落穂日記

映画や本などの感想を主に書いてます。人権問題、ボランティア活動などについてもたまに。

受験の季節

2006年02月26日 | movie
『ラストエンペラー』
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最初に観たのは高1のときだったか。こないだTVのドキュメンタリーを観?ト、『流転の王妃の昭和史』『溥傑自伝』を読んでたら急にまた観たくなったのだ。
改めて豪華な映画だと思う。映像はとにかく唖然とするくらい華麗だし、音楽も非常に美しい。ちなみにこの映画は1987年度アカデミー賞の作品賞・監督賞・脚色賞・撮影賞・作曲賞・美術賞・衣裳デザイン賞・編集賞・録音賞を受賞している。確かに天晴れな出来栄えの一大歴史スペクタクルだ。
だが史実があまりに波瀾万丈であったがために、ストーリーが煌やかな映像の添え物になっているような印象はもうひとつ拭えない。
163分という長い映画でありながら、これはこれでとてもよくまとまっているし、エンターテインメントとしてはまったく過不足のない作品だと思う。20年近く経った今観ても古さはほとんど感じないし、初めて紫禁城で撮影をし、中国映画界に大いなる変革をもたらしたという意味でも、映画史に残る大作であったことは間違いないだろう。
でもそれはそれとして、個人的には、皇帝溥儀(ジョン・ローン)の内面をもう少しきちんと描けていれば、確実に「名作」の域に到達できたのではないかと思う。この脚本では主人公の精神的な部分がかなりおざなりになってしまっている感は否めない。

今観るとジョン・ローンも陳沖(ジョアン・チェン)も呉興國(ヴィヴィアン・ウー)も坂本龍一もみんな若い!です。当り前だけど。最近では「ハリウッド映画に出てくる東洋人」といえば、とゆーくらいよくみるケリー・タガワもいたよ(最近だと『SAYURI』に出ていた)。陳凱歌(チェン・カイコー)もどこに出てたかちゃんとわかったです。すっ?ォり。
子役がどの子もやけにかわいくみえるのはぐりがトシをとったからでしょーね。婉容(陳沖)の赤ん坊がまるっきりの白人だったのには笑ったなー。
あと台詞が北京語と中国語訛りの英語、日本語訛りの英語が混在していて、意外に聞き取りやすかったです(爆)。北京語部分は中華電影を見慣れてると簡単な短いセンテンスはわかるし(北京語パートは字幕なし)、英語もかなりゆっくり喋ってるから。てゆーかこの映画、けっこー台詞少ないです。やっぱハナシじゃなくて映像を見せるための映画だったのかな・・・?

自伝三点セット

2006年02月19日 | book
『溥傑自伝』愛新覚羅溥傑著 丸山昇監訳 金若静訳
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こないだ読んだ『流転の王妃の昭和史』がなにやら物足りなかったので、ダ?塔iの方の自伝にも挑戦。
結果何が物足りないのかが判明。結局言論の自由のない国で書かれたものなので、両者には共産党の数々の失政や当然あるはずの政策への不満について、まるっきり一字たりとも触れていないのだ。浩夫人の自伝の方は主に妻として母として家庭人の観点から書かれていたので、それなりにバランスが取れているように読めたのだが、いかに地位は高くないとはいえ、皇弟という身分であり旧満州国の政治の中枢に深く関与する立場にあった氏の自伝としてはかなり偏った著書になってしまっている観は否めない。

それはそれとして、これはこれでなかなか興味深い一冊でもある。
とくにおもしろいのは清朝瓦解後、まだ紫禁城で暮していた溥儀との宮廷生活の描写。長い長い封建時代に築かれた奇妙な宮廷のしきたりのひとつひとつに、日本の平安時代の宮廷のそれとどこか似たところがあるのが興味深い。
それから戦後の戦犯収容所での生活のくだりは今までほとんど知らなかったことばかりで非常に新鮮でした。しかしこの本に書いてあること全部鵜呑みにしてたら誰でも「共産主義ってすんばらし〜〜〜!」なんつって洗脳されそーです・・・。
あとやっぱりこのヒトの一家はすごーく家族仲がよくてそれも驚き。シモジモの者(ぐりだ)は貴族とか皇族ってーと根拠もなく家族同士仲悪そうなイメージをもってるけど、この愛新覚羅家は親兄弟が常に互いをいたわりあい庇いあっていて、とてもとても仲睦まじい。よそへお嫁にいった姉妹や義兄弟、よそから嫁いだお嫁さんともわけへだてなく愛情深く親しい。ホントにお育ちのいい人ってこういうものなのかなあ。

