■Toulouse Street / Th Doobie Brother (Warner Bros.)
ヒット曲の条件のひとつに素敵なイントロが必要という真実は言わずもがなでしょう。それも妙に凝っているよりは、一撃のインパクトが最も効果的なのは、例えばビートルズの「A Hard Day's Night」が実証しているところですし、何よりも流れてきた瞬間、おっ! という気持の昂りを誘発してくれれば、それだけで使命は達成されるのです。
さて、本日ご紹介のアルバムは、1970年代のウエストコーストロックを代表した人気バンド、ドゥービー・ブラザーズの2作目として1972年に発売されたLPですが、なんといっても出世作となったヒット曲「Listen To The Music」がド頭を飾っていることで、一際の鮮烈感がありました。
A-1 Listen To The Music
A-2 Rockin' Dpwn The Highway
A-3 Mamaloi
A-4 Toulouse Street
A-5 Cotton Mouth
B-1 Don't Start Me To Talkin'
B-2 Jesus Is Just Alright / 希望の炎
B-3 White Sun
B-4 Disciple
B-5 Snake Man
既に述べたようにドゥービーズにとってはデビュー盤がLP、シングル共にパッせず、おそらくは日本盤もリアルタイムでの発売は無かったと思われるのですが、とにかく昭和47(1972)年の秋の終り頃にラジオから流れてきた「Listen To The Music」は、瞬時にウキウキさせられるイントロからのギターカッティングが印象的♪♪~♪ しかも弾みまくったビートと爽快なコーラスワーク、おまけに簡単な英語で綴られた歌詞の分かり易さ、そして一緒にキメを歌える親しみ易さが、これぞっ、ヒット曲の必要十分条件を満たしているのです。
実際、皆がとりあえず音楽を聴こうよ♪♪~♪ なんてシンプルに言われてしまうと、それが逆にその気にさせられてしまうというか、こんな率直な歌がアルバム冒頭に置かれるという、これは当時第一線のロックでは逆説的な快挙だったと思います。
そして続く「Rockin' Dpwn The Highway」が、これまた痛快至極なブッ飛ばし讃歌!
一説によるとデビュー前後からのドゥービーズは、意図的にバイカーやトラック野郎が集まる店でライププロモーションを続けていたそうですから、こういう曲が生まれるのも自然の摂理とはいえ、以降もバンドテーマ的な演目になるのですから、狙いはバッチリ!
ちなみにドゥービーズはその頃からメンバーチェンジを頻繁に行いながらの離散集合でバンドを維持していくのですが、このアルバム制作時はトム・ジョンストン(vo,g)、パット・シモンズ(vo,g)、タイラン・ポーター(b,vo)、ジョン・ハートマン(ds,per,vo)、マイケル・ボザック(ds,per,vo) の5人組が一応のレギュラーでした。そして実際の録音には前メンバーのデイヴ・ショウグレン(b)、そして助っ人としてリトル・フィートのビル・ペイン(p,key)、さらにホーンセクション等々が参加しています。
ですから「Cotton Mouth」や「Don't Start Me To Talkin'」ではブラスを導入したR&B風味のファンキーロック、また逆に「Mamaloi」や「Toulouse Street」、そして「White Sun」では生ギターのフィンガービッキングも印象的な暖かい曲調が楽しめます。
というように、バンドスタイルとしてはツインドラムスが象徴するオールマンズの影響が強く、ツインリードのキメも同様ですが、一方、コーラスワークの素晴らしさはCSN&Yという折衷症状が賛否両論でしょう。
しかし歌と演奏はテクニックをひけらかすよりは、あくまでもストレートに楽しく、ノリ重視の姿勢が潔いかきりだと思います。
その中でR&Bバンド出身のトム・ジョンストンは直線的なエレキギターと黒っぽいファンキーロックの味わいを追求し、またフォークブルースをやっていたパット・シモンズはアコースティックギターをメインに、サイモン&ガーファンクのようなポップス系フォークとカントリーロックのブルース的解釈に冴えを聞かせてくれるように、なかなか一筋縄ではいきません。
そのあたりが以降もドゥービーズのもうひとつのテーマとなった「希望の炎」の痛快さで、冒頭からのチャカポコリズム、「トウルルルルゥ~」という十八番のコーラスワークが混然一体となった中から浮かびあがるゴスペル調の曲メロが、一度聴いたらヤミツキの世界ですよねぇ~♪
ちなみにこの曲は本来、ゴスペルの歌らしく、確かに中盤ではテンポを落として粘っこく歌われるパートが絶妙のアクセントになっているのですが、実はご存じのとおり、ドゥービーズよりも先にザ・バーズが1969年に発売したアルバム「イージーライダー(Columbia)」で演じていたという顛末も、些かイナタイ雰囲気のザ・バーズのバージョンをコピーしたところから始まったというドゥービーズのカッコイイ仕上げには、脱帽です。
もちろんザ・バーズのバージョンだって、私は好きなんですが、既に時代は1970年代ということで、どうしてもスピードがついた爽快感がウエストコーストロックの必須条件になっていたのでしょうか。そこにヘヴィなリズム&ビートをミックスさせたドゥービーズは、流石に上手かったというところかもしれません。
ということで、今となっては些か地味な存在になったアルバムではありますが、日本では昭和48(1973)年に発売された時からコンスタントに売れたと言われていますから、やはり時代を象徴する1枚だったのかもしれません。
ただしサイケおやじは例によって、国営FM放送のラジオから丸ごと流されたソースをエアチェックして聴いていたのが本当のところで、実際に買ったのは相当に後の中古盤でした。しかし、その時になっても、持っていたいと思わせられる魅力が確かにあったという点をご理解も願います。
とにかくA面ド頭から流れてくるギターカッティングの爽快さ!
それだけで私はノセられてしまうのでした。