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新聞の片隅に載ったニュースから(235)   大西五郎

2016年10月02日 19時12分42秒 | Weblog
民間給与3年連続上昇 国税庁調査 15年、平均420万円(16.9.29 中日新聞)

 民間企業で働く給与所得者が2015年の一年間に受け取った平均給与は、前年を五万四千円上回る四百二十万四千円(前年比1.3%増)で、三年連続で上昇したことが、国税庁の実態統計調査で二十八日分かった。給与所得者には正社員や非正規社員が含まれる。
 国税庁は「経済が拡大基調にあり、失業率が低いためではないか」と分析。一方、専門家からは「(給与水準の)長期低迷から抜け出せたわけではない。個人消費が回復するには時間がかかる」との見方がある。
 正社員の平均給与は1.5%増の四百八十四万九千円、非正規は0.5%増の百七十万五千円。差額は三百十四万四千円で、前年の三百八万円からさらに格差は拡大した。
 一年を通じて勤務した給与所得者の数は0.8%増の四千七百九十四万人、うち正社員は三千百四十一万五千人(1.2%増)、非正規は千百二十二万八千人(3.0%増)だった。女性は千九百六十二万六千人(0.6%増)だった。
 調査は一九四九年分から実施。約二万事業所の約三十万九千人を抽出し、全体を推計した。
 
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 働く者の給与が3年連続で上昇したのは嬉しいことですが、いくつかの問題も含んでいます。
 国税庁が給与増の原因として「経済が拡大基調にある」を挙げたのに対し(経済の)専門家は「長期低迷から抜け出したわけではない」と指摘しています。そのことの反映で、非正規社員の給与が正社員に比べて全体平均で35%と低く抑えられています。
 「新聞の片隅に載ったニュースから№234」でも紹介しましたが、総務省が8月に発表した労働力調査では7月の完全失業率が3.0%と1995年5月以来21年2カ月ぶりの低水準でした。しかしこれも9月30日に総務省が発表した8月の労働力調査ではわずか1カ月で再び3.1%に戻ってしまいました。専門家が指摘するように「長期低迷から抜け出したわけではない」のではないでしょうか。
 №234でも指摘しましたが、7月の雇用者は89万人増えて5382万人でした。これを雇用形態別に見ますと、正規の従業員の増えたのが前年同期比+21万人、非正規の従業員の増加が69万人。増えた従業員の77.5%と圧倒的に非正規の従業員が多かったのです。
 正規社員に1.5%の賃上げ(平均給与485万円)なのに、非正規社員には0.5%の賃上げ(平均給与170万円)とあからさまな差別です。それでも企業は、その条件で働かなければならないという人を作り出して、「安上がりの」労働力を確保し、利益を挙げようとしています。
 非正規社員の人は年間給与170万円でどうやって子供を上級の学校に行かせたり、習い事をさせたり、スポーツや趣味の活動に参加させたりして、家族を養っていけるのでしょう。今“子供の貧困”ということが問題になっています。安倍首相も「同一労働同一賃金を実現する必要がある」と云っていますが、口先だけの政策(リップサーヴィス)であって欲しくはありません。
                                           大西 五郎
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右流「日本近代史論」撃退法   文科系

2016年10月02日 09時16分47秒 | 歴史・戦争責任・戦争体験など
 ちょっと前にここに書いた同類文章を変形して、簡単な標記の方法を示してみます。乞う、ご批判!

 歴史論の正論とは、問題の大小とか、長期的根本的物言いと短期的派生的物言いとの区別とか、意図してやった結果かどうかとか、をしっかり付ける。こういうことをはっきり打ち出して、余分なことを書かぬ明確な文章を提示することだと思います。
 僕の第二次世界大戦総括評、日独悪玉論をお目にかけたい。

①日独が負けた方が断然良かった。それは、こういうこと。
 ユダヤ、ロマ、身障者が殺され続けずに済んだ。アジア・アフリカなど有色人種が虫けらにならずに済んだ。
「大東亜共栄圏」が成功したら、アジア諸国民は主権者ではなく盟主日本の統治者・天皇の臣民にされたであろう。天皇制批判は、大逆事件のように即死刑にもなったはずだ。
 そんなアジアを、アジア人の誰が喜んだか?

