■A Beatles' Collection Of Oldies (Parlophone / 東芝)
大傑作EP「マジカル・ミステリー・ツアー」によって、ようやく私がサイケデリック期のビートルズに目覚めたは、昭和43(1968)年春のことでした。そして発売から既に9ヵ月以上経っていた世紀の名盤「サージェント・ペパーズ」を真剣に聴いてみようと覚悟を決めたのですが……。
ここにひとつ、大変に魅力的な「壁」が存在していました。
それが本日ご紹介のアルバム「オールディーズ」です。
ご存じのように、これは英国パーロフォンが独自に編集発売した、ビートルズ初のベスト盤! その経緯は1966年のクリスマス商戦用の企画だったわけですが、毎年恒例として出されていたビートルズの新作が、この年には用意出来なかったのが真相です。理由はもちろん、ビートルズがコンサート活動を止め、メンバーがそれぞれの活動を始め、レコーディングセッションも停滞していたからに他なりません。
そしてイギリスでは予定どおり、その年の12月に発売されるのですが、その所為でしょうか、表ジャケットにはメンバーの写真が使われず、しかもイギリスでのオリジナル作品としては、初めてチャートの1位を逃したアルバムとなりました。
しかし中身は極上の名曲揃いですから、やはり魅力は絶大!
A-1 She Loves You (simulated)
A-2 From Me To You
A-3 We Can Work It Out / 恋を抱きしめよう
A-4 Help!
A-5 Michelle
A-6 Yesterday
A-7 I Feel Fine
A-8 Yellow Submarine
B-1 Can't By Me Love
B-2 Bad Boy
B-3 Day Tripper
B-4 A Hard Day's Night / ビートルズがやって来るヤァ! ヤァ! ヤァ!
B-5 Ticket To Ride / 涙の乗車券
B-6 Paperback Writer
B-7 Eleanor Rigby
B-8 I Want To Hold Your Hand / 抱きしめたい
という全16曲のテンコ盛りも大サービスですが、特筆すべきはこの時点でイギリスはもちろん、我国でも未発表だった「Bad Boy」が入っていることでしょう。また、これまでモノラルでしか聴けなかった曲のステレオバージョンでの収録にも、グッと惹きつけられます。
実際、我国では昭和42(1967)年2月頃の発売だったと思いますが、この曲数で2千円というコストパフォーマンスの良さもあって、相当な勢いで売れていたはずです。しかしサイケおやじは例によって、経済的な理由からリアルタイムでは入手出来ず……。
ですから、一念発起して「サージェント・ペパーズ」を買う決心をしても、そのお金があるのなら、本質的に気が弱いサイケおやじは安全策というか、結局はこの「オールティーズ」を先にゲットしてしまったんですねぇ。
それが本日掲載した「東芝オデオン盤」です。
ちなみに私はその頃までに、ビートルズのシングル盤やEPは何枚か持っていましたし、一応は日本盤LPの主要なところを従姉から聴かせてもらい、また個人的には「ヘルプ」と「ラバーソウル」を所有していて、それこそ連日連夜、聴きまくっていた前科ゆえに、いくらベスト盤とはいえ、ダブっている曲をまた買うというのは、幾分の抵抗があったのは事実です。
しかしそこは「ステレオバージョン」と「未発表曲」という、非常に美味しい撒き餌につられてしまったというわけです。
ところが、聴いて仰天!
まずA面ド頭の「She Loves You」が、日本盤の「EP第1集」に続いて、またまたの疑似ステレオ!?! いきなりの詐欺にやられた気分でした。
そして、さらに追い撃ちの驚愕的事実として、A面2曲目の「From Me To You」では、なんとシングル盤では聴かれたイントロのハーモニカが入っていないのです!?!
あぁ、こんな強烈な2連発があるでせうか!!?!
また、この時点で初めて聴けたステレオミックスの「恋を抱きしめよう」「I Feel Fine」「Day Tripper」「Paperback Writer」「抱きしめたい」が実に新鮮♪♪~♪
特に「Paperback Writer」はシングル盤のモノラルミックス以上に躍動するポールのエレキベースが感動的ですし、テープ編集の痕跡がリアルに感じられたり、リンゴのドラムスも生々しくて最高!
それと前述の「EP第1集」では疑似ステレオだった「抱きしめたい」が、ここではついにリアルステレオのバージョンが初登場♪♪~♪ ジョージのリードギターが、はっきりと目立つほど大きくミックスされていますよ。
そして気になる未発表曲の「Bad Boy」が、これまた実にカッコ良すぎるR&Rのカパー曲! オリジナルはアメリカの黒人歌手として我国でも人気の高いラリー・ウィリアムズで、ビートルズは他にもこの人のカパーとして「Slow Down」や「Dizzy Miss Lizzy」を録音していますが、いずれもジョンの強烈なシャウトと強引な節回しが最高の魅力でした。そしてもちろん、この「Bad Boy」も、それこそ何度聴いても飽きないどころか、その度にシビレまくって震えが止まらなくなるほど、感動の嵐!
あぁ、やっばり自分は、こういうビートルズが好きだぁぁぁぁぁ~♪
と思わず絶叫するのが、サイケおやじの偽らざる心境でした。
ちなみに今では有名な事実ですが、このアルバムのイギリス盤では、裏ジャケットに使われたメンバーの写真が「裏焼き」なんですねぇ~。そのショットは来日公演時に撮られたものですが、ポールが着ている羽織の文字が逆なので、大笑いでしょう。
しかし、この「東芝オデオン盤」では、流石にそれは訂正してありますし、当時はイギリス盤なんて拝むことも出来ませんでしたから、後に知っての「大笑い」もご理解願いたいところです。
ということで、今では「赤」「青」の両ベスト盤や各種編集盤が巷に出回っていますから、本質的には役割を終えたアルバムでしょう。それでも、ここに収録された「From Me To You」のハーモニカ抜きバージョンは、未だに公式なCD化は無いと思われますし、同時にステレオバージョンの存在そのものが貴重だと思います。
また詳細は長くなるので今回は割愛致しますが、「Day Tripper」についても厳密には、ここだけのバージョンです。ギターのイントロが左右両チャンネルに振り分けのダブルトラック録音というのは有名ですが、それが現行各種CD等々とは音の大きさのズレが異なるように感じます。ただし、これはあくまでもサイケおやじの感覚だと、お断りしておきますが、そういう十人十色に必要以上の拘りをさせられてしまうのも、ビートルズなればこそっ!
ですからオリジナルのアルバム&シングルは当然として、各種再発盤やベスト盤にまで神経を使わされるビートルズって、やっぱり罪深いんでょうか……。
う~ん、今日もまた不遜な締め括りになってしまいました。ご容赦下さい。
そしてサイケおやじの「サージェント・ペパーズ」への道は、まだまだ遠いのでした。