■霧の8マイルc/w禁じられた願い / The Birds (Columbia / 日本コロムビア)
少年時代のサイケおやじがビートルズよりも好きだったのが、ザ・バーズという告白は「Mr. Tambourine Man」の項でも書きましたが、本日ご紹介の「霧の3マイル / Eight Miles High」にも、まさに8マイル先の霧の彼方へブッ飛ばされたような衝撃を受けました。
いきなりドンドロドロドロド~ン、という、恐らくはエレキベースとエレキギターの低音弦奏法をメインに作られたオドロの雰囲気からビョ~~ン、ギンギラギ~ンという摩訶不思議な音色のエレキギターが鳴り響く、実に強烈なサイケデリックイントロからして強い印象!
さらに倦怠して幻想的な「エ~ィ、マイ~ル、ハ~イ」という曲メロのキメコーラスが、いきなりのクライマックスという凄まじい歌と演奏でしたから、これをラジオで最初に聴いた瞬間、私は金縛り寸前でしたねぇ~~♪
それは昭和41(1966)年の事で、当時はベンチャーズやビートルズが我国でも圧倒的な人気を集めていたわけですが、少なくとも「霧の3マイル」に関しては、バーズのやっていたことが、そのどちらとも異なる、本当に異様なムードに感じられました。
このあたりは今日、スペースロックとかラーガロックとか称され、きちんと評価されていると思います。しかしリアルタイムの私には、理解の範疇を超えていたのは確かですし、それでいて非常に魅惑的な「何か」がありました。
う~ん、なんというか、分からないけど、凄~い!
で、当時のバーズはフォークロックで人気絶頂ながら、次なる展開を模索していた過渡期でしたから、バンド内部の人間関係や権力のバランスが微妙な状況だったのは、今日の歴史に記されているとおりです。
一応は中心人物とされるロジャー・マッギンにしても、エレキの12弦ギターを使った独得のサウンド作りの要だったかもしれませんが、グループの中では一番キャッチーな曲を書いていたジーン・クラークとの確執は深刻でしたし、加えて歌も演奏も自己主張が強いディヴィッド・クロスビーがバンドのフロントマンとあっては、ゴタゴタが避けられないのは……。
しかし、それゆえにと言っては語弊がありますが、この「霧の8マイル」で聞かれるサウンドの怖いほどの充実ぶりは圧巻!
またB面に収録された「禁じられた願い / Why」は、そのディヴィッド・クロスビーがメインで書いただけあって、十八番のモヤモヤした曲メロとサイケデリックなラーガ系エレキギターが冴えまくった、アップテンポの激烈ロック!
個人的にはA面よりも気に入ったほどです♪♪~♪
そのキモはジャズっぽさ! というのは後に知ったことですが、例えば「霧の8マイル」におけるモード風な曲展開は、ライプの現場では長時間のアドリブ演奏も含んだニューロックの醍醐味へと繋がり、実際、1970年に発売された2枚組の意欲作「タイトルのないアルバム」ではLP片面を使ったギター合戦の演奏が聞かれるほどです。
ただし、この蜜月的な充実期のバーズは長続きせず、「霧の8マイル」を出した直後にはジーン・クラークが脱退! そしてディヴィッド・クロスビーとクリス・ヒルマンがグッと存在感を強め、ロジャー・マッギンの個性が薄れていったのは、以降のシングル&アルバムで聞かれるとおりです。
その意味で、ザ・バーズの最高の瞬間のひとつが、この「霧の8マイル」であることは疑う余地もないでしょう。またロック史においても、最強シングル曲のひとつとして屹立していると、私は強く思います。
ただし、そんなことを独善的に自己満足しているのは、今となっての感慨です。リアルタイムでの「霧の8マイル」、そして「禁じられた願い」は、様々な雑念が入り込む余裕を与えないほどの衝撃度がありました。
それだから、若い頃に聴いた音楽って、尚更に素晴らしい♪♪~♪
「Why」の邦題が「禁じられた願い」だったとは知りませんでした。『Younger Than Yesterday』に収録された時からは「何故」になっていたと思いますが。
コメントありがとうございます。
このシングル盤B面の「Why」とアルバムに収録の同曲は、バージョン違いですよね、確か。
アルバム「昨日より若く」は、もちろんリアルタイムでは聴けませんでしたが、日本盤とアメリカ盤では収録曲目が異なっていたと記憶しています。
私がバーズのアルバムをきちんと聴けたのは、安い輸入盤が出回った1973年頃からでした。
ジーン・クラークはバーズを辞めた後、何故かパッとしませんでしたね。ビートルズっぽい曲も書けたし、ディープなフォークロックも歌える人だっただけに、ちょっと???の気分です。