②①はなにも、「戦勝国史観」とは無関係に言えることである。つまり、こういうことを世界史が証明したのである。「大東亜共栄圏」とか、「アーリア人のような人類の進化を!」とかの国家スローガンこそ、黒を白と言いくるめた為政者による自己賛美の美辞麗句。つまり典型的イデオロギー、嘘の宣伝。現に、連合軍統治下の日独は、前よりも遙かに民主主義政治になったではないか。

③なお終戦直後に、日独民衆も同じ体験、反省をした。「鬼畜米英」や「敗戦なら、男は殺され、女は陵辱」は真っ赤な嘘だった、民が騙されていたのだ、と体験し、認識した。ついでに言えば、この真っ赤な嘘は、ちょっと前に日本が中国人らにやったことから、英米軍人らに関して連想をたくましくしただけのこと。また、当時の若い日本人たちが信じた「神風が吹く」も嘘だった、と。神風とは当時のイデオロギーの文脈では「万世一系の天皇(系統)が送り込む風」という意味である。
 沖縄では、集団自決した人々こそ「鬼畜米英」に騙されていた人。投降した人々は日本政府からよりも遙かに手厚くもてなされたと、体験した。南洋の投降兵も同じ体験をした。

④アジア太平洋戦争の「結果」のほんの一部を取り上げて「大東亜共栄圏」は本音、真実であったと語る人々が居る。それらの方々に言いたい。そんな戯言は、以上①~③を正しく反論できてこれを黙らせてから、その次に初めてやっと問うことができる問題に過ぎない。以上に反論できないなら、出すだけ無駄な話である。
コメント (10)
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ある書評② 社会、政治、教育も「金融化」   文科系

2016年10月01日 10時22分01秒 | 文化一般、書評・マスコミ評など
 ドナルド・ドーア著「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」(中公新書、2011年10月初版)を要約している。その第二部は、金融化が社会、政治、教育、そして学者たちをどう変えたかという内容。これがまた4節に分けられていて、各表題はこうだ。①社会を変える金融化、②金融化の普遍性、必然性?(疑問符が付いている事に注意 文科系)、③学者の反省と開き直り、④「危機を無駄にするな」(括弧が付いている事に注意 文科系)。

 第1節では、格差、不安の増大、最優秀人材が金融にだけ行く弊害、人間関係の歪みの四つに分けて論じられる。
・「格差」では、06年のゴールドマン・トレイダーら50人のボーナスが、一人最低17億円だったという例を28日のここで紹介した。こういう強食の背後には、無数の弱肉がいると解説を付けて。(この点については、28日拙稿を参照願いたい)
・「不安の増大」では、こんな例が良かろう。日本の国民年金掛け金未納者が38%にのぼること。日本で新たに導入された確定拠出年金が、10年3月末の110万人調査で63%が元本割れとなっている発表された。これらの人々の老後はどうなるのだろうか?
・人材の金融集中では、2010年8月の日経新聞広告を上げている。
『野村、「外資流」報酬で新卒40人採用へ 競争率16倍 専門職で実績連動 11年春、初任給54万円』
 マスメディアのライターからも、大学人やフリーライターとかジャーナリストらがどんどん減って、金融アナリストが急増している。
・人間関係の歪みでは、情報の非対称性(情報量に大差がある2者ということ)を利用して起こる諸結果から、「人をみたら泥棒と思え」と言う世の移り変わりが説かれている。

