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サイケおやじの生活と音楽

キースが暴れたマイルスバンド1971&モア

2008-10-19 12:46:35 | Miles Davis

Miles Davis & Keith Jarrett The 1971 Berlin Concert (Jazz Vip = DVD)

マイルス・デイビス関連の発掘物は近年、ますます奥の細道状態に入ってきましたが、これまた強烈なブツが出ていたので、速攻でゲットしてきました。

内容は1971年のマイルス・デイビス、所謂「電化マイルス」のライブ映像で、タイトルどおりにキース・ジャレットが大活躍! しかもオマケとしてキース・ジャレットがソロピアノを演じた1974年のライブ映像までもが入っています――

マイルス・デイビス・グループ:1971年11月6日、ベルリンでのライブ映像
 01 Berlin Medley
    a) Honky Tonk
    b) What I Say
    c) Sanctuary
    d) It's About That Time
    e) Funky Tonk
 メンバーはマイルス・デイビス(tp)、ゲイリー・バーツ(ss,as)、キース・ジャレット(el-p,key)、マイケル・ヘンダーソン(el-b)、レオン・チャンクラー(ds)、ドン・アライアス(per)、ムトーゥメ(per) という、時期的には例のワイト島音楽祭の直後に再編されたバンドによる欧州巡業から、音源だけは数種のブートが出回っていました。しかし今、あたらためて映像を観るとやっぱり強烈ですねぇ~。ちなみに音はモノラルミックスのカラー版です。
 マイルス・デイビスはトンボメガネのサングラスで下を向きながら、電気アタッチメントがつけられたトランペットでワウワウ、キュウキュウ、ビリビリと意味不明のラップ系フレーズしか吹きません。
 演目は一応、上記の曲名がジャケットに記載されていますが、例えば「It's About That Time」なんかは、あのサンタナみたいな嬉しい後半のリフは出てこない断片であり、他にも様々に知っているメロディやキメのリフがゴッタ煮となっています。
 そのスタイルはマイルス・デイビスのアルバムで言えば「Live=Evil」~「In Concert」のアフロファンキー、そしてサイケロックとニューソウルの混濁期ですから、このあたりが好きな皆様ならば、その怒涛のファンクピートとポリリズムの嵐に翻弄されるでしょう。実はこの時期のマイルス・デイビスのやっていたことは、好き嫌いがはっきりしているはずなのに、一度虜になるとクセになるアブナイ魅力に満ちているのです。呪術的とでも申しましょうか。
 まず冒頭からドンスコトドスコというアフロビートでマイルス・デイビスが俯いてワウワウなペットを吹くというより、独善的な独り言……。その隙間にキース・ジャレットのエレピや電子オルガン、打楽器&ドラムスがオカズを入れまくり、根底はマイケル・ヘンダーソンのペースがしっかり支えるという展開の「Honky Tonk」が激ヤバです。マイルス・デイビスも演奏が進むにつれてキュルキュルキュルキュル~、と一応はフレーズらしい熱い音も出していきますが……。
 ここはキース・ジャケットのエレピソロがモードとファンクのゴッタ煮アドリブで意味不明の凄さを聞かせてくれます。もちろん、あのオーバーアクションとニューソウルな普段着姿、自己陶酔の独り芝居みたいなところは好き嫌いもあるでしょうが、これはこれで私は許します。
 そして次のパート「What I Say」では、ようやくゲイリー・バーツが登場し、激しくテンションの上がったリズム隊をバックに熱血のソプラノサックスを垂れ流し! その直前にマイルス・デイビスと一緒にテーマらしきリフを合奏するところもカッコイイです。
 ちなみにドラムスのレオン・チャンクラーはサンタナからスライ、さらにはウェザーリポート等々でも敲きまくった人気ドラマーですが、個人的にはここでの些か小賢しいドラミングは、前任者のジャック・ディジョネットの野太いビート感に比べてイマイチと感じます。しかしドン・アライアスとムトゥーメという2人の強烈な打楽器組がいますから、結果オーライでしょうねぇ。実際、ここで発散される混濁のファンクピートと土人のリズムは唯一無二の凄さです。
 またここでもキース・ジャレットが大暴れ! それが一転して静謐な「Sanctuary」が始まると、今度は幻想的な伴奏が冴えまくりです♪ もちろんテンションの高さも素晴らしく、マイルス・デイビスも煽られ気味に緊張感溢れるところを聞かせてくれます。さらにゲイリー・バーツのアルトサックスソロの背後を彩る電子オルガンの響きも最高なんですねぇ~~~♪
 ドロドロしたリズム隊のグルーヴの中では、単調なマイケル・ヘンダーソンのペースもハッとするほど良い感じで、演奏はますますディープな展開となっていきますが、キース・ジャレットのエレピがアドリブを始めると、その場は完全にメロウファンクの世界に染まって行きます。それを許すまじと奮闘するドラムス&打楽器組の我儘な攻撃も凄すぎますから、ここは映像で観るとキース・ジャレットの自己陶酔がイヤミなほどですが、私はここも許します。
 演奏はこの後、マイルス・デイビスがスパニッシュ調のフレーズを入れたりして場面転換、これが「It's About That Time」ということになるんでしょうが、ちょいと意味不明……、。しかしバックの面々の遠慮しない自己主張には好感が持てますし、ロック色が強まっていくバンド全体のグルーヴも熱いです。う~ん、ジョン・マクラフリンのギターが出て欲しい!
 という贅沢な夢想を一気に吹き飛ばすのが、続く「Funky Tonk」です。それはキース・ジャレットの思わせぶりな独り芝居に打楽器組が執拗に絡みつく場面転換のパートから、あの快楽的なファンキーフレーズに移行するという最高の展開! オーバーアクションのキース・ジャレットと打楽器のアップという場面を細切れに見せるカメラワーク&画像編集も秀逸ですし、もちろんバンドのアンサンブルもキマッています。
 マイルス・デイビスもいよいよクライマックスとあって、ワウワウトランペットも全開の必死さには鬼気迫るものが漂います。黒と赤を基調としたファッションも、如何にも当時というムードですねっ♪
 ただしここはゲイリー・バーツが些かテンションの低い雰囲気……。まあ、逆に言えば周囲が凄すぎる結果なんでしょうが、それに煽られて後半に持ち直していくフリーキーなアルトサックスの響きが、やっぱりこれはジャズなんだなぁ~、と実感させられたりします。
 そしてついに電化アタッチメントを外したマイルス・デイビスが、あの哀切のミュートプレイを聞かせてくれるのが、本当のクライマックスかもしれません。絶妙の伴奏をつけるキース・ジャレットのエレピの響きも澄んだ世界を醸し出し、じっくりとしたファンクピートと「マイルス・デイビスの世界」が混然一体となったこの瞬間こそが、最高! やるだけやって勝手に去っていく姿にもスーパースタアの輝きがあります。
 演奏は通して、ここまで約1時間ですから、ちょいと疲れるかもしれませんが、この大団円を堪能する通過儀礼として、素敵な時間は保証付きだと思います。ちなみに映像は既に述べたようにカラーで、音質は問題ありませんが、画質は若干の滲みもある「A-」程度です。

