路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【水曜討論】:ネット中傷 どう対処すべきか

2020-08-05 09:26:30 | 【政策・閣議決定・予算・地方創生・能動的サイバー防御・優生訴訟・公権力の暴力】

【水曜討論】:ネット中傷 どう対処すべきか

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【水曜討論】:ネット中傷 どう対処すべきか

 政府が、インターネット上の誹謗(ひぼう)中傷対策の検討を加速させている。5月に女子プロレスラーの木村花さんが会員制交流サイト(SNS)で多数の中傷を受けて死去したことがきっかけだ。匿名での投稿が多いなか、規制強化や発信者を迅速に特定する法改正を検討するが、ハードルは高い。どう対処していくべきか。中傷被害に苦められてきた芸能人と、対応策を考える弁護士に話を聞いた。(東京報道 古田夏也)

 ■発信者の「逃げ得」 変えて お笑い芸人・スマイリーキクチさん

 ■法規制の要件 緩和慎重に 弁護士・清水陽平さん

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 元稿:北海道新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【水曜討論】  2020年08月05日  09:26:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:道議会の政活費 自ら使い道の厳格化を

2020-08-05 05:02:55 | 【地方自治・都道府県市町村・地方議会・議員年金・デジタル田園構想・地方地盤沈下】

【社説①】:道議会の政活費 自ら使い道の厳格化を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:道議会の政活費 自ら使い道の厳格化を

 道議会の2010年度の政務調査費(現政務活動費)に違法な支出があったとして、市民団体が道議会側に返還させるよう知事に求めた訴訟で、最高裁が知事の上告を退ける決定を出した。

 これにより、議員らに総額8583万円を返還させるよう知事に命じた札幌高裁判決が確定した。

 道政課題の調査研究に充てる政務活動費(政活費)を、事務所の人件費や政党支部への調査委託費の名目で、選挙などの政党活動に支出する丼勘定は認められないとの判断であり、妥当だろう。

 公金を原資とする政活費の使い道は厳格であるべきだ。

 道議会が公開した19年度の政活費の収支報告書では、道議同士や道職員との飲食など、市民感覚では疑問符の付く支出が相変わらず散見される。

 道議会は旧態依然の運用を抜本的に改める必要がある。

 返還請求命令が確定したのは、半額を違法とした09年度分に続き2回目となる。16年度分についても、札幌地裁が6月に一部を違法とする判断を示している。

 全額を適法とした08年度分を除き、同様の司法判断が繰り返し出ている。道議会は、深刻に受け止めなければならない。

 16年度分は道議会側の意向を受けて知事が控訴している。法廷闘争で時間を空費するよりも、自ら改革に踏み出すべきではないか。

 政党や後援会の政治活動と道議としての政務活動を明確に区別するのは難しい面もある。

 しかし、それを混然一体で運用していては使途がなし崩しで広がってしまう懸念がある。

 これまでの司法判断では、使い道の区別が困難な場合、政活費を充当できるのは「支出の半分」との目安が示されている。これを参考に計算方法を定めてもいい。

 道内の市町村議会の大半が認めていない飲食への支出は、東京都議会が原則禁止にするなど、都道府県レベルでも見直しが進む。道議会も日用品への支出も含め、使用基準の厳格化が求められる。

 安易な支出を抑制するため、民間で一般的な事後精算方式の導入も検討すべきだ。

 地方議会では収支報告書や領収書のインターネット公開が大きな流れになっている。検討すらしない道議会の姿勢は理解しがたい。

 やましさを隠す意図があると疑われても仕方あるまい。ネット公開は道民の検証に堪える政務活動の第一歩と認識し、一層の透明化を図らなければならない。

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2020年08月05日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②】:豪雨災害の教訓 事態急変への即応が鍵

2020-08-05 05:02:50 | 【災害・地震・津波・台風・竜巻・噴火・落雷・豪雪・大雪・暴風・土石流・気象状況】

【社説②】:豪雨災害の教訓 事態急変への即応が鍵

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:豪雨災害の教訓 事態急変への即応が鍵

 九州を中心に深刻な被害をもたらした豪雨は、発生から1カ月が過ぎた。

 川の氾濫と土砂災害が多発し、熊本県を中心に80人以上が犠牲となった。県内では約1400人が避難生活を続けている。

 局所的に大雨をもたらす線状降水帯が夜に発生し、想定を超す雨量が川を瞬時に氾濫させ、逃げ遅れた多くの住民を巻き込んだ―。

 これが今回の豪雨災害の特徴と言える。

 災害時に取るべき行動を時系列に整理したタイムラインの作成や避難訓練といった事前の備えはもちろん、空振りをいとわず一刻も早く避難することの重要性があらためて浮き彫りとなった。

