「わたしの全てのわたしたち」

サラ・クロッサン, 最果 タヒ+金原 瑞人 訳　ハーパーコリンズ・ ジャパン (2020/6)．

ウェブによれば出版当時は評判だったらしいが，全然しらなかった．ブックデザインに惹かれて図書館で借りたが，新年早々(たい)へんなものを読んじゃった，というのが正直なところ．

坐骨結合体双生児，つまり腰から下がつながったふたり，グレースとティッピのうちの，グレースが語り手．頭・心臓・肺・腎臓・腕は独立しているが腸は途中から合流する．もちろん人格は独立している．
パパは失職しアル中．市からひとり分の補助を得て高校に入学するところから始まる．エイズの女子高生ヤスミンと，その友達ジョンと友達になり，ジョンが好きになる．
ママもまた失職し，収入が途絶えて，ふたりはテレビのドキュメンタリーと契約する．
ティッピが突然意識を失ったことから，グレースに心臓肥大が発見され，それをティッピの心臓が支えていることがわかる．医師の提案は分離手術．術後グレースは補助人工心臓で凌ぎ心臓移植を待つこと...

原タイトルは "One"．日本語に訳せなくて困ったらしい．
原文は詩だが，まず金原さんがふつうの文章に訳し，それを最果さんが散文詩の形に直したそうだ．ふつうなら巻頭にある目次が巻末にある．節のタイトルは赤い活字．

結合体双生児のことは何も知らなかったなぁ...