■Younger Than Yesterday / The Byrds (Columbia)
1967年に発表された、ザ・バーズにとっては公式に4枚目となるアルバムです。
当時のメンバーはジーン・クラークが正式に抜けた後のロジャー・マッギン(vo,g)、デヴィッド・クロスビー(vo,g)、クリス・ヒルマン(vo,b)、マイケル・クラーク(vo,ds) の4人組でしたから、必然的にレコーディングセッションには数名の助っ人が参加しています。
A-1 So You Want To Be A Rock‘N’Roll Star / ロックン・ロール・スター
A-2 Have You Seen Her Face
A-3 C.T.A.-102
A-4 Renaissance Fair
A-5 Time Between
A-6 Everybody's Been Burned / 燃えつくせ
B-1 Thoughts And Words
B-2 Mind Gardens
B-3 My Back Pages
B-4 The Girl With No Name / 名もない少女
B-5 Why (album version)
もちろん個人的には安い輸入盤を買い、後追いで聴いたわけですが、各方面から名盤扱いされているとはいえ、サイケおやじにはどうもイマイチ……。収録各曲はそれぞれに魅力的なんですが、アルバム全体としての纏まりの無さが気になります。
その原因は、どうやらグループ内外にあった当時の人間関係や活動方針の不統一にあったのかもしれません。
一般的な観点としてのザ・バーズといえばロジャー・マッギンがメインと思われがちですし、私も最初はそのように思っていたのですが、それはロジャー・マッギンがザ・バーズ特有のサウンドを象徴したエレキの12弦ギターを弾いていたという部分に大きいんじゃないでしょうか。
しかし実際にはバンドで一番にキャッチーな曲を書けたのはジーン・クラークでしたし、ザ・バーズのもうひとつのウリだったコーラスワークを支えていたのはデヴィッド・クロスビーでした。そしてジーン・クラークが脱退して以降になると、それまでは地味なペース奏者だったクリス・ヒルマンが持ち前の素養だったブルーグラスや白人伝承歌の世界を主張して、台頭するのです。
そしてそんな時期の1966年晩秋に制作されたのが、このアルバムというわけですが、中でも変則コードを用いたギターと最高のハーモニー感覚が唯一無二というデヴィッド・クロスビーの曲作りが冴えまくり!
例えば「燃えつくせ」は完全に後のCS&N時代を先取りしたアブナイ感覚の名曲名演で、ジャズっほいコードワークとギターのコンビーネーション、さらにクリス・ヒルマンの浮遊感溢れるベースプレイを得て、デヴィッド・クロスビーの優しくて、さらにドラッグ感覚に満ちた歌いまわしが最高の極みですよ♪♪~♪
そして「Mind Gardens」が、これまた当時の流行を先取りしたようなインド系モードを入れた無調のメロディ!?! 何時聴いても、あまりにブッ飛んでいます。おそらくはテープの逆回転等々で作り出したであろう演奏パートの不思議な感覚、さらに起承転結が見えない作者本人の歌いっぷりには、本当にトリップさせられますよ。
他にもロジャー・マッギンと共作したことになっている「Renaissance Fair」も、実はデヴィッド・クロスビーがほとんどを書き、好き放題に変態コードで彩ったサイケデリックフォークロックの決定版! クリス・ヒルマンのペースもドライヴしまくった名演でしょうねぇ~♪ もちろんコーラスワークはデヴィッド・クロスビー十八番の節がモロ出しです。
また本当の共作らしい「Why」は既にシングル盤「霧の8マイル」のB面に収録されたものとは別テイク!?! 明快に激しくなった演奏パートではギターとベースがスッキリと暴れていますが、これも所謂ラガ・ロックと呼ばれたインド風味のモードが導入されています。
一方、クリス・ヒルマンは、それまでのザ・バーズの正統を受け継ぐフォークロックの傑作「Have You Seen Her Face」、あるいは元祖カントリーロックな「Time Between」という、本当にシングルカットされても不思議ではない名曲を書き、アルバム全体では随所に素晴らしいベースプレイを聞かせてくれる大躍進!
