【社説①】:中国公船活発化 尖閣緊張 対話で回避を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:中国公船活発化 尖閣緊張 対話で回避を
沖縄・尖閣諸島の周辺海域で、中国海警局に所属する公船の動きが活発化している。
先月上旬には日本の領海に39時間とどまり、接続水域での航行はおとといまで連続111日に達した。いずれも2012年の尖閣国有化以降で最長だ。
尖閣周辺に台風が接近し、いったん接続水域を離れたが、最近は日本漁船を追尾する危険な行為を繰り返すなどして、海上保安庁の巡視船との緊張は高まっている。
日本の海保に相当する中国海警局は軍との一体化を進めており、力を背景にして現状変更を図ろうとする動きは容認できない。
茂木敏充外相は先週、中国の王毅外相と電話会談した。自制的な対応を求めたのは当然だ。
中国側の挑発行為には毅然(きぜん)と対応すべきであり、海保による警備強化が欠かせまい。
中国政府は尖閣周辺での日本漁船の操業をやめさせることまで求めている。示威的行動はそれにとどまらず、日本最南端の沖ノ鳥島は「岩」だとして、周辺で日本の許可なく海洋調査も進めている。
一連の中国側の対応には、外交上の既成事実をつくり、日本の実効支配を崩す狙いが透けよう。
自民党内では日本の実効支配を強化するため、尖閣の生態系調査などを政府に促す議員立法の動きもある。ただ過度な対抗策は、領有権問題を顕在化させかねない。
日中両外務省は先週末、局長級のテレビ会議を開き、東シナ海を「平和・友好・協力」の海にしていくことを再確認した。
いま必要なのは、こうした対話を重ねることだろう。
防衛当局間では2年前に衝突回避のための相互通報体制「海空連絡メカニズム」の運用が始まった。
しかし会議などが主で、肝心の幹部間のホットラインは開設されていない。対応を急ぐべきだ。
中国は南シナ海で軍事拠点化を進め、香港では統制強化のための国家安全維持法を制定するなど、強権的な対応が目に余る。
日本国内では、コロナ禍で延期されている習近平国家主席の国賓来日について、中止を求める声も出ている。中国は来日を関係深化の機会にするつもりなら、その環境を整える責任を認識すべきだ。
米中対立のはざまで、米国と防衛協力する日本が尖閣を巡り中国との緊張を高めれば、東アジアの不安定化を招きかねない。
日本は中国に対し、言うべきは言う姿勢を貫きながら、米中の対立回避にも努める責任があろう。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2020年08月04日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。