Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

老人ホームをテストする

2007-09-26 08:04:57 | 読書
子供がなければ,いつか足腰が立たなくなったら老人ホームのお世話になるしかない,というわけで

岡田 耕一郎 , 岡田 浩子「老人ホームをテストする」暮らしの手帖社 (2007/05)

若いときには自分が老人になるなんて,考えてもみなかった.この本を読んで,自分はまだまだ,歳をとって老人ホームにはいるというのがどういうことか,実感していないことがわかった.両親とも50代60代で亡くなったので,本当の老人を身近で見たこともないのだ.でも,老眼鏡から入れ歯まではあっという間で,入れ歯から杖までもあっという間,杖からおむつまでもあっという間らしい.

冒頭に「この本は、大学の、社会福祉ではなく経営学の分野の教員と、実際に特別養護老人ホームで介護職員として働いたことがあり、老人ホームの介護業務の改革に手腕を振るってきた介護のプロ(社会福祉士・介護福祉士)の、二人の共同作業でできたものです。」とある.

さて,雑誌「暮らしの手帖」の商品テストは具体的にA社B社C社...の類似品をならべてテストしている.この本にそれを期待してもだめ. テストを実施すると想定されているのは入居希望者ないしその家族で,この本の後半にはテストのためのチェック項目が挙げられ,説明されている.こうした記述をとおして,読者に介護の現状を認識させるという仕組み.ただし最後に具体的な老人ホームにテストを適用した例はある.これはそれなりに有益だが,テストを受け入れたホームのテスト結果が悪い訳はない.

すぐにでも老人ホームに,という切迫した事情にないと,この本は,学生の卒論みたいに,おなじことが何度も書いてあったりして読みづらくまだるっこしい.
私なりのこの本に対する理解では,スタッフ数対利用者数の比率が大きいホームが良いホームということになる.一章を割いて「ユニットケア施設」の問題点を指摘しているが,これも煎じ詰めれば比率の問題と思う.当然の結論だ.地獄の沙汰も金次第,そういうホームは高くつくだろう.どの程度を望めばいくらかかるか,と言う経営学の問題はしかしこの本の対象外.

最後にスウェーデンのホームの個人主義と日本のホームの家族主義が対比されている.いまの自分にはスウェーデン的個人主義のほうがぴったりするように思える.自分が老人ホームに入る頃には自分が変化するのか,それとも時代が家族主義から個人主義へと変化しているのだろうか.

3K (きつい・汚い・給料が低い) 3S (専門性が低い・ストレスがたまる・すぐやめる) の介護という職業だが,この職業が好きで,これを天職と考える方々がおられるらしいことを知ったのが救いだった.
コメント (4)
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