落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

逃げ場のない地獄の扉

2016年12月04日 | movie
『太陽の蓋』
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2011年3月11日に発生した東日本大震災と、その直後の東京電力福島第一原発事故を描いた再現ドラマ。
説明不要ですね。何があったか大抵の人はわかってるし、劇中にとくに新しい情報はないです。
舞台は官邸記者クラブを中心に、官邸・記者の家・福島第一原発職員の家庭がかわるがわるに登場し、それぞれの視点から当時を時系列に振り返る形式になっている。
まだ寒かった早春の金曜日の午後。地震が起きて原発が緊急停止。津波が来て、原発が停電して冷却機能が麻痺する。世界でも誰も経験したことのなかった未曾有の危機を目前に、マスコミも官僚も政治家も、なすすべもなく混乱するのを、記者クラブのひとりの記者が狂言回しとなって語るという筋立てが、思ってたよりかなりシンプルでした。

この映画のいいところってホントにそこに集約されてるんだよね。
あのとき、ほんとうはどうすればよかったのか、誰が、何をすればよかったのか。そういうことにはいっさい言及しない。思いだしたくもないほど醜悪な大混乱を再現するのに無駄に強調もしないし、当時の街のパニックや被災の悲劇性を煽ったりもしない。北村有起哉演じる主人公・鍋島記者にしても、ただ闇雲に冷静なばかりでもない。
それでも、日本という国にいかに危機管理意識が希薄だったか、国民の安全をまもる立場にあるはずの組織がどれほど無責任だったかを、事実ベースではっきり明言してもいる。
私個人の目には、誰かを擁護したり逆にあからさまに卑下するような表現は避けられていた気がするけど、ここはおそらく観る人によって感じ方はわかれるんじゃないかと思うし、きっとつくり手側は、観客の受け止め方に任せたいと意図してそういう表現にしたんではないかなとも思います。ただ演じてるのはちゃんとヘアメイクしたプロの俳優さんだし、がっちり照明たいてプロが撮ってプロが編集した映像作品だから、実際よりは画としても物語としてもだいぶキレイにかっこよくなっちゃってるとは思いますが。
映画のスタンスがフラットなぶん、誰にとっても観やすい作品にもなってます。とはいえハードな内容ではあるけど、あのときのことを整理して振り返るには、なかなかすっきりまとまったいい映像作品です。すっきりまとめるのがいいのか悪いのかは別として。

大半の政府関係者は公人なので劇中実名で登場してるんだけど、東京電力は東日電力と会社名が変更されていて、会社の人間も役名つきでは画面にはでてこなかったのが惜しかったです。許可出なかったんだろうね。そういう許可が出るまで、あといったいどれくらい時間がかかるんだろう。それが出ないうちは、絶対にこの事故は過去のものにはならない。いまもずっと続いてる。その事実を、誰もが決して忘れるべきではない。そのことも、鍋島記者がさまざまな立場の人びとから見聞きするメッセージとして、ちゃんと語られてます。
最後、エンドロール観てたら河合弘之弁護士が協力でクレジットされてました。劇場用パンフレットに河合さんのコメントが載ってるらしいけど、完売で読めず。気になります。いまも菅直人元首相といっしょにこの作品の上映イベントには登壇されてるとのことですが。

当時総理補佐官で映画にも登場する寺田学氏のレビュー


(ブラウザによっては一見視聴不可みたいな表示になってますが、クリックすればちゃんと再生されます)

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