■Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band / The Beatles (Parlophone / 東芝)
昭和43(1968)年7月、発売から約1年遅れて、「サージェント・ペパーズ」は私の手元へやって来ました。
と言っても、買ったわけじゃなく、従姉から「永久貸与」されたんですが、ここまでの経緯については、ここをご一読願うとして、とにかくビートルズ至上主義の優等生への反発から、少年時代のサイケおやじは意地でも越えなければならない大きな壁が、「サージェント・ペパーズ」だったというわけです。
そしてその年の夏休みの間中、このアルバムに向き合って過ごすという、実に暑苦しい日々には、今でも自嘲するばかりです。
実は私だって、この1年前の発売時には、従姉から聴かせてもらってはいたんですが、正直、何が良いのか、ほとんど理解出来ませんでした。
こんな事を書くと笑われるどころか、顰蹙でしょうが、まずメロディの良い曲なんてひとつもないし、ポールが書いた名曲のひとつと言われる「She's Leaving Home」にしても、いまひとつの冴えを感じません……。
それとジョンの声は妙にねじ曲がっているし、潰れたようなドラムスの音、インド音楽や古臭いジャズの香り、そして何よりもブラスバンドみたいな助っ人や動物の鳴き声等々、ほとんど当時のロックの常識からは外れまくった音作りが、保守的なサイケおやじには???の世界だったのです。
もちろん直前に出ていたシングル曲「Strawberry Fields Forever」の呪縛もありました。
しかし1年を経ていたその頃はEP「マジカル・ミステリー・ツアー」によって良い方向の免疫が出来ていた所為もあり、意識を集中してスピーカーに対峙出来るようになっていたのですから、あとは精神修養だと思えば、自ずとビートルズを聴く喜びへの道も開けようというものです。
A-1 Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band
A-2 With A Little Help From My Friends
A-3 Lucy In The Sky With Diamonds
A-4 Getting Better
A-5 Fixing A Hole
A-6 She's Leaving Home
A-7 Being For The Benefit Of Mr. Kite!
B-1 Within You Without You
B-2 When I'm Sixth-Four
B-3 Loveely Lita
B-4 Good Mornig Good Morning
B-5 Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band (Riprise)
B-6 A Day In The Life
各曲、そしてアルバムの意図については今更、言うまでもないでしょう。
しかし、やっぱり書いておきたいのがアナログ盤LP片面の、曲を通して自然な流れでしょう。拍手や擬音、意味不明の効果音の中から、すぅぅぅ~、と次の曲のイントロやメロディが現れてくる快感は、筆舌に尽くせません♪♪~♪
それとグッチャグチャに様々音が詰め込まれている中で、ベースの音が実に明快に録音されている気持の良さ! 同じくエレキギターの力強さは、まさにロックの証ですし、対照的に繊細な生ギターやストリングス、エグイばかりのシタールやインド系の楽器の鳴り、独善的に改変された各種キーボードの響き! それがあってこそ、ドラムスの潰れたような音が納得出来るんじゃないでしょうか。
第一印象として、つまらないと思われていた収録楽曲のメロディにしても、様々な装飾を施された完成トラックの中のひとつのパーツと鑑みれば、かえって結果オーライだと思います。
つまり「サージェント・ペパーズ」は壮大なモザイク!?!
これだけ緻密な造り物だというのに、何度聴いても飽きることがないのは驚異的どころか、その度に新しい発見があるような気にさせられるのです。
まあ、正直言えば、最初は苦行でした。特にお香が立ちのぼってくるようなB面ド頭の「Within You Without You」は大の苦手で、反則とはいえ、2曲目の「When I'm Sixth-Four」から聴いていたほどです。
しかし、それではダメなんですよねぇ。今は逆に、その「お香」が立ちのぼらないと満足出来ず、もしかしたら、このアルバムの中で一番好きな曲になったのかもしれません。
う~ん、時の流れって、本当に偉大ですね。
その意味で、永遠に不滅なのが、「Good Mornig Good Morning」の動物の鳴き声コラージュから「(Riprise)」を経て「A Day In The Life」へと繋がるクライマックスで、粗野なハードロックへの拍手歓声の中から生ギターのシンプルなストロークが出てくる瞬間の静謐な不安感は、本当に中毒症状を引き起こします。