キース・ジャレットのソロコンサート:1974年7月26日、イタリアのジャズ祭
 02 Improvisation No.1
 03 Improvisation No.2
 これは白黒映像ですが、イタリアのウンブリア・ジャズ祭でのライブ演奏で、もちろんこの時期のキース・ジャレットが一番のウリにしていたソロピアノ♪ 当然ながら、あの美メロが出まくったゴスペルファンキーな世界が楽しめます。
 しかし残念ながら、前半は約9分弱、後半は5分ほどの短いもの……。
 それでも楽器搬入のドキュメントがあったり、キース・ジャレット十八番の自己陶酔ケツ振りアクションがご覧になれますよ。
 もちろん演奏はファンならば納得して感涙のソロピアノが素敵です。大ヒット盤「Kolm (ECM)」あたりが好きな皆様ならば必見でしょう。ちなみに画質は一応「A」ですが、音質は問題無いモノラルミックスです。
 あぁ、これの完全版が出たらなぁ~。

ということで、タイトルに偽り無し!

つまりキース・ジャレットが主役の映像作品です。それはオマケのソロコンサートはもちろんの事、マイルス・デイビスのライブシーンにおいても、キース・ジャレットの大活躍が本当に顕著なんですねぇ~。

大方のジャズファンは、この時期の電化マイルスに得体の知れないものを感じて、その評価は二極分化されていると思いますが、この映像ライブのようにキース・ジャレット中心に鑑賞すれば、それも「また良し」じゃないでしょうか?

ここはひとつ、キース・ジャレットに免じて楽しむのも結果オーライかもしれません。私は、繰り返しますが、これが好きです。

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2 コメント

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どんな世界も (サイケおやじ)
2008-10-20 11:36:28
☆大吉GUY様
音楽関連の書籍はほとんど読まない私ではありますが、入門ガイド本にも著者によって激烈な自己主張があるのでしょう。
業界や評論家の先生方の人間関係やしがらみは、かなり複雑みたいですよ。

しかし私も本サイトの更新が停滞していますから、せめてこちらをお楽しみ願えれば、幸いでございます。
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Unknown (大吉GUY)
2008-10-19 19:18:01
マイルスと言えば,パーカー原理主義者の後藤雅洋が『マイルスからはじめるJAZZ入門【増補版】』ってのを出しましたね。中山康樹なら分かるんですが,なんでこの人が……?

それにしても,サイト本体じゃなくて,こっちにばっかり寄っちゃって申し訳ないっす。
返信する

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