 とりわけ高齢者ら災害弱者は早めに安全確保の行動を起こすことが何より大切だとの認識を、自治体と住民が共有する必要がある。

 道内各地においても、防災体制をあらためて点検し、今後の減災につなげなければならない。

 急流で知られる球磨川では、水が容易に堤防を越え、上流のダムは事前放流が間に合わず雨をせき止めることができなかった。

 梅雨時期の豪雨は近年常態化し、氾濫危険水位を超えた河川数は5年間で5倍に増えた。河川整備だけでは水害が防ぎきれないことが明らかになってきている。

 これを受け国土交通省は先月、ダムや堤防重視から、既存のため池や水田の貯水機能の活用、危険地域の開発規制、避難体制強化などを組み合わせる「流域治水」へとかじを切る方針を示した。

 石狩川など全国の1級水系ごとに、地域に合わせた治水プロジェクトを年度内に策定するという。

 ある程度の氾濫も想定し、いなしてきた先人の治水の知恵を参考に、自然と財政への負荷が小さい取り組みを探ってほしい。

 被災自治体は新型コロナウイルス感染に警戒しつつ復旧に当たる二重の負担を強いられている。災害ごみの搬出も遅れており、対応を急がねばならない。

 猛暑の中、避難生活を余儀なくされたり、孤立した集落で過ごす人々のケアも課題だ。国は激甚災害に指定する方針だが、支援が一刻も早く現地に届くよう、全力を尽くすべきだ。

 現地では、感染拡大を防ぐためボランティアの募集が地元在住者に限られており、人手不足も問題化している。

 道内自治体は、災害時に地域のマンパワーを活用する手だてを今から整えておくべきだろう。

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2020年08月05日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【卓上四季】:増殖する都市

2020-08-05 05:02:45 | 【超高齢化・過疎・孤立・終活・認知症・サ高住問題・人口急減・消滅性自治体】

【卓上四季】:増殖する都市

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【卓上四季】:増殖する都市

 「癌(がん)と似而非(にてひ)なるもの」として都市を挙げたのは、日銀総裁や大蔵大臣を歴任した渋沢敬三だった。がんが転移して増殖する様相を、地方から都会へと流れる人口動態にたとえ、極端な集中に警告を発した。1930年代半ばのことである▼民俗学者でもある渋沢が危惧したのが、その質だ。集まる人の欲望の多様性と無限性が、脂肪組織と骨格筋の両方を消耗させる「悪液質」となって、人間そのものを苦しめると懸念したのである(「民俗学への招待」宮田登著)▼その恐れは、残念ながら戦後の高度経済成長期を経て現実のものとなった。膨張する「東京一極集中」は、根治どころか応急手当てもままならない▼地方創生を看板政策に掲げる安倍政権だが、東京圏への転入超過は改善されず、達成目標年次も2020年から24年度に先送りされた。先日決定した骨太の方針でも一極集中の見直しを柱に据えたものの、地方の人口減少を食い止める抜本的対策は見当たらない▼定着に欠かせない地方での若者の雇用創出数も実は増加していた。それでも、流出が止まらないのはなぜなのか。複眼的な検証が求められよう▼渋沢は、都市の細胞ともいえる人々には立派な精神があり、がんとは異なると記した。雑誌に寄せたその一文は、「これが人類をして深淵(しんえん)に落とさぬことと確信します」と結んでいる。先達の叱咤(しった)激励をしっかと受け止めたい。2020・8・5

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【卓上四季】  2020年08月05日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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【社説①】:中国公船活発化 尖閣緊張 対話で回避を

2020-08-05 05:02:40 | 【中国・共産党・香港・一国二制度・台湾・一帯一路、国家の個人等の権利を抑圧統治】

【社説①】:中国公船活発化 尖閣緊張 対話で回避を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:中国公船活発化 尖閣緊張 対話で回避を