昔、映画『ラストエンペラー』を観た時にはあんまり活躍してなかった印象のある溥傑さんだけど、実際控えめでおとなしい方だったそうだ。真面目で謹厳で周囲の人にはいつも尊敬されていたそうだ。
そんな溥傑氏の宿願だった日中友好だが、彼の逝去後12年も経た今もなお、両国関係は晴ればれとしない。
どうしてなのだろう。実は両国はホントは仲違いがしたいのか?そんなことあるわけがない。いちばん大事なことは、とにかく、まず仲良くすることであるはずだ。
なのになぜ?わからない。

溥傑氏は自分の自伝には『わが半生』(愛新覚羅溥儀著)に書かれたことは書かないとしていたそうなので(溥傑氏が『〜半生』の初稿を手伝っていたため)、この‘物足りない’感の一部分はそっちを読んで埋めなくてはならない。
あとこの本には『流転〜』と重複している箇所も一部省略してある。そっくり同じ部分もあるし、微妙に食い違ってる部分もあるけど。つまり『流転〜』と『〜半生』と『溥傑〜』はセットで読まんといかんってことですね。ぐったり。『〜半生』なんか上下巻なんだよね・・・。

溥儀さんよアンタもかい

2006年02月12日 | book
『流転の王妃の昭和史』愛新覚羅浩著
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清朝最後の皇帝、いわゆるラストエンペラー溥儀の実弟・溥傑に嫁いだ日本華族の女性・浩の自伝。
なんで今まで読んでなかったのかな?映画化もされたしドラマにもなったし、読む機会はあったよーな気もするんだけど。
すごーく読みやすい本です。華族とはいえごくごく当り前のひとりの日本人女性の目線で描かれた結婚、新婚生活、渡満、出産、子育てといった家庭生活の描写は簡潔で平易で、それだけに背景にある当時の満州での関東軍の横暴と人種差別、国共内戦の悲惨さが如実に伝わります。
それはそれとして、日本と清朝両者の宮廷での特異なしきたりや、階級社会下での上流家庭の生活の様子は、まるで童話にでてくる王子さまやお姫さまのお話のようで興味深かったです。

もっとも新鮮だったのは、義兄夫妻という身内として交際した溥儀と婉容の素顔。
とはいえ溥儀は初め弟嫁を関東軍のスパイと疑ってなかなか心を開いてくれなかったともいい、婉容に至っては既にアヘン中毒で精神も肉体も病んでいたというから、ふつうに健全な親戚づきあいとはいかなかったようだが、それでもやはり混乱の時代の苦労をともにした体験談は貴重なものだろう。ぐりはなんで溥儀に実子がなかったのか、この本を読むまで知りませんでしたです・・・ビックリ。もしかして常識ですか・・・?
それから終戦直後から日本帰国までの逃避行のくだりも、ぐりはよく知らないことが多くて驚きました。また本読まんとなー。国民党軍と八路軍とゆー中国人同士の内戦に旧関東軍まで絡んでるし、浩さんは日本人だけど中国人の奥さんだしダンナさんは元皇弟だし、一体ダレが味方でダレが敵なんだか、読んでる方も混乱します。本人も混乱してたと思うけど。

でも政略結婚とはいえ「一度もこの結婚を後悔したことがない」とまで断言するほど強く結びつきあった溥傑氏と浩さんは、やはりさぞ幸福な夫婦だったろうと思います。歴史に翻弄され離ればなれになっている間に長女慧生さんを喪うなどといったつらいこともいっぱいあったけど、教養もあり精神力もあり人徳もあり運にも恵まれ、結果的には晩年は仲良く添い遂げて天寿を全うしました。
そこは、ぐりも羨ましいと思う。そこまで深く信頼しあえるパートナーに出会えて、しかも最後まで家族でいられるって素敵なことだと思う。すばらしいことだ。
それと満州や日中戦争や国共内戦のことが今の日本でどれだけ知られてないか、改めて痛感しました。ぐり個人ではなんぼか本も読み映画でも見て、中途半端ながらなんとなく知識があるつもりでいたけど、ゼンッゼン問題にならないことが判明。これから勉強します。


上海・外灘の夜景。

梅蘭芳(メイ・ランファン)の伝記映画を準備中の關錦鵬(スタンリー・クァン)だが、撮入まで時間がかかりすぎるため、別の映画を先に撮ることにしたらしい(記事)。
こちらは『花落風流』というタイトルで50年代の香港が舞台。魏紹恩(ジミー・ンガイ)がシナリオを準備している。予算は4000万ドルだが、まだ資金は集まっていないそうだ。