「金融化の普遍性と必然性?」の要は、金融に特化する先進国に不当な世界的優位性を与えているということである。そこから、西欧がアメリカを追いかけ、今日本がつづき始めた、と。ただし、主要国の家計に占める株と証券との割合は05年でこうなっている。アメリカ46・6%の6・7%、ドイツ23・7%の9・7%、フランス28・0%の1・4%に対して日本15・0%の4・0%である。
 この程度でもう100年に一度のリーマンが起こって莫大な公金を注ぎ込まざるを得なかったとあっては、これで儲けるしかないアメリカがいくら頑張っていても金融立国はもう駄目だという文脈と言える。上記4国の証券%合計は21・8%となるが、1980年のこれは合計34・9%となっていた。4国で割れば、この25年で8・7%から5・5%へと家計における証券保有率は大幅に低減したという事になる。ただこれは家計に占める率であって、世界から金融業者に掻き集められた金はカジノばかりに膨大に投入されているということである。

「学者の反省と開き直り」は省略させて頂く。作者自身も嘲笑的になりそうになる筆を押さえつつ書いているようだし。

「金融危機を無駄にするな」に括弧が付いているのは、掛け声だけという意味である。アメリカの妨害でちっとも進まないからだ。
 リーマンショックが起こって、「100年に1度の危機」と叫ばれた08年秋のころはアメリカも大人しかったようで、金融安定への不協和音はゼロだったとのこと(ただ、この「危機」の長期的根本的意味が一般には3割も理解できていたかどうか、僕はそう思う。)ところが、国際機構をきちんとして罰則を入れるようなものは全くできなかった。決まった事は、G7よりもG20サミットが重視され始めて、保護主義を排し、経済刺激策を取ろうという程度だった。IMFとこれによる規制との強化とについて、新興国と西欧とがかなり主張して端緒についたはずだったが、その後はほとんど何も進まなかった。
 ここで作者は、世界政府、国際制度作りの歴史などの話を起こすことになる。特定分野の国際協力機関は20世紀初めの国際連盟やILO設立よりも前に12もできていたと述べて、「万国郵便連合」などの例を挙げる。
 同じ理屈を語って日本人に大変興味深いのは、日本の戦国時代統一の例が語られている下りだろう。
『日本が16世紀の終わりに一つの国になったのは、信長、秀吉、家康の武力による統合と、幕府という統治制度の意識的な創出が決定的だった』(P132)
 アジア通貨危機やギリシャ危機は、大国金融が中小国から金を奪い取る金融戦争、通貨戦争の時代を示している。そんな金融力戦争はもう止めるべく、戦国時代の戦争を止めさせた徳川幕府のように、金融戦争に世界的規制を掛けるべきだという理屈を語っているのである。IMF(国際通貨基金)のイニシアティブ強化以外に道はないということである。

 金融の国際制度とこれによる執行力ある万国金融規制についてさらに、前大戦中から準備されたケインズの国際通貨、バンコール構想も解説される。が、これはドル中心にしようとのアメリカの終戦直後の実績と強力との前に脆くも崩れ去ったということだ。ドルが基軸通貨になったいきさつ説明なのである。
 以降アメリカは自国生産量より4~5%多く消費でき、日本や中国はその分消費できない国になったということである。それぞれ膨らんだドルを米国に投資する事になってしまった。その意味では、中国銀行総裁、周小川が09年に「ケインズ案に帰るべし、新機軸通貨、本物の国際通貨の創設を!」と叫び始めた意味は大きい。中国は今や8000億ドルの米国債を抱え、不安で仕方ないのであろう(この8000億は現在では1兆2500億ほどになっている。文科系)。中国のこの不安は同時に、アメリカにとっても大変な不安になる。「もし中国が米国債を大量に売り始めたら。国家、家計とも大赤字の借金大国の『半基軸通貨』ドルは大暴落していくのではないか」と。周小川中国銀行総裁が「本物の国際通貨の創設を!」と叫ぶのは、そんな背景もあるのである。
 なお、これは私見の言わば感想だが、アメリカが中東重視から西太平洋重視へと世界戦略を大転換させたのは、以上の背景があると観ている。中国に絶えず圧力を掛けていなければ気が休まらないのだろう。
コメント (1)
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