 沖縄・尖閣諸島の周辺海域で、中国海警局に所属する公船の動きが活発化している。

 先月上旬には日本の領海に39時間とどまり、接続水域での航行はおとといまで連続111日に達した。いずれも2012年の尖閣国有化以降で最長だ。

 尖閣周辺に台風が接近し、いったん接続水域を離れたが、最近は日本漁船を追尾する危険な行為を繰り返すなどして、海上保安庁の巡視船との緊張は高まっている。

 日本の海保に相当する中国海警局は軍との一体化を進めており、力を背景にして現状変更を図ろうとする動きは容認できない。

 茂木敏充外相は先週、中国の王毅外相と電話会談した。自制的な対応を求めたのは当然だ。

 中国側の挑発行為には毅然(きぜん)と対応すべきであり、海保による警備強化が欠かせまい。

 中国政府は尖閣周辺での日本漁船の操業をやめさせることまで求めている。示威的行動はそれにとどまらず、日本最南端の沖ノ鳥島は「岩」だとして、周辺で日本の許可なく海洋調査も進めている。

 一連の中国側の対応には、外交上の既成事実をつくり、日本の実効支配を崩す狙いが透けよう。

 自民党内では日本の実効支配を強化するため、尖閣の生態系調査などを政府に促す議員立法の動きもある。ただ過度な対抗策は、領有権問題を顕在化させかねない。

 日中両外務省は先週末、局長級のテレビ会議を開き、東シナ海を「平和・友好・協力」の海にしていくことを再確認した。

 いま必要なのは、こうした対話を重ねることだろう。

 防衛当局間では2年前に衝突回避のための相互通報体制「海空連絡メカニズム」の運用が始まった。

 しかし会議などが主で、肝心の幹部間のホットラインは開設されていない。対応を急ぐべきだ。

 中国は南シナ海で軍事拠点化を進め、香港では統制強化のための国家安全維持法を制定するなど、強権的な対応が目に余る。

 日本国内では、コロナ禍で延期されている習近平国家主席の国賓来日について、中止を求める声も出ている。中国は来日を関係深化の機会にするつもりなら、その環境を整える責任を認識すべきだ。

 米中対立のはざまで、米国と防衛協力する日本が尖閣を巡り中国との緊張を高めれば、東アジアの不安定化を招きかねない。

 日本は中国に対し、言うべきは言う姿勢を貫きながら、米中の対立回避にも努める責任があろう。

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2020年08月04日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②】:サンマ漁本格化 資源回復へ議論進めよ

2020-08-05 05:02:35 | 【水産資源・海洋環境・漁業・水産加工・缶詰・調査捕鯨・鰻・鮪・鮨・回転寿司】:

【社説②】:サンマ漁本格化 資源回復へ議論進めよ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:サンマ漁本格化 資源回復へ議論進めよ

 本格的なサンマ漁のシーズンを迎えた。10日には道東沖で主力の棒受け網漁がスタートする。

 サンマの漁獲量は低迷が続き、昨年は全国、道内とも過去最低を更新した。

 秋の味覚が食卓から消えるのは寂しい。水産加工業などへの影響も大きく、回復を期待したい。

 不振の要因として、中国や台湾漁船などの操業活発化が挙げられる。道東沖に広がる暖水塊が回遊に影響を与えたとの指摘もある。

 政府は資源回復へ国際的な漁獲規制の強化を図るが、新型コロナ禍で国際会議の開催も難しくなり、動きは停滞したままだ。

 今期の漁模様や海洋環境データも踏まえ、さらに積極的な資源管理も必要となるだろう。日本は議論をリードするため、早急に方向性を示すべきだ。

 昨年の全国のサンマ漁獲量は約4万5千トンと、ピークの1958年の12分の1以下に減った。

 今年は、5月からの北太平洋の公海漁が1隻も出漁せず終了した。洋上販売するロシア側との価格交渉が決裂したからだ。漁場も遠く、採算に合わないと判断した。

 この漁は、禁止になったロシア200カイリ内サケ・マス流し網漁の代替として本格操業は2年目だ。漁獲激減の中、通年操業を後押しした国の責任も問われよう。

 先月始まった「夏サンマ」の流し網漁もふるわない。道東小型さんま漁業協議会は「商売として成立しなくなっている」という。

 水産庁の長期漁海況予報では、8~12月の日本近海の来遊量は昨年を下回る。1歳魚の平均体重も軽く、全体に小ぶりだ。

 サンマの寿命は2年と短い。世代交代が早く、資源量の増減幅は大きい。慎重な管理が必要だ。

 資源回復に向けては昨年7月、北太平洋漁業委員会(NPFC)で、日本や中国、台湾など8カ国・地域が初めて全体の漁獲上限を設けることで合意した。

 ただし、上限枠は年間約55万トンと直近の漁獲実績を大幅に上回っており、実効性は乏しい。

 札幌で6月開催予定だった年次会合でさらに踏み込み、漁獲可能量の国別配分を検討するはずだった。だが、コロナ禍で延期した。

 今冬にも開催とされるが、早期日程を目指すべきだ。各国が食料安全保障を強め、資源確保を図る中、厳しい交渉が予想される。

 日本には長年の研究データの蓄積がある。漁期短縮なども視野に、科学的知見に基づく具体策をいち早く打ち出してほしい。 

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2020年08月04日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【卓上四季】:山の神と川の神

