これも大西さんから送ってもらったものです。落石
各紙米元国務長官らの「核兵器のない世界を」を評価しながら、
読売・日経・産経は北朝鮮の脅威強調。平和市長会議に触れたのは毎日のみ。
― 8月6日広島平和祈念式典の日の新聞各紙の社説 ―
8月6日広島平和祈念日の各紙の社説は一斉に「核」の問題を取り上げた。そ
の中で各紙ともアメリカのキッシンジャー元国務長官、
ペリー元国防長官ら米国の核政策を推進した要人らが、
米紙に「核のない世界へ」と核廃絶を訴える文章を寄せたことや
オーストリア首相やノルウェー外相からも核廃絶の提起がなされていることを紹介していた。
核廃絶の必要性を説く点では、各紙とも共通していたが、
朝日は核問題で国連特別総会での論議を主張し、
毎日は日本が被爆国として「核兵器のない世界」の先駆けとなれと説いた。
中日は原爆や戦争のおそろしさを『伝える』ことの大切さを強調していた。
これに対して、読売・日経・産経の三紙は、
北朝鮮が六カ国会議に申告した核開発計画に核兵器が含まれていなかったとして、
北朝鮮の核の脅威にどう備えるかが重要だ。
アメリカがテロ支援国家指定解除などで妥協しないように働きかけるべきだ
という論調になっていた。
なお、各紙とも事前に「平和宣言」の文案を入手していた(社説の中で触れていた)のに、
広島・長崎の今年の「平和宣言」の眼目ともいうべき2368都市に達した
「平和市長会議」が核拡散防止条約再検討会議に対して核廃絶を検討課題とするよう求める
「ヒロシマ・ナガサキ議定書」に触れたのは毎日だけだった。
朝日新聞「核廃絶は夢物語ではない」
昨年元米国務長官のキッシンジャー、シュルツ氏ら4人や
今年に入って英国のハード元外相、ロバートソン前NATO事務総長ら4人が、
「核兵器のない世界を」と提言した。
ここ60年余りの国際政治を支配してきた「核による安全」という発想を逆転したのである。
オーストラリア首相やノルウェー外相からも核廃絶への提起がなされている。
核をめぐる危機がいつ、世界のどこで噴出するとも知れない。
イスラエルがイラクやシリアの各施設を攻撃する危険や
正常不安のパキスタンの核保有、北朝鮮の核廃棄のメドも立っていない。
核テロへの恐れも高まっている。
キッシンジャー氏らが核廃絶に転じたのは、核世界が保有国の手に余る状況にあることの現れでもある。
こうした変化の中で外交をどう発展させるか。
まず第一に最強の核保有である米国に方針転換してもらうことだ。
米国の「核の傘」の下にいる日本だが、米国の同盟国であるオーストラリア、
ノルウェーと連携し、大幅な核軍縮を次期大統領に促すべきだ。
そして、国連で特別総会を開き、核抑止論の限界や核拡散、核テロのリスク、
核に頼らない安全保障のあり方などについて、とことん討議してはどうだろう。
核世界の変化に日本外交の動きは極めて鈍い。
福田首相には、各危機の暗雲を晴らす国際社会の試みの先頭に立つ決意を示してもらいたい。
毎日新聞「世界は核廃絶の頂を目指せ」
核兵器拡散の危険は膨らんでいる。核兵器を保有する国が増え、
テロリストが核兵器を手にする恐れもある。
米国務長官だったキッシンジャー、シュルツ両氏らが昨年から
2回にわたって核兵器廃絶を提言したのは、その危機の表れだ。
今年の広島の平和宣言は、被爆体験の悲劇と苦悩を経て
「核兵器は廃絶されることだけに意味がある」との真理を見出し、
今日の流れを導いたと指摘する。
さらに核拡散防止条約の批准国が190カ国に上る現状などを踏まえ、
今秋に選ばれる米新大統領が多数派の声に耳を傾けるよう期待を寄せる。
世界2300以上の都市でつくる平和市長会議は
今年のNPT再検討会議の準備会合で2020年までの核廃絶の道筋を示した
「ヒロシマ・ナガサキ議定書」を発表し、各国に強調を促した。
国際社会は、非人道兵器の対人地雷やクラスター爆弾の禁止を実現した。
