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随筆  子どもって、すごい    文科系

2019年10月18日 08時04分45秒 | 文芸作品
「今度は上手な子のように板を持ったクロール・キックで、二五mやってみる?」
 近く五歳になる男の子、孫のセイちゃんにそうたずねると、ウンッと軽く答えながら、僕の目をにっこりと見つめる。板で泳いだことなどないはずだから拒否されると思っていた僕は、内心のうれしさを押し殺してさりげなく板の持ち方などを確認して・・・。

 これは、娘に頼まれた、セイちゃんの水泳特訓の四日目のこと。通っているスポーツジム・メガロスの水泳教室の進級テストに二回落ちて四ヶ月を無駄にした直後に、僕の出番を求められたという一場面なのだ。そしてこの日いきなり起こったことに、僕はまーびっくり仰天! 彼のこのクラスからの進級テスト課題とは、「フィックスという小さな浮きを両肩に付けて五メートルほどバタ足できる」というもの。これはもう特訓二回目でできてしまって、テストにも合格したから、以降今日も含めて二回はその距離を伸ばす練習をしていたのである。この間中守るべき大切な基本は、この二つ。
 一つは、正しい伏し浮き・蹴伸びの姿勢が取れること。壁を蹴ってまっすぐに進むだけの練習を何回もさせるのだが、蹴った後の全身を脱力させた上で、これを常に水面と平行に保つことが要点である。ただ、全身脱力した「身体の伸び」さえできれば、自分の身体に水の抵抗がなくなるやり方を子どもは自然に見つけ出していくもの。しかも、この水の抵抗感がなくなるスタイル・やり方が、子どもにはまた楽しくて仕方ないものらしい。自分には難物であった水の中を力も要らずスーッと進んでいると実感できるからだろう。セイちゃんもこれがちょっとできるようになると、自分から進んで何度も何度も挑戦していたのが、僕にはとても面白かった。今ひとつは、足首と膝を伸ばしてバタ足すること。つまり、脚をなるべく根元から動かす。

 さて、前のテストは五mだったけど、蹴伸びは完璧、バタ足も形になってきたこの日、思いついてこう提案してみた。「できるだけ遠くまで行けるようにやってみる?」。「ウンッ」という返事もろとも泳ぎだし、どんどん距離を延ばして、結局二五mの向こう岸までやり切ってしまった。これにはもう、びっくり仰天。「もう一度やってみる?」にもやはり涼しげに「ウンッ」で、休みもなく二度目の挑戦。これもやり切ってしまったのが二度目の仰天。そこでその日のうちにと思いついたのが、冒頭のボード・キック提案なのだ。三度目の正直の仰天が起こった。口を酸っぱくして注意して来ても激しくバタバタするほどに出てくる足首と膝が曲がる癖も交えてなのだが、二五mを泳ぎ切ってしまった。彼のスクールでは一二・五mクロールでさえ三つ上のクラスのテスト課題なのだから、手腕の形をちょっと教えればこのクラスもクリアー同然。内心のウハウハを隠して、一人ほくそ笑んでいた。

 五体の使い方、身のこなしの巧みさなどを習得するのは、小学生までが一番で、幼いほど速い。これはスポーツ習得にかかわる生理学的知見であって、それ以降の何分の一の努力で身につくということ。知ってはいたそういう理論で頭をがーんと殴られたのに嬉しくて仕方ないという一日になった。ちなみに僕は、新たにバタフライを覚えるなどは到底無理と思い知らされた体験も最近持っている。他の三泳法は全て出来る僕でもなのだ。子どもって、すごい!
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