『手紙は憶えている』
妻を亡くした認知症のゼヴ(クリストファー・プラマー)は同じ老人介護施設の入居者でアウシュビッツの生存者であるマックス(マーティン・ランドー)との約束を果たすために施設を抜け出し、収容所で家族を殺害した敵に復讐する旅に出る。身体は元気でも記憶障害がひどくなったゼヴの頼りはマックスの指示書=手紙のみ、しかもターゲットの“ルディ・コランダー”なる人物はひとりではなく・・・。
『アララトの聖母』で自身のルーツである民族浄化を描いたアトム・エゴヤンがホロコーストを題材にしたサスペンス。
もう毎回書いてますけどアトム・エゴヤンがとにかく好きで。
前情報いっさいなしで映画館に行くこと4回目、やっと観れました。いままで毎回完売で。でも今日は空いてたね。なんでやろー。前作の『白い沈黙』を見逃したので、今作はとりあえず観ときたかった。
うん、期待通り。おもしろかった。
アトム・エゴヤンの作品て地味なんだよね。ぱっと観て万人が「おおっ」ってなるようなタイプの映画じゃない。もちろん「全米が泣いた」とか「世界震撼」とかそんなインパクトも正直ない。けど、観終わってからじわじわじわじわ来て、だんだんずしーっと来る感じ。
この作品に関していえば、従来の作風からすると相対的にはまだ派手めかもしれない。クライマックスが。脚本が本人じゃないせいもあると思うけど。
年齢的にも肉体的にも死期に近づいているゼヴとマックスの復讐劇は、ただその設定だけでもかなりせつない。
被害者である彼らが老いるのと同様に、加害者もまた老いている。ナチであったことを隠し世間を欺いて暮らした長い長い人生の最後に、70年前の罪を糾弾される方とする側と、それをとりまく周囲の人間の間に流れる感情の色の複雑さ。いかに社会的にその罪が風化しようとも、当事者の中で、それは決して消えることがない。なかったことにもできないし、忘れることもできず、償うことも購うこともできない。その厳然たる事実を、ラストシーンのマックスの涙が能弁に語る。
グローバライゼーションとともに世界中で右傾化が進み、ヘイトクライムと民族テロが横行するこの時代にこそ、この物語は描かれる意味があったんだろうなと、強く思う。ルーツを理由に人間が憎しみあい傷つけあうことの不毛さを、老人ふたりの悲愴な復讐劇で表現したかったんだろうなと。
しかし主人公を含めて登場人物の大半が老人とかおっさんばっかり(たまに子ども)なんつうロードムービー、つくろうってだけでもかなり勇気あるよね。地味ってこれ以上地味になりようがないよ。究極に地味。
物語自体はすごくおもしろかったんだけど、ストーリー展開が単純で一本調子だったのがちょっと。もうちょいなんか工夫が欲しかったです。ゼヴがよぼよぼすぎて、やることなすこといちいち危なっかしいからサスペンス、なんてズルすぎますて(笑)。
クリストファー・プラマーってもともとピアノやってたんだね。劇中の演奏シーンは全部自分で弾いてるそうですが、見事でした。超ヨロヨロなおじいちゃん演技もスゴかったけどね。
それにしてもあのラストはホントにびっくりしたわ。そんなのありか。まあありか。映画だもんね。気になる方は映画館へGOしてくださいませ。
妻を亡くした認知症のゼヴ(クリストファー・プラマー)は同じ老人介護施設の入居者でアウシュビッツの生存者であるマックス(マーティン・ランドー)との約束を果たすために施設を抜け出し、収容所で家族を殺害した敵に復讐する旅に出る。身体は元気でも記憶障害がひどくなったゼヴの頼りはマックスの指示書=手紙のみ、しかもターゲットの“ルディ・コランダー”なる人物はひとりではなく・・・。
『アララトの聖母』で自身のルーツである民族浄化を描いたアトム・エゴヤンがホロコーストを題材にしたサスペンス。
もう毎回書いてますけどアトム・エゴヤンがとにかく好きで。
前情報いっさいなしで映画館に行くこと4回目、やっと観れました。いままで毎回完売で。でも今日は空いてたね。なんでやろー。前作の『白い沈黙』を見逃したので、今作はとりあえず観ときたかった。
うん、期待通り。おもしろかった。
アトム・エゴヤンの作品て地味なんだよね。ぱっと観て万人が「おおっ」ってなるようなタイプの映画じゃない。もちろん「全米が泣いた」とか「世界震撼」とかそんなインパクトも正直ない。けど、観終わってからじわじわじわじわ来て、だんだんずしーっと来る感じ。
この作品に関していえば、従来の作風からすると相対的にはまだ派手めかもしれない。クライマックスが。脚本が本人じゃないせいもあると思うけど。
年齢的にも肉体的にも死期に近づいているゼヴとマックスの復讐劇は、ただその設定だけでもかなりせつない。
被害者である彼らが老いるのと同様に、加害者もまた老いている。ナチであったことを隠し世間を欺いて暮らした長い長い人生の最後に、70年前の罪を糾弾される方とする側と、それをとりまく周囲の人間の間に流れる感情の色の複雑さ。いかに社会的にその罪が風化しようとも、当事者の中で、それは決して消えることがない。なかったことにもできないし、忘れることもできず、償うことも購うこともできない。その厳然たる事実を、ラストシーンのマックスの涙が能弁に語る。
グローバライゼーションとともに世界中で右傾化が進み、ヘイトクライムと民族テロが横行するこの時代にこそ、この物語は描かれる意味があったんだろうなと、強く思う。ルーツを理由に人間が憎しみあい傷つけあうことの不毛さを、老人ふたりの悲愴な復讐劇で表現したかったんだろうなと。
しかし主人公を含めて登場人物の大半が老人とかおっさんばっかり(たまに子ども)なんつうロードムービー、つくろうってだけでもかなり勇気あるよね。地味ってこれ以上地味になりようがないよ。究極に地味。
物語自体はすごくおもしろかったんだけど、ストーリー展開が単純で一本調子だったのがちょっと。もうちょいなんか工夫が欲しかったです。ゼヴがよぼよぼすぎて、やることなすこといちいち危なっかしいからサスペンス、なんてズルすぎますて(笑)。
クリストファー・プラマーってもともとピアノやってたんだね。劇中の演奏シーンは全部自分で弾いてるそうですが、見事でした。超ヨロヨロなおじいちゃん演技もスゴかったけどね。
それにしてもあのラストはホントにびっくりしたわ。そんなのありか。まあありか。映画だもんね。気になる方は映画館へGOしてくださいませ。
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