落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

You need bathroom?

2007年10月14日 | movie
『キングダム─見えざる敵─』
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サウジアラビアの外国人居住区がイスラム過激派テロ組織に襲撃され、一般市民が多数犠牲になる事件が起きた。FBIは捜査員を派遣したいがサウジとアメリカの外交関係の複雑さからなかなかそれが許可されない。やっと現地に乗り込めた捜査員はたった4人、タイムリミットは5日間。しかも武器の携行は禁止、証拠品には手を触れてはいけない、夜間の行動は厳禁、捜査活動には常にサウジ警察の護衛付き。果してアメリカ人はサウジで勝利を収めることができるのか。
TBSラジオ「ストリーム!」のコラムの花道で紹介されてたアクションバイオレンス映画。
ただのアクション映画じゃないです。冒頭5分くらいかな?モーショングラフィックスでアメリカとサウジアラビアの外交史が簡単に説明される。イスラム原理主義者によって建国されたはずのサウジアラビア王国だが、その王族たちの富は世界最大級の石油消費国アメリカからもたらされている。そして911テロの実行犯の大半はサウジアラビア国籍所有者だったが、アメリカがテロ後にサウジに外交責任を求めたことはまったくない。この事実は一体何を意味するのか。

この映画の物語そのものは911テロともアルカイダとも直接は関係がない。だが監督は、あの事件のとき、アメリカ政府がほんとうにとってしかるべきだった行動を再現してみたかったといっている。国交関係も政治的利権も宗教問題もまずわきへ置いておいて、とりあえず証拠を集めて犯人をみつける。そして裁判にかけてちゃんと法律で裁く。どっかの国を空爆したりする前に、どっかの政権を転覆させる前に、いちばん最初にやっとくべきことがあったでしょ、と。なんでそれをやらないのか、と。
この映画のFBI捜査員たちにもさまざまな困難が待っている。だがたった4人でも、5日間しかなくても、映画ならなんとかなる(笑)。ヒーローに不可能はないのだ。
まあ映画だからけっこうご都合主義的な部分はある。でも全体には、アメリカにはアメリカの事情があるように、サウジにはサウジの事情があるといった距離感はなかなかうまく表現できているのではないかと思う。たとえ人種や信仰や言語が違っても、血の通った人間同士わかりあうことはできるはず、という期待が過分にこめられているようにも思えるけど、それはそれで普遍的な人間愛としてみていて齟齬を感じるほどのことはない。

邦題のサブタイトルの「見えざる敵」とは、なかなか姿を現さないテロリストたちのことではない。映画の中で、アメリカ人もイスラム過激派もある同じセリフを口にする場面がある。そのセリフはラストシーンで明かされるのだが、同じ人間同士わかりあうことができるのが人間愛なら、同じように憎しみあうのもまた人間同士だからという真理を痛いほどダイレクトに表現したセリフでもある。人と人とが憎しみあうのは人種や信仰が違うからではない、人間同士だからなのだ。「見えざる敵」とは、人間そのものの中に潜む憎悪のことなのだろう。
いろいろとひっかかるところはあるし、よくも悪くもアクション娯楽映画のレベルを超えた作品にはなってはいないけど、考えさせられる部分はあるし、¥1000サービスの日(東宝系は14日は¥1000)に観るにはいい映画だったかも(爆)。

『パラダイス・ナウ』にパレスチナの過激派リーダー役でちょろっと出てたアシュラフ・バルフムがサウジの警官役で活躍してました。かっこいいよねえ~この人。二枚目だしさ(笑)。『パラダイス~』では主役だったアリ・スリマンは今作ではイマイチ影薄かったね・・・。
中東系の俳優さんて日本ではなかなか出演作を観る機会がないから、次いつお目にかかれるんだかわかりませんけどもー。