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サイケおやじの生活と音楽

The Beatles Get Back To Let It Be:其の拾七

2020-09-10 19:39:59 | Beatles

海賊盤アルバム「KUM BACK」は、大変な反響を呼び、その頃のイギリスとアメリカだけで300万枚近くが売れたと云われています。

そして、この成功により、ビートルズ物だけでなく、あらゆる人気アーティストの海賊盤が夥しく市場に流されるのですが、ビートルズ物の「レット・イット・ビー」関連で、次に業者からターゲットにされた「お宝」が、映画「レット・イット・ピー」のサウンドトラック音源でした。

あらためて述べさせていただくと、「レット・イット・ビー」の関連音源では、アルバムやシングル盤で聴く事が出来る曲と、映画を観て聴く事が出来る曲は、ほとんどが別物なのです。

それでは映画ではどの様な曲が演奏されていたのか、本篇の流れに沿ってみると――


01 Piano Theme(1969.01.03)
 撮影準備最中のスタジオにあるピアノで、ポールがなんとなく弾いている曲です。
 淋しげな調子の練習曲みたいです。横ではリンゴがそれを眺め、やがてジョージもやってきます。
 ここから「13」までが、トゥイッケンナム・フイルム・スタジオでの場面になります。

02 Don't Let Me Down(1969.01.08)
 前の場面に続き、いきなりジョンのアップで曲が始まります。
 「裏切らないでくれ~」という歌詞のところで、ヨーコがアップで映し出されるという編集は、意味深……。

03 Maxwell's Silver Hammer(1969.01.03 & 07)
 ポールが主導権を握って曲のコード進行を教えていきますが、リンゴの不満顔が印象的です。
 そしてポールは途中でベースからピアノに代わりますが、彼だけが楽しそうで、ジョージは自分のマイクで感電してます。
 皆様ご存知のとおり、結局このセッションでは完成させる事が出来ず、後のアルバム「アビー・ロード」におけるセッションで再録音されました。

04 Two Of Us(1969.01.08)
 完成バージョンと比較して、かなりテンポが速い演奏です。
 一本のスタンド・マイクで歌うジョンとポール、おどけてギターを弾くジョンは、ライブショウのリハーサルのつもりでしょうか?
 所謂「ビートルズ・マジック」が、一瞬だけ再現されています。

05 I've Got A Felling(1969.01.08 & 09)
 リハーサルですが、ギターの弾き方についてポールが口を出します。
 リンゴは白け顔で、ここでもポールだけがノリノリです。
 その所為でしょうか、ジョンのあきらめた様な歌い方が、逆に凄みを滲ませます。
 脱力的終わり方も印象的でした。

06 Oh! Darling(1969.01.09)
 後のアルバム「アビー・ロード」に収録される名曲ですが、この時点では未完成です。
 ポールがピアノで、最初のワン・フレーズだけ歌っています。

07 One After 909(1969.01.09)
 彼等が十代の頃に作った曲なので、演奏前にポールが当時の思い出話をします。
 演奏は、それなりにノッていますが、ジョージの無気力が目立ちます。

08 Whole Lotta Shakin' Goin' On(1969.01.14)
 ポールとリンゴがピアノの連弾で演奏します。
 原曲はジェリー・リー・ルイスが、1957年にヒットさせたロックンロールの古典です。

09 Two Of Us(1969.01.09 & 10)
 イントロが一瞬「Get Back」しています。
 ところが直ぐに中断し、上手くいかず、ポールとジョージの口論に発展する有名な場面です。
 リンゴは完全に呆れ顔……。

10 Across The Universe(1969.01.07)
 「私の世界は変えられないをやろう」という台詞で始まります。
 前の場面が険悪だったので、この曲でホッと和みますが、もちろんその時とは別の日の演奏です。
 曲は途中で中断しますが、絶妙の編集でした。