その究極にある核兵器の廃絶という「頂」を見据えて、
日本が被爆国として「核兵器のない世界」の先駆けとならねばならない。
読売新聞「核拡散を止めねばならない」
米国のキッシンジャー元国務長官、ペリー元国防長官ら4人が、
米紙に「核兵器のない世界へ」と題する論文を寄稿した。
論文は、米国、ロシアをはじめとする核保有国に核兵器の削減を求めた。
核兵器や核物質の安全管理の強化を唱えている。
広島、長崎に原爆を投下し、今も核武装大国であり続ける
米国の元高官らのアピールに、釈然としない人は少なくないだろう。
が、論文の背景には、北朝鮮やイランによる核開発が核の拡散を招き、
核兵器がテロリストの手に渡ってしまう、新たな“核状況”への米国も懸念がある。
洞爺湖サミットの首脳宣言は、すべての核保有国に
「透明性のある方法」で核削減することを呼びかけた。
しかし実際、こうした宣言とは裏腹な事態が起きている。
北朝鮮の核開発計画申告に核兵器が含まれていない。
インドがNPTに入らないのに米印原子力協定を進めようとしている。
これではNPTはますます形骸化してしまう。
日本は、米国から原爆の惨禍を蒙りながら、日本の安全保障のためには、
米国の「核」に頼らざるを得ない。
そんな深いジレンマと、核をめぐる複雑極まりない国際社会の下で
核をどう廃絶していくか。日本にとって重い課題である。
日経新聞「核拡散への監視を緩めるな」
ストックホルム国際平和研究所が6月に発表した2008年版年鑑によると、
現存する核弾頭は世界の8カ国で合計2万5000個を上回る。
このうち1万個以上がミサイルなどに搭載され、実際に使用可能な状態だ。
即時発射態勢にある核弾頭は数千個に及ぶ。
核兵器の拡散を防ぐ国際的枠組みの柱は、核拡散防止条約(NPT)だ。
核兵器の保有を米ロ英仏中の5カ国に限定し、他国の保有を禁じている。
NPTで核兵器の削減義務を負う5カ国が依然、核戦力を国防戦略の軸に据えているのも問題だが、
核保有国とされるインド、パキスタン、イスラエルはいずれも非加盟だ。
核実験を行った北朝鮮もNPT脱退を宣言したままだ。
米国は、インド、北朝鮮に妥協的態度をとっている。
核不拡散の枠組みづくりは世界共通の課題だ。
唯一の被爆国として日本の責務も問われる。
日本の安全保障に密接に絡む北朝鮮の核問題を厳しく監視し、
譲歩を重ねる米国に歯止めをかける役割はその一つだ。
産経新聞「原爆の日 北の核許さぬ決意新たに」
これまで唯一の被爆国である日本から、米国などあらゆる核保有国に対し、核
廃絶の願いを発信することに主眼が置かれてきた。
しかし、今の日本が直面する最大の脅威は北朝鮮の核である。
北の核申告は極めて不十分な内容だった。
争点になっていた高濃縮ウランによる核開発や
シリアへの核開発への協力に関する記載はなく、別の文書を作ることで問題が先送りされた。
7月に北京で開かれた6カ国協議は、北の核申告に対する検証の3原則で合意し、
シンガポールでの非公式外相会合も、検証作業を「加速させる必要性」で一致した。
しかし、北は見返りの支援のみを要求し、肝心の検証開始の時期や手順に踏み込んでいない。
時間稼ぎとしか思えない不誠実な態度に対しても、広島、長崎から怒りのメッセージを発してほしい。
現時点では、北が本気で核廃棄を行うという保証は何もない。不
十分な核計画の申告だけで、検証もないまま米が北のテロ支援国家指定を
解除することの危険性を重ねて指摘したい。
日本政府は、米が軽々に指定解除をしないよう、さらに働きかけを強めてほしい。
中日新聞「伝えたい、語りたい」
八月のヒロシマには、「伝えたい」意思にあふれています。
町中で目にする「戦争と平和」の展示やパフォーマンスだけではありません。
原爆のつめ跡を残す建物や被爆樹木、夕凪のあとの涼風さえも、
