アメリカがまたまた、国連で孤立した。14日の安全保障理事会に「イランへの武器禁輸措置延長を求める決議案」を出したのだが、15理事国中で賛成はドミニカ、米だけ2票、惨めすぎる否決となった。この決議は以下のように、歴史的になかなか重要なものだった。15年にイラン核合意が結ばれた時に「この禁輸は20年10月まで」と決まったその約束に対して、この核合意から離脱したトランプ政権が改めて禁輸延長を国連に申し出たもの、その決議が否決されたのである。
さて、国連を無視する行動を連発しているアメリカがそこで孤立していくのは当然のこと。近年のそんな出来事をこのブログでは多く拾い上げてきた。エルサレムをイスラエルの首都と認定して国連で孤立という記事が、6月29日。7月の2、3日にはそれぞれ、ベネズエラの国連人権理事会選出問題と、国連総会におけるウイグル問題決議の敗北とを紹介させていただいた。一方は、ベネズエラの「人権問題」から、人権理事国選出など絶対阻止と動いたアメリカの大敗北。同じく米が大敗北を喫したウイグル人権問題については、この6月31日の中日新聞記事を転載してみよう。
『国連総会で人権問題を扱う第三委員会は二十九日、中国の新疆ウイグル自治区で少数民族ウイグル族などを弾圧しているとされる問題で、欧米や日本など先進国を中心とした二十三か国が中国に人権尊重を求めた。一方、二倍以上の五十四か国が中国の人権に対する姿勢を称賛。国際社会で影響力を増す中国を巡る対立の構図が浮き彫りになった。
二十三か国を代表して英国が声明を読み上げ、ウイグル族の大量拘束疑惑を引き合いに「私たちは中国政府に、中国全土で信教・信条の自由などの人権を尊重する国際的な義務と責任を守るよう求める」と主張した。
一方、中国を称賛する五十四か国には、ロシア、パキスタン、エジプトなどが名を連ねた。ベラルーシが代表で二十三か国の声明は「人権問題の政治化だ」と反論し、「ウイグル自治区ではテロや分離主義、宗教的過激主義が人々に甚大な損害を与え、重大な人権問題になっている」と中国の対応を支持。国数で優位に立った中国の張軍国連大使は「世界の人々は真実を観て判断している」と自賛して見せた。
ウイグル族の人権問題について、報道陣から米中貿易協議へ影響を問われたクラフト米国連大使は「私は人権侵害に苦しむ人々のためにここにいる。中国かどうかは関係ない」とかわした。一方、張氏はロイター通信などに「貿易協議で良い解決策を導くために有益とは思わない」と米国を牽制した』
さて、こういう新聞報道は、ウイグル問題がイスラム国問題でもあって、ここのイスラム主義者がイラクなど中東とも出入りがあることを報じてきたわけだが、そんなニュースはおくびにもださずに「ウイグル」を騒いできた米日。国連におけるこういう米孤立化現象の数々を米の強さと見るのか、弱さと観るべきなのか。その点で、日本の世論は大きく分かれるはずだが、日本マスコミの米報道は、国連における影響力弱体化をほとんど論じていないように見える。対するに、中国の影響力拡大については「金をばらまいているからだ」とだけ扱って来なかったか。ちなみに、中小国訪問を繰り返して金をばらまいて来たやの「外交の安倍」は、国際的には何の影響力もない第三位の経済大国ロングセラー首相。こんな対比を、マスコミも時には思い出してみるが良い。
ベネズエラの人権理事国選出についても、7月2日拙稿から抜粋しておこう。アメリカのお膝元・中南米でこそ米の支持がなくなっているという現象が僕にはとても勉強になった。コロナ10大被害国に米大陸から自らも含めて6か国も入っているのは、アメリカ金融による歴史的な搾取・貧困化の結末だと、僕は観てきたからだ。日本も含めてアメリカ金融を受け入れてきた国は全て通貨危機などに見舞われて急に貧困化したということだ。
『 中南米理事枠2か国に対して3か国が立候補したのだが、ブラジルとベネズエラが選ばれ、コスタリカが落選したのである。それぞれの得票数は153、105、96票だったが、「ベネズエラの人権問題が許せない」として立候補したコスタリカが落選したことが、国連で大きな話題になったのである。ちなみに、コスタリカを押して猛烈なロビー活動を展開したアメリカの権威失墜というこの結果について、アメリカ代表はこう述べたのだそうだ。
「人権理事会が破綻している揺るがぬ証拠だ」』