2020-08-05 05:02:30 | 【災害・地震・津波・台風・竜巻・噴火・落雷・豪雪・大雪・暴風・土石流・気象状況】

【卓上四季】:山の神と川の神

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【卓上四季】:山の神と川の神

 春になると、山の神は里に下り、川の神となって田植え作業を見守った。秋になると、瑞穂(みずほ)の実りを確認して山に帰り、炭焼きを手伝ったという。熊本県の球磨川に伝わるヤマンタロウ、カワンタロウの民話である▼時に悪さも働くカッパはカワンタロウの化身だそうだ。そこには、氾濫を繰り返しながらも、森林の栄養分を運び、肥沃(ひよく)な土地を作った球磨川に対する地域の人々の畏れと感謝の念がある▼自然の摂理に順応し謙虚に生きてきた日本人の自然観は、助けてくれる神と災難をもたらす荒ぶる神という矛盾を受け入れることであったという(「洪水と水害をとらえなおす」大熊孝著)▼緩やかな氾濫で被害を分散し、軽減する越流堤「野越(のこし)」は壊滅的災難を避けるという発想に基づく。盛り土して床上浸水を防ぐ「水倉」は水の力を受け流す工夫といえよう。いずれも治水の限界を直視した知恵だ▼九州を中心に記録的豪雨で多数の犠牲者が出た水害は、被害が集中した球磨川の氾濫から1カ月が過ぎた。コロナ禍の影響もあり、復旧は道半ばだ。今後は、台風への備えも急がねばなるまい▼近代的科学技術の導入で自然の制御にかじを切った明治以降、見失ったことはないだろうか。「自然と乖離(かいり)した日常生活の快適さは見せかけにすぎず、非日常の災害という形でしっぺ返しを受ける」。大熊氏の警鐘が重く響く梅雨明けの列島である。2020・8・4

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【卓上四季】  2020年08月04日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:厳しい企業決算 官民総力で雇用維持を

2020-08-05 05:02:25 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【社説①】:厳しい企業決算 官民総力で雇用維持を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:厳しい企業決算 官民総力で雇用維持を

 新型コロナウイルスの緊急事態宣言が出ていた2020年4~6月期の決算で、多額の赤字を計上する上場企業が相次いでいる。

 7月以降は回復が見込まれるものの、足元の感染再拡大で回復のペースが鈍くなるのは必至だ。

 通期でも幅広い業種で大幅な赤字が予想される。21年3月期の純損失は、日産自動車が6700億円、三菱自動車は3600億円、三越伊勢丹ホールディングスは600億円を見込む。