ジョンのひしゃげたようなボーカルも最高の極み♪♪~♪
そして、ぐわぁぁぁ~~~ん、と盛り上がるブチキレのオーケストラからピアノがトドメの一撃を加える大団円! さらに意味不明のおしゃべりまで、これがやっばり唯一無二の凄さでしょうねぇ~♪
ちなみに、このアルバムはステレオとモノラルの両バージョンにおいて、夥しく明快な違いが随所に存在することは有名ですが、あえてサイケおやじはステレオバージョンを優先させます。と言うのは、これだけ凝りに凝った音が堪能出来る作品をモノラルという一方通行では勿体無いと思うからです。左右に広がったり、移動したりする様々な音の楽しみを粗略にするのは、あまりにも……、でしょう。
もちろん、モノラルバージョンにも、ちゃんとした魅力がある事は認めたうえのことです。
ただし、我国ではリアルタイムでステレオバーションしか発売されていませんし、それに馴染んだ耳と気持では、モノラルバージョンは違和感と新発見の面白みばかりが優先され、肝心の「サージェント・ペパーズという音楽」を聴く気持が殺がれてしまうように思います。当然、逆もまた、真なり! これは否定出来るものではありませんが……。
それと最初に私が聴いたのは、東芝のオデオン盤ですが、当時の日本盤の慣例となっていた歌詞カードや解説書の付属がありません。また海外盤に封入されていた、変装セットの切り抜きカードもありませんでした。
というか、そんな事は知る由もなかったわけですが、後にそうした付録を目当てに外盤を買ったのも、新たな発見への道となりました。
ちなみに裏ジャケットには堂々と全曲の歌詞が印刷されていますが、これも諸外国では画期的な出来事だったとか!? ポールだけが後ろ向きというのも、後の死亡説を誘発する巧みな演出とすれば、流石だと思います。
ということで、もうひとつ告白すれば、この時の私は従妹からストーンズの我国独自のベスト盤LP「あなたが選んだゴールデンアルバム」を一緒に借りていたんですが、サイケおやじの感性には、既にストーンズがジャストミートしていた事を追記しておきます。
「サージェント・ペパーズ」の鑑賞修行を終えた後に鳴らすストーンズの心地良さ♪♪~♪ これは絶品でしたねぇ~~♪
あっ、いかん! 決してストーンズを云々する場ではありませんね。
ビートルズとストーンズの魅力は別物です!
そして「サージェント・ペパーズ」の最大の魅力は、これだけ凝った中に、がっちりと「ロックの音」が封じ込められている事じゃないでしょうか?
本当に、そう思います。
さて、このアルバムは67年夏の初聴きで思いっきり感動したビートルズとなりました。ブラスバンド風味の冒頭2曲の演出からグイグイ引き込まれましたね。とくにB面最後の3曲の流れはビートルズのアルバム中最高の快楽を得られるのはいまでも変わりません。「SGT.PEPPER'S~(REPRISE)」で聴かれる久々のライヴ・バンドにも痺れます。
しかし、全曲すべてというわけでないのがミソで、「SHE'S LEAVING HOME」と「WITHIN YOU WITHOUT YOU」はいまでも飛ばしたくなり、このあたりが個人的には微妙なところです。
MONO盤については同感で、STEREO盤が標準仕様ゆえの感動でしょうか。
コメント、ありがとうございます。
>全曲すべてというわけでないのがミソ~
それなんですねぇ、このアルバムのキーポイントかもしれません。正直、つまんない曲を流れの素晴らしさで聞かせてしまう力技があると思うんですよ。
ゆえにB面のクライマックスが強い印象というか、個人的にはB面を聴くことが多いです。
そして、いよいよビートルズのリマスターCDが発売されますが、本当に楽しみです。本日の夕方には入手出来るかもしれません。
やはり期待は、この作品です。
と、高校生の時に思い、よくよく考えて選んだ挙句、初めて聞いたLPレコードがこれでした。
入門ととしてはミスだったような・・・
コメント、ありがとうございます。
今となってはビートルズはクラシックであり、またスタンダードですから、入門用というジャンルは無いのかもしれませんね。
ちなみにリアルタイムではベスト盤的な位置に「オールディズ」がありましたし、後には「赤・青盤」が、その役目を果たしていますが、う~ん、どうなんでしょう?
とにかく「サージェント」は、入門用には苦しいかと(微笑)。
享年90才、死因は現時点で明らかではありませんが、
天寿を全うされたもの、と思っております。
本稿ご紹介のアルバムへの貢献などが、よく言及されますが、個人的には、ピアノの練習で弾いていたせいもあり、「イン・マイ・ライフ」の間奏が忘れられません。
彼がいなければ、少なくとも、ビートルズの音楽は、あのようにはなっていなかったでしょう。
世界一有名な音楽プロデューサーのご冥福を、心より
お祈り申し上げます。
コメント、ありがとうございます。
故人の業績は永遠に不滅かと思いますが、ビートルズ以降の仕事がイマイチ知られていないのは、ど~なんでしょうか。
おそらくは評伝的アンソロジーも出る日が近いと思いますので、その時には!?
合掌。