『トリック』(ギャラリー1・2)
傑作!でした。
7歳のステフェク(ダミアン・ウル)は母(ヴァナ・フォルナルチック)と12歳上の姉(エヴァリナ・ヴァレンジャク)と三人暮らし。幼くして別れた父親の顔はよく覚えていないのだが、駅でときどき見かける男性(トマシュ・サプリック)を父だと思いこんだステフェクは、あらゆるイタズラを駆使して母親と彼とを再会させようとする。
タイトルの『トリック』は英語題で字幕では「魔法」と訳されてたけど、映画では正確には計略とかイタズラといったニュアンスで使われているのだろう。このイタズラというか計略がまことにほほえましい。イタズラといっても誰かに迷惑がかかったりするような性質のものではなくて、一種のおまじない・願掛けに近いものばかりなのだ。
こうした“トリック”も含めて姉とのやりとりやハト小屋や線路での遊びなど、この映画には同じようなシーンが何度も何度も繰り返し描かれる。全体に登場人物が少なく場所や生活など背景描写に乏しい、うっかりするとファンタジックになってしまいそうな物語であるにも関わらず、これらの丁寧な反復表現によって、人の不器用な生をやさしくしっかりと描いているところに説得力を感じた。
主人公のステフェク自身も個性的なキャラクターでおもしろいけど、彼のすることを周囲の大人がおおらかに見守っていて「子どものたわごと」などと乱暴に片づけようとしないのがいい。姉もアルバイトや勉強のかたわらよく弟のめんどうをみているけど、もっとおもしろいのが姉のボーイフレンド(ラファウ・グジニチャク)。大の大人の男なのに、いちいちステフェクの仲間としてうまくつきあってやっている。それでいてヘンな猫なで声を出したりはしない。上から目線ではなくあくまで対等に向きあおうとする。一見チンピラ風だが意外といいやつである。
ポーランドの田舎町の風景もなかなか雰囲気があるし、アコースティックギターやトランペットやアコーディオンをメインに使った音楽もオトナっぽくてステキ。
キャスティングも素晴しい。ステフェク役のダミアンはロケ先の地元の子なのだそうだが、北欧人らしい色白できれいな金髪と青い大きな瞳のかわいい、みるからにワンパクそのものな男の子。眉をむすっとひそめた考え深げな表情になんともいえない味があって、ぽこん!と見事に突き出たまるいおなかも愛くるしい。姉役のエヴァリナ・ヴァレンジャクはスカーレット・ヨハンソンをスレンダーにして野暮ったくしたような美少女で、健康的にセクシーでこちらもぐり好みだった。脚がめちゃくちゃ長くて綺麗。
この映画も監督の子ども時代の思い出をベースにした物語なのだそうだが、まったくセンチメンタルやノスタルジーに流れずに、子どもからお年寄りまで誰でも堪能できる、明るく楽しい娯楽映画になっている。それでいて、監督にもいるという年齢の離れた姉に対する特別な愛情もあたたかく伝わってくる。
これは一般公開してもけっこうあたるんじゃないかと思います。ぐりももう一回観たいです。
傑作!でした。
7歳のステフェク(ダミアン・ウル)は母(ヴァナ・フォルナルチック)と12歳上の姉(エヴァリナ・ヴァレンジャク)と三人暮らし。幼くして別れた父親の顔はよく覚えていないのだが、駅でときどき見かける男性(トマシュ・サプリック)を父だと思いこんだステフェクは、あらゆるイタズラを駆使して母親と彼とを再会させようとする。
タイトルの『トリック』は英語題で字幕では「魔法」と訳されてたけど、映画では正確には計略とかイタズラといったニュアンスで使われているのだろう。このイタズラというか計略がまことにほほえましい。イタズラといっても誰かに迷惑がかかったりするような性質のものではなくて、一種のおまじない・願掛けに近いものばかりなのだ。
こうした“トリック”も含めて姉とのやりとりやハト小屋や線路での遊びなど、この映画には同じようなシーンが何度も何度も繰り返し描かれる。全体に登場人物が少なく場所や生活など背景描写に乏しい、うっかりするとファンタジックになってしまいそうな物語であるにも関わらず、これらの丁寧な反復表現によって、人の不器用な生をやさしくしっかりと描いているところに説得力を感じた。
主人公のステフェク自身も個性的なキャラクターでおもしろいけど、彼のすることを周囲の大人がおおらかに見守っていて「子どものたわごと」などと乱暴に片づけようとしないのがいい。姉もアルバイトや勉強のかたわらよく弟のめんどうをみているけど、もっとおもしろいのが姉のボーイフレンド(ラファウ・グジニチャク)。大の大人の男なのに、いちいちステフェクの仲間としてうまくつきあってやっている。それでいてヘンな猫なで声を出したりはしない。上から目線ではなくあくまで対等に向きあおうとする。一見チンピラ風だが意外といいやつである。
ポーランドの田舎町の風景もなかなか雰囲気があるし、アコースティックギターやトランペットやアコーディオンをメインに使った音楽もオトナっぽくてステキ。
キャスティングも素晴しい。ステフェク役のダミアンはロケ先の地元の子なのだそうだが、北欧人らしい色白できれいな金髪と青い大きな瞳のかわいい、みるからにワンパクそのものな男の子。眉をむすっとひそめた考え深げな表情になんともいえない味があって、ぽこん!と見事に突き出たまるいおなかも愛くるしい。姉役のエヴァリナ・ヴァレンジャクはスカーレット・ヨハンソンをスレンダーにして野暮ったくしたような美少女で、健康的にセクシーでこちらもぐり好みだった。脚がめちゃくちゃ長くて綺麗。
この映画も監督の子ども時代の思い出をベースにした物語なのだそうだが、まったくセンチメンタルやノスタルジーに流れずに、子どもからお年寄りまで誰でも堪能できる、明るく楽しい娯楽映画になっている。それでいて、監督にもいるという年齢の離れた姉に対する特別な愛情もあたたかく伝わってくる。
これは一般公開してもけっこうあたるんじゃないかと思います。ぐりももう一回観たいです。