 厳しい経営環境は続きそうだが政府の支援策を活用している企業は少なくない。あらゆる知恵を絞って雇用の維持に努めてほしい。

 日産と三菱自は、業績が元々行き詰まっていたところに新型コロナが追い打ちとなった。

 ゴーン前会長の拡大路線に伴う固定費増や新車不足などの課題を抱えていたのに、18年11月のゴーン氏逮捕後も有効な改善策を取らなかったためと言えよう。

 日産はスペインとインドネシアの2工場、三菱自は岐阜県のパジェロ製造工場を閉鎖するなどして費用の削減を目指す。雇用や中小の取引先への配慮を求めたい。

 コロナで需要が蒸発した運輸業界も業績の悪化が著しい。

 ANAホールディングスの4~6月期の純損益は1088億円の赤字となった。日本航空も大きな赤字となりそうだ。

 国内線の需要は回復傾向にあるが、感染の再拡大もあり、夏場の運航便数は予想を下回るとみられている。国際線は出入国規制で回復が見通せない。

 ANAは機材や人員配置の見直し、社員の一時帰休の拡大などで一層の経費削減を図る方針だ。

 航空会社の不振や事業見直しは観光を筆頭に道内経済への影響が大きい。政府系を含む金融機関は資金繰り支援などに万全の対応を取ってもらいたい。

 4~6月期は、不況に強いとされるJR東日本も1553億円の純損失を計上した。四半期としては過去最大の赤字となった。

 緊急事態宣言の経済的影響の大きさがうかがえる。中小企業の状況はさらに深刻だろう。

 コロナの直撃を受けた業界は、感染の沈静化なくして本格的な業績回復が難しいのは明らかだ。

 国民に感染防止の行動を呼び掛ける一方、「Go To トラベル」事業を拙速に始めた政府の矛盾した姿勢は、経済再生の障害になり得ると言うほかない。

 まずは検査体制の拡充など、感染拡大抑制に注力すべきである。

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【社説②】:リツイート訴訟 安易な画像拡散に警鐘

2020-08-05 05:02:20 | 【裁判(最高裁・高裁・地裁、裁判員制度・控訴・冤罪・再審請求、刑法39条】

【社説②】:リツイート訴訟 安易な画像拡散に警鐘

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:リツイート訴訟 安易な画像拡散に警鐘

 撮影者の氏名などが切り取られてツイッター上に無断投稿された画像をリツイート(転載)すると、著作者の権利侵害になる―との判断を最高裁が示した。

 ツイッターには、投稿を簡単に転載できる「リツイート機能」があり、広く使われている。

 判決は、画像の拡散は安易に行わないよう、利用者に警鐘を鳴らしたと言える。リツイートの際には、画像の出所を確認するなどの注意が利用者には必要となろう。

 一方で、この判断により利用者が過度に萎縮し、ネット上の情報流通が細る懸念も拭えない。

 ツイッターは、一覧しやすいサイズにするため投稿画像の上下を自動的に切り取る仕組みになっており、画像に記された撮影者名などがカットされがちだ。

 これが軽々なリツイートを招いている面もある。システム改良などの対応が事業者の側に求められよう。

 札幌市の写真家が撮影し2009年に自分のウェブサイトに載せたスズランの写真がツイッター上に無断投稿され、さらにリツイートもされたのが発端だ。

 写真は、隅に記載した写真家名がカットされて拡散した。これに対し、写真家が無断投稿とリツイートの投稿者情報の開示を求めて起こしたのがこの訴訟だった。

 一、二審とも無断投稿の著作権侵害は認定した。最高裁では、リツイートが権利侵害に当たるかが焦点となった。

 最高裁は、リツイートにより撮影者名が表示されなくなったのは明らかだとして、著作権法が定める著作者人格権のうち、作品に著作者名を付けるかを決める氏名表示権の侵害に当たるとした。

 著作者の権利を重んじた妥当な判断と言える。

 ただ、気になるのは、利用者の負担が増すことだ。

 著作者がツイッターに直接投稿していればその後のリツイートは権利侵害には問われない。画像をクリックすれば切り取られる前の元の画像を見ることができる。

 こういった確認作業の責任を利用者に負わせるのは、リツイートの差し控えを招くとして、判決では5人の裁判官のうち1人が反対意見を述べた。

 ツイッターは今や社会インフラの一部となっており、リツイートによる情報の瞬時の拡散はツイッターの長所ともされている。

 ツイッター社は社会的責務の重さを自覚し、著作者の擁護と利便性の確保の両立を探ってほしい。

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2020年08月03日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【卓上四季】:漱石の思い

2020-08-05 05:02:15 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【卓上四季】:漱石の思い

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【卓上四季】:漱石の思い

 夏目漱石は若い頃から神経質で、胃腸も弱かった。その負担が積み重なったのだろう。43歳の時に胃潰瘍を患い、静岡県の修善寺温泉へ養生に行くが、そこで大量に吐血し、生死をさまよう。世に言う「修善寺の大患」である▼何とか持ちこたえ、東京に戻るも、再び入院生活となる。平均寿命が50歳にも達しない時代。生きていることを不思議に感じながら、世話をしてくれる医者や看護師の有り難さを痛感する▼粥(かゆ)を一匙(さじ)ずつ口に運んでくれたり、献立表をつくってくれたりしたことを素直に喜んだ。仕事を忠実にこなしていると言えばそれまでだが、病人から見れば「彼らの所作がどれほど尊(たつ)とくなるか分からない。病人は彼らのもたらす一点の好意によって、急に生きてくるからである」(随筆「思い出す事など」)。医療関係者への敬意が伝わってくる▼コロナ禍の今、漱石のそんな思いが広がってほしいと願わずにはいられない。感染が再び拡大し始め、十分な対策が取られているか、不安が高まる▼重症者は少なく、医療体制は逼迫(ひっぱく)していないと政府は言うが、現場からは否定する声が上がる。病院だけではない。保健所や介護施設なども人手不足は深刻だ▼感染の危険と隣り合わせで働かざるを得ない人は多い。その 仕事が日々の安心を支えてくれている。現場への配慮を欠けば、くらしはさらに揺らぎかねない。忘れてはなるまい。2020・8・3