いのちの重さや平穏な日々の尊さを無言で語りかけてきます。
昨年の平和祈念式典では、小学生の代表が
「途切れそうな命を必死でつないできた祖父母たちがいたから、
今に私たちがいます。原子爆弾や戦争の恐ろしい事実や悲しい体験を、
一人でも多くの人たちに『伝えること』は、私たちの使命です」と訴えました。
そして「世界中の人々の心を『平和の灯火』でつなぐことを誓います」と結んでいました。
私たちは、ヒロシマのこの意思を受け止めねばなりません。
「伝えたい」気持ちの高まりは、長崎でも同じです。
九日の長崎平和宣言には、永井隆博士の言葉が引用されています。
永井博士の孫の永井徳三郎さんは「自分自身を愛するように、
あなたの隣人を愛しなさい」という祖父の博士の言葉を伝えたいといいます。
平和とは、一人一人の小さな意思の積み重ねではあるまいか。
そう信じて徳三郎さんは、祖父の言葉を子どもたちに伝え、
その言葉をきっかけに、平和のために何かを始めてもらいたいと思っています。
[平和市長会議とは]
二つの宣言で触れられた「平和市長会議」とは、
1982年6月の第2回国連軍縮特別総会において、
荒木広島市長(当時)が、世界の都市が国境を超えて連帯し、
ともに核兵器廃絶への道を切り開こうと
「核兵器廃絶に向けての都市連帯推進計画」を提唱し、
広島・長崎両市長から世界各国の市長宛にこの計画への賛同を求めました。
同年10月、この計画に賛同する市長たちによって
「世界平和連帯都市市長会議」が結成され、国連のNGOとして登録されました。
そして2001年に「平和市長会議」と名称を改めました。
平和市長会議の規約では、会の目的を
「都市連帯推進計画に賛同するすべての都市相互の緊密な連帯を通じて
核兵器廃絶の市民意識を国際的な規模で喚起するとともに、
人類の共存を脅かす飢餓・貧困等の諸問題の解決さらには難民問題、
人権問題の解決及び環境保護のために努力し、
もって世界恒久平和の実現に寄与することを目的とする。」
としています。
そして2020年までに核兵器の廃絶(2020年ビジョン)を目指して、
署名活動など国際世論を喚起する行動計画を掲げています。
平和市長会議は、2008年8月現在、
世界131の国・地域の2,368都市の賛同をえています。
広島市長が会長、長崎市長が副会長を務め、
他にドイツのハノーバー市長、イタリアのフィレンツェ市長、
アメリカのアクロン市長なども副会長になっています。
[ヒロシマ・ナガサキ議定書]
今年4月にスイス・ジュネーブで開かれた核拡散防止条約(NPT)
再検討会議準備委員会で秋葉平和市長会議会長が核兵器廃絶を目指す
「ヒロシマ・ナガサキ議定書」を発表、
2年後に開かれる核拡散防止条約再検討会議での討議・採択するよう呼びかけました。
またそのために2009年10月の国連総会でも拡散防止条約再検討会議での
検討課題とする決議の獲得に向けて働きかけを行うことにしています。
「ヒロシマ・ナガサキ議定書」は、
▽新たな核兵器の取得と使用につながる行為の即時停止、
▽核兵器廃絶の国際的枠組み合意に向け、核保有国に誠実な交渉開始を要求する、▽2015年までに核兵器取得やしようにつながる行為の禁止を法制化する、
▽2020年廃絶の作業プログラム策定、を段階的に進める、
という内容になっています。
現在、この地方では、愛知県の蟹江市、三重県の熊野市、伊賀市、名張市が
議定書に賛同しています。
核兵器廃絶は「憲法九条を守る運動」とは直接的には結びつきませんが、
「武力行使の禁止、戦力不保持」の九条の精神と合致します。
私たちもそれぞれが住んでいる市町村の首長や議会に、
「ヒロシマ・ナガサキ議定書」に賛同するよう働きかけようではありませんか。
※議定書とは、条約の修正または補完の目的で用いられる文書で、
国際合意として成立すれば条約と同じ効力を発揮するものです。
