落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

桂綸鎂ゴーゴー

2007年10月20日 | movie
『遠い道のり』

去年『一年の初め』でも来日した莫子儀(モウ・ツィイー)と、台湾映画史?繧ノ残る傑作青春映画『藍色夏恋』の桂綸鎂(グイ ・ルンメイ)主演?フラブストーリー。
なぜか激戦で前売りでは撃沈しましたが、無事観れました。
おもしろかったよ。さすがヴェネツィア国際映画祭批評家週間最優秀作品賞受賞ってだけのことはある。けどねー。ストーリーそのものはちょっと弱い。『春の日は過ぎゆく』もそーだったけど、録音技師が主人公の映?謔チてメインのモチーフが「目に見えない」ところがいちばんのハードルなんだよね。だからこそストーリーに必然性がどーしてもほしくなる?セけど、たぶん監督は表現してるつもりのその必然性が客観的にみるとどーも薄く感じてしまう。たとえば主人公タン(莫子儀)が恋人との?ハれを受け入れがたくて、約束していた音集めの旅に出るのはまだわかる。不倫に疲れたユン(桂綸鎂)が差出し人不明の音テープの音?ケ探しに出かけるのもわかる。けど精神科医(チャ・シャオグオ賈孝國←上川隆也激似)のプチ家出の動機がイマイチ納得いかないし、彼が結?ヌ何を求めて旅しているのかがわからないと、三者三様のドラマが対等に絡み合っていかない。
とはいえ全体には観ていて非常に気持ちのよい作品には仕上がっていて、これはもうひとえに出演者のもつ実力と個性と演出力によるものだろうとは思う。そこはさすがだと思った。
けどやっぱ「録音技師=男の肉体労働」とゆーイメージからすれば、賈孝國と莫子儀の配役を入れ替えてもよかったんではないかとは思う。賈孝國は顔が怖すぎて精神科医には見えないし(マッドサイエンティストっぽいです)、莫子儀のみるからに繊細そうな雰囲気はガテン系とゆーより知識労働派の方が似合っている。別居中の妻がいるという設定にしては若いかもしれないけど、このふたりは10年前に『高校生』という映画で高校生役同士で共演した経験があるらしく実年齢はさほど違わないはずだからどうにかなりそうである。賈孝國の低音セクシーボイスも音のプロという職業にあってる気もするし。
TIでは林靖傑(リン・ジンジエ)監督が桂綸鎂をほめ殺しまくってました。桂綸鎂、子鹿のよーに華奢で、美人ではないけど清楚で雰囲気があって親しみやすくて、台湾中の監督が彼女をキャスティングしたがるのがとてもよくわかる感じの女優さんでした。

箱の災難

2007年10月20日 | movie
『スーツケース』

『単騎、千里を走る。』のロケ地としても知られる景勝地・雲南省麗江を舞台にしたサスペンスコメディ。
コメディだよね?これ?
上映後のTIの司会者はやたら「コワイ」を連発してたけど、まったく怖くはなかったよ。あたしゃ。めちゃめちゃ笑えたよ。
テイストは大ヒット映画『クレイジー・ストーン〜翡翠狂騒曲〜(?倦閨FCrazy Stone)』にかなり近いので、おそらくその路線を狙った作品ではないかと思う。本人たちは真剣なのに傍目にはものすごく滑稽、というブラックコメディの典型のよーな映画です。死体をめぐるコメディといえば巨匠ヒッチコックも『ハリーの災難』とゆー傑作を撮ってますが(何を隠そうぐりのモースト・フェイバリット・ブラックコメディである)、これも退屈な日常=現実を暮す主人公が、偶然拾っちゃった死体を厄介に思いつつそれにまつわるトラブル=非現実に自ら魅入られていく、という流れもほぼお約束。
そういう意味では非常にステレオタイプな映画ではあるんだけど、ステレオタイプはステレオタイプなりに細部に凝っていて、たとえば音楽や効果音、カメラワークや編集の呼吸がシャープでものすごく「今」っぽいです。『Crazy Stone』もそこがめちゃめちゃ上手かったけど、中国?f画のポスプロ技術はすごく進んでるし、ポスプロに対する考え方が日本映画とまったく違うんだなーとゆーところを強く感じましたです。
ステレオタイプといえば、中国映画によく出てくる「ヒステリックな嫁」(伍宇娟ウー・ユーチアン)がこの映画でもメインキャラクターで登場するんだけど、主人公が夫(呉剛ウー・ガン)なのでどうしても男主観に描写が偏ってしまっている。パートナーの裏切りがどれほど深く激しく女性を傷つけるかという現実を思えば、彼女の怒りや苛立ちが決して「コワイ」とか「笑える」ようなものではなく真剣に同情心を誘われるのだが、それが理解できない男女の溝や男の愚かさも含めて、なかなか楽しめる優れた娯楽映画にはなってるんじゃないかと思います。
ただ個人的にはやはりあの結末はいただけない。TIでもそのことに言及した質問者がいて、監督はそれらしい答え方をしていたけど、どー考えてもアレは電影局の審査を通すためのお約束処理としか思えない。でなければ中国のサスペンス映画やスリラー映画に同じ結末ばかり頻出する理由が他に思い当たらないから。まあもしそーだとしても公の場でそうだとはいえないとこがツライけどね。
ちなみにプログラムなどで王分(ワン・フェン)監督はモデルや女優のキャリアを持つという情報が掲載されているが、実際にはそのような事実はないそうである。