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【卓上四季】  2020年08月03日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:景気後退の認定 実感なき「回復」だった

2020-08-05 05:02:10 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【社説①】:景気後退の認定 実感なき「回復」だった

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:景気後退の認定 実感なき「回復」だった

 政府は2012年12月から続いた景気拡大局面が18年10月に終わり、翌月から景気後退入りしたと認定した。拡大期間は71カ月にとどまり、戦後最長の「いざなみ景気」の73カ月には届かなかった。

 政府は19年1月に「戦後最長になったとみられる」と表明し、その後も今年2月まで「景気は緩やかに回復している」との判断を維持してきた。政府の認識と実態が大きくずれていたことになる。

 楽観的な景気判断を続け、政策転換が遅れたのは明らかだ。とりわけ19年10月に消費税率を引き上げ、景気を一段と冷え込ませた経済運営は批判を免れない。

 なぜそうなったのか、政府は徹底的に検証すべきである。

 コロナ禍の影響で日本経済は大きく落ち込み、20年度の国内総生産(GDP)成長率は政府の試算でマイナス4・5%となった。感染が再拡大する中、政府が対策の方向性を誤れば底割れもある。

 経済政策の土台となるのは正確な景気判断だ。現状を客観的に見極めねばならない。

 今回の景気回復は長さこそ戦後2番目だが、期間中の経済成長率は平均年1・1%で、過去の回復期に比べ極めて低い。

 足踏み状態の「最弱の景気」と言われ、賃金は上昇せず、国民の多くは好況を実感できなかった。

 第2次安倍政権発足と同時に回復期に入り、政権は政策の成果を誇ってきたが、低空飛行を脱せなかったのは、アベノミクスの効果が小さかったことの証左だろう。

 大規模な金融緩和や財政出動による円安株高を背景に、大企業を中心に輸出で稼いだが、利益は内部留保を増やすだけで、国民生活に回らなかったのが実態だ。

 18年に米中貿易摩擦の激化で海外経済が減速すると、外需頼みの回復は終わり、政権が目指した賃上げから消費拡大につながる経済の好循環は実現しなかった。

 成長戦略も成果が乏しいまま「地方創生」や「1億総活躍」など看板だけを次々と取り換えた。

 恩恵が大企業や富裕層に偏り格差が広がるなど、弊害の方が大きくなったことは疑いようがない。

 政府が「回復」判断に固執したのは、政策の行き詰まりを認めたくなかったのだろう。客観的であるべき景気判断を政治が糊塗(こと)し、政策をゆがめた責任は重い。

 感染収束は見通せず、安倍政権が目指すV字回復は望めまい。首相はアベノミクスの失敗を直視し、景気をどう立て直していくのか、明確な説明が求められる。

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2020年08月02日  05:05:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②】:子どもの貧困 コロナ禍受け対策急げ

2020-08-05 05:02:05 | 【社会保障施策・年金(国民、老齢、共済、障害)・医療、介護保険・生活保護・

【社説②】:子どもの貧困 コロナ禍受け対策急げ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:子どもの貧困 コロナ禍受け対策急げ

