落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

トライアングル

2007年10月23日 | movie
『鐵三角』

うーむ。さすが巨匠三段重ね。すばらしい。完璧。おもしろかったー。
ちゅーかね、徐克(ツイ・ハーク)・林嶺東(リンゴ・ラム)・杜[王其]峰(ジョニー・トー)とゆー監督チームも豪華だけど、メインキャストの任達華(サイモン・ヤム)・古天樂(ルイス・クー)・孫紅雷(スン・ホンレイ)もスゴイ。そしてこのメンツなのに全員堅気(非黒社会)役ってのがまたおかしい。だって3人とも思いっきりディープな「スジもん」系キャラじゃないですか。それが3人揃って負け犬系。おかしい。とくに任達華と孫紅雷はメガネが見事に似合わない。メガネ姿だけで笑える。孫紅雷なんか最初一瞬誰だかわかんなかったし。
上映前の舞台挨拶では、どのパートを誰が演出してるのか注意してみてほしいといってたけど、ぐりは香港映画をそれほど観ていないのでよくわからなかった。なんとなーく、うっすらとしかわからなかった。わかった方がおもしろいのかな?わからなくても充分楽しかったけどね。
3人で完全にパートをわけただけあって展開にうまくツイストが効いてて、それでいて最初から最後まできっちり身のつまったサスペンスアクションとしてきれいにまとまってたのは、やっぱ最後を担当したのが杜[王其]峰だったからかな(爆)?こーゆーのって下手するとパートごとに世界観が割れちゃったりしそーじゃないですか。そーゆーことがまったくなかったところもほんとうにお見事でした。
それにしてもオープニングセレモニーは長かった。なんと1時間。くはー。香港人はなし長いよ。ただ香港映画人はお互いにとっても仲が良いみたいで、舞台上でゲスト同士いちゃいちゃと落ち着かない様子はなんだかほほえましかったですけども。めちゃめちゃよそよそしかった日曜日のセレモニーよりは多少楽しめました。

接吻

2007年10月23日 | movie
『Breath(原題)』

何を隠そうぐりは今回が初キム・ギドクっす。
んー。いい映画だと思うけど、ぐりはあんまし好きじゃないかも。
やりたいことはわかるんだよね。とても。けどねー。やっぱ映画としてもうちょっと、観客に親切にしてもバチはあたらんのとちゃう?とか思っちゃうのね。どーしてもさ。貧乏性なのかしらん?
張震(チャン・チェン)は見ず知らずの人妻(ジア)に思いを寄せられる死刑囚役なんだけど、同じ房の若者も彼にやたら病的に執着する(演じてる俳優の名前が思いだせない。絶対なんかで観たハズなんだけどー)。この若者が張震の顔やカラダをものすごく愛おしそうに撫でたりほっぺたすりすりしたり、人妻の面会にモーレツにやきもちを妬いたりするパートだけ、ぐりは素直に感情移入できました。主人公の人妻も張震もまったくといっていいくらい感情を表に出さないし、夫(ハ・ジョンウ)は愛人がいるくせに自己弁護ばかりする勝手な男なので感情移入のしようがない。
あと顔が画面に映らない登場人物もいて、おそらくこの映画では意図的に感情を排して、愛の奇怪さを描いてるんだろうとは思う。確かにエロいはエロいよ。でも。感情表現なしで感情移入はやっぱムズかったっす・・・。

イラクより

2007年10月23日 | movie
『砂塵を越えて』

昨日の『ファラフェル』に続いて中東の、しかもイラクのクルド人監督による作品。レアだ。
舞台は2003年、フセイン政権崩壊直前のある日、偶然クルド兵補給班のドライバーが迷子のアラビア人少年をひろう。ドライバーふたりのうちひとりはアラビア語を話せるが、虐殺で家族を失った過去のためにアラビア人を深く恨んでいて、ただただ厄介払いしたがってばかりいる。もうひとりが親身になって家や家族を捜そうとするのだが、3人には次々とトラブルが降りかかり・・・という、中国でならまさに張藝謀(チャン・イーモウ)なんかが撮りそうな物語。
ストーリーは単純なんだけど、とにかくイラクの国内情勢が複雑なので、シチュエーションそのものがドラマチックにならざるを得ない。たった4年前の戦争の記憶の生々しさを映画にしている大胆さも作品の力強さになっている。
てゆーかね、一見するとドキュメンタリーじゃないの?これ?ってくらいリアルなのよ。とくに戦闘シーンとか略奪シーンとか虐殺現場発掘シーンとか米兵の登場シーンとか、ぜんぜんつくりものにみえない。でもつくりものだっちゅーから驚きよ。これぐりがやれっていわれても絶対ムリだもん。一体何をどーやったのかまるで想像つかない。戦車とかもちろんCGじゃないし。
『ファラフェル』もそうだけど、ふつうに日本に暮している限り中東諸国の庶民の生活環境なんてものはほぼまったく伝わってはこないし、レバノン人やクルド人と直接言葉を交わす機会なんかもまずあり得ない。けど映画祭でならありえる。そういう意味で映画ってやっぱスゴイんだ、と改めて感じた。そのくらい、イラクの庶民の置かれた複雑な状況が、すごくわかりやすく、かつ奥行きのある物語として描かれていた。
いい映画だし、できるだけたくさんの人に観てもらいたいと思う。感動的。

ホテル・トリノの人々

2007年10月23日 | movie
『ワルツ』

トリノのホテルを舞台に、10年もメイドとして働いて来たアスンタ(ヴァレリア・ソラリーノ)の最後の出勤日をワンカットで描いた人間ドラマ。
ワンカットものの映画といえばぐり的には『マジシャンズ』『エルミタージュ幻想』だけど、この映画は、いりくんだホテルの建築構造を利用して常にカメラ移動しながらドラマが展開するという面では『エルミタージュ〜』に、回想シーンを交えて限られた範囲の人間関係を表現するという面では『マジシャンズ』に似てます。ただテーマ・内容ともに両者よりもずっとずっとヘビーだけど。
監督がTIでいってたけど、ワンカットで映画をつくるというのは「安全ネット(=編集作業)なしでアクロバットをするようなもの」なのだそうだが、ということはもちろん撮る方にも演じる方にも相応のプレッシャーがかかってくる。この映画のおもしろいところは、そのプレッシャーが、登場人物たちが背負っている人生の重さとうまくリンクしてキャラクター描写のリアリティがより深まっているという点に尽きる。出演者陣の演技は正直なところ技巧派にはみえないし、大体からしてじっくりと表情をみせるシーンもない。なにしろ場所がホテルで人物たちは勤務中だからひっきりなしにからだを動かしているし、常にカメラも動いている。そういうアクティブな演技の中で人生の重荷を表現するのはちょっとなかなか難しいはずだと思う。けどねえ、これがちゃんとそうみえるんだよ。すんごい説得力あるの。
あとこの映画にはホテルスタッフ以外にプロサッカー関係者がでてくるパートがあって、八百長について実に哲学的に熱く語りくれている。この長いいくつかのシークエンスがのシナリオがあまりにもよくできていて実にゲージュツ的なんだけど、聞いてるとどーしても監督サッカー嫌いなんだろーなー、とゆー気がしてきてしまう。キライでこんなに語れるワケないし。どーなんだろー。