11 Dig A Pony(1969.01.07)
 ジョンがデモ的に曲を披露していますが、その場のダレ方に呆れた雰囲気で中断し、「もっと早い曲を!」と言い出して次に移ります。

12 Suzy Paker(1969.01.09)
 多分ジョンが即興的に作ったロックンロールです。

13 I Me Mine(1969.01.08)
 ジョージが作ったばかりの曲をリンゴに歌って聞かせます。
 そしてその後、バンド演奏になり、ワルツ曲なのでジョンとヨーコがスタジオで踊ります。
 演奏は残る3人ですが、ラフな中にも良い雰囲気で、作品中でも名場面でした。
 演奏も相当にカッコイイので、これは何とか活かして欲しかったと思います。

14 For You Blue(1969.01.25)
 ここから場面はアップル・スタジオに移り「24」まで続きます。
 演奏をバックにメンバーがオフィスにやって来る映像に続き、ジョージのボーカルで演奏が楽しめますが、これはかなり出来上がっています。
 この演奏の後にジョンの「~私はピグミーを偏愛する~」というお喋りがあり、それはアルバム「レット・イット・ビー」に収録された「Two Of Us」の前に編集して付け足されました。

15 Besame Mucho(1969.01.29)
 ラテンの名曲をポールが楽しそうに歌い、メンバーもそれなりにノッてバックをつけています。
 ちなみにビートルズは同曲を、1962年に受けたデッカ・レコードのオーディションでも演奏しましたが、結果はご存知のとおり、不合格でした。

16 Octopus's Garden(1969.01.26)
 アルバム「アビー・ロード」に収録されたリンゴの持ち歌で、ジョージがギター、リンゴがピアノを弾き、2人だけのリハーサルですが、この時点で原型が出来ていた事がわかります。
 そして途中からジョンがドラムスで参加♪
 しかし、そこへポールがやって来て演奏が中断するという、いはやはなんともの編集です。

17 You Really Got A Hold On Me(1969.01.26)
 ここからビリー・プレストンが画面に登場します。
 演奏される曲はモータウンレコードから放たれた大ヒットの古典で、ビートルズは初期のアルバム「ウイズ・ザ・ビートルズ」で録音しています。
 残念ながら、ここでは最後まで完奏していませんが、雰囲気は上々♪♪~♪
 ビリー・プレストンの如何にも黒人っぽいファッションのシャツ、そして何気なく入れてくるオルガンのフレーズがファンキーで素敵ですねぇ~♪

18 The Long And Winding Road(1969.01.26)
 リハーサルですが、ジョンのアドバイスも真剣です。
 ちなみにジョンは、6弦のエレキ・ベース、ボールはピアノをプレイしています。

19 Shak Rattle And Roll(1969.01.26)
 1954年に大ヒットしたロックン・ロールの古典を演奏、とても楽しい雰囲気は「ビリー・プレストン効果」の証明でしょうか?

20 Kansas city - Miss Ann - Lawdy Miss Clawdy(1969.01.26)
 ロックン・ロールの古典をメドレーにして、同日の演奏が続きます。
 「Kansas city」はビートルズがアルバム「フォー・セール」で取上げていましたが、ここでは別アレンジにしています。「Miss Ann」は1957年にリトル・リチャードが大ヒットさせた曲で、ポールのお気に入りらしく、続く「Lawdy Miss Clawdy」は、1952年頃にR&B歌手のロイド・プライスがヒットさせた自作自演曲でした。
 映像では、やがてポールの義娘になるヘザー・イーストマンが登場、演奏に合わせてクルクル回って踊り、最後に転んでパンツがチラリ、!?!
 このあたりにも楽しい雰囲気を掴んだ映像の編集が施されています。

21 Dig It(1969.01.26)
 アルバムでは、とても短く編集されていましたが、この楽しそうなノリは最高です。
 もちろん演奏の中心はビリー・プレストンで、彼に煽られたのか、既にバラバラ寸前のビートルズがバンドとしての一体感を表出させた、実に素敵な一瞬が味わえます。
 しかし……、この後にポールがジョンに対して、今回のプロジェクトの意義やジョージとの問題について、しつこく言い訳をする場面へ映像が変わります。
 ポールの気持ちは痛いほど分かりますが、ジョンは困り顔……。

