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リーマンショックの後、国連金融改革の挫折   文科系

2019年10月03日 19時36分56秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)

 いつもながら何も知識がないのに反論だけは書いてくる名無し君から、こんな面白いコメントがあったので、拙旧稿を再掲する。

『「国連金融規制」 また、新たな、面白ネタが出て来ましたよ(笑) そんなもの、何時何処で、検討されたの?』


【 書評③ 各国、世界機関の金融改革を巡って   文科系 2016年10月19日 | 書評・番組・映画・演劇・美術展・講演など

 ドナルド・ドーア著「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」(中公新書2012年6月第5刷発行)の終章である第3章は、計4節に分かれている。「国際協調」、「適切な報酬制度」、「現状維持に終わる金融改革」、「金融化は不可逆的か」。これを、順不同で要約していきたい。サブプライムバブルが弾けた後のG20やそのサミットでどんな改革論議がなされ、対立があって、ほぼ元の木阿弥に戻ってしまったか。リーマン以降、ロンドンG20から、10年のソウルG20とそのサミットまで、世界の金融規制論議経過は省いて、書かれている改革の内容自身を観ていきたい。

 ロンドン大学政治経済学院の「金融制度の将来」には4つの目的がこう書かれているとあった。①実体経済を攪乱しないように。②破綻金融の税金救済の問題。③そんな金融機関の報酬が高すぎる問題。④高報酬により人材が集まりすぎる問題。
 また、2010年11月のG20ソウル会議でもっと具体的に4つの討論がなされ、抽象的合意だけが成されたと言う。①銀行規制。②金融派生商品契約を市場登録すること。③格付け会社の公共性。④新技術、商品の社会的有用性。
 以上から何が問題になってきたかをお分かりいただけたと思うから、G20ソウル会議の4項目の順に討論内容などを観ていきたい。

 ①の銀行規制に、最も激しい抵抗があったと語られる。また、現に力を持っているこの抵抗者たちは規制提案に対して「否」と言っていれば良いだけだから、楽な立場だとも。国家の「大きすぎて潰せない」とか「外貨を稼いでくれる」、よって「パナマもケイマンも見逃してくれるだろう」とかの態度を見越しているから、その力がまた絶大なのだとも。この期に及んでもなお、「規制のない自由競争こそ合理的である」という理論を、従来同様に根拠を示さずに押し通していると語られてあった。

 ②の「金融派生商品登録」問題についてもまた、難航している。債権の持ち主以外もその債権に保険を掛けられるようになっている証券化の登録とか、それが特に為替が絡んでくると、世界の大銀行などがこぞって反対すると述べてあった。ここでも英米などの大国国家が金融に関わる国際競争力強化を望むから、規制を拒むのである。つまり、国家が「外国の国家、法人などからどんどん金を奪い取ってきて欲しい」と振る舞っているから換えられないと、酷く暴力的な世界なのである。

 ③格付け会社の公準化がまた至難だ。その困難の元はこのようなものと語られる。アメリカ1国の格付け3私企業ランクに過ぎないものが、世界諸国家の経済・財政法制などの中に組み込まれているという問題だ。破綻直前までリーマンをAAAに格付けていたなどという言わばインチキの実績が多い私企業に過ぎないのに。ここで作者は「ワイヤード・オン」という英語を使っている。世界諸国家法制にムーディーズとかスタンダードとかの格付けランクがワイアーで縛り付けられているという意味である。この点について、こんな大ニュースが同書中に紹介されてあったが、日本人には大変興味深いものだろう。
『大企業の社債、ギリシャの国債など、格下げされると「崖から落ちる」ほどの効果がありうるのだ。いつかトヨタが、人員整理をせず、利益見込みを下方修正した時、当時の奥田碩会長は、格付けを下げたムーディーズに対してひどく怒ったことは理解できる』(P189)
 関連してここで、つい昨日の新聞に載っていたことを僕がご紹介したいのだが、こんな記事があった。先ず見出しは、『国際秩序の多極化強調BRICS首脳「ゴア宣言」』。その「ポイント」解説にこんな文章が紹介されていた。
『独自のBRICS格付け機関を設けることを検討する』
 15日からブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ五カ国の会議がインドのゴアで開かれていて、そこでの出来事なのである。ついでに、日本でこういう記事はまず大きくは見えないようになっているということも付け加えておきたい。なお、この会議宣言4つのポイントすべてにおいて「国連」が強調されていたということも何か象徴的なことと僕には思われた。国連を利用はするが無視することも多いアメリカと、国連を強調するBRICSと。
 とこのように、国連や、G7などではなくG20やにおいてアメリカ以外の発言力が強くなっていかなければ、金融規制は進まないということなのである。

