■The Diary Of A Band Volume One / John Mayall (Decca)
本場イギリスのブルースロックで絶対に外せないのが、御大ジョン・メイオール! しかし率直に言って、この人をメインに聴きたくてレコードを買っていたファンは少ないんじゃないでしょうか?
つまりブルースロック愛好者から絶大な支持を得ているジョン・メイオールとは、率いていたバンドのプルースブレイカーズがあってこそ! さらに付け加えれば、そこに在籍していた、例えばエリック・クラプトン(g) やピーター・グリーン(g) 等々のスタアプレイヤーが聴きたかったのです。そう断言しても、これを完全に否定することは出来ないでしょう。
さて、本日ご紹介のアルバムも、私がそういう気分で聴いていた1枚で、お目当ては後にストーンズのライプ全盛期を盛り立てたミック・テイラーのギターワークでした、
A-1 Blood On The Night
A-2 Edmnton Cooks Ferry In (speech only)
A-3 I Can't Quit You Baby
B-1 Medley
B-2 My Own Fault
B-3 God Save The Queen
録音されたのは1967年11~12月にかけての巡業をメインにしたライプセッションで、当時のメンバーはジョン・メイオール(vo,hmc,key,g)、ミック・テイラー(g)、キース・ティルマン(b)、キーフ・ハートリー(ds)、ディック・ヘクストール・スミス(sax) が一応のレギューで、その他にポール・ウィリアムス(b) やクリス・マーサ(sax) が適宜交代参加しているようです。
そしてまず驚くのが、ある意味での音の悪さというか、私有のステレオ盤で聞かれるミックスは右と左に泣き別れ!?! しかも分離の悪い、無理に圧縮したような音作りが、完全に???
実は後に知ったところによれば、レコード会社側からライプレコーディングを要請されたジョン・メイオールが、それでは日常的で自然なフィーリングが録れないと判断し、なんと予定されていた巡業コンサートを自ら持参した家庭用テープレコーダーに収めるという、なんとも自虐的な手法に出たのが、その真相だとか!?!
ですから基本的には2チャンネルのトラックダウンしか出来ないのが当たり前ですし、団子状のミックスも、時には狭い小屋でのライプの雰囲気をダイレクトに伝えるものになったのです。
しかもその中にはスピーチというか、バンドメンバーと観客の交歓だけのトラックや演奏の合間にインタビューが入る編集まであって、なかなか一筋縄では楽しめません。
ところが、それで駄作になったかといえば、答えは逆の傑作盤だと思います。
まず冒頭、ドロドロに混濁した自然体のブルースロックが展開される「Blood On The Night」からして、実に生々しい雰囲気が横溢しています。演奏の最後のナレーションから、これは当夜の最終曲らしいのですが、それにしても倦怠したムードのヤバさが抜群! ミック・テイラーのギターも頑張っていますが、ここはバンドメンバー全員が醸し出す確信犯的なムードに浸るべきなんでしょうねぇ。それもブルースロックの楽しみのひとつだと思います。
その意味では身内ウケみたいなスピーチが意味不明の「Edmnton Cooks Ferry In」には疎外感を覚えますが、続くブルースの古典「I Can't Quit You Baby」のエグ味の効いた演奏には溜飲が下がるでしょう。粘っこいスローグルーヴがあってこそ冴えるミック・テイラーの端正なギターワークが、まさにこちらの聴きたいツボになっています。本当に歌いまくりですよっ!
それはB面の「Medley」でも存分に発揮され、実はこのトラックは途中にスピーチやインタビューが入り、演奏や曲が分断されているんですが、そこがかえって緊張感を増幅させるというか、特に後半のアップテンポのパートでは、あのストーンズ時代に聞かせてくれた例の手癖フレーズがテンコ盛りに出ますよ♪♪~♪ また前半のスライドが意想外にエグイ!
そして「My Own Fault」が、これまたブルースロックのスローな名演で、ジルジルな音色でハードなフレーズを吹きまくるディック・ヘクストール・スミス、それに対抗するミック・テイラーのミッドナイトランプラーなギターソロ、さらにヘヴィな突進力を大いに発揮するキーフ・ハートリーのドラミングも最高ですよ♪♪~♪
こうして思わずニンマリの名演続きから、オーラスはまたまたのスピーチ大会なんですが、主催者の要請で国家が演奏されたり、お遊びの編集が意外に素敵な余韻を残して、アルバムは終了していきます。
ということで、結果的にやっぱりというか、親分のジョン・メイオールが埋没しているんですが、それゆえに個人的には所期の目的は達成され、ミック・テイラーのギターにシビレる愛聴盤になっていますし、他のメンバーも実力を遺憾なく発揮しているんじゃないでしょうか。
しかも慣れというか、前述した音の悪さが、これまた妙に人なつっこい感じに思えてくるのも高得点♪♪~♪ このあたりはジョン・メイオールの思惑に完全に捕らえられた証かもしれず、それこそが親分の存在意義かもしれませんね。
ちなみに、この企画盤は「Volume Two」も出ていますが、どちからかと言えば、こっちに軍配が上がるんじゃないでしょうか? とにかくミック・テイラーのギターが実に素晴らしい限りです。
あと希望を言えば、このアルバムのモノラルミックス盤をぜひ、聴いてみたいですねぇ~。おそらくはさらに素敵なブルースロックの世界が広がっているような気がしています。
コメント、感謝です。
ミック・テイラーは案外、若い頃から頑固者だったのかもしれませんね。ストーンズのライブ映像からも、我関せずの態度で弾きまくりでしたから(笑)。
近年はすっかり、昔の貴公子の面影、ありませんね……。ちょっと哀しいというか。
ストーンズでもどこに入ってもこれだぜ、的な人ですよね。
ソロでもディランのバックでも分離して聴こえてくるテイラーという感じ(笑)