ちらほら桜が開花していますが、花が咲いていない桜の樹は意外なほどに目立たないと思います。桜が咲いて初めて、あぁ、ここに桜の樹があったのか……! と気がつくところが、また美しい♪
ということで、本日は――
■Tupelo Honey / Van Morrison (Warner Bros.)
小柄な体躯で熱血ソウルを歌う、ベルファストのカウボーイことヴァン・モリソンが1971年末に発表した大傑作アルバムです。
日本での発売は確か翌年だったと記憶しておりますが、当時はNHKのFMラジオ放送でアルバムを丸ごと流すという豪気な番組があり、けっこうエアチェックもしていたんですが、私はそこで初めてこの作品とヴァン・モリソンに接し、歓喜悶絶したのです。
それは全篇が強烈なソウルフィーリングに満たされ、ゴスペルロックとかストーンズっぽいノリに加えて、流行っていたカントリー&スワンプロックの香りも高い、全く私好みのスタイルでした。
ちなみにヴァン・モリソンはアイルランドはベルファスト出身の歌手で、1960年代にはゼムという真っ黒なロックバンドで「Here Comes The Night」や「Gloria」という永遠のヒット曲を放っていた実績は、後に知ったことです――
A-1 Wild Night
A-2 Like A Cannonball
A-3 Old Old Woodstock
A-4 Starting A New Life
A-5 You're Woman
B-1 Tupelo Honey
B-2 I Wanna Roo You
B-3 When That Evening Sun Goes Down
B-4 Moonshine Whiskey
――まず、なによりこのアルバムが私を驚愕させたかといえば、それは冒頭の「Wild Night」です。ラジオからこの曲が流れてきた瞬間、うっ、これは! なんとイントロのリフがまるっきり、当時の我国で大ヒットしていた南沙織の「純潔」だったのです!!!
さらにヴァン・モリソンのバージョンは、イントロからのリズムギターのノリや曲の構成が、同時期のストーンズにクリソツの雰囲気! これをもう少しルーズに展開したら、ストーンズが演じていても不思議じゃないと思いますねぇ。ヴァン・モリソンのアクの強いボーカルはミック・ジャガー以上に毒気があります。
あぁ、「Wild Night」のストーンズバージョンを聴いてみたいもんです。
他にもゾクゾクするようなゴスペルロックの「Old Old Woodstock」や「You're Woman」、タイトル曲「Tupelo Honey」での熱い歌いっぷりにはジンワリと感動♪ まさにブルーアイドソウルの傑作でしょう。
またカントリー&スワンプロックでは「When That Evening Sun Goes Down」が、そこはかとない日常を歌ってゴキゲン♪ 間奏のスライドギターもたまりません。同じ様な「Like A Cannonball」は厚ぼったいヴァン・モリソンのボーカルと暖かいコーラス&曲調のミスマッチが良い感じ♪ 素朴な「Starting A New Life」もアクの強い歌い方が逆に素敵です。
アルバムのプロデュースはヴァン・モリソン本人と当時はワーナーの社員だったテッド・テンプルマンが担当したことで、なかなかアメリカっぽい仕上がりで、バックの演奏を担当した面々の中にはハードロックの隠れた人気者というロニー・モントローズ(g)、後にドゥービー・ブラザースに入るジョン・マクフィー(g)、MJQのコニー・ケイ(ds)、さらにフュージョン系のビル・チャーチ(b) の参加が注目されます。
しかし全体としては、なんともいえない特異なソウルフィーリングがあって、それはアイルランドの香りなんでしょうか?
そして一発でシビれた私は、これ以降ヴァン・モリソンを追いかけていくのですが、フッと気がつくと、実はザ・バンドの傑作アルバム「カフーツ(Capitol)」に入っていた大名曲「4% Pantomime」でリチャード・マニュエルと熱すぎるボーカル対決を演じていたのがヴァン・モリソンでした。機会があれば、これもぜひ、聴いていただきたいところです。
ということで、実は本日、街でネタの仕入れをしていたら、紙ジャケット仕様のCDを発見して即ゲット! なんとリマスターで音質が素晴らしく向上していました♪ どうやらCD盤そのものの材質にも改善があったようですが、まあ、中身の素晴らしさはそんな事を凌駕しているわけですが!
あぁ、ヴァン・モリソンを聴ける幸せ♪
ヴァン・モリソンを聴くなら、最初はやっぱり、このアルバムでしょう。また、これ以前の作品は意外なほどにジャズっぽいので要注意です。そのあたりもいずれ取上げたいと思いますが、紙ジャケットのCDが出ないかなぁ~♪
リチャード・マニュエルとのヴォーカル対決といえば、『The Last Waltz』の「アイルランドの子守唄」なども思い起こされます。
ヴァンの旧作がSHM-CD仕様で大量に再発されましたが、リマスターされた輸入盤と価格に見合う差があるのかどうか少々疑問に感じています。と言いながらも、レコードもCDも持っていなかった『Into The Music』と『Wavelength』を購入してしまいました。透明感のある音と臨場感に圧倒されています。
なお、今回再発された『Tupero Honey』について、「DAYS OF MUSIC & MOVIES」と「rolling beat blog」といったブログで詳細に解説されています。
コメント&情報、ありがとうごいます。
ラストワルツまでのヴァン・モリソンは、ちょっと新作が途絶えていた時期でしたが、それでも素晴らしかったですねぇ。悪いクスリの所為?
今回のリマスター盤は何が出たのか把握していないのですが、アナログ盤はアメリカプレスに敵わないとしても、CD制作に関しては日本が優位だと思います。
「Into The Music」も、ある種の軽さがあって好きですよ♪ これも紙ジャケ盤を買わないとなぁ。