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サイケおやじの生活と音楽

The Beatles Get Back To Let It Be:其の六

2020-08-28 10:29:27 | Beatles

映画「レット・イット・ビー」で、たっぷりと見る事が出来るビートルズ内の人間関係の悪さは、音楽的対立だけが原因ではありませんでした。

極言すると、一番の原因はやっぱり、お金!

まず、1969年初頭には「アップル・コア」の経営は完全に行き詰っており、好調なのはレコード部門だけという有様でした。

そして当然様々な立直し策が模索される中、彼等に接近して来たのが、あまり評判の良くない芸能界専門の会計士であるアレン・クラインというアメリカ人でした。しかし、その手腕は確かだったらしく、当時はローリング・ストーズの会計顧問に就任していて、絶望的な危機に陥っていた彼等の経済状態を見事に立ち直らせていたのは有名でした。

彼とビートルズの接点については諸説あり、ローリング・ストーズのミック・ジャガーからの紹介と言う説もありますし、同時にミック・ジャガーはアレン・クラインのガメツイ商売には気をつける様に忠告しただけという説もありますが、何れにせよ、彼がデビュー以来のマネージャーだったブライアン・エプスタイを失って迷走するビートルズに目を付けていた事は間違いなく、まずジョン・レノンを篭絡し、ジョージとリンゴもそれに従います。

ところが、ポールは当時婚約中だったリンダ・イーストマンの父親で弁護士のジョン・イーストマンをマネージャーにする計画を持っておりましたので、これには大反対!

しかし、他の3人はジョン・イーストマンが、あまりにもポールに近い事、さらに音楽業界には素人だった事から認めるはずも無く、所謂多数決により、ビートルズがアレン・クラインをビジネス・マネジャーとして迎え入れた時のスチールカットを掲載致しましたが、いゃ~~、冗談半分だったとしても、ポールのキメポーズは露骨過ぎると思いますねぇ~~。これじゃ~メンバー間の亀裂反目は決定的と思う他は……。

これが1969年5月の事で、厳密にはポール以外のメンバーが個人のマネージメント契約を優先させていたという事実もあるんですが、実は同じ頃、故ブライアン・エプスタインが運営していた元々のビートルズのマネージメント会社「ネムズ」が遺族の手によって売却される事になり、またビートルズの楽曲を管理している出版社「ノーザン・ソングス」の運営者だったディック・ジェイムスが、自分の持ち株を某テレビ会社への売却を画策しておりました。

そして……、この動きを察知したポールが、他の3人のメンバーには秘密で「ノーザン・ソングス」の株の買占めに走り出します。もちろん、これ等の会社はビートルズのメンバー全員が投資しておりますから、ポールの行動を掴んだアレン・クラインは対抗策として、他の3人及び自分の資産を投入し、株の買取合戦が繰広げられますが、結局は某テレビ会社が、その株の大部分を取得してしまいます。

こうして、ますます泥沼に落ちていくビートルズは、最終的には法廷闘争で決着をつける事になって行くのですが……。

庶民感覚からすれば、ビートルズの資産は計り知れないし、そんなにお金が無いのか……?

なぁ~ンて思ったりもしますが、そこはやはり持てる者の悩みというか……。ちなみにデビュー時からのマネージャーだったブライアン・エプスタインが生きていた頃のメンバーのポケット・マネーは、常に「ネムズ」から定期的に渡される5万円程だったという噂もあった位です。

う~ん、もちろん各種の支払はカードでも使っていたんでしょうか? それにしたって、利用状況には厳しいチェックがあった事を思えば、いやはやなんとも……。

閑話休題。

で、そんなドロドロしたものが渦巻く中、本格的に「アップル・コア」の立直しが始まります。なにしろアレン・クラインの取り分は破格の20%という事で彼も大ハッスル!

会計監査や関連会社従業員の大量解雇等々を手始めに、1月のセッションの制作費を回収するために、ほとんど纏まっていないライブショウ映像の企画練り直し、そして新曲発表の手筈を着々と進めていくのですが、これが後に大きな問題を引起こしたのは、今や歴史です。

一方、ポールも法務担当という名目で、ジョージ・イーストマンを「アップル・コア」と契約させますが、これはもちろん、アレン・クラインの監査が目的だった事は言わずもがなです。

ところで、こうしたドロドロした蠢きの中、1月のセッションで録られたマスターテープを託されたグリン・ジョンズはど~していたかと言えば、根城にしていたロンドンのオリンピック・スタジオで着々と作業を進めているのでした。

注:本稿は、2003年9月25日に拙サイト「サイケおやじ館」に掲載した文章を改稿したものです。

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