各紙米元国務長官らの「核兵器のない世界を」を評価しながら、
読売・日経・産経は北朝鮮の脅威強調。平和市長会議に触れたのは毎日のみ。
― 8月6日広島平和祈念式典の日の新聞各紙の社説 ―
8月6日広島平和祈念日の各紙の社説は一斉に「核」の問題を取り上げた。そ
の中で各紙ともアメリカのキッシンジャー元国務長官、
ペリー元国防長官ら米国の核政策を推進した要人らが、
米紙に「核のない世界へ」と核廃絶を訴える文章を寄せたことや
オーストリア首相やノルウェー外相からも核廃絶の提起がなされていることを紹介していた。
核廃絶の必要性を説く点では、各紙とも共通していたが、
朝日は核問題で国連特別総会での論議を主張し、
毎日は日本が被爆国として「核兵器のない世界」の先駆けとなれと説いた。
中日は原爆や戦争のおそろしさを『伝える』ことの大切さを強調していた。
これに対して、読売・日経・産経の三紙は、
北朝鮮が六カ国会議に申告した核開発計画に核兵器が含まれていなかったとして、
北朝鮮の核の脅威にどう備えるかが重要だ。
アメリカがテロ支援国家指定解除などで妥協しないように働きかけるべきだ
という論調になっていた。
なお、各紙とも事前に「平和宣言」の文案を入手していた(社説の中で触れていた)のに、
広島・長崎の今年の「平和宣言」の眼目ともいうべき2368都市に達した
「平和市長会議」が核拡散防止条約再検討会議に対して核廃絶を検討課題とするよう求める
「ヒロシマ・ナガサキ議定書」に触れたのは毎日だけだった。
朝日新聞「核廃絶は夢物語ではない」
昨年元米国務長官のキッシンジャー、シュルツ氏ら4人や
今年に入って英国のハード元外相、ロバートソン前NATO事務総長ら4人が、
「核兵器のない世界を」と提言した。
ここ60年余りの国際政治を支配してきた「核による安全」という発想を逆転したのである。
オーストラリア首相やノルウェー外相からも核廃絶への提起がなされている。
核をめぐる危機がいつ、世界のどこで噴出するとも知れない。
イスラエルがイラクやシリアの各施設を攻撃する危険や
正常不安のパキスタンの核保有、北朝鮮の核廃棄のメドも立っていない。
核テロへの恐れも高まっている。
キッシンジャー氏らが核廃絶に転じたのは、核世界が保有国の手に余る状況にあることの現れでもある。
こうした変化の中で外交をどう発展させるか。
まず第一に最強の核保有である米国に方針転換してもらうことだ。
米国の「核の傘」の下にいる日本だが、米国の同盟国であるオーストラリア、
ノルウェーと連携し、大幅な核軍縮を次期大統領に促すべきだ。
そして、国連で特別総会を開き、核抑止論の限界や核拡散、核テロのリスク、
核に頼らない安全保障のあり方などについて、とことん討議してはどうだろう。
核世界の変化に日本外交の動きは極めて鈍い。
福田首相には、各危機の暗雲を晴らす国際社会の試みの先頭に立つ決意を示してもらいたい。
毎日新聞「世界は核廃絶の頂を目指せ」
核兵器拡散の危険は膨らんでいる。核兵器を保有する国が増え、
テロリストが核兵器を手にする恐れもある。
米国務長官だったキッシンジャー、シュルツ両氏らが昨年から
2回にわたって核兵器廃絶を提言したのは、その危機の表れだ。
今年の広島の平和宣言は、被爆体験の悲劇と苦悩を経て
「核兵器は廃絶されることだけに意味がある」との真理を見出し、
今日の流れを導いたと指摘する。
さらに核拡散防止条約の批准国が190カ国に上る現状などを踏まえ、
今秋に選ばれる米新大統領が多数派の声に耳を傾けるよう期待を寄せる。
世界2300以上の都市でつくる平和市長会議は
今年のNPT再検討会議の準備会合で2020年までの核廃絶の道筋を示した
「ヒロシマ・ナガサキ議定書」を発表し、各国に強調を促した。
国際社会は、非人道兵器の対人地雷やクラスター爆弾の禁止を実現した。
