになんでも思い通りにできてまるくおさまる世の中なら、誰も何にも苦労しない。
どれだけお金があって権力があって教養があっても、そんなこともわからなければバカはバカだ。
こんなバカ主人公のテーマはもーこれしかないでしょー。『Look what you've done』(Jet)歌詞町山智浩氏の日本語訳)。
そしてこーゆーバカ主人公の映画観て喜んでるぐりもそーとーバカだけど、世間には「バカな子ほどかわいい」なんて言葉もあったりして。

バート・ランカスターよ永遠に

2007年10月13日 | movie
『山猫』
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『ルートヴィヒ』とほぼ同じ時代のシチリア島。
476年の西ローマ帝国滅亡後、イタリアはずっと君主制の都市国家だったのだが、ヨーロッパ全体が共和制に移行していったこの時代、統一戦争が起こって1400年ぶりに統一された。今でも都市国家時代の名残りで、イタリア人は出身地をとても大事にしている。たとえばイタリアに旅行にいってイタリア人に「どこから来たの?」と聞かれるとき、求められている答えは「日本(国名)」ではなく「東京(都市名)」なのだ。
これはイタリアに限ったことではないが、地震災害が少なく石の建築でできた街に住むヨーロッパの人々は古いものをほんとうに大切にする。建物でも家具調度でもなんでも、古ければ古いほどとにかく立派だとする価値観がある。たとえば、以前ヴェネツィアで泊ったホテルのフロントの壁に、汚れてカビてボロボロになった紙が額にいれて大事そうに飾ってあったので「それは一体なんだ」と聞いてみたことがあったんだけど、改装工事のときに屋根裏からたまたま出て来た16世紀頃のメモだということだった。古いから飾っとくっちゅー発想(笑)。だからこそ新しいものが台頭し古いものが衰退していく時代の移り変わりに対する悲哀には、ヨーロッパ人独特の感覚があるのではないかと思う。

そこを踏まえてこの『山猫』を観ると、最初はサリーナ公爵(バート・ランカスター)の妙に割りきったものの考え方が、自分勝手に気取って傲慢な感じがするのだが、実際はそうではない。
彼は彼なりに混乱してはいたのだが、貴族たるプライドゆえにそれを感情に出すことができなかったのだ。一見すると、国の将来を考えて客観的な態度をとろうとしている大人物に見える公爵だが、ほんとうのところは、傷つくのがこわくて、近づいてくる自らの「死」と「時代の死」に対して迷い畏れる、ただの人なのだ。
しかしまあ、公爵の老いぼれっぷりのなんと魅惑的なことか。バート・ランカスターかっこよすぎ。すてきすぎ。撮影当時50歳くらいのはずだけど、映画の最初と最後でぜんぜん別人みたいになってます。初めは壮年の、ぎとぎとにエネルギッシュなオーラぶちまけまくってんのに、ラストはもういまにもぱったり倒れてあの世に行っちゃいそーなくらいハカナゲになっちゃってます。役者ってすげーっす。

日本でヴィスコンティといえばこの作品がいちばん人気だそーで、会場ほぼ満席でしたです。アラン・ドロン人気もあるのかな?こないだ日本に来てたらしーですし。
けどぐり的にはこの映画ではドロンより断然ランカスターです。オトコはやっぱ50代だぜ(爆)。

ヒッキー王子

2007年10月13日 | movie
『ルートヴィヒ』
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あのー、このヒト、今でいうヒッキー?だよね?ひらたくいうとさ。
但し単なるヒッキーではなくて、やたらに金のかかるシュミ─豪華な城の造営─に凝ってて、しかも彼の使うカネが国民の税金だったもんだからたまらない。そのうえ、彼の生きた時代(19世紀後半)には既にヨーロッパ諸国は共和制へと移行していて、派手なお城なんかいくつ建てたってもう使い道なんかなかったのだ。つまり彼にはまったく周りがみえていなかった。自分が周りに何を求められているのかを知ろうともしなかった。誰も教えてくれる人がいなかったのだとしたら、ほんとうに気の毒だと思う。マ、そんなワケないですね、映画ん中でもそれなりにいろんなこといういろんな側近が出てきてたし、よーするに誰が悪者で誰が被害者で、なんて単純な構図じゃ割りきれないってことよね。
戦争に負けてお金に困った政府は、彼を精神病=禁治産者に仕立てて逮捕してしまうのだが、一般論からいっても王室を無用の長物にしてしまった責任を王族個人だけに追及することはできない。この映画ではそのことをかなりはっきりと示唆している。
ルートヴィヒ2世が当時建てたノイシュヴァンシュタイン城(ディズニーランドの「眠れる森の美女の城」のモデル)・リンダーホーフ城(トリアノン宮のコピー)・ヘレンキームゼー城(ヴェルサイユ宮のコピー)は現在ドイツでも人気の観光スポットになっている。

今日観た完全復元版はなんと総尺237分。4時間だよ。4時間。間に15分休憩入りますけど。これまでに観た最長映画は『七人の侍(207分)』『チェルシー・ガールズ(210分)』『百代の過客(219分)』だったから、大幅に記録こうしーん(爆)。けど観ててあんま「長い」って感じがしないのがすんごい不思議なの。全体に淡々としてて静かなシーンが続いたりする箇所もあったから、そーゆーとこは手の皮膚をつねったりはしてたけど(笑)、でも退屈するってことはいっさいない。名作の名作たる所以なのだろーか。
まあね、ルートヴィヒ自身が美貌の王として知られてる人だから演じてるヘルムート・バーガーも美男子だし、ルートヴィヒが美青年好きだったから周りの使用人役もみんなキレイな男の子ばっかだし(明らかに演技力は二の次とゆー人選)美術とか衣裳もスゴイから、確かに目には楽しい。もう笑っちゃうくらい、どのシーンもどのシーンもゴージャスだ。実際、ヘレンキームゼー城を訪問したエリザベート(ロミー・シュナイダー)が、あまりのけばけばしさに爆笑してしまうシーンもあるくらいだ。
でもこの映画を観ていて胸を打たれるのは、人間誰もが持っている美学ゆえの孤独さが、滑稽なまでにあくまでも冷徹に描かれているからだと思う。冷徹な目線で描いているからこそ、孤独の哀しさが如実に伝わる。
そりゃ世の中にうまくあわせて妥協して生きていければこれほどラクなことはないし、大概の人間はそれでどーにかこーにか暮している。けどルートヴィヒにはそれができなかった。気の毒な人だ。ちょっと今のマイケル・ジャクソンに通じるとこあるよね。変人なのに人気者ってとこも同じだし、カネ目当ての人たちに犯罪者扱いされちゃうとこも似てる。

仕事でヨーロッパの宮殿建築について調べたことが過去に何度かあって、画面にあちこちの城が映るたびに「ここはどこだっけ」と反射的に考えてしまった。病んでる?アタシ?