 子どもの7人に1人が貧困状態にある。厚生労働省がまとめた国民生活基礎調査によると、2018年時点での子どもの貧困率は13・5%に上った。

 15年の前回調査の数値からほぼ横ばいで、この20年間、大きな改善は見られない。ひとり親世帯の貧困率は48・1%に上り、生活の苦しさも浮き彫りになった。

 新型コロナ禍で経済が悪化する中、現状が深刻さを増していることは想像に難くない。このままでは、親から子に続く貧困の連鎖がさらに固定化しかねない。

 子どもはどんな境遇であっても健やかに育つ権利がある。国や自治体は困難を抱えた子どもを救う手だてを迅速に講じるべきだ。

 18歳未満の子どもの貧困率は2000年以降、13~16%台で推移してきた。今回の数値は経済協力開発機構(OECD)の平均12・8%を上回っている。

 コロナ禍は生活の基盤が弱い人たちに大きな打撃を与えた。雇用の不安定化や長期間の休校は、とりわけ経済的に困窮するひとり親世帯などを直撃している。

 今回の調査で子どもがいる世帯の60・4%、母子世帯の86・7%が「生活が苦しい」と答えた。

 家庭の経済的な問題は子どもたちの心身の健康や将来の進路に影響し、貧困の連鎖をもたらす。この悪循環を断ち切るためには一刻の猶予も許されない。

 子どもの貧困対策推進法が14年に施行され、国は対策大綱をまとめ支援策を打ち出したが、状況の抜本的改善に結びついていない。

 政府はコロナ禍を受け、児童扶養手当を受給するひとり親世帯への臨時給付を決めた。だが、基本が5万円で1回限りの支給では困窮の解消にはほど遠い。

 児童扶養手当の増額や給付金の拡充を検討すべきではないか。

 自治体の役割も大きい。子どもの貧困は実態が見えにくいが、相談の受け皿を増やすとともに、乳幼児健診や保健師訪問などあらゆる機会に手を差し伸べてほしい。

 行政の目が届きにくい領域の下支えも欠かせない。

 例えば、子ども食堂や学習支援の場は大切な安全網の一つだ。その役割が一層重要になる夏休みを迎えるのに、運営団体の多くはコロナ禍で活動を制約されたり資金繰りに窮したりしている。

 札幌市や旭川市は活動を継続できるよう緊急的な補助を始め、各団体からの申請が相次いでいる。

 国も自治体任せにせず、財源を確保して積極支援すべきだ。

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2020年08月02日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【卓上四季】:夏祭り

2020-08-05 05:02:00 | 【学術・哲学・文化・文芸・芸術・芸能・小説・文化の担い手である著作権】

【卓上四季】:夏祭り

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【卓上四季】:夏祭り

 作家の吉村昭さんは随筆「東京の下町」に、生まれ育った日暮里(にっぽり)の戦前の様子を克明につづった。とりわけ、庶民の暮らしぶりが、子どもの目線で生き生きと描写されている▼ベイゴマやたこ揚げなどの遊び、映画や少年雑誌の娯楽に加え、おみこしが練り歩く夏祭りの活気。「道に長い台が出され、そこにブッカキ氷、赤飯、袋菓子をはじめ梨、西瓜(すいか)などがならべられていた。これらを、通行人が自由に手にして口にすることができる」と、忘れがたい祭りの情景を記している▼「神田川祭(まつり)の中をながれけり」(久保田万太郎)。俳句では、単に「祭り」といえば夏祭りを指し、夏の季語である▼例年であれば、青森ねぶた、秋田竿燈(かんとう)、仙台七夕といった東北の短い夏を彩る祭りの季節だ。それだけに新型コロナウイルスの影響による「祭りのない夏」が、ひときわ物足りなく感じられる▼本州では場所によって梅雨明けが8月にずれこみ、本格的な夏さえ実感できない地域もあるようだ。明けるどころか、東北では先週、最上川が豪雨で氾濫した。今週末は早くも立秋を迎える▼プロレタリア俳句を推進した橋本夢道(むどう)は戦時中、弾圧され投獄された。終戦直後に詠んだ作品に「いくさなき人生がきて夏祭」がある。本来なら今、4年に1度の平和の祭典が東京で開かれているはずだった。祭りが平穏な日常に支えられていることをかみしめる夏だ。2020・8・2

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【卓上四季】  2020年08月02日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説①】:道のコロナ検証 政策効果詳細に分析を

2020-08-05 05:01:55 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【社説①】:道のコロナ検証 政策効果詳細に分析を

