落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

プリンス近衞殺人事件

2006年01月08日 | book
『プリンス近衞殺人事件』V.A.アルハンゲリスキー著 瀧澤一郎訳
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コレも『近衞家の太平洋戦争』に出てきたんで読んでみました。
タイトルは推理小説かなんかみたいですが、実はノンフィクション。旧ソ連時代の日本人シベリア抑留問題を描いたルポルタージュです。ちなみに“プリンス”ってのは公爵のことです(近衞家は当時公爵家)。
訳者あとがきによれば原著はもっと量が多くて、訳出時に編集を入れて読みやすくしたらしいんだけど、日本語版ですら充分重いッス。あまりにも重くてぐりは途中からまともに読むのヤメてしまいました(爆)。最後まで読んだけどね。一応。ナナメ読みだけど。
まーとんでもない本です。ヤバい。アブナイよ。

旧ソ連が崩壊したからか、ロシアとの外交問題に絡むからなのか、日本でも既に忘れられかけているシベリア抑留問題。
実際には一体何人の日本人が捕虜になり、そのうち何人がどこでどうしていつ亡くなったのかがろくに解明されないままになっている。スターリンは死亡者の数を「ヒロシマふたつぶん」と発言したという。しかし著者が調べた数種類の“公式文書”に挙げられた数字はそれぞれてんでバラバラ、どれひとつ根拠らしい根拠もない。亡くなった日本人の遺体が埋葬された墓地はことごとくが破壊され跡形もなく抹消されている。あるのは“見世物”用の墓地と収容所跡だけ。
これだけでも相当なお話だけど、こんなんまるっきり序の口っすよ。もーメチャクチャです。ソ連がどんだけ暴力とウソと陰謀に塗り固められたインチキ国家だったか、そのためにどれだけの罪もない人々が虫けらのように殺され闇から闇へと葬り去られたかが、ぎっしり延々と書き綴られてます。ここに書かれたことがみんなホントなら、今ごろお隣の某独裁共産国で行われてることなんか全然カワイイもんです。
ぐったり。

著者は11年間も無実の罪で抑留され、しつこく尋問攻めにされスパイになるよう縷々説得されながらも、最後まで自分を見失わなかった近衞文隆という人物にひどく共鳴したみたいですが、それはぐりもわかる気がする。
だって11年ですよ。家族のもとに帰してやるからスパイになれ、といわれてウンといわない方がヘンです。五摂家筆頭当主に生まれたという立場だけが、反逆者として母国の土を踏むことよりも、罪人として異国の地で朽ち果てることを文隆氏に選ばせたのかもしれない。
それでも彼は最後まで帰国を諦めてはいなかった。家族への手紙には、生きてみんなと再会する日々のことを夢みる気持ちがいっぱいにあふれている。
育ちがいいってこういうことをいうんだろうなあと思う。きっと近衞家はとびきり家族仲のいい、あったかなおうちだったのだろう。文隆氏は奥さんのことを心から大切にしていたのだろう。そういう、人間のきれいな部分をつゆほども疑うことをしらない、最後まで決して希望を捨てない強くまっすぐな心って、大事に大事に愛されて育った人だからこそ持っていられるんじゃないかなあ。

にしてもこの本はちょっとマジすごいです・・・読み終わった今もムネがいっぱい・・・オエ。
人間が人間にこんなひどいことが出来るとは。読むんじゃなかった・・・カモ。

※追記。
この本はかなり一方的な観点で書かれており、また日本や近衞家に関する記述にも相当な偏りや事実誤認が含まれます。第二次世界大戦や近衞家について前もって基本的な情報を踏まえて読まれることをオススメします。

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