落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

ボリウッドinスコットランド

2008年07月12日 | movie
『ニーナの幸せレストラン』

何年か前にインド映画が流行ったことがあったけど、実はいわゆるボリウッド映画って1本も観たことない。
コレたぶんそうだと思うんだけど。舞台はグラスゴーだけど、ラブコメで、踊りがあって歌もあって、同性愛とか結婚とか料理対決とかも入ってて、なんかよくわかんないけどとにかくてんこもりなの。
んーーーーーーーーーーーーー、無理!すいません、ぜんぜんおもしろくなかったです。周りの観客(主に外国人)は結構笑ってたけど、ぐりはダメでした。
ストーリー展開は強引すぎるし、人物造形は大味、設定にもまるで説得力ナシ。これでどーやって世界観についてこいっちゅーの。
勘弁してくださいな。
お金、返して。

揺れる瞳

2008年07月12日 | movie
『あたたかな場所』

ひょんなことからモロッコ人の少年アニス(Mounir Ouadi)を拾ったアンナ(マリア・デ・メディロス)とマーラ(Antonia Liskova)。
社長令嬢のアンナは楽天的にアニスに親切にしたがる一方でマーラは警戒心を隠そうともしないが、寄る辺のないアニスの純真さに触れて3人の関係は微妙に変化していく。

ストーリーそのものはぶっちゃけまったく大したことはない。てゆーか超拍子抜け(爆)。これはアレだな。一昨年の東京国際映画祭の『クロイツェル・ソナタ』と同じパターンでんな。思わせぶりなシチュエーションでひっぱってひっぱってひっぱって、最後全部観客に投げて終わり。あれこれの伏線もさっぱり回収しない。コラー。
いいたいことはすごくよくわかるんだけどね。人が人を助けたり人の心をコントロールしたりする傲慢さの破壊力。

ただこの映画、キャスティングはすごくいい。アンナ役のマリア・デ・メディロスは『パルプ・フィクション』でブルース・ウィリスの超カワイイ彼女役だった人だけど、40代とはとても思えないキュートさは健在。Antonia Liskovaもむちゃくちゃ見覚えあって、家に帰ってきてネットで調べたんだけど、主にTVに出てる人らしく前に何で観たのかは不明。誰か知ってたら教えてください。
きわめつけはアニス役のMounir Ouadi。心細そうな表情と揺れる大きな瞳が子鹿のようで(劉燁リウ・イエとか陳坤チェン・クンに似てる)、やっぱりどこの女性もこういう眼に弱いんだなあと思うとおもしろかった。

ローストビーフの歌

2008年07月12日 | movie
『誓いのKiss?』

ゲイ雑誌のエディター・マット(Philipp Karner)は雨あられのように送りつけられてくるゲイマリッジの招待状にウンザリ。ある日故郷の元カレ・ライアン(James O'Shea)からも招待状が。しかも相手は女性。
別れてからもずっとライアンを忘れられなかったマットは速攻で帰省するのだが、偶然新婦のアレックス(トリ・スペリング)と意気投合してしまい・・・というロマンチック・コメディですな。
一昨年のこの映画祭で上映された大人気作品『ラターデイズ』の監督の新作。つーてもぐりは『ラターデイズ』観てないんだけどー。どーにかして観たいんだけどー。

2004年のマサチューセッツ州に続いて、今年5月から同性結婚が認められるようになったカリフォルニア州ではホットな話題の同性婚。
だがこの映画のテーマは「同性」に限定しない「結婚」。
洋の東西を問わず、結婚式では永遠の愛を誓いあう。そこに迷いの入りこむ余地はいらない。でも人間生きてる限り一生、迷いはつきものである。セクシュアリティもまた同じ。ライアンは高校時代マットとつきあっていたのに、今まさに女性であるアレックスと結婚しようとしている。マットが困惑するように、ライアンにもアレックスにも迷いがある。
題材はかなりマジメだしマットもライアンもまったく笑えないキャラなのだが、異常にポジティブなアレックスがぐいぐいと物語を強引にひっぱっていき、一方彼らの家族はやりたい放題にボケたおす。登場人物の役割分担が非常にくっきりとコントラストが利いていて、観ていて非常に論点の明確な映画でしたです。

同性婚に限らず、赤の他人同士が家族として生きていく結婚という社会制度について、すごく前向きに明るく、でもしっかりと勇気をもって語ったナイスな映画です。おもしろかった。すっごく笑えたし、考えさせられるところもいっぱいある。
20日日曜日午後6時15分からのスパイラルでの上映には今日来た監督以外に主演のふたりも来るそーで、司会者が「宣伝して下さい」と観客に頼んでました。宣伝したよー。

それにしてもローストビーフの意味がアレだとは初めて知ったよ。次からローストビーフ食べにくいなあ。
Q&Aでもいってたけど、マットの彼氏役のCharlie Davidは去年上映された『ハッテン☆サマー』で嘘つきスティーブンを演じてた人ですね。ゲイドラマ『Dante's Cove』にも出てて、なにかとゲイ役で人気の方のよーです。