その究極にある核兵器の廃絶という「頂」を見据えて、
日本が被爆国として「核兵器のない世界」の先駆けとならねばならない。
読売新聞「核拡散を止めねばならない」
米国のキッシンジャー元国務長官、ペリー元国防長官ら4人が、
米紙に「核兵器のない世界へ」と題する論文を寄稿した。
論文は、米国、ロシアをはじめとする核保有国に核兵器の削減を求めた。
核兵器や核物質の安全管理の強化を唱えている。
広島、長崎に原爆を投下し、今も核武装大国であり続ける
米国の元高官らのアピールに、釈然としない人は少なくないだろう。
が、論文の背景には、北朝鮮やイランによる核開発が核の拡散を招き、
核兵器がテロリストの手に渡ってしまう、新たな“核状況”への米国も懸念がある。
洞爺湖サミットの首脳宣言は、すべての核保有国に
「透明性のある方法」で核削減することを呼びかけた。
しかし実際、こうした宣言とは裏腹な事態が起きている。
北朝鮮の核開発計画申告に核兵器が含まれていない。
インドがNPTに入らないのに米印原子力協定を進めようとしている。
これではNPTはますます形骸化してしまう。
日本は、米国から原爆の惨禍を蒙りながら、日本の安全保障のためには、
米国の「核」に頼らざるを得ない。
そんな深いジレンマと、核をめぐる複雑極まりない国際社会の下で
核をどう廃絶していくか。日本にとって重い課題である。
日経新聞「核拡散への監視を緩めるな」
ストックホルム国際平和研究所が6月に発表した2008年版年鑑によると、
現存する核弾頭は世界の8カ国で合計2万5000個を上回る。
このうち1万個以上がミサイルなどに搭載され、実際に使用可能な状態だ。
即時発射態勢にある核弾頭は数千個に及ぶ。
核兵器の拡散を防ぐ国際的枠組みの柱は、核拡散防止条約(NPT)だ。
核兵器の保有を米ロ英仏中の5カ国に限定し、他国の保有を禁じている。
NPTで核兵器の削減義務を負う5カ国が依然、核戦力を国防戦略の軸に据えているのも問題だが、
核保有国とされるインド、パキスタン、イスラエルはいずれも非加盟だ。
核実験を行った北朝鮮もNPT脱退を宣言したままだ。
米国は、インド、北朝鮮に妥協的態度をとっている。
核不拡散の枠組みづくりは世界共通の課題だ。
唯一の被爆国として日本の責務も問われる。
日本の安全保障に密接に絡む北朝鮮の核問題を厳しく監視し、
譲歩を重ねる米国に歯止めをかける役割はその一つだ。
産経新聞「原爆の日 北の核許さぬ決意新たに」
これまで唯一の被爆国である日本から、米国などあらゆる核保有国に対し、核
廃絶の願いを発信することに主眼が置かれてきた。
しかし、今の日本が直面する最大の脅威は北朝鮮の核である。
北の核申告は極めて不十分な内容だった。
争点になっていた高濃縮ウランによる核開発や
シリアへの核開発への協力に関する記載はなく、別の文書を作ることで問題が先送りされた。
7月に北京で開かれた6カ国協議は、北の核申告に対する検証の3原則で合意し、
シンガポールでの非公式外相会合も、検証作業を「加速させる必要性」で一致した。
しかし、北は見返りの支援のみを要求し、肝心の検証開始の時期や手順に踏み込んでいない。
時間稼ぎとしか思えない不誠実な態度に対しても、広島、長崎から怒りのメッセージを発してほしい。
現時点では、北が本気で核廃棄を行うという保証は何もない。不
十分な核計画の申告だけで、検証もないまま米が北のテロ支援国家指定を
解除することの危険性を重ねて指摘したい。
日本政府は、米が軽々に指定解除をしないよう、さらに働きかけを強めてほしい。
中日新聞「伝えたい、語りたい」
八月のヒロシマには、「伝えたい」意思にあふれています。
町中で目にする「戦争と平和」の展示やパフォーマンスだけではありません。
原爆のつめ跡を残す建物や被爆樹木、夕凪のあとの涼風さえも、
