【社説②・03.07】:岩手の山火事 地域防災力の再点検を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②・03.07】:岩手の山火事 地域防災力の再点検を
いったん燃え広がると、消火活動が格段に難しくなる山火事の恐ろしさを痛感する。
岩手県大船渡市の山林火災は発生から8日が過ぎた。おとといからの降雨で火の勢いは抑えられているが、予断を許さない。一刻も早い鎮火を願う。
これまでに市の面積の約1割に当たる約2900ヘクタールが焼失し、国内の平成以降の山林火災で最大となった。県によると、1人の死亡が確認され、調査できた地域だけで焼失した住宅などは約80棟に上る。
10を超える都道県からの消防隊や自衛隊が応援に入り、ヘリによる上空からの散水も続けている。急斜面の場所も多く、地上での消火活動は困難を極めている。
現場は、まもなく発生14年を迎える東日本大震災の被災地と重なる。市人口の1割超となった約4千人の避難者の中には、津波で自宅を失い、内陸部に引っ越して再び家を追われた人もいる。
市や県は被害状況の把握に努めると同時に、仮設住宅の整備など暮らしの再建や、心身のケアの支援に全力を尽くす必要がある。
石破茂首相は国会で、自治体への手厚い支援で早期復旧を後押しする激甚災害指定を視野に入れているとした。被災者生活再建支援法の適用とともに急いでほしい。
国内外で山林火災が相次いでいる。隣接する陸前高田市でも先月、大規模な火事があり、山梨県や長野県でも続いた。年明けの米ロサンゼルス近郊や一昨年のハワイでの大火は記憶に新しい。
国連の機関は、地球温暖化などにより、世界各地で大規模火災が起こるリスクが2050年までに3割増えると警鐘を鳴らす。
日本国内では年平均1300件ほど発生し、うち7割が1~5月に集中している。空気の乾燥に強風が重なる季節で、たき火や野焼きなど人為的な原因が目立つ。
京都、滋賀にとっても、人ごとではない。京都府の面積の約4分の3、滋賀県の約半分を森林が占める。2001年の安土町(現近江八幡市)での山火事は約57ヘクタールを焼き、火勢は民家まで約1キロに迫った。原因はハイカーによる失火の可能性が高いという。
注意すべきは、過疎や高齢化が進み、枯れ草の除去など山林の管理に手が回らない地域が増えていることだ。初期消火を担う消防団の活動が細っている影響も懸念される。
火の不始末を防ぐ意識の徹底はもちろん、地域の備えや広域の防災力を再点検する機会としたい。
元稿:京都新聞社 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2025年03月07日 16:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます