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サイケおやじの生活と音楽

これで暗黒!? メッセンジャーズ

2008-10-09 11:20:46 | Jazz

A Night In Tunisia / Art Blakey's Jazz Messengers (Vik / bluebird = CD)

CD時代になって特に顕著となったのが未発表発掘音源のオマケ付き発売です。これは長時間収録可能というCDの特性を活かした企画ですが、同様な事はLP時代にもありました。しかしもうひとつの時代の要請というか、やはり黄金期の大物ミュージシャンの演奏を、もっと聴きたい! というファンの気持ちの代弁は、つまりは「金になる」という本音であったとしても、やっぱり嬉しい企画です。

そして私のような者は、そんな目論見には簡単にひっかかってしまうわけで、本日ご紹介のCDも今更ながら先日発見し、即ゲットしてきたブツです。

主役はアート・ブレイキーとジャズメッセンジャーズという、ジャズ界では屈指の名門バンドで、この作品そのものはアナログLP時代から我が国では廉価発売の定番だったものです。しかし決して名盤ガイド本に載ることは少ないアルバムで、それは誰が言ったか、所謂「メッセンジャーズの暗黒時代」に作られたからだとか……。

う~ん、そうかなぁ……。実は告白すると、そんな事を知らなかった若き日の私は前述の廉価盤に飛びつき、けっこう愛聴している1枚でした。

録音は1957年、メンバーはビル・ハードマン(tp)、ジャッキー・マクリーン(as)、ジョニー・グリフィン(ts)、サム・ドッケリー(p)、スパンキー・デブレスト(b)、アート・ブレイキー(ds,per) という、ピアノとベースが些か無名で弱いのは確かですが、それでも夢のようなバンドです――

01 (A-1) A Night In Tunisia / チュニジアの夜
 アート・ブレイキー、そしてジャズメッセンジャーズと言えば、まずこの曲でしょう! これが出なければ治まらないほどのライブ定番曲になっていますが、それは出だしからメンバー全員が打楽器を持ってアフロビートの饗宴、さらにアート・ブレイキーが十八番という土人のリズムを炸裂させるという最高のツカミから、お馴染みのリフとテーマメロディが合奏される展開で、そのパターンが最初に公式レコード化されたのが、ここでの演奏です。
 もちろん曲そのものは以前から、例えば特に有名な「A Night At Birdland Vol.1 (Blue Note)」でも聴かれますが、このイントロからの打楽器乱れ打ち大会があってこそ、ジャズメッセンジャーズのバージョンが決定版として世間から認知されたのではないでしょうか。
 しかもここでは強力な3管編成とあって、ビル・ハードマンがリードしてジャッキー・マクリーンに受け渡すテーマの合奏も厚みがあり、いよいよアドリブへ突入するところのブレイクも、ジャッキー・マクリーンの若気の至りが何とも憎めません。
 また落ち着きのないケニー・ドーハムという感じのビル・ハードマン、強引で放埓なジョニー・グリフィンと続く熱演アドリブパートは、やっぱりハードバップ保守本流の魅力がいっぱい! キメにキメまくるアート・ブレイキーのドラムスも圧巻です。
 ただしピアノが確かに弱いです。小型ホレス・シルバーという狙いは分かるんですが……。
 ちなみにこのCDのリマスターは素晴らしく、特に打楽器やベースの音のキレが私有する日本プレスの廉価盤とは雲泥の差! それゆえに弱いと書いたピアノ響きさえも熱気に満ちた感じに仕上がっていて、結果オーライでしょうね。

02 (A-2) Off The Wall
 ジョニー・ブリフィンが書いた豪快至極なハードバップ曲で、とにかくガサツな熱気に満ちたテーマの合奏から、バンドが一丸となったグルーヴは強烈! 個人的にはこのアルバムの中で最高の演奏だと思っているほどです。
 アドリブパートでも、まさに青春の情熱というジャッキー・マクリーンの号泣節♪ B級グルメの味わいも深いビル・ハードマン、意気込み過ぎてリズムを踏み外しながら熱い思いを表現するジョニー・グリフィン! 親分のアート・ブレイキーも強烈なバックピートを生み出すハイハットや効果的なリムショットで存在感を強烈にアピールしていますから、危なっかしいサム・ドッケリーにも必死さがあって、好感が持てます。

03 (B-1) Theory Of Art
 初っ端から猛烈なアート・ブレイキーのドラムスがイントロとなって始まるのが、この熱気に満ちたビル・ハードマンのオリジナル曲です。サビのアフロな混濁も最高のアクセントですねっ♪
 そしてジャッキー・マクリーンが痛快に疾走して突入するアドリブパートには、これぞハードバップの黄金期という勢いが満点で、何故にこれが「暗黒時代」だなんてっ!? ビル・ハードマンも前傾姿勢の熱演ですし、ジョニー・グリフィンに至ってはリズム隊を置き去りにしそうな唯我独尊! う~ん、ピアノのサム・ドッケリーが……。
 ですから、ついにアート・ブレイキーが怒りのドラムソロを大噴火させる展開が見事な大団円に繋がっています。

04 (B-2) Couldn't It Be You ?
 これはジャッキー・マクリーン特有の「節」が出まくったオリジナル曲で、ちょいと凝ったアレンジの合奏もたまりません。もちろんアドリブパートでの熱演は当然が必然という雰囲気ですが、いきなりジョニー・グリフィンがカッコイイ熱血を演じてしまいますから、ジャッキー・マクリーンは危うい青春物語です。あぁ、これが実に胸キュンというか、せつない片思いのような感じで高得点♪ その狭間にあって見事なアドリブ構成を聞かせたビル・ハードマンが、実は一番曲想に合っている感じがします。
 各人のアドリブの背後で景気をつけるホーンのリフもツボを押さえていますし、アート・ブレイキーのドラミングも全篇に冴えわたりで、リーダーの貫禄を示しています。
 ちなみにサム・ドッケリーも合格点ですよ。

05 (B-3) Evans
 ソニー・ロリンズが書いた猛烈な勢いのハードバップ曲ですから、ジャッキー・マクリーンがいきなりの過激な姿勢を聞かせても、それはニンマリしてしまうだけです。
 ビル・ハードマンの直線的なトランペットも好き嫌いはありましょうが、ここでは結果オーライだと思いますし、ジョニー・グリフィンの如何にも「らしい」アドリブも最高です。
 それと大技・小技を駆使したアート・ブレイキーのドラミングが本当に素晴らしいですねっ♪ クライマックスのソロチェンジの部分は、ここでもニヤリとさせられる仕掛けの連続です。

06 A Night In Tunisia (alternate take)
07 Off The Wall (alternate take)
08 Theory Of Art (alternate take)
 以上の3曲がお目当ての未発表テイクで、まず「A Night In Tunisia」は演奏前の打ち合わせからスタートします。そして豪快なドラムソロと打楽器の饗宴というパターンは同じですし、全体にマスターテイクと比べても遜色が無い出来だと思いますが、ビル・ハードマンのアドリブはこちらに無軌道なエネルギーが溢れている感じで、私は好きです。
 ちなみに音質もマスターテイクに比べて、さらに鮮やか! パーカッションを敲く音のニュアンスが実に生々しいですねぇ~。もちろん各楽器の鳴りも太くなっている気がします。
 続く「Off The Wall」は、些かバンド全体のノリがマスターテイクに比べてもっさりした感じですが、これはこれで充分に凄いハードバップでしょう。ジャッキー・マクリーンが尚更にギスギスしていて、グッと惹きつけられます。またジョニー・グリフィンも、こちらの方が凄いと私は思います。
 そして「Theory Of Art」が、これまたオクラ入りしていたとは思えない仕上がりで、アート・ブレイキーのドラミングはさらに派手になっていますし、サビの混濁した雰囲気やジャッキー・マクリーンのアドリブブレイクも冴えたテーマ部分の勢いは最高! う~ん、これが聴けるとは長生きはするもんですねっ♪

ということで、アルバム本篇の素晴らしさは言わずもがな、ボーナストラックの充実度も圧巻の再発CDです。既に述べてようにリマスターも秀逸ですから、まさに真正ハードバッパー達の生々しさに接する喜びがいっぱい詰まっているのです。

ちなみにブツそのものはデジパック仕様で12頁のブックレットも付属♪

繰り返しますが、これで「暗黒時代」と呼ばれていたら、アート・ブレイキーも草葉の陰でなんとやらでしょう。傑作や名盤の多いジャズメッセンジャーズの諸作中でも、その場の勢いや熱気に関しては上位の1枚ではないでしょうか? このCD再発を機会に、ぜひとも聴いてみてくださいませ。

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