Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

赤い十字

2022-10-09 09:03:55 | 読書
今年のノーベル平和賞の対象にロシアの人権団体「メモリアル」が含まれていた.この本との関係,無きにしも非ず...

 サーシャ・フィリペンコ, 奈倉 有里 訳「赤い十字」集英社 (2021/11)

Amazon の紹介*****
ノーベル賞作家スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ推薦 !
「デビュー後すぐに “真剣な” 文学作品を描きはじめた稀有な作家」
青年が引っ越し先のアパートで出会った、90歳の老女。
アルツハイマー病を患う彼女は隣人に、自らの戦争の記憶を唐突に語り始めた。
モスクワの公的機関で書類翻訳をしていたこと、捕虜リストに夫の名前を見つけたこと、
ソ連が赤十字社からの捕虜交換の呼びかけを無視していたこと --
ベラルーシ気鋭の小説家が描く、忘れ去られる過去への抵抗、そして未来への決意。
*****

1941年 に陸軍大臣東條英機が示達した訓令(陸訓一号)中に「生きて虜囚(りょしゅう)の辱(はずかしめ)を受けず」という一節があり,玉砕や自決などを奨励する結果となった.こんなことは日本だけかと思っていたが,この小説によればソ連はもとひどい.

ソ連では捕虜になることは国家への裏切りとされる.国際赤十字は捕虜交換のためにロシア人捕虜名簿をソ連側に送ってくるが,それはそのまま裏切り者の名簿とみなされ,国内に残った妻子は収容所送りとされる.
この小説に登場する 90 歳の老女も,夫がルーマニアで捕虜になったために拘束され,取り調べでは凌辱され,10 年後解放されて知ったことは,娘は餓死し,夫は終戦後ソ連軍に銃殺されたことだった.
小説にゴチで引用された国際赤十字に関連する資料は存在するもの.

昔はスターリン,今 プーチン ?
あちらでは 命は日本におけるより まだ軽く扱われ,人民は日本国民同様 ? 隷属的らしい.

語り手の青年の妊娠中の妻は癌のために死亡するが,脳以外は生かされた状態で無事出産する.このエピソードは本筋と無関係と思うが...
もうひとつ言わせてもらえば,アルツハイマー病患者が全くそれらしくない.

著者は ルースカヤ・プレミヤ = ロシア国外に在住するロシア語作家に与えられる賞 の受賞者.
図書館で借用.

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