Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

小説 幼少年期の桂歌丸

2021-01-08 09:15:09 | 読書
桂 歌蔵「廓に噺せば」光文社 (2019/6).

Amazon 引用の「BOOK」データベースでは*****
昭和十六年の横浜。五歳の少年・桧垣壽雄は、色街・真金町の廓『永代楼』の一人息子だった。壽雄は、廓を切り盛りする祖母いねに可愛がられ、何不自由なく暮らしていた。しかし、母のきくが突然家出すると、その寂しさから、壽雄は落語や漫才などのSP盤を聞くようになり、笑いに目覚めていく―直弟子が故・桂歌丸をモデルに描く、傑作長編小説。*****

図書館で歌丸が主人公と知らずに借用したが,著者は歌丸の弟子だった.生涯は歌丸本人があちこちでしゃべったり書いたりしているので,特にストーリーが目新しいわけではなかった...とはいうものの,女郎屋をよく知っているわけではないし,細部は知らないことばかりではあった.

全7章だが,最初の4章は雑誌「小説宝石」に掲載.準・1話完結的連作.残り3章は書き下ろし.
冒頭が身売り場面で,ここで買われた少女への主人公の恋心と,祖母いねの剛腕ぶりが柱.いねが戦災の横浜でバラック売春屋を始めるのがすごい.ただし深く踏み込んだ書き方ではなく,健康的でヤングアダルト向きという感じ.
昭和16年のこの冒頭に石炭をくべる炬燵が出てくる.布団を捲ると煙がもうもうと部屋に充満するそうだ.自分には経験がない,幸か不幸か..火の気がなかったことはあった.

前座時代で終わるが,ここの今輔 (ここでは時輔) はよく描かれすぎ.歌丸と今輔の衝突は続編かな...もし,あれぱだけれど.
個人的には,落語家としての歌丸は特に好きではなかったが,今輔は好きだった.小説には米丸も時丸として登場するが,高座の米丸はへらへらしているくせに目は笑っていない感じで苦手だった.

カバーイラストの祖母おいねさんは可愛すぎ.
コメント
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