その極みつきとしての「名もない少女」はカントリーロック、そしてフォークロックの両分野から高く評価されているようですが、個人的には「夢のカリフォルニア / ママス&パパス」の親戚みたいな「Thoughts And Words」がビートルズ系フォークロックの最高峰として大好き♪♪~♪ クリス・ヒルマンの作風って、意外にもビートルズっぽいんですよねぇ。
そういうわけですから、ロジャー・マッギンはシングルヒットした「ロックン・ロール・スター」やボブ・ディランの美メロ曲「My Back Pages」で存在感を示すのがやっとなんですが、しかしそれが実に魅力的なのがザ・バーズの秘密だと思います。
実際、1960年代ロックのポップサイケな一面を象徴したのが、「ロックン・ロール・スター」のヒット性感度の高さだと思いますし、「My Back Pages」こそは、せつない曲メロを存分に活かしきったアレンジと歌いっぷり、さらにハーモニーワークの神秘性が完全融合した大名演! 私は本家ボブ・ディランのバージョンよりも百倍は好きですよ。
ちなみにアルバムタイトル「Younger Than Yesterday」は、その「My Back Pages」の歌詞の一節から流用されたほどですから、もう全てはOKですよね♪♪~♪
しかし残念ながら、このアルバムはザ・バーズもレコード会社側も期待するほどの大ヒットにはなりませんでした。まあ、それでもチャートの20位にはランクされたらしいのですが、リリースされた1967年といえば、ドアーズのデビューアルバムやビートルズの「サージェント・ペパーズ」を筆頭にジミヘンやジェファーソン・エアプレインの諸作等々、リアルなロック黄金期のレコードがごっそり登場した時代でしたからっ!!
それゆえにザ・バーズにも焦りがあったことは確かなようで、「C.T.A.-102」なんていう中途半端にサイケデリックな歌と演奏が収められていることが、尚更にアルバム全体の纏まりを損ねている気がしています。
しかし既に述べたように、ひとつひとつの曲の完成度は高く、決して他に負けるものではありません。ただ、それらをひとつのアルバムに纏める過程がイマイチ、上手くいかなかったように思われます。
それはブロデューサーのゲイリー・アッシャーの手際云々よりも、むしろバンド内部の主導権争いというか、際立ち過ぎたメンバーの個性を重視すれば、既に結果は見えていたのかもしれません。
今日の歴史では、このアルバム制作時からデヴィッド・クロスビーが浮いてしまい、ついには脱退するのですが、そうしたグループ内での個性の発揮のありようは、後のCS&Nにおける成功に繋がったとも言えるんじゃないでしょうか。
サイケおやじとしては、この時期を中心に、デヴィッド・クロスビー関連のザ・バーズの楽曲を集めたカセットを作って楽しむという、なかなかアブナイ趣味に走ったこともありました。
つまり、そういう楽しみ方がどっさり潜在しているのですから、これはやっぱり名盤なんでしょうねぇ~♪ とにかく私は好きですから。
アルバムとしては全く統一感なし、でサイケ要素が見え隠れというのはビートルズの『リボルバー』に似た感触なんでしょう。
おっしゃるようにクロスビーの2曲が群を抜いて存在感を放っていますね。これはもうBYRDSとは言えぬ違和感が逆に快感。この人の感覚は怖いくらいです。
このアルバム、聴き始めは(いまでもそうですが)やはり「My Back Pages」に惹かれましたが、時代遅れの感は拭えず。というのが個人的感想です。
コメント、ありがとうございます。
>ビートルズの『リボルバー』に似た感触
あっ、これで謎が解けた気分です!
確かに、そのとおりですよねぇ~。
テープの逆回転で作りだされたギターソロとか、モヤモヤした曲想、ダイナミックなエレキベースの使い方……等々、やっぱりだと思います。
クロスビーの進み過ぎた感性も、異彩どころの話ではなく、ディランの「My Back Pages」を入れたのは、それを心配した会社側の指示だったという説もあるぐらいですから!?