わが父・溥傑

2006年02月11日 | TV
「わが父・溥傑 ラストエンペラーの弟・波乱の生涯」

満州国皇帝溥儀の弟・溥傑と日本華族・嵯峨浩の間に生まれた嫮生さんが、中国で父の足跡を辿る旅のドキュメンタリー。
浩さんの自伝は映画化されたりドラマ化されたりしているが、実はぐりはどれも見たことがないし、本も読んでいない。この機会に読もうと思う。
満州で生まれた嫮生さんは終戦後幼くして父と生き別れ、国共内戦に巻きこまれて戦地を彷徨いながら九死に一生を得て日本に帰ってきた。シベリアに抑留され中国の戦犯収容所に入っていた父とは長い間別れて暮したが、結果的には生きて再会することができた。
きれいな日本語で丁寧に淡々と語る嫮生さんの口調と、真摯で率直な言葉で綴られた父・溥傑氏の手紙や自伝からは、人はひとりで生きているのではない、まして生きていくにはそれぞれが互いに向きあい、相手を思いやることがいちばん大切であるというごく当り前のことが、実感としてせつせつと伝わってくる。
溥傑氏一家の日中友好への願いは深く清々しくまっすぐで、それだけに今現在の日中関係のあまりの愚かしさが虚しく思える。外交とはいったい何のためにおこなわれるものなのか。互いの権利主張を押し通したところで何が解決する訳ではない。まず向きあって相手のいうことをちゃんと聞くことからしか何も始まりはしない。
嫮生さんは今の日中関係をどう思っているだろう。それが聞いてみたい気がしました。

浩さんが中国で亡くなったとき、遺体に取りすがって「浩さん、浩さん」と泣く父の姿を見て嫮生さんは「たいへんな苦労はしたけど、夫にこれほど愛し抜かれた母は女性として幸せな一生だったんではないか」と思ったそうだ。
溥傑氏と浩さんは政略結婚ではあったけど、心の底から信頼し尊敬しあった愛情深い夫婦だった。生まれ育った国も環境も全然違っていたけど、ふたりにはそんなことは関係なかった。
人間には本来そうした壁を乗り越える能力はあるのだ。今の日本人と中国人は、そのことを忘れているのではないだろうか。互いの壁取り払い、溝をうめる努力を惜しまないこと。簡単なことではないかもしれないけど、今の日本と中国にもっとも必要なことは、それなんではないだろうか。

泣き虫バス

2006年02月11日 | movie
『忘れえぬ想い』
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挙式直前に亡くなった婚約者(古天楽ルイス・クー)の子ども(原島大地)をひきとり、彼のバスに乗って運転手の仕事をひきつごうとするヒロイン(張柏芝)。若く経験もなく失敗やトラブル続きの彼女を見兼ねて、死んだ男の同僚(劉青雲ラウ・チンワン)があれこれと世話を焼き始める。やがて3人の間には家族愛に似た情愛が湧いてきて・・・という、香港映画のメロドラマの定番もの。
突然恋人を失ったショックで泣くこともできず、彼と準備した新居で彼の子どもと暮らし彼の車に乗ることで遠ざかっていく死者の記憶をつなぎとめようと必死に突っ張るヒロインのキャラクターは、ガリガリにやせこけたセシリアにそらおそろしいほどハマっている。もうまったく演技には見えない。ただ健気というのではなく、他にどうすればよいのかわからず、死と孤独という現実に向きあうこともできないという追いつめられた精神状態が、とてもストレートに伝わってくる。
劉青雲は不器用だが包容力のあるお人好し、とゆーこの人のタイプキャストですね。コレは。

なんというか、このふたりはある意味では香港人のトラディショナルな理想の女性像/男性像のよーな気もしました。意地っ張りで気が強いけど情に篤い女、女子どもにはどこまでも優しい男。香港映画にはしょっちゅう出てくるタイプですね。
子役はムチャクチャかわいいし泣けるけど、ストーリーとしてはごくごく当り前のメロドラマ。とくに新鮮さはないです。おもしろいけど、映画館で観んといかんほどご大層な作品ではない。
もうひとつこの映画のおもしろいところは、主人公たちの職業がミニバスの運転手という点。
香港の公共交通機関のなかでも独特な、タクシーとバスの間のようなもので、運転手たちの収入は給料ではなく自分で乗せた客の運賃によって支えられている。つまりそれぞれの努力と工夫次第で稼ぎが良くも悪くもなるもので、見ていてもかなりきつい仕事のようである。
そんな彼らがサバイブする香港ドライブが映画の背景になっていて、そこは結構興味深かったです。前回香港にいった時は乗らなかったけど、次回は是非チャレンジしてみたいです。