口 名東署が誤認逮捕 窃盗事件、男性に謝罪 (2013.5.1 中日新聞)
名古屋・名東署は30日、窃盗容疑で逮捕した名古屋市中区の美容院店員の男性(22)を釈放したと発表した。逮捕後、男性が犯行の時間帯に職場にいたことが分かった。名東署は誤認逮捕だったと認め、男性に謝罪した。
名東署によると、3月10日午後3時15分ごろ、客を装った男が名東区内のリサイクル店を訪れ、店員の隙を見て高級ギターと部品(計26万5千円相当)を持ち去り、盗んだ。店内の複数の防犯カメラに写った男が男性に似ていたほか、男性を含む数十人の顔写真をリサイクル店の店員二人に見せたところ、「男性が犯人」と答えたため、4月26日に逮捕状を請求。30日朝、男性に任意同行を求め、午前10時5分ごろに逮捕した。
男性は「全く知らない。仕事をしていた」と否認していた。その後、署が男性の勤める美容院に確認したところ、犯行時間帯には勤務先にいたことが分かり、同日午後零時15分ごろ釈放。その後、署の刑事課長が電話で男性に謝罪した。
上村武志署長は「誠に遺憾。今後は緻密な捜査を進め、再発防止に努める」とコメントした。
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このニュースで思うことが二つあります。
一つは、警察が誤認逮捕しておきながら、刑事課長が「電話で謝罪した」ということです。直接会って謝罪すべきで、仮に男性が警察署から帰った後だとしても、同じ名古屋市内です。刑事課長は男性が勤めている美容院にまで行って直接謝罪すべきでした。電話で済ませたということに、人権を軽く見る警察の習性がうかがわれるようで、恐ろしくなりました。
しかしこの問題でもう一つ考えなければならないと思うのは、最近やたらに増えて、誰彼かまわず、善良なる市民を常時監視している防犯カメラの問題です。
ボストン爆破事件の容疑者が防犯カメラの映像から特定されるなど、犯罪捜査に威力を発揮しているようです。日本でも、他人のパソコンに入り込んで幼稚園襲撃を予告した「遠隔操作ウィルス事件」で、江ノ島の防犯カメラの映像から首輪にデータをしのばせた猫と一緒にいたIT関連会の30歳の社員が逮捕されたりしました。しかしこの男性は犯行を否認しています。
この事件でも、4月30日の午前10時5分に逮捕して、午後0時15分に釈放しています。犯罪捜査では、容疑者の犯行の可能性が確かめられてから逮捕するのが普通です。そのために犯罪が行われた時間に容疑者がどこにいたかを確かめるのが普通の方法です。アリバイ(不在証明)が無罪の決定的な証拠になります。ところがこの事件では、逮捕する前に犯行当日の所在を確かめれば犯罪と無関係とわかったのに、確かめたのは逮捕してからでした。防犯カメラの映像が「似ている」ということに寄りかかり、基礎的な捜査を疎かにしたと言えると思います。
防犯カメラの映像から容疑者を捜そうとすると、カメラに写っている犯罪とは無関係な市民が、言葉は悪いですが行動を覗き見られているのです。防犯カメラとプライバシー権、人格権の問題を考えてみる必要がありますね。
大西 五郎
名古屋・名東署は30日、窃盗容疑で逮捕した名古屋市中区の美容院店員の男性(22)を釈放したと発表した。逮捕後、男性が犯行の時間帯に職場にいたことが分かった。名東署は誤認逮捕だったと認め、男性に謝罪した。
名東署によると、3月10日午後3時15分ごろ、客を装った男が名東区内のリサイクル店を訪れ、店員の隙を見て高級ギターと部品(計26万5千円相当)を持ち去り、盗んだ。店内の複数の防犯カメラに写った男が男性に似ていたほか、男性を含む数十人の顔写真をリサイクル店の店員二人に見せたところ、「男性が犯人」と答えたため、4月26日に逮捕状を請求。30日朝、男性に任意同行を求め、午前10時5分ごろに逮捕した。
男性は「全く知らない。仕事をしていた」と否認していた。その後、署が男性の勤める美容院に確認したところ、犯行時間帯には勤務先にいたことが分かり、同日午後零時15分ごろ釈放。その後、署の刑事課長が電話で男性に謝罪した。
上村武志署長は「誠に遺憾。今後は緻密な捜査を進め、再発防止に努める」とコメントした。
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このニュースで思うことが二つあります。
一つは、警察が誤認逮捕しておきながら、刑事課長が「電話で謝罪した」ということです。直接会って謝罪すべきで、仮に男性が警察署から帰った後だとしても、同じ名古屋市内です。刑事課長は男性が勤めている美容院にまで行って直接謝罪すべきでした。電話で済ませたということに、人権を軽く見る警察の習性がうかがわれるようで、恐ろしくなりました。
しかしこの問題でもう一つ考えなければならないと思うのは、最近やたらに増えて、誰彼かまわず、善良なる市民を常時監視している防犯カメラの問題です。
ボストン爆破事件の容疑者が防犯カメラの映像から特定されるなど、犯罪捜査に威力を発揮しているようです。日本でも、他人のパソコンに入り込んで幼稚園襲撃を予告した「遠隔操作ウィルス事件」で、江ノ島の防犯カメラの映像から首輪にデータをしのばせた猫と一緒にいたIT関連会の30歳の社員が逮捕されたりしました。しかしこの男性は犯行を否認しています。
この事件でも、4月30日の午前10時5分に逮捕して、午後0時15分に釈放しています。犯罪捜査では、容疑者の犯行の可能性が確かめられてから逮捕するのが普通です。そのために犯罪が行われた時間に容疑者がどこにいたかを確かめるのが普通の方法です。アリバイ(不在証明)が無罪の決定的な証拠になります。ところがこの事件では、逮捕する前に犯行当日の所在を確かめれば犯罪と無関係とわかったのに、確かめたのは逮捕してからでした。防犯カメラの映像が「似ている」ということに寄りかかり、基礎的な捜査を疎かにしたと言えると思います。
防犯カメラの映像から容疑者を捜そうとすると、カメラに写っている犯罪とは無関係な市民が、言葉は悪いですが行動を覗き見られているのです。防犯カメラとプライバシー権、人格権の問題を考えてみる必要がありますね。
大西 五郎