OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

やっと会えたね、ケニー・バレル♪

2008-10-10 12:26:12 | Jazz

A Generation Ago Today / Kenny Burrell (Verve)

何時か何処かで、ふぃっと耳にしたメロディや演奏が心を捕らえて放さない、そんな経験は、きっと皆様にもあろうかと思います。

そしてそれに再会、というよりも捜し求めて見つけた時の喜びは、本当にたまりませんね。本日は私にとっての、そんな1枚です。

メンバーはケニー・バレル(g)以下、ロン・カーター(b)、グラディ・テイト(ds)、フィル・ウッズ(as,cl)、リチャード・ワイアンズ(p)、マイク・マイニエリ(vib) が参加し、録音は1966年12月~1967年3月に行われました――

A-1 As Long As I Live (1966年12月20日録音)
 これこそ、私が長年探し求めて再会の喜びに浸った演奏です。
 あぁ、このソフトなボサロックの心地良さ♪ 浮遊感が最高の彩というマイク・マイニエリのヴァイブラフォン、スカッとしたグラディ・テイトのドラムス、そして軽いアレンジメントの妙♪ ケニー・バレルのメロディフェイクも最高です。
 実はこのあまりの feel so good な雰囲気に私は惑わされ、主役のギタリストをケニー・バレルではなく、チャック・ウェインかマンデル・ロウ、あるいはビリー・ストレンジ、もしかしたら我が国の誰かかなぁ……? と思いこんでいたのですから、現物が見つかるわけもありません。
 まあ、これも「一目惚れ聞き」の功罪というか、おかげさまで様々なラウンジ系ギタリストの演奏にも接することが出来て、結果オーライだったわけですが……。それにしてもケニー・バレルだったとは、完全に盲点でした。
 3分にも満たない短い演奏ですが、フィル・ウッズのクラリネットも素敵な隠し味になっていますし、何度聴いても飽きません。全ての音楽ファンに捧げたい、私は本当にそう思っています。

A-2 Poor Butterfly (1967年3月28日録音)
 これも非常にソフト&ウォームな演奏で、まさにラウンジ系にどっぷりの雰囲気ですが、テーマメロディを温かく吹奏するフィル・ウッズのアルトサックスからは、本物のジャズが薫ってきます。
 ケニー・バレルも力まないアドリブを聞かせてくれますし、中盤からのグイノリではフィル・ウッズが本領発揮のウネリ節! ロン・カーターのペースも基本に忠実なウォーキングで快感です。
 いゃ~、全くほど良い温かさの美味しいスープのような♪

A-3 Stompin' At The Savoy (1967年3月28日録音)
 これも楽しいスタンダード曲をハートウォームに演奏したソフトパップでしょう。ここでもロン・カーターのペースが素敵な響きとウォーキングを聞かせてくれますよ。
 そしてケニー・バレルのギターが実にツボを押さえた快演で、アドリブソロはもちろんのこと、伴奏も上手いですねぇ~♪ フィル・ウッズも肩の力が抜けた感じで、こういう雰囲気こそがロックやフリーに押されていた1960年代後半のジャズ本流の中では、実用的に求められていたものかもしれません。
 地味な演奏ですが、これぞっグルーヴィ!

A-4 I Surrender Dear (1966年12月20日録音)
 原曲は胸キュン系の素敵なメロディですから、ケニー・バレル以下、バンドの面々もシンミリと味わい深い演奏を心がけているようで、特にギターのソフトな響きと黒いフィーリングの融合は実に見事だと思います。このあたりが同時代の黒人ギタリストの中でも飛びぬけた魅力なのかもしれません。

B-1 Rose Room (1967年3月28日録音)
 このアルバムの中では一番、ジャズっぽいというか、演奏の妙技が味わえるトラックで、まずロン・カーターのペースワークが素晴らしいですねぇ~♪ フィル・ウッズが、ある有名なメロディを引用してリフを作る稚気も微笑ましく、グイノリながら必要以上に熱くならないアドリブとか、上手く聞き易い方向性を維持しているのは流石だと思います。
 もちろんケニー・バレルも熱気と巧さのコントラストが絶妙で、決して「濃い」ハードバップは演じないという意図が感じられますが、それが完全に成功した稀有な例かもしれません。
 このあたりはプロデューサのクリード・テイラーが、さもありなんの手腕でしょうね。

B-2 If I Had You (1967年1月31日録音)
 これまた古いスタンダード曲を素材にソフトなモダンジャズを聞かせる名演で、強いビートを伴いながら決して熱くならないところは、素敵なホテルの夜のラウンジ♪ 美女といっしょにグラスの世界です。

B-3 A Smooth One (1966年12月16日録音)
 ペニー・グッドマン(cl) やチャーリー・クリスチャン(g) の名演が歴史になっている曲ですから、バンドの面々も意気込みが違う感じで、まずはグラディ・テイトが本領発揮のビシバシドラミング♪ フィル・ウッズが艶やかに歌いあげれば、ケニー・バレルもソロに伴奏にキメまくりです。
 全体のアレンジも気が利いていて、思わずニヤリですよ。

B-4 Wholly Cats (1966年12月16日録音)
 オーラスもペニー・グッドマンに捧げたような演奏で、アップテンポでスイングしまくったバンドの勢いが素敵です。特にケニー・バレルが、ようやく思う存分に弾けた感じで、アドリブ後半では珍しくもマジギレしたようなコード弾きに熱くさせられます。
 まあ、欲を言えばフィル・ウッズのクラリネットソロが聞きたかったですねぇ~。

ということで、なかなかお洒落なモダンジャズが楽しめる1枚です。なによりもメロディを大切にしているのが良いですねぇ~~♪

そして冒頭の話に戻れば、私が長年探し求めた末に巡り合ったのは、某地方都市へ出張した時に宿泊したホテルの喫茶店で、ハッとした私は早速ウェイトレスに尋ねたところ、このアルバムのCDを持ってきてくれたのです。

あぁ、この時の感激は筆舌につくしがたいところで、これは決して日頃から大袈裟なサイケおやじ的な表現ではなく心底、そうでした。

もちろん、そのまま足はレコード屋へ♪ そして運良く当時は紙ジャケット仕様で売っていたこのブツをゲットしたというわけです。あぁ、思えばこの「As Long As I Live」を最初に聞いたのも、日本橋にあった小さな喫茶店だったなぁ……。

そういうわけですから、このアルバムはモダンジャズでありながら、普段の生活にもしっくりと馴染みます。

如何にも当時の所謂スウィンギン・ロンドンなジャケットデザインもジャズっぽくありませんし、実はダブルジャケット仕様ですから、裏ジャケを見開いた時には粋な仕掛けが用意されていて、なかなか嬉しいですよ。それは現物を見てのお楽しみ♪ 告白すると私は、それゆえにアナログ盤までゲットしてしまったです。

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