■Girl Talk / Oscar Peterson (MPS)
不滅の天才ピアニストだったオスカー・ピーターソンの全盛期を何時にするかは、大変に難しい問題ですが、個人的には1960年代中頃から1970年頃の録音が残された「MPS」期だと思っています。まあ、こんな事はオスカー・ピーターソンという偉人に関して、不必要ではありますが、そこはそれ……。
で、このアルバムは1965年から1967年にかけて、「MPS」のオーナーで熱狂的なジャズマニアのハンス・ブルナーシュワーが自宅スタジオで録っていた音源から選びぬいて作った1枚です。ちなみに現場はドイツですから、オスカー・ビータンソンが巡業で訪れたスケジュール中のセッションは、けっこう日常的に自然体な演奏が良い感じ♪
もちろんメンバーはトリオ編成ながら、レイ・ブラウン(b)、サム・ジョーンズ(b)、ルイス・ヘイズ(ds)、ボビー・ダーハム(ds) という名手が入り乱れの時期ということで、楽しみも倍加していますね――
A-1 On A Clear Day (1967年11月録音)
オスカー・ピーターソンの豪快な魅力が存分に楽しめる快演で、サポートメンバーはサム・ジョーンズ(b) とボビー・ダーハム(ds) というハードエッジなトリオですから、最初から最後まで十八番のフレーズを連発してのグイノリは「お約束」です。
あぁ、このグルーヴィで歯切れの良い演奏は本当に至福の一時ですねぇ~~~♪
一気呵成に弾きまくるオスカー・ピーターソンの勢いが素晴らしい録音で楽しめるわけですが、ここでのミックスは左にベースとドラムス、右にピアノという「泣き別れ」状態ながらも、オスカー・ピーターソンのピアノが鳴りまくって、真中からも残響ではない音が聞こえるという凄さに絶句です。
A-2 I'm In The Mood For Love (1966年11月録音)
オスカー・ピーターソンが神業のテクニックで聞かせる独り舞台から始まり、ベースとドラムスを従えてグルーヴィに展開する中盤、そして再びスローな終焉を演出していくという、まさに「オスカー・ビーターソン・トリオ」の真髄が、ここにあります。
共演メンバーはサム・ジョーンズ(b) にルイス・ヘイズ(ds) という、キャノンポール・アダレイ(as) のバンドから来た真正ハードバップコンビですから、粘っこい雰囲気も濃厚に滲み出ていますが、同時にメリハリの効いたコンビネーションも素晴らしいですねぇ~♪
もちろんオスカー・ピーターソンは緩急自在! 左に低音域、右の高音域がミックスされたピアノ響きは言わずもがなの凄さです。
B-1 Girl Talk (1967年11月録音)
ジャズではボーカル物として人気の高い名曲ですが、インストならば、絶対にこのバージョンでしょう。その洒脱で粋な原曲メロディを活かした演奏は素晴らしすぎ! アルバムタイトルに用いられるのもムベなるかな、です♪
じっくりとテーマメロディの味わいを引き出していくところから、ファンキーなフレーズも混ぜ込んだアドリブパート、それがグルーヴィに盛り上がっていくジャズ的な喜びが痛快至極なんですねぇ~~~♪
ちなみにサポートするのはサム・ジョーンズ(b) とポピー・ダーハム(ds) というコンビですが、その物分かりの良さも好演に結びついていると思います。
B-2 I Concentrate On You ~ Moon River (1967年11月録音)
コール・ポーターとヘンリー・マンシーニの有名曲をメドレーにして、オスカー・ピーターソンが神業のピアノを存分に聞かせる独り舞台です。
饒舌な中にも伝統を大切にした表現は流石に秀逸としか言えませんし、圧倒的なグルーヴの凄さ! 左右に広がったピアノの鳴りの良さを楽しめる録音の素晴らしさも特筆物ですね♪
B-3 Robbins Nest (1965年録音)
オーラスはレイ・ブラウン(b) とルイス・ヘイズ(ds) を従えて豪快にドライヴするオスカー・ピーターソンが楽しめます。
いゃ~、流石にレイ・ブラウンは芸が細かいというか、オスカー・ピーターソンの意図を確実に先読みしたサポートが素晴らしいと思います。ルイス・ヘイズも前任者のエド・シグペンを意識したドラミングを披露して、多分、このあたりはオスカー・ピーターソンのアレンジに従っているのかもしれません。
ということで、良いとこどりしたような名演集! プロ意識という以前に手抜きをしないオスカー・ピーターソンの姿勢は、「性分」というところでしょうか。
こういう安心感に身をまかせる一時って、本当に貴重で幸せな時間だと思います。