あなたの唾液とあなたの匂い

2008年07月12日 | movie
『愛のうた、パリ』

イスマエル(ルイ・ガレル)とジュリー(リュディヴィーヌ・サニエ)は倦怠期の恋人関係を改善すべくアリス(Clotilde Hesme)を加えて3人で夜を過ごすようになるが、問題解決の糸口は見えてこない。ある夜ジュリーが突然死んでしまい、恋人たちや家族など周囲の人々は彼女の欠落に困惑する。

去年のカンヌ国際映画祭のコンペ部門に出品されたというからちょっと期待してたんだけど、実際観終わったらどーっちゅーことはなかったです(爆)。なんかフランス映画のこのノリ、どーもうまくついてけなくってさあ。
リュディヴィーヌ・サニエのカワイさもあんまし活かしきれてないし、ルイ・ガレルはなんだかこーゆー「愛欲に迷走する若者」がタイプキャスト化しちゃってるし、ジュリーの姉役のキアラ・マストロヤンニも例によって陰々滅々としすぎている。
見どころはこーゆー豪華キャストがそれぞれちゃんと歌ったり踊ったりするってとこくらいですかねー。べつにうまくもないけど、これはこれで目新しくはある。
あとコレ観てるとパリ行きたくなりますね。やっぱし。行ってどーするってことはないんだけど、単に行きたくなる。

一年でいちばんステキな季節

2008年07月12日 | movie
『スコットと朝食を』

世の中には、ゲイ映画といえばすなわち禁断の愛とか背徳的なエロティシズム満載の、ヘンな趣味の人だけが喜んで観る変わった映画だと思ってる人もいっぱいいるだろう。
このブログを読んでる人の中には「そんなまさか、この21世紀に」なんていう向きもおられるやもしれませんが、いるんだなコレが。ホントに。脳味噌化石化してるとしか思えない無意味な偏見にみちみちた人が、実際ぐりの周りにはいっぱいいる。これだけ情報が溢れてて人生観もどんどん多様化してるってのに、そういう時代の流れにまったくついていこうともせず、平気で差別や偏見を無視できる人々。

この『スコットと朝食を』の主人公エリック(トーマス・カヴァナフ)はどっちかというとそういう、アタマかっちかちのコンサバ男である。でも、ゲイ。職業はスポーツ・キャスター。弁護士のサム(ベン・シェンクマン)と同棲して4年になる。
だがこのふたり、どこからどうみてもごくごくふつうの男性である。チャラチャラしたオシャレもしないし、ゲイバーにも行かないし、アルコールもタバコもドラッグもやらないし、下ネタジョークもいわないし、いわゆるゲイコミュニティとのおつきあいもなし。カップルなのに全編通してキスもハグもしない(たぶん)。いっしょに住んでるだけ。いいあいはちょくちょくする。ジム通いとインテリアに凝るところだけは微妙に「ゲイ」だ。
そんなふたりの家に、ある日スコット(ノア・バーネット)という11歳の少年が転がり込んでくる。くるくるの巻き毛で手首にはチャームのブレスレット、お化粧とヒラヒラしたピンクの洋服とクリスマス・キャロルが大好きな、思いっきり「ゲイ」な男の子。当然ふたりの生活はしっちゃかめっちゃかにかきまわされる。
つまりこの映画、ゲイが出てくるゲイ映画だが同性愛についての映画ではなく、「男らしさとは何か」という価値観の本質をテーマにしたホームコメディになっている。恋愛とかナイトライフなんてものはあえて語る必要はないという割りきりが非常に潔い。

子ども嫌いなうえに「ゲイ」なモノをとことん嫌悪するエリックは、初めスコットのやることなすことすべてを否定したがる。観ていてうまいなと思うのは、とくに説明はなくても、おそらくエリックも子ども時代に大人たちからやはり「ゲイ」なモノや現象を否定され取り上げられたであろう過去を容易に連想させるところである。エリックも自分がスコットにしていることの理由がちゃんとわかっていないからだ。ほんとうは子ども相手にきちんとわけを話してやらなければならないところをどうにもできないジレンマが、非常にさりげなく表現されている。
そんなエリックをどこまで理解しているかはわからないが、スコットはスコットなりにエリックに気に入られようと変わっていく。子どもは何もわかっていないようで意外に大人のことをよく見ているし、理屈ではなくて感覚で素直に反応する。そうして子どもは成長を積み重ねていくし、そういう素直さが子どもらしさでもある。

政治的に最も正しいといわれるカナダの映画らしく、アフリカ系やアジア系などさまざまな人種が入り乱れて出演していて、ジュニアホッケーのコーチ役はグレアム・グリーンが演じていた。
スコット役のノアはラファエロの「小椅子の聖母子」の幼いキリストをそのまま大きくしたような美少年だが、大きく開いた前歯の隙間がキュートで、スコットというキャラクターのおもしろさはこの前歯で半分くらい占めているような気がする。

ゲイがどうとか同性愛がどうとかいう以前に、ライフスタイルやセクシュアリティを超えたすべての偏見を人は乗り越えられる、そんなポジティブなメッセージに満ちたステキな映画。超オススメです。
2度めの上映は17日木曜日夜8時、スパイラルホールにて。