 最後に、「④新技術、商品の社会的有用性」について。金融商品、新技術の世界展開を巡る正当性の議論なのである。「イノベーションとして、人類の進歩なのである」と推進派が強調するが、国家の命運を左右する為替(関連金融派生商品)だけでも1日4兆ドル(2010年)などという途方もない取引のほとんどが、世界的(投資)銀行同士のギャンブル場に供されているというような現状が、どうして「進歩」と言えるのか。これが著者の抑えた立場である。逆に、この現状を正当化するこういう論議も紹介されてあった。
『「金作り=悪、物作り=善」というような考え方が、そもそも誤っているのだ』
 金融が物作りを「攪乱」したり、現代世界人類に必要な新たな物作りへの長期的大々投資を事実上妨げているとするならば、それは悪だろう。関連して、世界的大銀行は、中小国家の資金まで奪っていくという「罪」を史上数々犯してきたのである。そして、世界の主人公である普通の人人の生活、職業というものは、物(作り)とともにしか存在しない。

 この本の紹介はこれで終わります。ただし、この著作中に集められた膨大な数値などは今後の討論で折に触れて適宜ご紹介していくつもりです。「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」という書名をどうかご記憶下さい。

(終わり)】
 
 
 アメリカ経営者団体がこの8月19日「株主資本主義は誤りであったから、大改革を進める」と内外に方針転換を表明したそうだが、こんな「転換」は信用できるわけがない。上記の国連金融改革が進まなければ、「ステークホルダーの利益にもなるように転換する」など、信じられないのである。今の保護主義に転化したアメリカが、その間に物作りと人々の職業重視に換わっていくならば、多少は信じる気にもなるかも知れないが、こんな物は単なる策略。中国の、貿易黒字累積分を金融工作によって奪い取るために元自由化をなんとか実現しようという陰謀なのでもあろう。ただ。笑えるだけだ。
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日中米(関係)に歴史的異変数々  文科系

2019年10月03日 12時42分01秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 以下は、昨今の日中米(関係)における歴史的大異変に目を付け、その数々をテーブルに並べてみるもの。そこから何かの結論を出そうというものではない。歴史の進み方は、こういう大異変の積み重なりからゆっくりと、あるいは急激に起こっていくものだからこそ、そんな羅列には大きな意味があると考えてきた。
 読者の皆さん、過去の歴史を学んでふむふむというのも面白かろうが、今の世界史(的出来事)にハッとしつつ、そこでいろいろ学んで、世界史のちょっと先を予想して観る方が遙かに面白いのではないだろうか。
  
 米経営者団体の「大転換」、その意味
 
この8月19日、米主要企業の経営者団体ビジネス・ラウンド・テーブルが、「株主利益の最大化方針」を見直すという新たな行動指針を発表した。ステークホルダーと呼ばれてきた従業員や顧客、地域社会などの利益を改めて尊重するように換えるという、数十年ぶりの「大転換」である。が、今の僕は、国連金融規制のないこんな声明など全く眉唾で、信用していない。では、「新自由主義経済の大転換」とも言えるこんなものが、今時なぜ出されてきたのか。米中衝突などを前にして、これに備えて世界各国の支援を得ようというアメリカの戦略の一環なのだと、今は考えている。
 ちなみに、このことの「世界経済大転換」的重要性は分かる人には分かるのであって、ニューズウイーク10月1日号でも河東哲夫(本誌コラムニスト、外交アナリスト、元外交官)がこう語っている。
『これからの先進国経済は、大きなパラダイムシフトの時を迎える。米企業は株主の利益最優先から長期的利益を優先する方向に舵を切りつつあり、他国の企業にもこれに倣うよう圧力をかけてくるだろう』
 この河東氏は、国連金融規制もないこんな「大転換」を現実の物になると、ナイーブにも信じているのだ。さすがにアメリカべったりで来た元外務省の職員! 日中両政権の間で以下のように進んでいる動きを観ると、外務省は幾分その蚊帳の外なのだろうか。
 
