昨年からクラリネットさんとの共演の機会が増えている.
ところで,スイング時代の主役 クラリネットのバップ以降の衰退はなぜ ? それに対し,脇役だったビブラフォンは,それなりに生き延びているのはなぜ ?
モダンエイジのクラリネットといえば,バディ・デ・フランコ,あとはジミー・ジュフリー.トニー・スコットというところ.トップ画像 中央の文章は,一番手のデ・フランコについて,
粟村政昭「ジャズ・レコード・ブック」東亜音楽社(1968/2)
よりの抜粋である.著者はデ・フランコが細かい仕掛けを廃しつねにアドリブ一本で勝負したこと,無名に近かったアート・ブレイキーなどを登庸しフレッシュなコンボを結成したことを称賛している.
ビブラフォンでバップの洗礼を受けたのはミルト・ジャクソン,今ではデ・フランコより有名だと思う.彼も細かい仕掛けを廃しアドリブ一本で勝負できる実力の持ち主.にも関わらず Modern Jazz Quartet (MJQ) と2足の草鞋を履いてきた.MJQ という編曲バンドは,ジョン・ルイスの意図のもと,ミルトのビブラフォンをいかに際立たせ利用するかを,徹底的に探求したバンドでもあった.
ジョンとの葛藤に悩みながら,しかし彼から絶えず刺激をもらったことが,ミルトのプレイヤー生命を伸ばした.MJQ の枠を離れて羽根をのばした演奏も,MLQ との対比を際立たせる結果となった.ミルトの活躍が尻すぼみにならなかったので,ビブラフォン・ジャズがゲイリー・バートンやボビー・ハッチャーソンにつながった.
クラリネットもビブラフォンもバップ向きの楽器ではなかったが,ビブラフォンは MJQ に救われたというのが,ぼくの意見.
細かく見れば,ヴァイブ入りのバンドとしては George Shearing Quintet が MJQ に先行していたし,また 60 年代の Buddy de Franco - Tommy Gumina Quartet もアコーディオンを電子楽器的に聞かせる革新的なバンドだった,とは思うけれど...
動画は Mr. Clarinet のロングソロを含むスロウなブルース Buddy's Blues (1953).Milt Hinton(b), Art Blakey(ds), Kenny Drew(p).