【政局】:10・25解散総選挙「完全当落予測」 51選挙区で与野党逆転
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【政局】:10・25解散総選挙「完全当落予測」 51選挙区で与野党逆転
政界に「9月解散、10月総選挙」との見方が広がっている。自民党の幹事長経験者はこう口にした。
「来年秋の任期切れから消去法で逆算すると、10月25日投開票しか選択肢はない。コロナの拡大中にやるべきではないとは思うが、走り出したら止まらないのが解散総選挙というものだ」
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「審判の日」は刻一刻と近づいている(写真/EPA=時事)
◆接戦の選挙区は「42」
そこで本誌・週刊ポストは選挙予測に定評のある政治ジャーナリスト・野上忠興氏の全面協力で全国の小選挙区(289議席)と比例代表(176議席)の全議席をシミュレーションした。野上氏は「野党側は選挙準備が整いつつある」と指摘する。
なお、麻生太郎・副総理は、逆風をはね返す“奥の手”を準備しているようだ。麻生側近議員の話。
「麻生さんは解散を躊躇する安倍総理の背中を押すため、コロナの景気対策として年内に消費税率を5%に引き下げることを考えている」
これに対して野上氏はこう述べる。
「麻生さんの解散論は、野党の選挙準備が整わないうちに解散すべしという考え方です。これまで安倍政権はその奇襲戦法を成功させた。解散で不意をつかれた野党が候補を乱立させて共倒れとなったから、不戦勝で勝ってきたようなものです。現在も野党は立憲民主党と国民民主党の合流協議が難航しており、一見、与党のチャンスに見える。
しかし、立憲、国民の間では合流までいかなくても、候補者が競合しないように選挙区調整が進み、ブロックによっては共産党が候補者を下ろすという水面下の調整も行なわれている。野党側は準備不足どころか、本当は解散を待ち受けている」
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シミュレーションは立憲と国民の「野党連合」が候補者を一本化し、共産党が多くの選挙区で候補者擁立を見送るという前提で実施した。そうなれば、自民は奇襲をかけたつもりでも、野党側の伏兵の中に飛び込むことになる。
結果からいえば、自民は小選挙区と比例の合計が前回より「68議席減」の216議席で過半数(233議席)を大きく割り込む。公明党の24議席を合わせてようやく240議席となり、ギリギリで政権を維持できる勢力だ(詳細は表参照)。
しかし、小選挙区のうち与野党接戦の選挙区が42あり、安倍政権に対する批判がさらに強まって接戦区をすべて落とすと自民党は比例を含めて193議席の大惨敗。公明党を合わせても過半数を確保できない可能性がある。そのケースで自民党が政権を担うためには日本維新の会を含めた連立組み替えが必要になり、政界に大激震が走る。
では、選挙の情勢を左右するポイントを具体的に見ていこう。
■「無党派層」が動き、投票率アップ
国民にはアベノマスクや持続化給付金に関する電通の中抜き問題をはじめ、一連の政府のコロナ対応への不満が非常に強い。だが、政府に怒りをぶつける機会がなかった。そこに秋解散で3年ぶりの総選挙となれば、投票率が高まるのは確実だ。
過去2回の総選挙の投票率を見ると、2014年が約53%、2017年が約54%と自民党はかつてない低投票率の下で圧勝してきた。
これまで何度も政治を変えるムーブメントを起こしてきた無党派層の多くが、“自民党は嫌だが、野党もだらしないから投票したい候補がいない”と棄権に回ったことが、固い支持基盤を持つ自民党に有利に働いた。
「その無党派層が今回は投票に行く。政府の対応にNOを突きつけるために1票を行使しようと考える人が増えるでしょう。投票率は60%を超える可能性があります」(野上氏)
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■自民党の支持基盤が稼働せず
自民党の伝統的な支持基盤といえば、ゼネコン、医師会、農協、そして中小の商工業者だ。選挙の票田でもある。
ところが、コロナで全国の病院が経営危機に陥り、商工業者も自粛で深刻な影響を受けている。さらに、農家も外国人研修生が帰国して人手が足りず、作物も売れずに経営難に直面している。安倍政権が推進した種苗法改正(継続審議)への批判も非常に強い。もはや自民の支持基盤はガタガタで、選挙でフル稼働できそうな状況ではない。
■公明党・創価学会の集票力衰退
追い打ちをかけるのが、自民党にとって最大の「集票マシン」といわれる公明党・創価学会の集票力が衰えていることだ。
公明党は各小選挙区に1万5000~3万票を持ち、自民党候補はその票で接戦選挙区を勝ちあがってきた。
しかし、かつて「800万票」を誇った同党の集票力は、前回総選挙(2017年)では約698万票、昨年の参院選は約654万票と700万票を割り込んでいる。
「公明党・創価学会はこの7月から選挙準備を本格化させる予定だったが、コロナ感染が再び拡大していることで集会も戸別訪問も事実上難しい。コロナ渦中に実施された沖縄県議選では前回の4議席から公認候補を半分(2人)に絞るしかなかったが、このままでは総選挙もそうなりかねない」(公明党OB)
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◆政治の「分水嶺」
自民党は今回は“最大の援軍”をあてにできそうにない。野上氏が語る。
「立憲と国民がうまく自民党批判票の受け皿をつくることができれば、前回自民党が勝った選挙区のうち51選挙区で奪取できる可能性がある(二重枠で囲っている箇所)。日本維新の会も、自民党から保守票を食って大阪の小選挙区や各ブロックの比例代表で議席を伸ばすでしょう。次の総選挙は日本政治が変わるかどうかの分水嶺に立つ選挙といえる」
もう一度、表の各党の獲得予想議席を見ていただきたい。
「中間値」では自公政権はギリギリ過半数(240議席)だが、「大敗ケース」では過半数割れ(216議席)、一方、「巻き返しケース」では自公で264議席と安定多数を維持する可能性がある。分水嶺に立って民意がどちらに流れるのか。
※週刊ポスト2020年8月14・21日号
元稿:小学館 主要出版物 「週刊ポスト」 【政治・政局・衆議院解散総選挙】 2020年08月05日 07:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。