22 Two Of Us(1969.01.31)
 ここから「24」まで、完成された曲が演奏される場面が続きます。
 撮影はすべて1月31日で、つまり屋上ライブ・セッションの翌日ですが、このトラックは、アルバム「レット・イット・ビー」収録のバージョンに限りなく近いものです。

23 Let It Be(1969.01.31)
 コーラスもブラスも入っていない、バンドだけのシンプルな演奏で、ビリー・プレストンのオルガンが流石に良い味です。
 既に何度か述べてきたとおり、これも公式音源の元になった演奏です。

24 The Long And Winding Road(1969.01.31)
 これも同様にバンドだけの演奏で、またしてもビリー・プレストンのオルガンが素晴らしい隠し味になっていて、個人的には非常に好きな演奏です。
 う~ん、このシンプルで切々とした雰囲気に接してしまうと、フィル・スペクターの装飾に異議を唱えたポールの言い分が理解出来る様な気が致します。


 「25」から「30」までは1月30日に行われた屋上のライブ演奏です。内容については既に「其の四」で述べましたので、割愛させていただきます。


25 Get Back(1969.01.30)
26 Don't Let Me Down(1969.01.30)
27 I've Got A Felling(1969.01.30)
28 One After 909(1969.01.30)
29 Dig A Pony(1969.01.30)
30 Get Back(1969.01.30)

31 Get Back(Reprise)
 曲の一部分だけがエンド・ロールで使われました。
 ビートルズは映像に登場しておりません。


ということで、あらためて映画の流れを整理すると「01」~「13」までが1969年1月2日~15日にかけてトゥイッケンナム・フイルム・スタジオで行われたリハーサルです。

ここで無気力と険悪な雰囲気をしっかりと伝え、次にアップル・スタジオで1969年1月22日~31日にかけて行われた「14」~「24」の場面で創造的な姿、ビートルズとしてのプライドを見せつける編集は流石と思います。

そしてその中で行われた1969年1月30日の屋上でのライブ「25」~「30」を最後に据えて、素晴らしい演奏とバンドとしての一体感を、警察官までもが登場する騒動と共に見せつけてのクライマックスにしてしまったのは、とても上手い構成でしょう。

もちろん、巧みなフィルム編集によって、演奏された曲の順番が入れ替えてあるのは言うまでもありません。

ちなみに上記曲名の後に付けた日付は、その音源が演奏された日を、サイケおやじが映像と手元にある海賊盤音源から推測してみたものにすぎません。

これは、ぜひとも、皆様のご意見をお聞かせ願いたいところです。

で、肝心の音源ついては、撮影フィルムに同期させたサウンドトラック音源と、レコードやテープとして正規発売するために録音した音源の2つに分けられます。

後者については、アップル・スタジオに移動してから録音しており、それはマルチ・トラックで約28時間分存在していると云われておりますが、問題は前者のシンクロ音声トラックです。

既に「其の五」で映像フィルムが約38時間分、シンクロ音声トラックが約96時間分残されたと書きましたが、何故音声の方が長く存在しているかと言えば、それは映画の撮影が2台のカメラで行われたからです。つまりその2つのカメラに連動させた2台のオープンリール・テープレコーダーが存在しており、同じ演奏でも2種類のテープが残されたのです。

しかも、そのテープは1本につき10~15分位しか録音出来ないため、後に編集して使えるように、テープ交換のタイミングをずらして使用されていたからだと推察しております。

で、映画フィルムでの音源は、全篇このシンクロ音声テープからのトラックが使用され、モノラルになったのは、その所為でした。

そして件の映画は、1時間28分に編集されていましたので、業者が目を付けたのが、この音源の残りテープです。

それが纏まって海賊盤として登場したのは、1973年頃の事でした。

参考文献:「ビートルズ・レコーディング・セッション / マーク・ルウィソーン」


注:本稿は、2003年10月29日に拙サイト「サイケおやじ館」に掲載した文章の改稿です。

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