落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

ススキノにて

2008年08月09日 | book
『田村はまだか』 朝倉かすみ著
<iframe src="http://rcm-jp.amazon.co.jp/e/cm?t=htsmknm-22&o=9&p=8&l=as1&asins=4334925987&fc1=000000&IS2=1&lt1=_blank&m=amazon&lc1=0000FF&bc1=000000&bg1=FFFFFF&f=ifr" style="width:120px;height:240px;" scrolling="no" marginwidth="0" marginheight="0" frameborder="0"></iframe>

『そんなはずない』『肝、焼ける』の朝倉かすみの連作短編集。
札幌・ススキノのとあるスナックでクラス会の三次会をしている5人の男女。40歳。不惑。
5人は小学校卒業以来会っていない田村久志を待っている。母子家庭で子どものころからなんだか大人びていて、クラスの問題児だった中村理香に告白して遠距離恋愛の末に結ばれ、今は豆腐屋の親方になった同級生の噂話をしながら酒を酌み交わす5人の物語。

おもしろかったー。すごく。もうこーなったら朝倉かすみ全作品コンプせんといかんよーな気がするわー。
この作品、朝倉氏自身のブログでも連作短編集ってことになっててそれぞれに独立した物語にはなってるけど、全部まとめて長篇といっても大丈夫な、ちょっと変わったつくりの本です。1本1本のお話は5人+スナックのマスターそれぞれの、40歳とゆー微妙なお年頃独特の屈託を題材にしていて、一見するとクラス会そのものとはあまり関係がないように見える。彼ら自身も自分の話はせずに、田村の話ばっかりしている。
でもそんな5人にだっていろいろある。いろいろあるけど、小学校のクラスメートにはそうおいそれとは話せない。話せないから田村の話になる。マスターはクラスメートでもないのにどんどん田村に詳しくなる。
そんな夜。

実をいうとぐりは小学校のクラス会に出たことがないので、この5人のクラス会の雰囲気がもうひとつうまくイメージできない。ってか小学校のクラス会ってみんなやってんのかな?どーなんだろ?まあやってても行かないけどさあ。
だからクラス会ってより、なんだかんだで30年近くつきあって来た旧友同士の飲み会(それがクラス会なのか?)みたいな感じかな?とは思う。そういう人間関係もあんまりぴんと来ないけど。
けど5人の田村に対するえもいわれぬ憧憬はすごくよくわかる。真似してみろといわれても絶対できないけど、あんな風にまっすぐ生きれたらかっこいい。自分の中では年齢とともに薄れ遠ざかっていく純粋さの象徴が、田村なのだろう。
彼ら5人の中の「田村」と、実際の「田村」がどれほどシンクロしているかはわからない。大体5人とも田村本人とは卒業以来会ってないんだから。
たぶんそういう問題じゃないんだよね。田村には幸せでいてほしい、自分が叶えられなかった何か─むかし昔あるところにおじいさんとおばあさんが〜末永く仲良く幸せに暮しましたとさ的なおとぎ話─を体現し続けていてほしい、一種のアイコンみたいなものなのだろう。
ぐりにはそんな人はいないけど、気持ちはわかるし、そういうクラスメートを持った5人のことはとても羨ましいと思いましたです。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