  安倍、習と会談、経営者千人を引き連れて
 
 去年の10月26日に、7年ぶりの日中首脳会談があった。日本の経営者1000人を引き連れて北京へ赴いた外交・経済会議を兼ねてのことであった。そしてこの会談内容発表をめぐって、首相と外務省との間にある大珍事が巻き起こったのである。当ブログ去年10月30日に書いたエントリー「対中で、首相・外務省に重大対立」から抜粋する。
 
【 対中で、首相・外務省に重大対立   文科系 2018年10月30日
(前略) 先ずは、(今日の)新聞報道を要約しておこう。要約する記事は、中日新聞2面の『「日中3原則」で混乱』、『会談で確認?食い違う主張』と見出しされた物だ。
 事は、26日北京における日中首脳会談で確認された今後の3方針に「原則」という概念を使うか否かという対立である。習首相らと「原則」と確認し合ったと国会答弁や官邸フェイスブックなどで外に向かって大きく表明した安倍首相に対して、内閣官房副長官や外務省が「3原則という言い方はしていない」とか「中国側が確認したと言っているわけではない」と叫んでいるから、大事件なのだ。政府部内で一体、何が起こったのか。折しも米中貿易戦争の真っ最中とあっては、米よりの外務省と、対中経済大接近の現状を追認しなおすしかなかった安倍首相という構図も見えてくるのである。さて、その「三原則」とは、このように重大な物ばかりである。
『競争から協調へ』
『互いに脅威とならない』
『自由で公正な貿易体制を発展』
 どうだろう、これを今後の対中日本外交の原則と呼ぶかどうかは、米中貿易戦争・冷戦開始の間に立った日本の方向をすら示していると言えないか。先ず3番目がトランプアメリカへの批判になることは明らかだし、その上で2番目を宣言し直しているというのでは、アメリカの神経を逆なでするようなもの。確かに、対米追随の外務省が顔色を変える事態なのである。
 さて、これだけの理解では、事の重大さにはまだ半分程度しか迫れていないと思う。ことの全貌をきちんと理解するには、最近の日米関係、日中関係等や、世界史の知識なども必要だ。例えば、①日本の対米輸出よりも対中輸出の方が圧倒的に多くなっている、とか。②アメリカが自由貿易を捨てて、カナダ、メキシコなどを引き連れたブロック経済圏作りに走り始めたが、日中は「自由貿易支持」を表明し続けてきた、とか。③EUも自由貿易支持の立場から、アメリカの姿勢を批判し続けてきた、とか。④そもそも世界恐慌時のブロック経済圏作りとは、世界史においてどんな意味を持っていたか、とか。
 今はこれ以上のことは何も言えない。が、首相を中心において政府部内で重大対立が現れるほどの切羽詰まった局面に日本が立たされている事だけは確かなのである。世界経済第3位の日本は、2位のお隣中国に寄っていくことによって、アメリカの保護主義批判の立場を一層鮮明にするのだろうか。としたら、戦後日本の大転換点にもなる。こんな局面では普通なら、アメリカが安倍を切ることになる。田中角栄や小沢・鳩山がやられたように。(後略)
 
  イラン(戦争脅迫)を巡る日本の対米独自行動
 
 このことについてはこの9月18日にここにエントリーを書いたが、要するにこういうことだ。イラン戦争有志国に日本は応募しなかった。また、サウジ油田破壊主体をば、アメリカが断定したようにイランとは認めず、わざわざこんな声明まで出している。
『(イランではなく、イエメンのフーシ派の犯行という)その可能性が強いと思っている。フーシ派は声明を出している』(河野外相)
 「イランの責任」と明記した英独仏と違って、こんな日本の言葉の方が遙かに当たり前の内容であって、もしアメリカがこう言われたら返す言葉もないような濡れ衣、イラン冤罪をアメリカはやって来たのだった。
「サウジのイエメン攻撃はほとんどアメリカの兵器によるものだから、アメリカがやったのだ!」
 
 結び
 
 日中米を巡って、世界はどんどん動いている。この3国の今後にも関わる朝鮮統一への動きも急だし、今のこの世界、明日一体何が起こるのか。
 なお、この時、去年10月から年末にかけて、もう一つの歴史的重大事が日本を見舞っている。この10月、日米の株価急落に伴って、日銀が上場投資信託を過去最高の月間購入額8700億円を買い上げ、以降12月までにGPIFが約15兆円の損失を出しているのだ。誰が奪ったのだろう。
コメント (2)
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