『リノ』
同棲していた恋人エミリーが急死し、2歳のひとり息子リノ(リノ・ミレジ)と取残された男(ジャン・ルイ・ミレジ)。リノの実の父でない彼は引き取り手を探してパリ中を奔走するが、人付き合いのよくなかったエミリーの子どもを引き取ろうという相手はなかなか現れなかった。
クレジットをみればわかるが、リノは監督・主演・脚本・編集のミレジ監督自身の実の息子である。
終映後のQ&Aでも語られたが、監督は「まだ言葉を話さないのに意思疎通能力をもつ」2歳の息子を形に残したいと考えて、この作品を撮ったという。もともとは脚本家で今回が監督3作め、出演は初。
確かに父親をそこまで動かすだけの力をリノは持っている。ただ愛くるしいだけではなく、観る者の心すべてを捉えて離さない、強烈な生命力のインパクト。
あるいはそれは彼固有のものではなく、これくらいの年ごろの子なら誰でも持っているものかもしれない。だがそれをあますことなく映像作品にすくいとることは、たとえ血をわけた親であろうと誰にでも出来ることではない。
この映画は、ミレジ監督父子絶対無二のコラボレーション作品といっていいのではないだろうか。
男はエミリーの死後、葬儀の前からリノの引き取り手の存在にこだわるし、母親に甘えたい盛りのはずのリノは劇中一度も「ママン」とはいわない。
初めこれが一見不自然に感じるのだが、観ているうちにこのふたりの内面が微妙に伝わって来る。若い娘に夢中になり、いきがかり上やむなく子どもの世話をしていたいわば“腰かけ仮父”だった男には、父性はあっても父としての自覚はなかった。だがリノにとってはそんな理屈はどうでもいい。他の恋人や遊びに多忙で家庭を顧みなかった母よりも、彼にとってはいつも傍にいてくれた男こそが“親”だったのだ。
そんなふたりの無条件にまっすぐな愛情が、まるでドキュメンタリー映画のようにリアルにやさしく描かれている。とくに父と共演するリノののびのびとして活発な表情は非常に魅力的で、彼自身がこの映画を心から楽しんでいることがとても良くわかる。
音楽やオモチャを使ったイメージ映像も雰囲気が良くて、シンプルだけどあたたかく心に響く、いい映画でした。拍手。
同棲していた恋人エミリーが急死し、2歳のひとり息子リノ(リノ・ミレジ)と取残された男(ジャン・ルイ・ミレジ)。リノの実の父でない彼は引き取り手を探してパリ中を奔走するが、人付き合いのよくなかったエミリーの子どもを引き取ろうという相手はなかなか現れなかった。
クレジットをみればわかるが、リノは監督・主演・脚本・編集のミレジ監督自身の実の息子である。
終映後のQ&Aでも語られたが、監督は「まだ言葉を話さないのに意思疎通能力をもつ」2歳の息子を形に残したいと考えて、この作品を撮ったという。もともとは脚本家で今回が監督3作め、出演は初。
確かに父親をそこまで動かすだけの力をリノは持っている。ただ愛くるしいだけではなく、観る者の心すべてを捉えて離さない、強烈な生命力のインパクト。
あるいはそれは彼固有のものではなく、これくらいの年ごろの子なら誰でも持っているものかもしれない。だがそれをあますことなく映像作品にすくいとることは、たとえ血をわけた親であろうと誰にでも出来ることではない。
この映画は、ミレジ監督父子絶対無二のコラボレーション作品といっていいのではないだろうか。
男はエミリーの死後、葬儀の前からリノの引き取り手の存在にこだわるし、母親に甘えたい盛りのはずのリノは劇中一度も「ママン」とはいわない。
初めこれが一見不自然に感じるのだが、観ているうちにこのふたりの内面が微妙に伝わって来る。若い娘に夢中になり、いきがかり上やむなく子どもの世話をしていたいわば“腰かけ仮父”だった男には、父性はあっても父としての自覚はなかった。だがリノにとってはそんな理屈はどうでもいい。他の恋人や遊びに多忙で家庭を顧みなかった母よりも、彼にとってはいつも傍にいてくれた男こそが“親”だったのだ。
そんなふたりの無条件にまっすぐな愛情が、まるでドキュメンタリー映画のようにリアルにやさしく描かれている。とくに父と共演するリノののびのびとして活発な表情は非常に魅力的で、彼自身がこの映画を心から楽しんでいることがとても良くわかる。
音楽やオモチャを使ったイメージ映像も雰囲気が良くて、シンプルだけどあたたかく心に響く、いい映画でした。拍手。