いのちの重さや平穏な日々の尊さを無言で語りかけてきます。
昨年の平和祈念式典では、小学生の代表が
「途切れそうな命を必死でつないできた祖父母たちがいたから、
今に私たちがいます。原子爆弾や戦争の恐ろしい事実や悲しい体験を、
一人でも多くの人たちに『伝えること』は、私たちの使命です」と訴えました。
そして「世界中の人々の心を『平和の灯火』でつなぐことを誓います」と結んでいました。
私たちは、ヒロシマのこの意思を受け止めねばなりません。
「伝えたい」気持ちの高まりは、長崎でも同じです。
九日の長崎平和宣言には、永井隆博士の言葉が引用されています。
永井博士の孫の永井徳三郎さんは「自分自身を愛するように、
あなたの隣人を愛しなさい」という祖父の博士の言葉を伝えたいといいます。
平和とは、一人一人の小さな意思の積み重ねではあるまいか。
そう信じて徳三郎さんは、祖父の言葉を子どもたちに伝え、
その言葉をきっかけに、平和のために何かを始めてもらいたいと思っています。
[平和市長会議とは]
二つの宣言で触れられた「平和市長会議」とは、
1982年6月の第2回国連軍縮特別総会において、
荒木広島市長(当時)が、世界の都市が国境を超えて連帯し、
ともに核兵器廃絶への道を切り開こうと
「核兵器廃絶に向けての都市連帯推進計画」を提唱し、
広島・長崎両市長から世界各国の市長宛にこの計画への賛同を求めました。
同年10月、この計画に賛同する市長たちによって
「世界平和連帯都市市長会議」が結成され、国連のNGOとして登録されました。
そして2001年に「平和市長会議」と名称を改めました。
平和市長会議の規約では、会の目的を
「都市連帯推進計画に賛同するすべての都市相互の緊密な連帯を通じて
核兵器廃絶の市民意識を国際的な規模で喚起するとともに、
人類の共存を脅かす飢餓・貧困等の諸問題の解決さらには難民問題、
人権問題の解決及び環境保護のために努力し、
もって世界恒久平和の実現に寄与することを目的とする。」
としています。
そして2020年までに核兵器の廃絶(2020年ビジョン)を目指して、
署名活動など国際世論を喚起する行動計画を掲げています。
平和市長会議は、2008年8月現在、
世界131の国・地域の2,368都市の賛同をえています。
広島市長が会長、長崎市長が副会長を務め、
他にドイツのハノーバー市長、イタリアのフィレンツェ市長、
アメリカのアクロン市長なども副会長になっています。
[ヒロシマ・ナガサキ議定書]
今年4月にスイス・ジュネーブで開かれた核拡散防止条約(NPT)
再検討会議準備委員会で秋葉平和市長会議会長が核兵器廃絶を目指す
「ヒロシマ・ナガサキ議定書」を発表、
2年後に開かれる核拡散防止条約再検討会議での討議・採択するよう呼びかけました。
またそのために2009年10月の国連総会でも拡散防止条約再検討会議での
検討課題とする決議の獲得に向けて働きかけを行うことにしています。
「ヒロシマ・ナガサキ議定書」は、
▽新たな核兵器の取得と使用につながる行為の即時停止、
▽核兵器廃絶の国際的枠組み合意に向け、核保有国に誠実な交渉開始を要求する、▽2015年までに核兵器取得やしようにつながる行為の禁止を法制化する、
▽2020年廃絶の作業プログラム策定、を段階的に進める、
という内容になっています。
現在、この地方では、愛知県の蟹江市、三重県の熊野市、伊賀市、名張市が
議定書に賛同しています。
核兵器廃絶は「憲法九条を守る運動」とは直接的には結びつきませんが、
「武力行使の禁止、戦力不保持」の九条の精神と合致します。
私たちもそれぞれが住んでいる市町村の首長や議会に、
「ヒロシマ・ナガサキ議定書」に賛同するよう働きかけようではありませんか。
※議定書とは、条約の修正または補完の目的で用いられる文書で、
国際合意として成立すれば条約と同じ効力を発揮するものです。