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:道のコロナ検証 政策効果詳細に分析を

 新型コロナウイルスへの道の対応を検証する外部の専門家による有識者会議が初会合を開き、作業を開始した。9月上旬に中間結果を公表するという。

 初回は感染の第1波への対応を取り上げ、鈴木直道知事が政府より先に出した法的根拠のない緊急事態宣言が感染拡大を抑える効果があったと評価した。

 ただ、これは感染者数の推移を追った表層的な分析と言わざるを得ない。

 科学的な論拠を明らかにせずに出された宣言は、疫学上の効果がはっきりしないまま解除され、感染の第2波に見舞われた。

 今後の検証では、こうした経緯を踏まえ、宣言や唐突な一斉休校の要請が道内経済と道民生活に強いた負担に見合う効果があったのかを明らかにすべきだ。

 初会合では「宣言が家計や経済に大きな影響をもたらした」「休校要請で福祉の働き手にも混乱が生じた」などの指摘も出た。

 しかし、これらは出席した委員が順番に一言ずつ意見を述べたもので、言い放しの感は否めない。

 道側は議事録を作成していなかった幹部会議の記録の一部を公開したものの、委員に提示したのは会合が始まる数時間前だ。

 これでは、何を根拠に宣言や休校要請を出したか、事前に副作用への対策を検討したかといった経緯を詳しく分析できない。

 検証を巡っては、道議会からの厳しい追及を受けて知事がようやく応じた経緯がある。

 9月の定例道議会に間に合わせる日程が優先され、検証の中身がおろそかになってはいけない。

 医療・検査体制について、道は重症者の治療に使う人工心肺装置の数を把握していないと説明した。それを扱える医者などの人材が足りているのかも分からない。

 道が150人分確保したとする重症者向けの病床数も、機材の充足度が不明では心もとない。

 道側が一方的に提供するデータや記録をなぞるだけでは、検証結果に信頼を得られないだろう。

 委員自らが道幹部や医療現場に聞き取りを行うなどして、これまでの対応でできたことと、足りないことを忌憚(きたん)なく話し合う姿勢が求められる。

 休業への協力金などを巡り、国と地方の役割分担が課題になっている。全国で最も早く感染が広がった北海道こそ、全国に発信すべき教訓があるはずだ。

 それは、結論が予想できるような検証では導き出せない。

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2020年08月01日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説②】:李登輝氏死去 台湾民主化 功績大きい

2020-08-05 05:01:50 | 【中国・共産党・香港・一国二制度・台湾・一帯一路、国家の個人等の権利を抑圧統治】

【社説②】:李登輝氏死去 台湾民主化 功績大きい

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:李登輝氏死去 台湾民主化 功績大きい

 「台湾民主化の父」と呼ばれた李登輝元総統が死去した。

 台湾出身者として初の総統となり、総統直接選挙を実現させた。台湾ではその後も国民党と民進党の2大政党間で政権交代を繰り返している。民主化を推し進めた功績は大きい。

 李氏は民主化を通じて人々に「台湾人」意識を根付かせ、統一を求める中国と距離を置くことを追求した。中国は李氏を非難し続けたが、強硬な姿勢が台湾との溝をかえって深めたのは間違いない。

 李氏が総統時代に学者から抜てきして政治家への道を開いた蔡英文・現総統も、中国との統一を拒みながら民主化を進めている。

 李氏の路線はしっかり継承されつつある。現在の台湾の基礎を築いた指導者だったと言える。

 李氏は日本統治下の1923年に台湾で生まれ、京都帝大(現京大)に入った。「22歳まで日本人だった」と公言する親日家で、2000年の総統退任後もたびたび来日して14年には道内も訪れた。

 台湾は戦後、共産党との内戦に敗れて大陸から逃れてきた「外省人」の国民党が独裁政権となって支配した。

 当時の経験が李氏にとって、民主化を目指す原動力になった。

 李氏は蒋経国元総統に引き立てられて学者から政界入りし、蒋氏の死去に伴い国民党の副総統から総統に昇格した。

 12年間の総統在任中に外省人支配からの脱却に指導力を発揮した。野党の存在を認める法律を制定し、96年には総統の直接選挙を実現した。李氏が勝利して自ら初の民選総統となった。

 民意が反映される選挙の実現が台湾の民主主義を発展させたと言える。対照的なのが香港だ。97年に中国に返還されたが、民主的な選挙制度は実現されず、その不満が今の混乱につながっている。

 中国の習近平指導部は台湾の武力統一をちらつかせる。蔡氏は米国を後ろ盾にして対峙(たいじ)しており、その対応は理解できよう。

 李氏が努めた台湾人意識の醸成は、若い世代を中心に浸透した。今では「自らは台湾人」とみなす人は6割を超える。この意識が自立性を強固にしている。

 総統退任後、李氏は台湾独立志向の強い民進党と手を握り、晩年は台湾独立に傾斜した。その主張の根底に、台湾への誇りがあったのは間違いない。

 李氏が重要性を訴え続けた自由と民主主義を、次代も引き継いでもらいたい。

 元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2020年08月01日  05:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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