OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

これもアメリカンロック王道を行くNGDB

2013-10-24 15:38:33 | Rock

プー横町の家 / Nitty Gritty Dirt Band (United Artists / 東芝)

1970年代前半の洋楽にはシンガーソングライターのブームやカントリーロックの流行が確かにあって、それがスワンプロック~サザンロック、さらにはウエストコーストロックの盛り上がりと重なっていた事は歴史になっていますが、その土台にひとつになっていたのが、アメリカ大陸土着の大衆音楽で、平たくいえば白人のC&W、あるいは黒人のR&B、さらにはジャズやブルース、ラテンを含む所謂レイスミュージックがゴッタ煮の闇鍋の中から登場してきた、オールマイティの歌や演奏だったわけですが……。

さて、そういう代表格がザ・バンドであるとすれば、本日ご紹介のニッティー・グリッティー・ダート・バンド=NGDBもまた、その路線裏街道の人気グループとして忘れられません。

その結成は1960年代中頃だったそうですが、実は我国で紹介されたというか、急速に注目を集めたのは、やはり1970年頃からの事で、もちろん例の歌謡フォークブームがあってのルーツ探索(?)的なところから、日本のフォークでもジャグバンドと呼ばれるスタイルで聴かせるグループが幾つか出て来た事もあり、リアルタイムのアメリカでそれをやってヒットを出していたNGDBが音楽マスコミで取り上げられたのも自然の成り行きでした。

で、件のジャグバンドとは、手作りされた簡易代用の楽器も使った、極めて素人っぽい演奏で歌うスタイルというのが一般的な認識であり、つまりは正規の楽器が様々な理由で使えないながらも、音楽に対する情熱は止み難く、それゆえに本音を吐露した自作の楽曲がブルースやC&W等々、どちらかと言えば裕福ではない階層の人々に受け入れられるベクトルを示していたところに、ロックと似た様な反体制的な部分の共鳴があったと思われます。

極言すれば虐げられていても、好きな音楽はやれるんだよぉ~、という素朴な力強さこそが魅力なんでしょう。

しかし同時に、やはり音楽は文字どおりに「音の楽しみ」ですから、何もギスギスしたり、ネクラになったりする歌ばっかりじゃ~ありません。

ちゃ~んと和みの歌、ホノボノとする演奏をやったって、全然問題ないわけで、例えば掲載したシングル盤A面収録の「プー横町の家 / House At Pooh Corner」は、如何にも素人っぽい曲調がニクイばかりの名作♪♪~♪

しかも歌の中身が皆様ご推察のとおり、アラン・アレクサンダー・ミルンの児童文学として有名な「クマのプーさん」をモチーフにしながら、失われた自分の良き日を思い出し、現在の立場を……。

そんな幾分塩っ辛い感じかと思うんですが、しかし曲メロの和みは素敵ですよねぇ~♪

発売された1971年当時、もちろんサイケおやじは英詞をダイレクトに理解出来るはずもなくて、そのメロディの良さに惹かれ、さらにNGDBという話題のグループの演奏に魅了されたのが本当のところですから、あれぇ~~、なんてモダンなカントリーロック!?

音楽マスコミで報じられていたような素朴な味わい、前述したジャグバンド系フォークソングの雰囲気なんてものからは、なかなか程遠いサウンドが違和感でもあり、素晴らしさにも感じられたのです。。

特にファンキーフィーリングを隠そうともしないエレキギターは、最高ぉ~~♪

と思っていたら、なんとっ!

これも後付けで知った事ではありますが、今では有名なロック伝説のひとつとして語り継がれている真相として、この「プー横町の家 / House At Pooh Corner」の作者は後にロギンス&メッシーナで大ブレイクを果たすケニー・ロギンスが無名時代、それも十代半ばで完成させていたという驚きから、実はこのNGDBのバージョンを聴いてシビれたジム・メッシーナがケニー・ロギンスに連絡を入れた経緯で、前述したロギンス&メッシーナが結成されたというのですから、これまた何か自分の好みが証明されたわけでして!?!

もちろんロギンス&メッシーナも、きっちり「プー横町の家 / House At Pooh Corner」をレコーディングしている事は言うまでもなく、その雰囲気の違いも興味津々でしょう。

そして結論を簡略に述べれば、コンパクト&スマートに纏めたNGDBに対し、ロギンス&メッシーナはホノボノ感覚優先ということは、如何にNGDBがロックの本質に拘っていたか?

というような、些か穿った考察も可能かと思います。

ちなみに書き遅れていましたが結成以来、何度かのメンバーチェンジを経た当時のNGDBはジョン・マッキューエン(bnj,g,etc)、ジェフ・ハンナ(vo,g,per,ds)、レス・トンプソン(vo,g,b,etc)、ジミー・ファッデン(b,key,horn,etc)、ジム・イボットソン(vo,ds,b,g,per,etc) という顔ぶれだったそうですが、各々は基本的にマルチプレイヤーであり、しかも上手くて、味わい深い演奏は安定感も抜群! 中でもジョン・マッキューエンは5弦バンジョーの名手として、非常に評価が高いと言われています。

また、当然ながら制作されたレコードは1967年の公式デビュー以来、アルバムのトータル性やシングル曲のヒット性感度の高さが後々になるほど認められるという、なんとも皮肉な結果が嬉しくあり、残念なところでもあります。

ということで、NGDBはサイケおやじも好きなグループでありながら、なかなかご紹介していくのが難しいと思うのが本音です。

それは深くて、しかも多彩な彼等の音楽性が、普通のカントリーロックとかフォークロックとか、そんな括りで纏められるほど単純なものではなく、それでいて親しみ易さは抜群なんですから、理屈を述べるよりも、聴いていただくのがベストであろう、その真実ゆえの事です。

今回は、そんなこんなの端緒を書いてしまった、稚拙な筆の先走り……。

どうか皆様には、そのあたりをご容赦願うとして、NGDBをお楽しみいただきとうございます。

コメント (2)
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